校内研究

平成27年度 伊野小学校 研究構想
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研究主題
一人一人の読解力を高める授業づくり (3年次)
~説明文を中心とした国語科「読むこと」の指導~
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主題設定の理由
本校では、一昨年度から「読解力の育成」を研究の中心におき、読解力を高める授業
づくりについて研究を進めてきた。文章や言葉の意味を正確に理解できない、自分の経
験だけをもとに考え、文章中の言葉や表現に着目して考えたり、推測したりすることが
できない、自分の考えを適切に表現することができないといった実態から、国語科を中
心に取り組んだ。そして、ユニバーサルデザインを意識した指導の工夫や支援を行うこ
とで、だれもが分かる、楽しい授業づくりをめざしてきた。
一年次は、児童の実態把握からスタートした。国語科を「好き」と答える児童は増え
たが、学習規律や基礎・基本の積み重ねが必要であるという実態が明らかになった。「読
むこと」については、1年間の取組によって、場面の様子や登場人物の気持ちを想像し
ながら読むことができるようになっていった。しかし、長文を読むことに抵抗感の強い
児童が多く、内容を正しく読み取ることについては課題が多く残った。
二年次は、基礎学力の定着と読解力の向上をめざし、研究を進めた。学習の段階に応
じて、音読の取り入れ方を工夫することで、言葉の意味やイメージ、場面の様子や登場
人物の心情を考えながら読めるようになってきている。また、ユニバーサルデザインを
意識した工夫(ワークシートや板書における文字の大きさ、色、情報量など)をするこ
とは、言葉の意味を深く考えたり、人物の心情を読み取ったりする支援となった。しか
し、グループや全体での話し合い、説明文の読み取りには課題が多く残った。単元テス
ト結果では、物語文よりも説明文の得点が低く、苦手意識をもっている児童も多い。
そこで、今年度は説明文教材を中心とし、ユニバーサルデザインを意識した工夫を取
り入れながら読解力を高めていくための研究を進めることとした。
3 主題のとらえ
(1)国語科における読解力
読解力とは、文章を正確に読み、読んだことをもとに考えをもち、表現する力である
と考える。PISA でいう「情報の取り出し」「解釈」「熟考・評価」「論述」する力のこと
である。
国語科において読解力を身につけるためには、
-1-
・読む力…登場人物の心情や場面の様子、筆者の考えなどを的確にとらえる力
・考える力…読みとったことをもとに、自分の考えをもつ力
・表現する力…自分の考えを相手に分かりやすく伝える力
を高める必要がある。
本校でも、「文章や言葉の意味を正確に理解できない。」「自分の経験だけをもとに考
え、文章中の言葉や表現に着目して考えたり、推測したりすることができない。」
「自分
の考えを適切に表現することができない。」などが課題であり、読解力を高めることが
重要であると考える。
本研究では、「読解力」を「文章に書かれている内容を正確に読み取る力」だけでな
く、「文章に対する自分の意見・感想・読みを形成する力」ととらえ、研究を進める。
(2)説明文を中心とした国語科「読むこと」の指導
学習指導要領では、国語科の領域として「話すこと・聞くこと」
「書くこと」
「読むこ
と」の3つがあげられている。
読解力を高めていくためは、国語科における「話すこと・聞くこと」
「書くこと」
「読
むこと」全ての領域を通して指導していくことが必要である。その中でも、本校児童は
「語彙量の不足」や「言語活動の基盤となる基礎的な力が弱い」といった課題があるこ
とから「読むこと」を中心に指導のあり方を探っていく。そして、「話すこと・聞くこ
と」「書くこと」の指導との関連を工夫しながら、取り組んでいくこととする。
また、今年度の具体的な取組として、「読むこと」の中でも特に課題の多い「説明的
な文章」を取り上げ、研究を進めていく。
(3)ユニバーサルデザインを意識した支援の工夫
本研究では、1 年次よりユニバーサルデザインを意識した支援の工夫を取り入れてい
る。今年度から、副題には取り上げていないが、ユニバーサルデザインを意識した授業
を以下のようにとらえ、支援の工夫を考えることとする。
学力の優劣などに関わらず、すべての子どもが楽しく「わかる・できる」こ
とをめざして、指導方法や学習形態を工夫・配慮する通常学級における授業
授業を考える際、Cさんのための支援を考え、取り入れたとする。実際に取り入れて
みると、Cさんはもちろん、Aさん、Bさん、Dさんの理解の助けにもなり、全員の理
解が深まった。さらに、支援の必要なCさんやDさんには、個に応じた支援を取り入れ、
全員が目標を達成することができるようにしていく。このような支援を取り入れた授業
を、ユニバーサルデザインを意識した授業ととらえる。
ユニバーサルデザインを意識した全体への支援、必要に応じてさらに個への支援を工
夫していくことで、全員が分かる・楽しい授業づくりをめざしていきたいと考える。
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目標
A
○
ユニバーサルデザイン
Dさんに合った
個への支援②
B
○
を意識した授業で
Cさんに合った
全体を底上げする
D
○
個への支援①
C
○
ユニバーサルデザイン
【授業を考える時】
この活動を取り入れると、Cさんも分かるようになるに違いない!!
