Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
ジャクソンホール講演の予習
2016年8月24日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・7月新築住宅販売件数は前月比+12.4%、65.4万件と市場予想(58.0万件)を大幅に上回り、2007年10月
以来の水準に到達。北東部(+40.0%)、南部(+18.1%)が著しく伸び、中西部(+1.2%)も増加した。
在庫が4.3ヵ月分へと0.6ヶ月分も減少し、約2年ぶりの低水準となったことに鑑みると、供給不足が販売
の足かせになると懸念されるが、消費者の住宅購入意欲は旺盛で好調は続くと判断される。住宅関連指標
は中古住宅販売件数、住宅着工件数、NAHB住宅市場指数など広範な指標が改善傾向にある。
・8月米製造業PMIは52.1と市場予想(52.6)を下回り、3ヶ月ぶりに軟化。生産(53.8→53.9)が横ば
いを維持した一方、新規受注(54.2→52.7)、雇用(53.3→50.6)が軟化。その他構成項目では購買数量
(48.0→49.1)、サプライヤー納期(51.4→51.9)がそれぞれ押し上げに寄与。他方、同日発表のリッチ
モンド連銀製造業景況指数は▲11へと急落(7月+10)。ISM換算でも50.2へと5.1ptの悪化を記録。こ
れまでに出揃った地区連銀サーベイをISMに換算したうえで合成した指数は49.0と7月の51.8から悪化
した。8月ISMの反落に注意したい。
新築住宅販売件数
(千件)
60
ISM・地区連銀サーベイ
650
ISM
55
550
50
450
45
350
40
地区連銀平均
35
250
09
10
11
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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07
08
09
10
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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13
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15
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・8月ユーロ圏総合PMIは53.3と7月から0.1pt改善。直近12ヶ月平均の53.5と概ね同水準を維持。製造業
(52.0→51.8)の軟化をサービス業(52.9→53.1)の改善が補った。ドイツでは製造業(53.8→53.6)、
サービス業(54.4→53.3)がともに軟化した一方、フランスでは製造業(48.6→48.5)の軟化をサービス
業(50.5→52.0)の改善が補った。ユーロ圏経済はBREXIT、イタリアの銀行問題などの逆風にもかかわら
ず、よく持ち堪えている。
60
ユーロ圏PMI
55
65
ユーロ圏製造業PMI
総合
サービス
60
ドイツ
50
ユーロ圏
55
45
製造業
50
40
45
35
フランス
40
30
07
08
09
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11
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅に反発。欧米指標が概ね堅調な結果となるなか、原油価格の安定も寄与し、やや買い
が優勢。WTI原油は48.10㌦(+0.69㌦)へと反発。欧州株は全面高。
・前日のG10 通貨はユーロ圏PMIの底堅い結果をきっかけにGBPが買われた以外に目立った動きはなかった。
USD/JPYは100を挟んで一進一退。EUR/USDは1.13前半での推移が続いた。
・前日の米10年金利は1.546%(+0.3bp)で引け。当初は特段の材料がないなかで米債は堅調に推移してい
たが、米国時間早朝からは好調な新築住宅販売件数を受けて軟調に推移した。欧州債市場(10年)はコア
国を中心に堅調。ドイツ(▲0.095%、▲0.5bp)が金利低下となった一方、イタリア(1.120%、+
1.6bp)、スペイン(0.935%、±0.0bp)、ポルトガル(3.011%、▲1.7bp)がまちまち。3ヶ国加重平均
の対独スプレッドはワイドニング。英国(0.544%、▲1.6bp)は金利低下。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、欧米株高に追随して高寄り後、もみ合い。
・昨日発表の日本の8月製造業PMIは49.6と7月から0.3pt改善。生産(49.4→50.6)が50を回復したほか、
新規受注(48.2→48.7)が持ち直した。その他では、雇用(50.5→49.5)が軟化した反面、新規輸出受注
(44.5→46.8)が低水準から持ち直すなど、総じてみれば好内容。ヘッドラインは5月の47.7をボトムに
3ヶ月連続で改善しており、熊本地震や製鉄会社の事故による生産の落ち込みから立ち直った様子を映し
出している。鉱工業生産、実質輸出はともに緩やかな持ち直しが期待される。
日本
製造業PMI
60
55
50
45
40
35
30
08
09
10
11
12
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(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
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・26日にイエレン議長のジャクソンホール講演が予定されている。ただし、2010年にバーナンキ議長(当時)
がQE2開始を強く示唆したのとは対照的に、今回イエレン議長が目先の金融政策について一切のヒント
を与えることはないだろう。筆者の知る限り、イエレン議長は就任移行、目先の金融政策を具体的に言及
したことはない。政策変更の可能性は「データ次第」との従来の主張を繰り返す、或いは全く触れない、
のどちらかだろう。なお、講演のタイトルは「The Federal Reserve's Monetary Policy Toolkit」、シン
ポジウムのテーマは「Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future」(将来のため
の柔軟な金融政策の設計)。原稿内容がこれらに忠実であれば、そもそも短期的な金融政策について言及
があるとは思えない。
・ただし、中長期的な金融政策のフレームワークについての議論が今次利上げサイクルに影響を及ぼす可能
性は想定しておきたい。イエレン議長が、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が発表した8月15日
付けのEconomic Letter「Monetary Policy in a Low R-star World」で紹介した議論(詳細は8月22日付
け当レポート)に同調するような主張を展開した場合、FEDの中期利上げシナリオが大幅に下方シフト
するかもしれないという憶測が市場で巻き起こるからだ。仮に同総裁が一案として紹介した(たとえば
3%への)インフレ目標の引き上げが採用された場合、年内利上げどころか17年、18年の利上げ計画も大
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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幅な(下方向への)修正が必至となる。もちろん、現段階ではインフレ目標の引き上げは議論すらされて
いないので、それが直ちに織り込まれる可能性は極めて低いのだが、それでも議長自らが上記論文と似た
ような主張を展開した場合、市場参加者は利上げシナリオの(下方向への)修正を検討せざるを得ないだ
ろう。米金利低下・USD安要因として認識しておきたい。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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