No.2015-005 2015年1月14日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 豪州持ち直しの兆し ~ 内外需増 ~ (1)豪州経済は昨年7~9月の実質経済成長率が季調済前期比年率で前期4~6月の2.0%から1.4% に鈍化。さらに市場では昨年11月半ばから急速に株安、通貨安が進行。先行き懸念が拡がり。 同国経済の先行きをどのようにみるべきか。 (2)まず昨年7~9月の成長鈍化は設備投資が主因。寄与度は前期4~6月の+0.7%から▲1.6%と 一転して大幅マイナス。主因は建設投資の落ち込み。しかし非住宅の建設許可金額をみると、 昨年5月と7月を均してみれば2013年10月をピークとしてほぼ月を追って減少した後、昨年10月 を底に増勢回復の兆し(図表1)。一方、住宅の建設許可件数は昨年1月をピークに一進一退 で推移した後、昨年9月を底に10、11月と2ヵ月連続大幅増。 (3)同国経済最大の牽引役は民間消費。しかし、消費者信頼感指数が13年11月をピークに次第に 低下(図表2)。昨年5月から一進一退で推移した後、12月大幅下落。主因は11月半ば以降の 大幅な豪ドル安。輸入品価格の上昇懸念から購買意欲冷え込み。調査は12月初。12月半ばから 為替相場は安定を取り戻し、株価は再び上昇。一方、所得雇用環境は昨年10月から再び改善へ (図表3)。失業率は次第に上昇しているものの、主因は雇用者数を上回る労働力人口増加。 昨年10、11月と2ヵ月連続して非労働力人口が減り、雇用者数と労働力人口が増加。雇用情勢 改善を見越して就業意欲が高まり。賃金は着実な増勢を持続。昨年12月半ば以降の為替安定や 株価上昇で今後、消費者マインドは持ち直しに向かい、消費の冷え込み回避の公算大。 (4)加えて輸出が昨年10月から大幅増(図表4)。品目別には石炭や原油、天然ガスなど鉱物性 燃料、鉱物、食糧など素原材料が中心。輸出先は南アジアや東南アジアの新興国向けが増加。 対内直接投資が再び盛り上がり。内外需増で、同国経済は実質3%前後の底堅い成長持続へ。 (図表1)オーストラリアの建設許可金額と許可件数 22 建設許可金額(非住宅、右目盛) 建設許可件数(住宅、左目盛) (図表2)小売売上高と消費者信頼感、自動車販売台数 小売売上高(右目盛) (10億豪ドル) 238 消費者信頼感指数(ポイント、左目盛) 自動車販売台数(年率万台、左目盛) 120 (2010年=100) 150 (万件) 234 115 20 230 130 110 226 18 110 222 105 16 218 90 100 214 14 70 95 210 0 50 12 2012 13 0 206 90 14 2012 (年/月) (出所)ABS (注)季調済。12年末までの許可金額は3ヵ月移動平均。 13 14 (出所) Australian Bureau of Statistics など (図表3)労働・非労働力人口と雇用・失業者数、失業率 4 (注) 季調済。 (年/月) (図表4)輸出入金額と実質輸出入(季調済) 6.5 135 125 (2013年=100) (10万人) (%) 130 労働力人口(左目盛) 雇用者数(左目盛) 非労働力人口(左目盛) 失業者数(左目盛) 失業率(右目盛) 3 120 輸入金額(左目盛) 実質輸入(左目盛) 輸出金額(右目盛) 実質輸出(右目盛) 6.3 125 115 6.1 120 110 2 5.9 (2013年 115 =100) 105 110 100 1 5.7 105 95 100 90 95 85 0 5.5 ▲1 5.3 90 2013 (出所) ABS 14 (年/月) (注) 季調済。失業率以外は対2013年1月差。 80 2012 13 14 (年/月) (出所) ADB, World Bank 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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