Market Flash 総括的検証のヒントがでるか 2016年8月26日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・7月米耐久財受注は前月比+4.4%と市場予想(+3.1%)を上回り、3ヶ月ぶりに増加。民間航空機が+ 89.9%、国防航空機が+20.3%と強く伸び全体を牽引。もっとも除く輸送用機器ベースでみても+1.5%と 堅調な結果で、最重要項目のコア資本財受注は+1.6%と2カ月連続で増加。コア資本財受注のモメンタム (3ヶ月前比年率)は▲1.1%と依然マイナス圏に留まっているものの、2月の▲13.0%をボトムに改善し ており、最悪期を脱出している。ただし、その水準は前年比▲4.9%と低調。企業の設備投資意欲が弱いと の見方に変更はない。 ・新規失業保険申請件数は26.1万件と前週から0.1万件減少。4週移動平均は26.4万件と低水準を維持してい るが、足元ではやや増加傾向にあり、前年比では減少ペースが鈍化。雇用統計NFPも前年比伸び率は鈍 化傾向を辿るだろう。 (3ヶ月前比年率、%)コア資本財受注 (前年比、%) 40 雇用者数・新規失業保険申請件数 6 30 -50 4 失業保険(右) 20 10 2 0 0 (前年比、%) -10 NFP 10 30 -10 -2 50 -20 -4 -30 -40 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均 -30 R² = 0.64 70 -6 80 85 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比 16 90 15 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は続落。高値警戒感が燻るなか、イエレン議長のジャクソンホール講演を控えて利益確定売 りが優勢。WTI原油は47.33㌦(+0.56㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はイベント前の様子見ムードから取引が手控えられ動意に乏しい展開。主要通貨に目立っ た動きはみられなかった。USD/JPYは100前半から半ばで一進一退、EUR/USDは1.12後半でナローレンジ。 ・前日の米10年金利は1.573%(+1.2bp)で引け。イベント待ちで動意に乏しいなか、やや軟調な7年債入 札を通過すると、売り優勢に転じた。欧州債市場(10年)は総じて小動き。ドイツ(▲0.070%、+1.9bp) が小幅な金利上昇で引けたほか、イタリア(1.132%、+0.6bp)、スペイン(0.922%、▲1.0bp)、ポル トガル(2.984%、+0.9bp)も小幅な値動きに終始。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は欧米株安の流れを引き継ぎ、小幅安で寄り付いた後、プラス圏を挟んで売り買い交錯となった。 ・7月コアCPIは前年比▲0.5%と6月から0.1%pt下落幅が拡大。電気代が押し上げ方向に寄与した一方、 食料、宿泊料(の上昇幅縮小)が下押しへ寄与。コアコアCPI(食料・エネルギーを除いたベース)は 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 前年比+0.3%と6月から0.2%pt上昇幅が縮小。既往の円高による輸入物価下落がジワリと浸透しており、 基調的な弱さが窺える。依然としてプラス圏を維持しているものの、日銀にとっては厳しい現実だ。なお、 今回発表分から2015年基準へと変更になったが、既に明らかになっていたとおりウェイト変更による断層 は小さい。インフレ率に対する認識を変える必要はない。 ・グローバル市場の関心はイエレン議長のジャクソンホール講演に集中しているが、黒田総裁の発言(シン ポジウムでは27日のパネルディスカッションに参加予定)も注目すべきだろう。シンポジウムのテーマが 「将来のための強靭な金融政策の枠組みの構築」 (Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future)なだけに、その発言内容が「総括的検証」の一部を代弁する内容であっても全く不思議 ではない(寧ろそうあるべき)。8月20日の産経新聞インタビューで「政策予見性」について触れた直後 ということもあって、総括的検証のヒントがでる可能性がある。 ・筆者は、超長期金利の低下が日銀にとっての懸念事項であることが示唆されるかに注目。7月29日の追加 緩和パッケージがETF単独となったことについて、筆者は日銀がイールドカーブのブルフラットを行き 過ぎと判断した結果であるとみているが、この見方が正しかったなら、今後、マイナス金利の深掘り、長 期国債の買い入れペース増加など、金利に下押し圧力を加えるオプションが採用される可能性は大幅に後 退する。 ・総括的検証では、名目金利(特に超長期ゾーン)低下による刺激効果について議論される可能性があり、 その前段階として、総括的検証が発表される9月会合までの間に黒田総裁の口から何らかのシグナルが発 せられることを想定しておきたい。筆者は「期待していたほど名目金利低下による刺激効果が発現しなか った」といった趣旨のメッセージが発せられるかに注目している。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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