平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 学科・資格 社会学科・助手A 申請者氏名 小池 高史 研 究 課 題 研究目的 お よ び 報 研究概要 告 研 究 の の 概 結 果 要 研 究 の 考 察 ・ 反 省 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌 名 巻・号 発行年月日 発行所・者 ㊞ 高齢者の社会的孤立の健康面への影響と孤立防止策に関する研究 高齢者が社会的に孤立していることの健康面への影響を検証し、孤立防止のための事業評価を 行う。孤立の健康面への評価は、埼玉県和光市の医療費・介護給付費のデータを分析し、孤立し た高齢者とそうでない高齢者の医療費・介護給付費の変化を明らかにする。そこから高齢者の社 会的孤立が、孤立死や心理的な健康だけでなく、身体的な健康や社会保障費にも影響を与えてい るのか否かを検証する。孤立防止のための事業評価は、東京都大田区で実施されている高齢者見 守りキーホルダー事業の利用者を対象としたアンケートおよび地域包括支援センター職員へのイ ンタビューを行う。アンケートとインタビューの分析から、高齢者の見守りと外出促進により孤 立を防止するために実施されている事業の効果を検証し、行政主導で進められている孤立防止策 の課題を明らかにする。 1)孤立の健康面への評価 埼玉県和光市の医療・介護費のデータを分析した結果、医療・介護費は孤立群のほうが非孤立群よ りも高額であった(3 年間合計で約 22 万円)が、その差は時間の経過に伴い縮小していた。医療・介護費 の交絡要因を統制した分析では、孤立群のほうが 3 年間で一度も医療・介護サービスを利用していない 確率が高く、医療・介護費の総額は低いという結果であった。 2)孤立防止のための事業評価 高齢者見守りキーホルダーの登録者・更新者へのアンケートおよび地域包括支援センター職員へのイ ンタビューの結果、キーホルダーの登録をきっかけに地域包括支援センターとのつながりを持つ高齢者 が多いことや、孤立しやすい特徴を持つ高齢者にも利用されやすい事業であることが明らかになった。 高齢者の社会的孤立と医療・介護費の関連の分析からは、孤立していることがその後の健康面に 悪影響を及ぼしているというよりも、調査時点における社会的孤立状況と当時の健康状態の関連 が強いことが示唆された。また、孤立高齢者は必要な医療・介護サービスを利用できていないこ とが示唆され、彼らにとって必要な医療・介護サービスの利用につなげることが課題である。 大田区で展開している高齢者見守りキーホルダーのような事業は、孤立しやすい特徴を持つ高齢 者にも利用されやすく、医療・介護サービス事業者と高齢者をつなぐ役割を持つ地域包括支援センタ ーを利用し始めるきっかけにもなり、一つの有効な孤立防止策である。 次年度以降さらなる調査を行い、研究を深めていきたい。 【研究発表】 第 9 回日本応用老年学会大会「大田区高齢者見守りキーホルダーの展開と可能性」 2014 年 10 月 26 日/桜美林大学 第 73 回日本公衆衛生学会総会「高齢者の緊急時対応ツール『見守りキーホルダー』利用者の特徴」 2014 年 11 月 6 日/栃木県総合文化センター 【研究成果物】 「団地に暮らす独居高齢者の周縁的社会関係」応用老年学 8 巻 1 号 2014 年 8 月 31 日 日本応用老年学会 「居住形態別の比較からみた団地居住高齢者の社会的孤立」老年社会科学 36 巻 3 号 2014 年 10 月 20 日 日本老年社会科学会(平成 27 年度日本老年社会科学会論文賞受賞) 「社会的問題としてのフレイル」Medicament News 12 月 15 日(第 2180)号 2014 年 12 月 15 日 株式会社ライフ・サイエンス
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