やってみると、Cさんはもちろん、Aさん、Bさん、Dさんの理解の助けにもなった。みんなの理解が
深まった。
【必要に応じて】でもCさんとDさんは、目標まであと少し足りないな・・・。
Cさんに
個への支援①
Dさんに 個への支援②
個への支援
全員が目標達成!
4
研究のねらい
一人一人の児童が読解力を高めていくための、国語科「読むこと」における説明文指
導のあり方を探る。
5
めざす子どもの姿
文章を正確に読み、自分の考えを表現することのできる児童
-3-
6
研究仮説
国語科「読むこと」の説明文指導において、音読や教材提示、ペア・グループ学習
の工夫をすれば、主題に迫る子どもが育つであろう。
本校児童は、
・文章や言葉の意味を正確に理解できない
・自分の経験だけをもとに考え、文章中の言葉や表現に着目して考えたり、推測したり
することができない
・自分の考えを適切に表現することができない
といった課題がある。
そこで、
・言葉に着目しながら読む
・言葉の意味や書かれている内容を正確に理解しながら読む
・言葉の意味を深く考え、イメージを広げながら読む
など、読む力をつけるための工夫をしていくことで、読解力を高めていきたいと考えた。
読む力
言葉に着目しな
がら読む
言葉の意味や内容
を正確に理解しな
がら読む
個 へ の
個 へ の
個 へ の
支援
支援
支援
1
手立て
言葉の意味を深く考
え、イメージを広げ
ながら読む
音読や辞書活用
の工夫
2
教材提示・
課題提示の工夫
3
学習形態の工夫
(ペア・グループ活動)
ユニバーサルデザインを意識した授業づくり
みんなが楽しく「わかる・できる」ようになるための支援
○具体仮説1
音読の工夫をし、辞書活用を積極的に取り入れれば、言葉の意味や書かれている内容を
正確に読む力の育成につながるだろう。
〈手立ての具体例〉 ★共通した取組
☆内容や学年によって取り入れる取組
①音読を効果的に取り入れる
★段階に応じた音読方法を取り入れる
「マル」「テン」読み(すらすら読む)→マル読み→形式段落読み→意味段落読み
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☆内容に応じた音読方法を取り入れる
(例)
・動作読み(イメージしながら読み取る)
・ぼく読み(主語を「ぼく」に置き換えて読む。→イメージをふくらませて読む)
・「ぼく」「あなた」読み(対応する2者の関係をまとめさせる)
・セリフ読み(本文にない会話文を加えて読む→イメージ豊かに読む)
・資料提示読み(資料と文章の対応を明確にさせる)
・ダウト読み(間違いを見つける→言葉に着目させる)
・語尾上げ読み、「か」「よ」「ね」読み(問いの文を見つけさせる)
・主語読み(主述関係をとらえさせる)
・1文読み(中心文を見つけさせる)
・博士読み(具体的な説明部分に気づかせる)
・事例入れ替え読み(事例の順序に気づかせる)
・文末表現入れ替え読み(事実に対する筆者の考えの変化に気づかせる)
・問い答え読み(筆者の主張を読み取る)
など
※桂聖/編著「考える音読の会」著『論理が身につく「考える音読」の授業』東洋館出版社より
②辞書を活用する
★授業の中で、キーワードに着目して考える際に取り入れる
★児童が知らない、理解していない言葉については、辞書を引き、全員で確認する
☆国語辞典の使い方を定着させる
☆調べようとする言葉の終止形を確認する
○具体仮説2
ユニバーサルデザインを意識した教材提示や課題提示をすれば、言葉に着目しながら読
む力の育成につながるだろう。
〈手立ての具体例〉
①教材提示や課題提示の工夫
★児童の実態に合わせた提示方法を工夫する
文字の大きさ、色、文の配置、情報量など
☆キーワードや大事な文に気づくための「しかけ」作り
順序を変える、選択肢をつくる、置きかえる、隠す、加える、限定するなど
