産業組織論 I 第9講 練習問題

産業組織論 I 第 9 講 練習問題
練習問題の答え合わせがしたい場合は,解いたノートを持参しオフィスアワーに研究室まで来ること.
(部分的な解答でも構
わない.
)もしくは個別にアポイントメントをとること.
9.1. (ゲーム的状況の戦略形表現) A と B によるじゃんけんを考える.じゃんけんを同時手番ゲームとして表現せよ.利得
はじゃんけんのルールと整合的であるならば何でも良い.併せてこのゲームを利得行列を用いて表わせ.
9.2. (支配戦略) 本問では支配される戦略の逐次消去について考える.以下の問いに答えよ.
I. 以下で説明するゲームは「合理的な豚」と呼ばれるものである.大小 2 匹の豚がおり,その目の前には 5 単位の
エサが入った箱が置いてある.これを食べるためには離れた場所にあるスイッチを押して箱のふたを開けなけれ
ばならない.スイッチを入れて帰ってくるにはエサ 1 単位分の労力がかかるとする.2 匹の豚はスイッチを入れ
に行くか,その場で待つかをそれぞれ個別に選択する.ゲームの結果は以下のようになる.
• 2 匹ともその場で待つ場合,エサは食べられないが労力もかからないので 2 匹の利得は 0.
• 両方の豚がスイッチを押しにいく場合,体力のある大豚の方が先に帰ってきてエサを全て食べてしまう.そ
のため大豚は 5 単位のエサを食べて 1 単位分の労力を支払うので利得は 4.一方小豚はエサを食べることが
出来ず労力だけ支払うので,利得は −1 となる.
• 大豚がその場で待ち,小豚がスイッチを入れに行く場合,小豚が帰ってくる前に大豚が全てのエサを食べて
しまう.そのため大豚の利得は 5,小豚の利得は −1 となる.
• 小豚がその場で待ち,大豚がスイッチを入れに行く場合,小豚が最初にエサを食べ始める.しかし小豚はエ
サを食べるのが遅く,3 単位のエサを食べた時に大豚が帰還し,小豚を押しのけて残り 2 単位のエサを食べ
るとする.そのため大豚の利得は 2 単位のエサと 1 単位分の労力から 1,小豚の利得は食べたエサ分の 3 で
ある.
また大豚・小豚ともに合理的で理性的な判断が出来るものと仮定する.このとき以下の問いに答えよ.
(1) 合理的な豚ゲームを利得行列を用いて表わせ.
(2) このゲームにおいて小豚は支配戦略を持つが,大豚は支配戦略を持たない.小豚の支配戦略を求めよ.また
大豚に支配戦略が存在しない理由も述べよ.
(3) 小豚にとって支配戦略ではない戦略を支配される戦略と呼称する.大豚の立場からこのゲームを考えてみる.
賢明な大豚は小豚の行動を予測し,支配戦略を選択してくるだろうと考える.言い換えれば,支配される戦
略はまず選択されない “ありえない”戦略なので可能性から排除する.更に言い換えれば,支配される戦略
に対応する利得行列の行,または列を削除した新しい利得行列を考えることになる.そして新しい利得行列
を基にして大豚は自身の戦略を決めると考えられる.このような操作を支配される戦略の逐次消去と呼称す
る.そしてこの支配される戦略の逐次消去によって得られる戦略の組み合わせをゲームの解と見なす.合理
的な豚ゲームの解を求めよ.
II. 囚人のジレンマゲームを,支配される戦略の逐次消去を用いてゲームの解を求めよ.
1
III. 支配される戦略の逐次消去は 1 回で終わるとは限らない.1 回目の消去後に得られた新しい利得行列の下で戦略
間の支配関係を新たに見つけることが出来た場合,もう一度支配戦略の消去を行うことが出来る.
(そのため “逐
次”消去と呼ばれる.
