被疑者の取調べ

2012年度冬学期「刑事訴訟法」3
被疑者の取調べ
ポイント
○供述の収集・保全の方法
・被疑者の場合
・参考人の場合
○被疑者取調べのための出頭・同行
・任意同行の適法性の限界(実質的逮捕ないし身柄拘束に当たるか否か)
の判断基準
・職務質問のための同行の適法性の限界と類似
○逮捕・勾留と被疑者取調べとの関係
・198条1項但書⇒取調べ受忍義務の有無
○被疑者の取調べの適法性の限界
・宿泊を伴う取調べ,長時間の取調べetc.
供述(証拠)の収集・保全
○情報収集・・・聞き込み等
○取調べ
被疑者
それ以外の者(参考人)
取調べの手続:被疑者と参考人
○被疑者の取調べと参考人の取調べとでは,果たして,そして,
どのような違いがあるか?
(1) 出頭/同行
(§198①→§223①)
(2) 取調べ
・権利告知の要否
(§198②≠§223②)
・取調べ方法
(3) 調書の作成,読み聞け,署名・押印
(§198③~⑤→§ 223①)
⇒調書の証拠能力
(§322①≠§321①2号,3号)
被疑者とは?
○被疑者とは何か。被疑者と参考人とはどのようにし
て区別されるか?
いわゆる「重要参考人」との違いは?
↓
○人は何時,何によって被疑者になるのか?
○何時,何によって被疑者でなくなるのか?
↓
○被告人との違いは何か?
・概念
・法的地位(権利・義務)
被疑者の取調べ(1)
○何について取り調べるか
・犯罪事実
⇒「八何の原則」
①誰が,②誰と,③何故,④何時,
⑤何処で,⑥何又は誰に対し,
⑦如何なる方法で,⑧何をしたか?
・情状
・身上,犯行後の情況etc.
任意同行
○任意出頭と任意同行との異同
○実質的な逮捕に当たらないか?
東京高判昭和54年8月14日・刑裁月報11巻7=8号787頁
・同行を求める時刻,場所
・同行の方法・態様
神戸地決昭和43年7月9日・判時531・89
・同行後の状況
富山地決(百選6)
(取調べ継続時間,監視状況,帰宅意思の確認の有無etc.)
○職務質問のための同行(警職法2条2項)との異同
⇒同条3項の制限
⇒ 類似の判断?
任意同行が違法であった場合の効果
○引き続く正式逮捕後の勾留の許否
○同行中に得られた自白の証拠能力
○同行中に任意提出または強制採取された
尿の鑑定結果の証拠能力
被疑者の取調べ(2)
○被疑者が任意出頭・任意同行に応じない場合に,そ
の取調べを行うために,捜査機関にはどのような手
段があるか。
○その手段によって,被疑者を取調べに応じることを
強制できるか。
身柄拘束中の被疑者の取調べ
○逮捕・勾留中の被疑者とそうでない被疑者とでは,取調べに
ついて何か違いがあるか。
・取調受忍義務?(§198①但書)
・権利告知
・取調べ方法
⇒供述の任意性(§319①,憲法38②)
任意処分の限界の判断枠組み
最高裁昭和51年判例(百選1)
任意処分であっても,何らかの法益の侵害又はそのおそれある場合
・必要性,緊急性etc.⇒具体的状況のもとで相当と認められる限度
高輪グリーンマンション殺人事件最高裁決定(百選7)
任意捜査としての被疑者の取調べ
・強制手段によることができない。
・事案の性質,容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情
⇒社会通念上相当と認められる方法・態様及び限度
宿泊を伴う取調べの限界の判断枠組み
侵害に程度はあるか?
(侵害=強制・違法?)
必要性・緊急性等
被侵害法益
(事案の性質,容疑の程度等)
(被疑者の態度?)
自由意思・
供述の自由
何か?
身体の自由
実質的逮捕に当た
るか否かの判断を
先行させるべき?
or
⇒留置きの限界?
社会通念に照らした相当性
基準は何か?
判断
明確な基準はあるか?
高輪グリーンマンション殺人事件最高裁決定
東京地決昭和55年8月13日・判時972・136
東京高判平成14年9月4日・判時1808・144 の比較
裁判例
宿泊願
監視の態様
宿泊日数
最決
あり
隣室・ホテル付近
4泊5日
∧
比較
東京地決
あり
なし
2泊3日
出入り口・続き部屋
価
任意捜査の限度内で適法
∧
∧
比較
東京高判
同宿
評
実質的逮捕に当たり違法
∨
9泊10日
任意捜査の限度を超え違法
任意捜査としての被疑者取調べと
強制捜査としてのそれとの異同
○許される限度(方法・態様)が異なるか?
⇒供述の任意性を疑わしくするような取調べは,身柄拘束中であっても
許されないはず
○仮に異なるとして,その根拠は?どのような差異か?
取調べ受忍義務の存否が関係するか?
○最決: 任意捜査としての被疑者の取調べは「強制手段によ
ることができない。」⇒その意味は?
〔考えられる差異〕
・供述の自由に対する影響の程度?
⇒逮捕・勾留中でも許されないのではないか?
・身柄拘束状態に置くこと?
⇒実質的な逮捕に当たるか否かの判断と同じ?
・受忍義務を負わせるような取調べ?
⇒具体的にどのような措置・状態を意味するか?
参考人の取調べ
○参考人が任意に取調に応じない場合,その供述を
得るために何らかの手段があるか?
§226⇒裁判官による証人尋問
*保全目的での証人尋問§227
参考文献
①佐藤隆之「被疑者の取調べ」
法学教室263号137頁以下
②酒巻匡「供述証拠の収集・保全(2)」
法学教室288号70頁以下
③田村政喜「任意同行と逮捕」
『刑事訴訟法判例百選(第9版)』14頁以下
④堀江慎司「宿泊を伴う取調べ」
『刑事訴訟法判例百選(第9版)』16頁以下