☆文章のみの学習材を提示する →言葉から、絵や写真をイメージする
☆写真や絵などを効果的に取り入れる
②単元全体を通しての工夫
★段階に応じた学習用語を確認しながら、学習を進める
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説明文の読みに関する学習用語
学年
要点・要約
表現技法・構成
低学年
・文
・形式段落
・問い ・答え
・主語 ・述語
・キーワード
・小見出し
・「はじめ・なか・おわり」
・まとめ
・説明文
・題名
・筆者
中学年
・意味段落
・中心文
・要点
・要約
・話題提示
・事例
・事実
・意見
・接続語 ・指示語
高学年
・要旨
・筆者の主張
・「序論・本論・結論」
★単元計画の中に並行読書を位置づける
関連図書を並行して読むことで、学習したことを生かし、キーワードや大事な文に
着目しながら読む力をつけていく。
○具体仮説3
ペア学習やグループ学習を取り入れ、お互いの意見を語り合う活動をすれば、イメージ
が広がり、読み取ったことをもとに自分の考えを表現する力の育成につながるだろう。
〈手立ての具体例〉
★個人思考(読み取ったことや自分の考えを書く)の時間を確保する
★ペアやグループ学習、全体対話を内容に応じて取り入れ、考えを深める
★ペアやグループ学習後、自分の意見を再度まとめる時間を設定する
★学習用語を使いながら、話す
☆自分の考えを書く際に、リード文を提示する
☆表現学習を最終段階に設ける
(意見文や説明文を書く、意見発表会を開く、○○のクイズ大会、など)
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読解力の素地を育成するための日常的な活動での指導
(1)学習規律の徹底
①45分授業の確保
・学習の始めと終わりの時間を守る。(チャイム着席)
・学習の準備、かたづけは休憩時間に行う。
②挨拶、返事、反応
・「話し方あいうえお」「聞き方あいうえお」を活用する。
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・指示や説明が分かったときは、「はい。」と返事をする。
・友達の発表を反応しながら聞く。(相手を見る、うなづく、はい、拍手など)
③学習の流れを示す
・漢字学習→めあて→音読→課題提示→個人・グループ思考→全体思考→ふりかえり
・「めあて」「ふりかえり」を毎時間取り入れる。
④学習環境づくり(ユニバーサルデザインの視点から)
・前面(黒板上)に掲示はしない。
・「声のものさし」「話し方あいうえお」「聞き方あいうえお」は時計横に掲示する。
・机上には必要なもののみ出す。
・板書や掲示物の文字の大きさ、色、配置、情報量などに配慮する。
(2)基礎学力定着
・スキルタイム(13:55~14:10)の活用
月
火
水
木
金
体力向上
漢字
計算
音読
読解
・漢字、計算については、毎月書き取り会、計算会を行う。
(全校統一日・月始め)
・読解については、15分間で解答まで行える内容にする。(プリントや問題集の
活用)
(3)音読の取組
・スキルタイムでは、発声練習、音読、暗唱、速読等を行う。
・毎日、朝の会で今月の詩を音読する。
・各学年1回、なかよしわくわく集会で音読発表を行う。
(4)読書活動の取組
・朝読書…毎朝15分間(8:25~8:40)
木曜日は、ボランティアによる読み語りを実施。
金曜日は、読書ノートを書く時間とする。
・読書の質を高める
各学年の必読書(約35冊)を設定し、必読書リストに記録。
朝読書の時間は、必読書を読む
貸出・返却時に分類を考えながら本を選んだり、返却したりする。
・貸し出し記録カードに読んだ冊数を記録。
・昇降口に読書コーナーを設置し、季節や行事等に合わせた図書をおく。
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