Market Flash 減益で利上げ?? 2016年3月29日(火) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】~個人消費:1月分の下方修正が大きい~ ・2月米名目個人消費支出は前月比+0.1%と市場予想に一致も、1月分は大幅に下方修正された(+0.5% →+0.1%)。実質ベースでは前月比+0.2%となり、3ヶ月前比年率では+2.0%へと減速。これは寒波襲 来の打撃を受けた14年、15年の冬場以来のモメンタムで、ここ数ヶ月の消費者信頼感指数の低下と整合的。 他方、名目個人所得は前月比+0.2%と概ね予想に一致して前年比では+4.0%となった。その結果、貯蓄 率は5.4%に上昇。ガソリン代削減とマインド悪化に伴う消費抑制を背景に貯蓄率は上昇基調にある。PC Eコアデフレータは+1.7%と1月と同じ伸びに留まった。 ・2月中古住宅販売成約指数は前月比+3.5%と市場予想(+1.2%)を大幅に上回った。3ヶ月平均でも+ 0.4%へと切り返し、過去1年程度のレンジ下限から反発。この指標が実際の中古住宅販売件数に1・2ヶ 月の先行性を有することに鑑みると、春先まで販売件数は500万件超のレベルが維持される見込み。 120 4 80 5 60 4.5 CB信頼感 40 (6ヶ月先行、右) 4 2 1 0 -1 -2 -3 6 -4 110 100 中古住宅販売件数 3 0 70 10 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 90 80 3.5 20 実質消費支出 販売成約指数(右) 5.5 100 3 中古住宅販売件数・販売成約指数 (百万) 千 個人消費支出・消費者信頼感指数 5(前年比、%) 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 ・3月ダラス連銀製造業景況指数は▲13.6と市場予想(▲25.8)を上回り、2月(▲31.8)から大きく改善。 ISM換算では47.6と2.1pt改善。内訳は出荷(▲8.5→+3.3)、新規受注(▲17.6→▲4.8)、雇用(▲ 11.1→▲10.3)が揃って改善。その他では入荷遅延(▲6.1→▲7.7)、在庫(▲1.7→▲4.5)が揃って下 押し寄与となったが、新規受注・在庫バランスは改善基調にあり、先行きの増産シナリオを描き易くして いる。ただし、既発表の連銀調査は何れも不可解に強い内容となっており統計の歪みが考えられる。IS M製造業指数は50を回復しそうだが、4月以降の反動には要注意。 60 ISM・地区連銀サーベイ ISM 55 50 地区連銀平均 45 40 35 07 08 09 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 15 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は小幅に続伸。3連休明けの株式市場は強弱まちまちの経済指標を横目に動意に乏しい展開。 欧州株が休場ということもあって連邦議会での発砲(ISIS関連のテロ行為ではない)にも大きな反応はみ られず。WTI原油は39.39㌦(▲0.07㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はGBPが最強で反対にJPYが最弱となった。欧州勢の参加者が少ないこともあって動意に乏 しい展開となっていたが、米金利低下を背景にUSDが軟調に推移。リスク回避姿勢が後退するなかでJPYを 売る動きが強まり、USD/JPYは113半ばまで上昇した一方、EUR/USDは1.12付近へと水準を切り下げた。 ・前日の米10年金利は1.886%(▲1.4bp)で引け。原油価格が横ばいでアジア市場も小動きとなるなか、当 初の米債市場は動意に乏しい展開。その後、強弱まちまちの経済指標を通過すると金利低下に転じた。欧 州債市場は休場。 【国内株式市場・経済指標】 ・日本株は配当落ちの影響で安く寄り付いたものの、実質的には横ばい圏内で推移している。配当落ちの影 響は日経平均で127円と試算されている。 ・2月失業率は3.3%と1月から0.1%pt上昇。1月データが出来過ぎの印象が強かったという前提で単月の 数値を評価すると、就業者数が1月から58万人減少する一方、失業者数が4万人増加、労働参加率も低下 しており内容は悪い。求人関連指標に目を向けると、有効求人倍率が1.28倍と1月から不変だった一方、 新規求人倍率が1.92倍へと低下。ただし、有効求人倍率、新規求人倍率ともに分子の求人数が増加してい る点は好印象。実質GDPがマイナス成長に陥るなど国内経済の足取りは覚束ないが、企業の採用意欲は 依然として旺盛だ。 