ブラジル、格下げ後の注意点

Today’s Headline
ご参考資料
ご参考資料
“ジュネーブから今を見る”
今日のヘッドライン
“ジュネーブから今を見る”
今日のヘッドライン
中南米
2016年2月25日
ブラジル、格下げ後の注意点
ムーディーズはブラジルを2段階引き下げたものの、格下げ自体は市場に織り込まれていた模様で反応は小幅でし
た。ただブラジルの信用力低下による調達コストの上昇が景気回復を遅らせるリスク等に注意が必要と思われます。
ブラジル:主な格付け会社(3社)の格付け
すべて非投資適格級へ
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムー
ディーズ)は2016年2月24日、ブラジルの長期債格付け(自国
通貨建て、外貨建て共に)をBaa3(BBB-に相当)からBa2(BB
に相当)へ2段階引下げました。見通しは弱含み(ネガティブ)
としています。ムーディーズの引下げにより、スタンダード&
プアーズ(2015年9月9日にBBに引き下げ)、フィッチ・レーティ
ングス(2015年12月16日にBB+へ引下げ)と主要3社の格付
けが全て非投資適格水準(BBB格を下回る)となりました。
どこに注目すべきか:
債務残高対GDP比率、財政政策
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:ブラジルの主な財政指標の推移
(月次、期間:2013年2月~2016年1月)
70
債務残高対GDP比率(左軸)
ブラジル・プライマリーバランス対GDP比率(右軸)
%
65
4
3
2
1
0
-1
-2
%
60
55
50
13年2月
14年2月
15年2月
※プライマリーバランス:基礎的財政収支、国債の利払いと償還費を除い
た歳出と、国債発行収入を除いた歳入(税収など)についての財政収支
図表2:ブラジル債券とレアル(対ドル)の推移
(日次、期間:2015年2月24日~2016年2月24日)
4.5
安 レアル 高
ムーディーズは2015年12月にブラジルにネガティブウォッチ
(格下げ方向で検討)としていたため、2段階はややサプライ
ズであったものの、格下げ自体は織り込まれていたと思われ
ます。ただブラジルの信用力低下による調達コストの上昇が
景気回復を遅らせるリスクに注意が必要と思われます。
まず、格下げとなった理由は財政指標の悪化とムーディーズ
は指摘しており、例えば債務残高の対GDP(国内総生産)比
率は足元65%を超え、2018年までの内に80%を超える見込み
であると述べています(図表1参照)。また、景気後退も深刻
な中、税収入の低下からプライマリーバランスの対GDP比率
はマイナスです。
なお、非投資適格級への格下げにもかかわらず市場の反応
は小幅で、例えば債券の上昇傾向に変化は見られませんで
した(図表2参照)。格下げ懸念は既に市場に相当程度織り
込まれていたと思われます。むしろ足元では格下げ懸念が
市場に影響を与える程度は低下し、主に外部要因、例えば
原油価格の下落の一服感や、緩やかな米国の利上げペース
見通しが債券やレアルの下支えとなっていると思われます。
しかしながら、見通しは弱含みで更なる格下げも想定され、
今後の動向にも注意が必要です。例えば、ブラジルの格下
げによりボベスパ株価指数がやや軟調となるなど、調達コス
ト上昇によるブラジル企業への悪影響が懸念されます。
次に最も問題なのが政局の混迷です。ブラジルの政策金利
は高水準での推移が見込まれる中、ムーディーズも利子返済
負担による財政余裕度の低下を指摘しています。したがって、
バルボーザ財務相が事実上、市場に約束した財政支出削減
や銀行小切手税導入などの増税策の実施が求められますが、
議会との対立は根深いため対応は遅く、小出しです。例えば、
18日にブラジル政府が提出した財政削減計画は250億レアル
(7,100億円)と2015年の削減分の4割以下と見られ、市場の
信用を回復するには、不十分と思われます。財政改革を巡る
政局の動きに今後最も注視が必要と見ています。
債券指数 1,050
レアル/ドル
4.0
1,000
3.5
950
3.0
2.5
15年2月
900
レアル(対ドル、左軸)
ブラジル債券(右軸)
15年5月
15年8月
15年11月
850
16年2月
※ブラジル債券:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド国別(ブ
ラジル)指数
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的と
したものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用に
よる損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆
あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、
その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、
作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本およ
び利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構
の対象ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりませ
ん。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するも
のではありません。