Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
ISM、平均時給に注意
2016年11月28日(月)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・11月米総合PMI(Markit)はは54.9と10月から変わらず、昨年11月以来の高水準を維持。新規受注(54.0
→55.5)、雇用(51.5→51.8)が改善した一方、受注残(51.3→49.7)が低下。発表元のMarkitは今回の
結果が、実質GDP成長率の前期比年率+2.5%に整合するとした。これはアトランタ連銀算出のGDPNOWが
+3.6%と強いモメンタムを維持していることとも整合的である。速報性に優れた企業サーベイや消費者マ
インド等、各種サーベイから判断すると大統領選前後で景況感が変動している様子は窺えない。
(PMI)
65
米
総合PMI・GDP
アトランタ連銀 GDPNow
(%)
(前期比年率、%)
5.0
7.5
総合PMI
60
5
55
2.5
4.0
3.0
2.0
50
0
1.0
実質GDP(右)
45
-2.5
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Markit,Thomson Reuters GDPは移動平均でスムージング
0.0
13
14
15
16
(備考)Bloombergにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。NYダウ、S&P500、NASDAQの主要3指数が揃って最高値更新。半日取引で売買が細
る中、年末商戦への期待感などから買い優勢となった。WTI原油は46.06㌦(▲1.90㌦)で引け。OPEC総
会を前に減産合意が難航するとの懸念が生じた。
・前日のG10 通貨は、米国が感謝祭の翌日で市場参加者が限られるなか、USDの強さとJPYの弱さが一服。
USD/JPYは113を割れた後、112後半で一進一退。EUR/USDは1.06を回復した。他方、新興国通貨の弱さは続
き、JPMエマージング通貨インデックスは4日続落。2月下旬と同水準に落ち込んでいる。
・前日の米10年金利は2.357%(+0.7bp)で引け。動意に乏しく持高調整に終始。他方、欧州債市場(10年)
は総じて堅調。ドイツ(0.240%、▲1.9bp)、イタリア(2.083%、▲4.3bp)、スペイン(1.573%、▲
1.6bp)、ポルトガル(3.597%、▲7.0bp)が揃って金利低下。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタ
イトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY下落が嫌気され米株上昇に追随できず、小幅安で寄り付いた後、下落幅拡大(10:00)。
<#ISM製造業 #USD高 #12月FOMC #予想インフレ率 #2017年利上げペース>
・上述のとおりPMIやGDPNOWは米経済の堅調を示唆しているが、目下の懸念事項はUSD実効レートの著しい
上昇だろう。実際、BOE算出の名目実効レートは既に13年ぶり高値付近にあり、一段の上昇は製造業を
中心に打撃となる可能性が高い。これまでのところ11月製造業PMIや連銀サーベイをみる限り、その影
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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響が表面化している様子はないが、目下の急激なUSD高に鑑みると悪影響は不可避だろう。市場参加者の警
戒が高まっているとみられるなか、12月の製造業サーベイが落ち込むとリスクオフが誘発される可能性が
ある。先ずは第一弾として1日に発表される11月ISM製造業景況指数に注目(市場予想52.2、10月
51.9)。
USD名目実効レート
130
製造業サーベイ
120
60
110
Markit
55
100
90
50
80
70
ISM
45
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
(備考)Thomson Reutersにより作成 BOE算出
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
16
・2日は11月米雇用統計が発表される。コンセンサスはNFPが+17.5万人、失業率が4.9%とそれぞれ堅調
な結果が見込まれているが、12月FOMCの追加利上げはほぼ大勢が決した感があり、そうした観点からは重
要度が低下していると言えるだろう。仮にNFPが大幅に予想を下回ったとしても、FEDは“単月の振
れ”と見做す可能性が高く、大きな影響は与えないとみられる。一方、今回の雇用統計でサプライズがあ
るとすれば平均時給の加速か。コンセンサスは前年比+2.8%と10月から横ばいが見込まれているが、これ
を上回るようだと2017年の利上げペースが早まるとの見方が浮上する可能性があるだろう。折りしも米債
市場では予想インフレ率の上昇が顕著になっているほか、現実の物価・賃金が上昇傾向にあり、インフレ
率の加速が意識され易い状況にあるため、金融市場の動きも大きくなりそうだ。
(%)
米国
期待インフレ率・実質金利(10年)
(前年比、%)
3
3.5
3
PCEコア 平均時給
(前年比、%)
4
3.5
2.5
2.5
名目金利
2
平均時給(右) 3
2
2.5
1.5
1.5
期待インフレ率
1
0.5
2
1
実質金利
PCEコア 1.5
0
0.5
-0.5
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
07
08
09
10
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(備考)Thomson Reutersにより作成
16/07
(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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