不気味なくらい上手く回っている ~原油安からの悲観論 - 第一生命保険

Global Market Outlook
不気味なくらい上手く回っている
~原油安からの悲観論は沈静化へ~
2014年12月12日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
ドル円
ユーロドル
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
17394.83
17,596.34
9,862.53
6,461.70
4,225.86
119.08 円
1.2394 ㌦
0.405
2.162
1.908
0.677
0.948
2.056
1.877
17400
17300
17200
(㌦)
17900
0.43 円
-0.00 ㌦
%
%
%
%
%
%
%
-0.006
-0.002
-0.003
-0.004
-0.014
-0.011
0.004
59.95 ㌦
1225.10 ㌦
日経平均株価 10:30 現在
(円)
17500
前日比
137.43
63.19
62.80
-38.34
-2.05
NYダウ平均株価
17800
%
%
%
%
%
%
%
17700
17600
17500
USD/JPY
121.0
120.0
119.0
-0.99 ㌦
-3.80 ㌦
118.0
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
117.0
(出所)Bloomberg
【海外株式市場・経済指標他】
~期待どおりの小売~
・米国株式市場は反発。米指標が好調、過去数日のリスクオフが巻き戻された。
・11月小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(+0.4%)を上回り、前月分も上方修正(+0.3%→+
0.5%)。ガソリン安の追い風を受けた消費者信頼感指数の改善と整合的な結果だ。単価下落によりガソリ
ンスタンドは▲0.8%と弱かったが、反対に自動車が+1.7%と急増し全体を牽引。除く自動車・ガソリン
は+0.6%と、上方修正された前月(+0.7%)と同程度の伸びを記録、非常に強い内容になった(予想+
0.1%)。最重要項目のコア小売売上高は+0.6%と前月(+0.5%)を上回る伸びを確保(予想+0.5%)。
3ヶ月前比年率(3ヶ月平均)は+4.4%に減速したが、3ヶ月前比年率(単月)は+5.0%に加速してお
り基調は上向き。目下の雇用所得環境改善やガソリン安を受けて12月も好調を維持する公算が高い。12月
データ公表時にモメンタムの強さが一段と鮮明化するだろう。
・新規失業保険申請件数は29.4万件と前週(29.7万件)から僅かに減少。4週移動平均は29.9万件と前週時
点から不変だったが、水準は既往最低を記録した11月1週目を僅か2万件上回るに過ぎず、引き続き雇用
統計NFP増の30万人ペースに整合する強さを維持している。悲観は不要。
(3ヶ月前比年率、%)
10
コア小売売上高
(千件)
新規失業保険申請件数
410
8
380
6
4
350
2
320
0
290
-2
260
-4
10
11
12
13
14
12
15
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:3MA
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【外国為替相場・債券市場】~ソブリンQEは15年1月予想~
・前日のG10通貨はUSDの強さとJPYの弱さが目立った。USD/JPYは日本時間に117半ばまで下落したが、米小
売統計を受けて急伸し119を回復。一時は119.50近傍まで反発、一日の値幅は2円近くに及んだ。EUR/USD
は欧州時間に低調なTLTROの利用実績を受け、ソブリンQE観測が高まると下落する場面もみられたが、長
続きはせず直後に反発。ただ、米国時間に入ると米金利が上昇するなかEUR/USDは下落に転じた。
・米10年金利は前日比▲0.2bpの2.162%。欧州債市場は区々もギリシャ金利の上昇は止まらず。10年金利は
50.5bp上昇して8.938%で引け。2回目TLTROの需要は1298億ユーロにとどまり、市場予想(1300-1500億ユ
ーロ)を下回った。ECBが意図とするバランスシート規模に到達させるにはソブリンQEが必要不可欠。
今回の結果を受けて当社欧米担当は1月にソブリンQEが実施されると予想。経済指標は11月ドイツHICP
(確報)が前年比+0.5%と予想どおり前月から不変だったが、フランスのそれは+0.4%と予想外に0.1%
pt鈍化した。
(兆ユーロ)
ECBバランスシート
(前年比、%)
3
ユーロ圏インフレ率
3
2.5
2
ドイツ
約1兆ユーロ
2
1
1.5
07
08
09
10
11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
フランス
0
1
14
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
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【国内株式市場・経済指標他】~短観:楽観・悲観が入り混じる~
・日本株は米株、USD/JPY持ち直しを受けて4日ぶり反発で寄り付いた後、上げ幅拡大。
・来週15日発表の日銀短観(12月調査)で、当社は大企業製造業の業況判断DIが2pt悪化して+11になる
と予想。反対に先行き判断DIは+13と「最近」対比で2ptの改善を見込む。なお、コンセンサスは最近、
先行きともに+13で横ばいだ。9月調査時点との比較では①天候要因の逆風緩和、②原油安、③円安、株
高といった追い風が吹いたが、一方で実質可処分所得減少による家計消費のダメージが想定以上に大きく、
企業マインドが萎縮した可能性がある。これらが綱引きしあった結果、業況判断DIは横ばい圏内に留ま
ったとみられる。
【注目点】~不気味なくらい上手く回っている 原油安からの悲観論は沈静化へ~
・来週17-18日開催される12月FOMCでは「相当な期間(considerable time)政策金利を据え置く」と明記され
ている箇所について、それを削除するか否か議論される見込み。10月FOMCではタカ派メンバーが削除を主
張したが、目下の原油価格急落を踏まえると目先的なインフレ率鈍化下(コアもエネルギー価格下落に無
縁ではない)が確実視されるため、それが削除される可能性は低下している。直近では中立派のロックハ
ート・アトランタ連銀総裁が「相当な期間」の削除に否定的な見解を示しており、FED内部でもそれが
コンセンサスになっている可能性がある。利上げ時期のコンセンサスは現時点で来年6月だが、どちらか
というと利上げ観測も後ズレする可能性が高いだろう。もっとも、米経済は物価指標以外のほぼ全ての指
標が勢いを増しており、それらは利上げを支持するほど強い。雇用統計ではNFPが32.1万人も増加し、
失業率が5.8%とFEDのNAIRU(インフレ率を安定させる失業率の閾値)推計5.2-5.5%に近付くなか、平
均時給には加速のサインが見られた。小売売上高及び自動車販売台数は既往の雇用・所得環境改善にガソ
リン安の恩恵が加わり、期待通りの強い内容になった。そうした折、NFIB中小企業楽観指数が7年ぶり高
水準を記録しており、“全員参加型”の景気拡大が実現しつつある。「原油安による低インフレ」「遠の
く利上げ観測」、「絶好調の実体経済」、不気味なくらい歯車が上手く回っている。今週、俄かに叫ばれ
た原油安に端を発する悲観論は間もなく沈静化するだろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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