Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
短観から2つのメッセージ
1、株価上昇
2、内生的インフレ
2016年12月14日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・11月英CPIは前年比+1.2%%と10月から0.3%pt加速し、2014年10月以来の伸び率となった。USD建て資
源価格の底打ちと、GBP建て輸入物価の上昇が重なり、食料・エネルギー・アルコールが前年比+0.3%へ
と24ヶ月ぶりにプラス圏に浮上。他方、コア物価は前年比+1.4%と過去数ヶ月のレンジ内の動き。コア財
が+0.2%へとプラス転化した一方、サービス物価の伸びが鈍化(+2.4%→+2.2%)。昨年12月をピーク
とするサービス物価の鈍化は、労働集約産業の賃金を下押しする可能性があり注意が必要。
(%)
6
英
CPI
6
英 週平均賃金・サービス物価
5
5
5
4
サービス物価(右)
4
3
コア
3
2
1
2
0
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
1
週平均賃金
総合
15
4
3
2
-1
6
(前年比、%)
(前年比、%)
1
16
0
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:除く賞与
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株はNYダウが7日続伸。NYダウは2万の大台突破が目前に迫った。S&P500、NASDAQも反発
し、主要3指数が揃って最高値更新。特段の材料はなかったが、USD高が一服する下で幅広い銘柄に買いが
入った。欧州株は全面高。WTI原油は52.98㌦(+0.15㌦)で引け。OPEC加盟国とロシアをはじめとする
非加盟国の減産合意が引き続き好感されている。
・前日のG10 通貨はUSDの強さが中位程度、動意に乏しい展開となった。FOMCを控えて様子見姿勢が強まル
下、最強のNZD、最弱のGBPがともに0.17%の変動率に留まった。USD/JPYは115前半を一進一退、EUR/USDは
1.06前半でほぼ横ばい。JPMエマージング通貨インデックスもほぼ変化がなかった。
・前日の米10年金利は2.471%(+0.0bp)で引け。10年金利は一時2.5%を付けたが、その後は水準バイヤー
の買いが入ったとみられ上昇幅を帳消しに。欧州債市場(10年)は総じて堅調。ドイツ(0.360%、▲
3.9bp)、イタリア(1.874%、▲12.1bp)、スペイン(1.431%、▲6.8bp)、ポルトガル(3.760%、▲
7.1bp)が揃って金利低下。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、USD/JPY上昇が一服する下、欧米株高に追随できず、前日終値付近でもみ合い(10:00)。日銀
短観は良好な結果となったが、高値警戒感もあって上値追いには慎重。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
・昨日発表された11月の中国の経済指標は鉱工業生産が前年比+6.2%(予想+6.1%・10月+6.1%)、小売
売上高が前年比+10.8%(予想+10.2%・10月10.0%)、固定資産投資が前年比+8.3%(予想+8.3%・
10月+8.3%)となり、何れも堅調な結果が示された。こうした姿はPMIの改善傾向と整合的であるほか、
鉄道貨物輸送量や電力使用量の伸びによっても裏付けられており信憑性が高い。
65
中国 PMI(Markit)
財新PMI(生産)・電力使用量
(pt)
60
(前年比、%)
20
60
15
サービス業
55
55
電力使用量(右)
50
10
5
50
総合
45
40
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
14
15
0
PMI(生産)
製造業
45
16
-5
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
16
・日銀短観(12月調査)によるとヘッドラインである大企業製造業の業況判断DIは「最近」が+10と9月
調査(+6)から4pt改善し、市場予想に一致。「先行き」は+8とやや慎重な見通しが示されたが、そ
れでも9月調査対比では楽観的な数値となっており、景況感の改善が窺える。製造業セクターでは在庫調
整の進展を背景に、生産・出荷が上向き、受注も増加していることから、幅広い業種で業況が改善してい
る。加えて直近1ヶ月程度の円安・株高も追い風になったとみられる。大企業非製造業も「最近」が+18
と良好な水準を維持。この結果、大企業全産業では「最近」が+14へと2pt改善。機械的な計算に基づく
と、目下の大企業全産業の業況判断DIは前年比20%の株価上昇を正当化する領域にある。これは漸く15
年4Qの水準を回復したTOPIXに更なる上昇余地があることを示唆している。
大企業業況判断DI・TOPIX
(前年比、%)
40
80
業況判断DI
30
60
20
40
10
20
0
0
-10
-20
-20
-40
TOPIX(右)
-30
-40
-60
-80
-50
-100
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersにより作成 大企業全産業
15
・労働市場の逼迫度合いを示す雇用人員判断DI(全規模・全産業)は「最近」が▲21、「先行き」が▲23
と空前の人手不足感が示された。あらゆる規模のあらゆる業種で人手不足感が強まっており、1992年以来
の水準に到達。月次統計の求人関連指標が約30年ぶりの高水準にあることと概ね整合的で、労働市場の著
しい引き締まりが窺える。こうした労働市場逼迫の一部はミスマッチによって誇張されているとはいえ、
本質的には労働市場の改善を映し出しており、賃金上昇圧力として認識される。実際、時間あたり賃金や
1人あたり賃金は緩やかな上昇基調にある。こうした賃金上昇は労働集約型のサービス物価上昇を促すこ
とで、内生的な物価・賃金上昇メカニズムの発生に繋がる。今回の結果は、人口減少に起因する人手不足
という構造的問題がデフレ脱却に貢献するという、一見すると奇妙な現象を浮き彫りにしている。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
日銀短観 雇用判断DI
30
20
過剰
10
0
-10
-20
不足
-30
-40
-50
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 全規模・全産業 直近分は先行き
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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