考える力と豊かな人間性を育む言語活動の在り方

旭ヶ丘小
考える力と豊かな人間性を育む言語活動の在り方
~進んで考え表現する国語科とよりよい生き方を考える道徳の時間における指導の工夫を通して~
(2 年計画の 1 年次)
1 研究主題について
本校では昨年度、国語科と算数科の授業実践を中心に校内研究を進めた。学習内容の習得により、子どもたち
は自信をもって考えることができ、既習事項を生かす活用へとつながった。習得と活用は、一単位時間で見ても
単元全体で見ても一続きであることから、
綿密な指導計画に沿って実践すると、
子どもたちの学習意欲は高まる。
また、思考力を培う手立てとしたペアやグループの話合いでは、自分の考えを発信するだけでなく、友達の考え
や助言から自分の考えを再構築するようになった。
さらに、
考えや思いを書くことで内なる思考力が外へと向き、
その結果、表現力も高まることが見えてきた。確実に書くことができると、他と比較したり書き足しや書き直し
をしたりして書き膨らませることもできる。発言する際の根拠ともなることから、理由付けを意識させると伝え
合いにつながり、言葉の力がなお一層つくことが明らかになった。
そこで今年度は、国語科において思考力と表現力を高めるために各領域での言語活動の工夫をすることとした。
「話すこと・聞くこと」ではペアやグループ対話の持ち方と練り合いとの関わりについて意識し、「読むこと」
や「書くこと」では、
「読みの力」と「書く力」をつなげる指導法を研究することで、子どもたちが言葉を駆使し
ながら考えを広げたり深めたりできるようにしたいと考えた。自分の考えを述べる説明力と、友達の考えを受け
入れて自分の考えに生かす表現力を育てる授業の研究である。並行して、子どもたちがよりよい生き方を身に付
け、子どもたちの豊かな人間性を培うため、道徳の時間の中にも道徳としての言語活動を取り入れ、自他ともに
思いやることができる児童の育成を図ることとした。
このように、知育と徳育にわたる授業実践を中心に言語活動の充実に努めることにより、子どもたちが論理的
に考え、豊かな人間性を培うことができると考え、本研究主題を設定した。
2 研究の内容
(1)研究のねらい
「書くこと」と「話すこと・聞くこと」を中心とした言語活動により、国語科では子どもが進んで考え表現す
るための指導方法について、道徳の時間ではよりよい生き方を考えて豊かな人間性を身に付けるための指導方法
について、国語と道徳の時間の授業実践を通して明らかにする。
(2)研究仮説
国語科においては、基礎的・基本的な知識や技能を習得・活用し、
「書くこと」
「話すこと・聞くこと」を中心
とした言語活動を設定することで自分の考えをもって表現することができ、道徳の時間においては、よりよい生
き方を考えるために、
「書くこと」と「話し合うこと」の言語活動を設定することで基本的な習慣や思いやりの
大切さを知り、豊かな人間性を身に付ける子どもの態度を育てることができると考える。
(3)研究経過
ア 授業研究
月日
学年・題材名・授業者・助言者 / 概要
2 年 道徳「おりがみめいじん」
授:月舘久美子 教諭、助:桜庭裕美 桔梗野小教諭
結果にかかわらず、がんばることのよさに気付き、
自分がやらなければならないことを工夫してやり遂
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げようとする心情を育てる授業。
3 年 道徳「ぼくのたからもの」
授:花田良子 教諭、 助:千葉久美子 豊崎小教諭
主
な
成
果
○何かをがんばっていると、がんばる力(心、気持ち)が膨
らんでいくことを、大小ハートを使って視覚に訴えること
ができた。
○がんばっている自分に気付いていない子どもたちが、資料
の写真を見て自分のがんばりに気付くことができた。
○身近なものでも大切にする心があれば宝物になり得ること
を、提示した鉛筆削りや資料から気付くことができた。
ものを大切にすると自分や人の心も大切にするよ
○ものを大切にする心と自分や人の思いを大切にすることが
うになると気付き、今年の夏のできごとにも、宝物と
結びつくと考えたことで、手掛けた工作から夏休みの思い
なる大切な思い出があることを自覚する授業。
出を振り返り、宝物としての価値を見出すことができた。
5 年 道徳「みんなのために」
授:荒屋敷幸也 教諭、 助:濱田俊明 明治小教諭
○学習発表会や運動会の行事を通しても、感謝の気持ちを伝
えることができるということに気付くことができた。
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自分は多くの人に支えられて生きていることが分
○自分を支えてくれているのは、身内の人や知っている人だ
かり、地域の人への感謝の気持ちを言葉や態度で表す