6 (%) 日 雇用関連統計 5.5 (倍) 1.8 新規求人倍率(右) 1.5 5 有効求人倍率(右) 4.5 1.2 4 0.9 3.5 0.6 失業率 3 07 08 09 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 15 0.3 16 ・2月家計調査によると、実質消費支出は前年比+1.2%と市場予想(▲1.9%)を上回り、6ヶ月ぶりにプ ラス圏に浮上(うるう年の影響により強めにでている)。ただし、カレンダー要因を考慮した前月比でも +1.7%と強く伸びており、住居・自動車・贈与金などを除いたコア支出も前月比+1.2%と反発している。 他方、2月の小売売上高は前年比+0.5%と4ヶ月ぶりにプラス圏に浮上し、除くガソリンベースでは+ 1.6%へと伸びを高めたが、これもうるう年効果によって押し上げられている。季節調整値(うるう年調整 済み)では前月比▲2.3%と弱かった。消費は低位横ばいといったところだろう。 110 実質消費支出 (前年比、%) 15 小売売上高(商業業態統計) 10 105 5 100 0 -5 95 -10 90 -15 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersより作成 振れの大きい住居等は除いた 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 除くガソリン 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 【注目点】 ・25日発表の米企業収益(商務省集計)は前年比▲11.5%と2四半期連続の減益となり、2008年4Qに次ぐ 落ち込みを記録。新興国経済の苦境を反映して海外(▲11.1%)が5四半期連続の減益を記録するなか、 国内(▲14.1%)も2四半期連続の減益と冴えない。なお、今回発表分には2010年のメキシコ湾における 原油流出事故の和解金支払いという特殊要因が含まれているが、それを除いても▲7.6%と弱い姿に変わり はない(ブルームバーグ試算)。ドル高、原油安が企業収益に相当なダメージを与えている。 ・今後も企業収益が減益基調を辿れば、経営者はコスト削減に舵を切るため、雇用が削減される可能性が高 い。過去に企業収益が前年比で減益に陥った局面で雇用の増加ペースが維持されたことはないから、そう 考えるのが自然だろう。足元では、FED高官が米経済の底堅さに自信を深め、4月ないしは6月の利上 げ再開を示唆する発言をしている。しかしながら、FEDの利上げ観測を受けてドル高(特に対資源・新 興国通貨)・原油安トレンドが再開すれば、企業収益が圧迫され、やがてそれはFEDのマンデートであ る雇用の最大化を脅かすことになる。4月、6月の利上げ再開はこうした負の回転を助長することになり そうだ。 (前年比、%) 米 企業利益・雇用 40 (前年比、%) 8 30 雇用者数 (右) 20 6 4 10 2 0 0 -10 -2 企業利益 -20 -4 80 85 90 95 00 05 10 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 企業利益:太線は4四半期平均 <主要株価指数> 日経平均※ NYダウ DAX(独) FTSE100(英) CAC40(仏) <外国為替>※ USD/JPY EUR/USD <長期金利>※ 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン <商品> NY原油 NY金 終値 17098.52 17,535.39 #N/A #N/A #N/A 113.56 1.1194 -0.083 1.886 1.453 0.180 0.537 1.302 1.524 (円) 17200 前日比 -35.85 19.66 #N/A #N/A #N/A 17100 17000 16900 16800 (㌦) 17600 0.10 -0.00 % % % % % % % 39.39 ㌦ 1220.10 ㌦ 0.001 -0.014 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 日経平均株価 11:04 現在 % % % % % % % NYダウ平均株価 17500 17400 114.0 USD/JPY 113.5 -0.07 ㌦ -1.50 ㌦ ※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。 113.0 (出所)Bloomberg 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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