利上げを示唆できる状況ではない

Market Flash
利上げを示唆できる状況ではない
2016年4月27日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~コア資本財受注:失望的~
・3月米耐久財受注は前月比+0.8%と市場予想(+1.9%)を下回ったうえ、2月分も▲3.1%へと0.1pt下
方修正された。国防航空機が+65.7%と大幅に増加した一方、民間航空機が▲5.7%と2ヶ月連続で減少、
輸送用機器全体では+2.9%となった。除く輸送用機器ベースでは前月比▲0.2%と市場予想(+0.5%)に
反して2ヶ月連続の減少。最重要項目のコア資本財受注は±0.0%と失望的。市場予想(+0.6%)を大幅
に下回り、2月分も▲2.7%へと0.2%pt下方修正された。同項目のモメンタム(3ヶ月前比年率)は▲
4.9%と4ヶ月連続でマイナス圏に沈んだ。企業の設備投資意欲は鈍い。PMI新規受注の低下傾向から判
千
断すると、先行きもこの弱さが続く見込み。
コア資本財受注
(10億㌦)
80
(前年比、%) コア資本財受注・PMI新規受注
30
65
PMI新規受注(右)
75
20
60
10
55
0
50
70
65
60
-10
55
45
コア資本財受注
-20
50
45
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
40
-30
16
35
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 PMIは3ヶ月平均
16
・4月CB消費者信頼感指数は94.2と市場予想(95.8)を下回り、3月から1.9pt悪化。現況(114.9→116.4)
が改善した反面、より重要な期待(83.6→79.3)がまとまった幅で低下。現況指数は昨今のガソリン安が
追い風になっているとみられる反面、期待指数の持続的低下は消費者が経済の伸びシロが減っていること
を感じとっているのかもしれない。他方、雇用統計の先行指標として有効な雇用判断指数(雇用機会が
「十分」との回答から「不十分」との回答を差し引いたもの)は+1.4と2ヶ月連続でプラス領域を確保。
これは最近の新規失業保険申請件数の著しい減少と整合的で、現下の労働市場の量的改善が順調であるこ
とを示している。
CB消費者信頼感指数
140
CB消費者信頼感指数(雇用判断)
20
10
現況
120
総合
0
100
雇用機会が「十分」との
回答から「不十分」との
回答を差し引いたもの
-10
80
-20
期待
60
-30
40
-40
-50
20
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
07
(備考)Thomson Reutersにより作成
08
09
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12
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15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は横ばい。この日発表された決算が強弱まちまちとなり、綱引き状態。日米両中銀の会合を
控えて様子見姿勢が強い。WTI原油は44.04㌦(+1.40㌦)で引け。FEDがハト派姿勢を貫くとの思惑
が広がるなか、FOMC通過後のUSD売り・原油買いを先回りした可能性があるだろう。
・前日のG10 通貨はJPYが最弱でそれにUSDが続いた。原油価格上昇を受けて資源国通貨(NZD、NOK、CAD、
AUD)が軒並み堅調に推移。USD/JPYはGPIF高橋理事の「為替ヘッジを既に開始している」との発言を受け
て一時110円台に突入したが、その後は元の水準に戻した。
・前日の米10年金利は1.927%(+1.4bp)で引け。10年ゾーンは7営業日連続で上昇。最近の株価上昇、ク
レッジット・スプレッド縮小が示すよう、逃避需要の後退が窺える。欧州債はコア軟調、周縁国横ばい。
ドイツ10年金利が0.299%(+3.5bp)で引けた一方、イタリア(1.538%、+0.4bp)、スペイン(1.635%、
▲0.3bp)がほぼ横ばい、ポルトガル(3.223%、▲8.0bp)は大幅に金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプ
レッドはタイトニング。
【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株は本日のFOMC、明日の日銀金融政策決定会合を控えて、売り買い交錯。
・本日のFOMCではFFレート上限が0.5%で据え置かれよう。一時は中立派のロックハート・アトランタ連銀
総裁が4月の利上げを支持したほか(4月14日に同発言を撤回)、ハト派のローゼングレン・ボストン連
銀総裁が「市場が予測するより速やかに、緩やかな引き締めを再開するのが適切」との認識を示したこと
もあって“4月利上げ説”が浮上する場面もあったが、イエレン議長をはじめFED中枢のダドリー・N
Y連銀総裁が利上げに慎重な姿勢を固持しており、結局は利上げ見送りが既定路線となっている。
・4月FOMCの注目は、声明文で6月FOMCでの利上げが示唆されるか否かだが、その可能性は低いだろう。金
融市場のストレスが和らぐ一方、米経済に目を向けるとアトランタ連銀算出のリアルタイムGDPが一時
+0.1%まで落ち込むなど冴えないほか、景気の先行指標が総じて下向きのカーブを描いており、状況は芳
しくない。最近の発表ではコア資本財受注、フィリー指数、消費者信頼感指数が軒並み悪化した。また、
企業決算についてもS&P500採用銘柄の収益が前年比で減益に転じるなどドル高の影響がきつい。26日に発
表された米通信機器最大手の減収決算はそれを象徴している。そうしたなかでは、FEDが、金融市場の
混乱を通じて米経済の下振れリスクを増幅させることを懸念するだろう。
・仮に筆者(恐らく多くの市場参加者と同じ見方)の予想どおり、6月FOMCでの利上げ計画が示唆されず、
それが市場でハト派と解釈された場合、初期反応は米株高・米金利低下・USD売りだろう。もっとも、
USD/JPYについては市場参加者のリスク選好度上昇によってJPYショートポジションが膨らむと予想される
ため、円高は一時的なものに留まる見込み。USD/JPY上昇を見込む向きにとっては、FEDがハト派姿勢を
貫き、市場参加者を安心させる方が望ましい。唐突なタカ派傾斜で市場参加者のリスク選好度が急低下す
ると、強烈な円高に見舞われる可能性が高まる。
(%)
アトランタ連銀 GDPNow
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
13
14
15
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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