けではなく、自分の知らない人達や地域の人達もそうであ
ことを考える授業。
ることが新たな気付きとなった。
4年 国語「ごんぎつね」
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授:齋藤孝志 教諭
○場面ごとのワークシートが学習課題に沿って読み取ってい
(ブロック研修)
ワークシートの叙述にサイドラインを引いたり、グ
ループで話し合ったりすることで、兵十のごんに対す
国語「海の命」
○多くの児童が、根拠のある読み取りができるようになった
授:葛西康隆 教諭、助:花生典幸 指導主事
太一が瀬の主を殺さなかった理由を考える活動を
通して、命に対する太一の考え方の変化と成長を読み
ことで、人物の心情により深く迫ったり、自分たちの力で
主題に迫ったりすることができるようになった。
○日記は、書く力が十分に備わっていない児童でも文章に表
しやすいので、表現力を育てることに有効であった。
取る授業。
国語「じどう車くらべ」
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き込んで読み深めることができた。
○グループでの話合いに慣れてきたせいか、子どもたちは、
ためらうことなく考えを発表できた。
る気持ちの変化を読み取る授業。
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30
くための手立てとなり、自分の考えの他に友達の考えも書
授:石塚里佳 教諭
○選んだ自動車ごとのグループによる話合いで、自分だけで
(ブロック研修)
は見つけられなかった情報を補い合うことができた。
「しごと」に合う「つくり」を既習の表現を使って
○既習事項の「~のように」
、
「~たり、~たり」や文末表現
書いたりグループで話し合ったりする活動を通して、
の提示は子どもたちが書く手立てとなり、文をまとめてい
図鑑に書く「つくり」の文をまとめる授業。
くために有効であった。
イ 一般研修
月 日
研 修 内 容
講
臨床心理士
師
5/16~
CSP研修(5/16、7/4.8/17,1/10)
高橋 育子 カウンセラー
6/ 6
子どもがにこやかになる道徳の授業をめざして(講演、演習) 旭ヶ丘小学校
湊 洋子 教諭
7/ 2
体育科実力アップ研修講座(授業、協議会)
旭ヶ丘小学校
大坂 幸 教諭
宇部 好子 教諭
8/20
絵をかく会審査会
旭ヶ丘小学校
11/7
指示理解による支援の在り方(講演)
立教大学心理学科
大石 幸二 教授
3 研究の成果
(1) 「話すこと・聞くこと」の言語活動として、ペア対話やグループなど少人数の話合いは子どもたちに定着し、
自分の考えを意欲的に伝えることができるようになった。また、話し合う目的に応じてメンバーの構成要素を
工夫することで、より意味のある話合いができた。さらに、「読むこと」と「書くこと」をつなげる指導法として、
学習課題の解決にあったワークシートが有効で、自力読みを促す手立てにもなった。
(2) 道徳研究協議会が本校で開催される機会を得たことにより、道徳の充実を志した。指導法や発問の仕方、資
料分析や道徳的環境の整え方について共通理解をする研修をし、実績を積み重ねることができた。授業の準備
を密に行い、ペア対話やグループの話合いの持ち方を検討し、さらに手紙やカードなどに考えを書く言語活動
を取り入れたことで、思いを伝える子どもたちの道徳的心情が豊かになってきたと感じられる。
(3) 年間を通じて4回実施したCSP研修で、児童理解に関わるコミュニケーションスキルを学ぶことができた。
その一つであるコミュニケーションビンゴは、子どもたちが自分の感情を素直に表現するだけでなく、友達の
感情にも共感できることから、お互いの人間関係が滑らかになるきっかけとなった。また、体育の実技研修や
絵の審査会は、本校の教諭が講師を務めたので、日常の教育活動でも継続的に研修を生かすことができた。
4 今後の課題
(1) ペア対話やグループの話合いは、子どもたちにとって学習課題を解決するために必要感のある内容であるこ
と、全体の練り合いへとつなぐ要素をもっていることが課題となる。また、子どもたちが中心となって双方向
に話合いが進んでいくためには、指導者は発問を工夫し、子どもたちには聞き返すことができるような話の聞
き方を身に付けさせたい。
(2) 今後も子どもたちによりよい生き方を身に付けさせて豊かな人間性を培うため、道徳の時間における指導の
工夫として、道徳としての言語活動を取り入れながら、自他ともに思いやりを持ち、
「知と心」のバランスが
とれた児童の育成を図る。
(3) 特別支援教育や児童心理の理解、技能教科の実技研修や書く力をつける作文指導など、今日的な教育課題に
対応した一般研修を効率よく進め、日常の教育活動に生かしていく必要がある。
(記入者 花田 良子)