平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 所属・資格 中国語中国文化学科・教授 申請者氏名 舘野 正美 研 究 課 題 吉益東洞医学思想の研究 研究目的 および 報 研究概要 告 研 究 の の 結 果 概 要 研 究 の 考 察 ・ 反 省 吉益東洞、我が国江戸時代における、所謂“古医方”最大の医家であるが、彼の医学 思想については、未だ論究の及んでいない点もあるように思われる。そこでこの東洞の 医術と医論について、文献学的に、また哲学的に、そして医学的に―すなわち、現実の 医学的臨床の観点から、その医療の実際が明らかになるよう―、解明し、以てその医術 と医論の特質の一側面に対して、これを統合する形で迫って行き、以てその医学思想を 解明し、現代医学における位置、そしてその重要な存在意義を、更に明確なものにして みたいと思うのである。 本年度は、特にこの吉益東洞と同郷の医家である、恵美三伯と野坂完山の医学思想との比較 を通じて、東洞のそれを際立たせる方法を用いた。 一般には、東洞が所謂〈万病一毒説〉を唱え、方や三白が〈胎毒〉・〈食毒〉或いは〈宿毒〉 ・ 〈水毒〉を唱え、東洞が三白を〈俊人〉(「与鴎渚書」)・〈天下の良工〉(「復恵美三白書」) として一目置きながらも、三白の医論に異を唱えているのは、やはり両者の考え方に些かの 相違点があったからであると言われている。とは言え、方や〈黙識神契〉(『東洞先生答問書』) と言って〈医道〉の真髄を体得した東洞と、また一方〈医は意なり〉の本旨を深く理解し、 一切の著述を残さなかった三白の境地は、その外見上の浅はかな差異を超えて、深く遥かに 通ずるものがあったと思われる。 完山についても同様に、その表面的な差異を越えて、遥かに相通ずる医学思想を持っていた ことが確認出来たと思う。 吉益東洞と同郷の医家である、恵美三伯と野坂完山の医学思想との比較を通じての、東 洞研究という手法は今までになかったものであり、一応の成果はあったものと思われる。 それはこの恵美三白・野坂完山が、それぞれ一流の医家たちであったればこそのことで あり、例えば中神琴渓に対する喜多村良宅が如く、天才肌の琴渓に対して、飽く迄も“凡 人”である良宅を比較した場合は、このように果々しい成果は得られなかったと思われ る。今回の、一種の幸運に満足せず、更に研鑽を積まなければならない。 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項についてご記入ください。 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌名 巻・号 発行年月日 発行所・者 印 研究発表 第 20 回 吉益東洞顕賞祭 「吉益東洞と野坂完山―医学哲学的観点から―」 14年9月14日/広島大学医学部 研究成果物 「 恵 美 三 伯 『 恵 美 寧 固 先 生 遺 言 』 攷―医学思想の観点から―」 『漢方の臨床』61 巻 12 号, pp13-27 14年12月、東亜医学協会
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