近藤 直子 - 日本大学文理学部

平成 26 年度 日本大学文理学部個人研究費研究実績報告書
学科・資格 中国語中国文化学科・教授
申請者氏名 近藤 直子
研
究
課
題 残雪の小説と批評
研究目的
および
報
研究概要
告
研 究
の
の
概
結 果
㊞
これまでに翻訳刊行した残雪の小説、とりわけ長編小説「最後の恋人」を中心に、複数の小説を精
読、比較、分析しつつ残雪の小説世界の解読を進めるとともに、新たな作品も翻訳、発表するこ
と。批評面では、とりわけ「残雪研究」5号、6号で読み解いた小説世界の方位と高度について、ま
た本の中の本、物語の中の物語の重層構造についても引き続き分析を進める。また近年刊行され
た哲学者鄧暁芒との文学をめぐる対談集「於天上看見深淵」および、作者からすでに送られてきて
いる「存在と無」に関する著書の草稿も、あわせて精読し、必要に応じて翻訳をはじめる。
所期の目的はおおむね達成することができた。2005 年刊行の長編小説「最後の恋人」で全貌を見
せた残雪の宇宙世界の構造が、それ以前の小説に早くから胚胎され、一篇一篇が全体をはらむ部
分として徐々にその宇宙世界を具現化してきた道筋を大雑把にたどりなおすことができた。とりわけ 5
年前の 2000 年に発表された「生死の闘い」は、短篇ながら、残雪の世界空間の地理的地勢的特徴
に加え、そこに変化をもたらす時間的な要因をとらえやすい作品であったため、その解読「内なる季
節―「生死の闘い」を読む」によって、残雪の物語の構造を解く大きな展望が開けたといえる。新たな
翻訳については短篇小説「蛇島」を訳了。「於天上看見深淵」、サルトル「存在と無」に対する残雪の
草稿についてはまだ準備段階にあり訳出には到っていない。
要
研 究
の
考 察
・
反 省
2013 年度に執筆した「内なる地図―『最後の恋人』の方位」、および 2014 年度の「内なる物語―『最
後の恋人』における読書」に引き続き、今年度の「内なる季節―「生死の闘い」を読む」においても、
残雪研究に不可欠な土台を提示し得たものと自負している。今後とも、テクストを徹底的に読みこむ
中で、そこに自ずから浮かび上がってくる構造を的確に捉えていきたい。
研究発表
研究発表
学会名
発表テーマ
年月日/場所
研究成果物
テーマ
誌名
巻・号
発行年月日
発行所・者
・百年と残雪と歌 残雪邦訳書『最後の恋人』の紹介批評およびミュージシャン寺尾沙穂氏との対談
2014 年 6 月 28 日、吉祥寺「百年」にて
・たちかわ市民交流大学・市民企画講座「迷宮・残雪への招待」の司会および講師。2014 年 8 月
23 日、30 日(全2回)
研究成果物
・内なる季節―「生死の闘い」を読む 『残雪研究』 7 号 2015 年 3 月 31 日(刊行予定) 残雪研究
会
・残雪「蛇島」 『残雪研究』 7 号 2015 年 3 月 31 日(刊行予定) 残雪研究会