平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 学科・資格 社会学科・准教授 申請者氏名 久保田 裕之 研 究 課 題 研究目的 お よ び 報 研究概要 告 研 究 の の 概 結 果 要 研 究 の ㊞ 日本におけるシェアハウス居住者に対する聞き取り調査 家族でも恋人でもない他人との共同生活は「シェアハウス」と呼ばれ、近年は日本でも注目されて いる。しかし、メディアやマーケティングの視点から記事や論考が書かれているものの、学術研究が 進んでいるとは言いがたい。とりわけ、若年層を中心としたシェアハウスでの共同生活が、居住者の 職業観や結婚観に与える影響や、長期にわたる共同生活が価値観に与える変化を考察することは、家 族中心の福祉制度を見直していく上でも重要である。そこで、様々なタイプのシェアハウスが点在す る首都圏と関西圏を中心に、5 年以上のシェアハウス居住経験をもつ「ベテランシェアハウス居住者」 を対象とした聞き取り調査を行い、他人との共同生活経験が、職業観や結婚観にどのような影響を与 えているのかを明らかにする。10 人程度を対象に各 1 時間程度のインタビューを行い、IC レコーダ ーで録音したものを文字に起こして分析する。 調査研究の結果、長期にわたってシェアハウスに暮らす「ベテランシェアハウス居住者」は、シェア暮ら しを過渡期的で一時的な住まいと捉えるだけではなく、条件さえ整えば内部で結婚や子育ても可能な持 続的な暮らし方として認識していることが分かった。たとえば、「若いうちはシェアでも結婚したら当然二人 だけで」という考えの恋人と別れたシェア居住者の語りからは、シェアメイトとの生活の中から結婚相手を 選ぶ基準を変容させてきたことが分かる。たとえばまた、シェアメイトと結婚して引き続きシェアハウスで暮 らす夫婦の語りからは、結婚した途端に夫婦 2 人だけで生活をすることの問題点や、夫婦だけで孤立して 子育てすることの困難を考えると、シェアでの結婚生活や子育てが現実的な選択肢となっていることも見 て取れた。逆にまた、自分が結婚後・出産後もシェアハウスでの生活を続けたいと考えていても、他のシ ェアメイトも同じように考えているか分からないという、シェアがまだ未成熟な文化であるがゆえの困難も存 在することが分かった。 他方で、5 年以上のシェアハウス経験をもつ「ベテランシェアハウス居住者」はまだ少なく、インタビュー 対象者を見つけることが予想よりも困難であった。とりわけ、同じシェアハウスに継続的に暮らす「継続型」 へのアクセスが比較的容易であるのに対して、シェアハウスを転々とする「移住型」や、シェアハウスと実 家を往復する「ヨーヨー型」へはアクセスが難しく、十分に調査に組み込むことができなかった。 この点は、次年度も継続して調査を行うことで解決したい。 考 察 ・ 反 省 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項について御記入ください。 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌 名 巻・号 発行年月日 発行所・者 研究発表: 「ホーンテッド・マンション――空き家シェア活用を阻む家族規範と終わらない親役割」第 65 回 関西社会学会(5/24,富山大学). 「家族を超える共同性――家族的交換と非家族的贈与」第 12 回福祉社会学会シンポジウム「生き 方と理論の往還からの福祉社会の構想――ケア・贈与・共同性をめぐって」 :パネル報告(6/29, 東洋大学) . 「家族の民主化と脱政治化――合議体としての<民主的>家族」第 25 回日本家族社会学会大会テ ーマセッション「民主的家族の再検討」 :テーマセッション報告(9/6,東京女子大学) .
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