Market Flash 利上げに耐えられるか 2016年10月14日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・米新規失業保険申請件数は24.6万件と前週から変わらず、43年ぶり低水準を維持。驚くべき低水準であり、 労働市場の量的改善が進捗していることを強く印象付ける。前年比でみた減少ペースは鈍化傾向にあるが、 水準は傾向線の下方に位置しており、モメンタムは良好。現状レベルが続けば、11月雇用統計も15-20万人 程度のNFP増加が示され、12月FOMCにおける利上げの確率がますます高まるだろう。 (前年比、%) 雇用者数・新規失業保険申請件数 6 4 -50 失業保険(右) 2 -30 390 -10 360 10 330 0 改善 -2 新規失業保険申請件数 (千件) 420 (前年比、%) 30 300 雇用者数 50 -4 -6 80 85 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比 270 70 悪化 240 90 12 15 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は反落。中国の貿易統計の弱さを受けてリスクオフ。もっとも、USD全面安・米金利低下が下 値をサポートし取引終盤にかけて下落幅縮小。WTI原油は50.44㌦(+0.26㌦)で引け。週間石油在庫統 計でガソリン在庫が減少したことなどから買い戻し優勢(ただし全体の在庫は増加)。USD全面安も支えと なった。 ・前日のG10 通貨はUSDが全面安。米金利低下に歩調を合わせ主要通貨に対してUSD売りが広がると、 USD/JPYは一時103前半まで押し戻された。原油価格上昇を受けて資源・新興国も堅調。国王の死去を背景 に一昨日に大きく売り込まれたTHBは反発した。 ・前日の米10年金利は1.741%(▲2.8bp)で引け。欧州債市場(10年)は総じてみれば堅調。ドイツ (0.038%、▲2.9bp)、イタリア(1.378%、▲4.0bp)、ポルトガル(3.369%、▲3.4bp)が金利低下と なった一方、スペイン(1.117%、+5.4bp)が金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイト ニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は米株下落の流れを断ち切り前日終値付近で寄り付いた後、前日終値付近でもみ合い(10:00)。 ・9月国内企業物価は前月比横ばいも、前年比では▲3.2%と8月から0.4%pt下落幅が縮小。ベースエフェク トもあって石油・石炭(前年比▲15.1%→▲13.3%)、電力・ガス・水道(▲11.5%→▲10.4%)の下落 幅縮小が寄与。輸入物価(円ベース)も▲17.7%へと8月から4.4%pt下落幅が縮小。前年比でみたエネル ギー価格下落や為替円高の影響がマイルドになっており、広範な品目で下落幅が縮小している。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 <#12月FOMC #追加利上げ #Tapering #USD/JPY #円高> ・今や12月FOMCにおける追加利上げはコンセンサスと言っても過言ではない。実際、金利先物が織り込む利 上げ確率(ブルームバーグ算出)は65.9%と非常に高く、WSJが14日に調査・集計したエコノミスト予 想では実に85%程度が年内の追加利上げを予想している。それまでに大統領選を無事通過し、10・11月雇 用統計を見極める必要があるにせよ、よほどのネガティブサプライズが無い限りにおいて追加利上げの素 地が台無しになることは考えにくい。振れの大きい雇用統計は何が起きるかわからないにしても、新規失 業保険申請件数やCB消費者信頼感指数の雇用判断など安定感のある指標は著しい改善傾向にあり、利上 げに待ったをかける可能性は低いと判断される。 ・通常、FEDの追加利上げはUSD高主導のJPY安を促すが、今回もそのパターンになるかは別問題。理由は ①既に追加利上げが織り込まれていること、②リスクオフが誘発されJPYのショートポジションが巻き戻さ れる可能性があること。特に②については要注意。2015年12月のFEDの初回利上げは、FEDの引き締 めをECB、日銀の追加緩和(観測)が補うことで、3中銀合計の緩和スタンスはニュートラルに保たれ ていたことから、少なくとも利上げの前後に市場が荒れることはなかった。しかしながら今次局面におい ては、ECBにTapering観測が生じているほか、日銀の追加緩和も難しいとの見方が支配的になっており、 追加緩和観測が明らかに萎んでいる。それ故、市場は金融引き締めに脆弱であると考えられる。特に過去 数ヶ月は“Search for Positive Yields”の流れの中で、ハイ・イールド債市場に資金流入が観測され ていたことから、その逆流が懸念される。なお、筆者が“Search for Positive Yields”の流れを見極 める際に注視しているポルトガル10年金利は既に上昇傾向にあり、投資家の選別が始まりつつあることを 示唆している。 ハイ・イールド債利回り (%) (%) 8 25 ポルトガル10年金利 7 20 6 5 15 4 ポルトガル10年金利 3 10 2 5 05 06 07 08 (出所)St Louis FED 対独スプレッド 1 09 10 11 12 13 14 15 16 指標:BofA Merrill Lynch US High Yield Master II Effective Yield 13 14 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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