トルコ政局と欧州難民問題の関係

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欧州
2016年5月24日
トルコ政局と欧州難民問題の関係
ダウトオール前首相が辞任に追い込まれた5月月初から通貨リラ安などが進行しています。トルコ国内の政治の混乱
ならば珍しい話ではありませんが、トルコは欧州の難民問題に深く関与しているだけに注視が必要です。
メルケル首相:エルドアン大統領との会談で
民主主義の後退に懸念を表明
世界人道サミットが開催されているトルコで2016年5月23日ド
イツのメルケル首相とトルコのエルドアン大統領が会談、メ
ルケル首相はトルコの司法制度やメディアの独立への懸念
を表明しました。国際協調を重視し、大統領権力拡大につな
がる憲法改正に消極的であったダウトオール前首相が辞任
に追い込まれたことがドイツの懸念の背景です。トルコ側は
難民流入の抑制を巡る欧州連合(EU)との協力関係は維持
すると表明する一方で、合意撤回も辞さない構えをちらつか
せるなど政治的駆け引きが活発化する様相となっています。
ピクテ投信投資顧問株式会社
(日次、期間:2015年5月25日~2016年5月23日)
3.1リラ/ドル
3.0
2.9
2.8
2.7
2.6
2.5
15年5月
※1bp=0.01%
bp 350
300
リラ(対ドル、左軸)
CDSスプレッド(右軸)
15年8月
15年11月
250
低 信用力 高
ダウトオール前首相が辞任に追い込まれた5月月初から通
貨リラ安が進行するなど「トルコ売り」となっています(図表1
参照)。トルコ国内の単なる政治の混乱であるならば珍しい
話ではありませんが、トルコは欧州の難民問題に深く関与し
ているだけに注視が必要です。
まず、EUは増え続ける欧州への難民の受け入れに苦慮、流
入を抑制する方向へ方針を転換、トルコとの協力関係を進
めてきました。EUとトルコが最終的に2016年3月に合意した
内容はEUへの違法な移民をトルコに送還することです。ま
たトルコにとどまることとなる難民の学校建設等の資金の拠
出を決定しています。見返りにEUはトルコに対しトルコ国民
のビザ免除を6月に前倒しにすることなどを柱にしています。
次に、合意の動きは難民の流入に効果があったのかを見る
と大きな成果が上がっています。難民流入抑制の方針は
2015年秋ごろからドイツとトルコ(ダウトオール首相(当時))
の間で協力関係が進展、トルコとEUは共同行動計画(上記
2016年3月の合意内容やトルコ国境警備の強化などを含む)
が公表されています。当時の欧州への難民の主なルートは
トルコからギリシャが大半だったため、欧州への難民流入の
数は激減しています(図表2参照)。
図表1:リラ(対ドル)とトルコの5年CDSスプレッドの推移
安 リラ 高
どこに注目すべきか:
共同行動計画、ビザ免除、英国のEU離脱
ただし、EU側にもイスラム圏の大国トルコにビザなし渡航の
自由を与えることに加え、エルドアン政権への抵抗感が強く、
トルコとの関係を進めてきたメルケル首相に対し批判が強
まっています。学者肌のダウトオール氏が辞任したあと、メル
ケル首相がトルコと新たな信頼関係を築けるかに注目です。
欧州の懸念に英国のEU離脱を問う国民投票がよく話題とな
りますが、英国国民のEUに対する不満を見ると国境政策を
指摘する割合が高いなど実は難民問題の側面も見られます。
このように、欧州の様々な問題に関わる難民問題を占う上で、
トルコの動向にも注視が必要と見ています。
200
16年2月
※CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):信用リスクを対象としたデリバティ
ブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:ギリシャ、イタリア経由難民流入数の推移
(月次、期間:2015年10月~2016年4月)
25 万人
20
イタリア ギリシャ
15
10
5
0
15年10月
15年12月
16年2月
16年4月
出所:UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を使用しピクテ投信投資顧問作成
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