)特定ゲームでは,この逐次消去を通じてゲームの解が一意に定まる.以下の利得行列で示
した戦略形ゲームを,支配される戦略の逐次消去によって解け.
次郎
L
太郎
R
U
4, 1
3, 0
M
2, 3
5, 2
D
1, 0
4, 2
9.3 (ナッシュ均衡) 以下の問いに答えよ.
(1) 囚人のジレンマゲームのナッシュ均衡を求めよ.なお各プレイヤーの利得は講義スライドのものを用いる.
(2) 合理的な豚ゲームのナッシュ均衡を求めよ.なお各プレイヤーの利得は 9.2 で定義したものを用いる.
(3) 以下のゲームは「タカ・ハトゲーム」と呼ばれるものである.A 国と B 国が両国間の緊張状態解消のために直接
首脳会談を行う.各国は平和的な戦略(ハト戦略)か,好戦的な戦略(タカ戦略)を同時手番で選択する.双方
が平和的な戦略を選択した場合,共栄共存が実現する結果,交渉はまとまる.一方が平和的な戦略,他方が好戦
的な戦略を選択した場合,交渉はまとまるが,好戦的戦略をとった国有利で交渉はまとまる.双方が好戦的な戦
略を選択した場合,交渉は決裂して X デーがやってくる.このゲーム的状況は以下の利得行列で表わされてい
る.このゲームのナッシュ均衡を求めよ.
B
ハト
タカ
ハト
2, 2
1, 3
タカ
3, 1
0, 0
A
2
9.4 (ナッシュ均衡) 講義で紹介した数当てゲームを再考する.話を以下のように簡略化する.プレイヤーは A と B の二人
のみで,戦略は 0∼100 の整数を選択することである.講義同様に最小の整数を選択したプレイヤーが勝利し,利得 1
を得て,一方で敗者の利得は 0 となる.また双方が同じ数字の場合は利得 1/2 を得ると仮定する.このゲームのナッ
シュ均衡を求めよ.
9.5 (ナッシュ均衡と支配戦略) 以下の問いに答えよ.
(1) 講義中に解説した支配戦略は,厳密には強支配戦略と呼ばれるものである.これは相手の戦略が何であれ,その
戦略をとることで自身の利得が他の戦略を選択した場合よりも厳密に改善する戦略である.例えば囚人のジレン
マにおける “自白”が強支配戦略に該当する.即ち,相手の戦略が “自白”・“黙秘”のいずれであったとしても,“
自白”を選択した方が “黙秘”を選択した場合よりも厳密に利得が改善している.逆に強支配戦略が存在する場合,
それ以外の戦略を強支配される戦略と呼称する.このことを踏まえた上で以下の主張の真偽を理由とともに簡潔
に述べよ.
(i) 強支配戦略はナッシュ均衡でも必ず選択される.
(ii) 強支配される戦略の中にはナッシュ均衡で選択されるものがある.
(2) 以下の戦略形ゲームのナッシュ均衡を全て求めよ.
B
L
R
U
1, 1
0, 0
D
0, 0
0, 0
A
(3) 強支配戦略と対になる概念として弱支配戦略がある.これは相手の戦略が何であれ,その戦略を選択する方が他
の戦略を選択する場合より利得が悪くなることはない戦略である.言い換えれば,弱支配戦略を選択することで
ある状況では他の戦略を選択した場合よりも利得が厳密に良くなることがあるが,別の場合では他の戦略と “同
率一位”な利得を得ることが出来る.(つまり厳密な改善ではないが,悪化するわけではない.) そして弱支配戦略
が存在する場合,それ以外の戦略を弱支配される戦略と呼称する.このことを踏まえた上で以下の問いに答えよ.
(a) (2) のゲームにおける弱支配戦略を挙げよ.
(b) (2) のゲームにおける弱支配される戦略を逐次消去することで得られる戦略の組み合わせを全て答えよ.ま
たその結果をナッシュ均衡と比較せよ.
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