2012年度夏学期刑事訴訟法1.2 任意捜査と強制捜査 ポイント ○強制処分法定主義の意義・趣旨 ○強制処分と任意処分の区別の基準 ○任意処分の限界の設定・判断方法 強制処分法定主義 ○§197① ・捜査のために必要な取調べをすることができる。 §198①の取調べ(人に質問し,供 述を得ようとする行為)より広く さまざまな手段・方法で事実を調査 すること ・「強制の処分」は,この法律に特別の定めがある場合でな ければ,することができない。 ⇒「強制の処分」に当たらない処分(任意処分)は, 特別の定めがなくても可 強制処分と任意処分との区別(1):従来の基準 いずれかに当たれば 強制処分 実力の行使 法的義務付け 強制処分と任意処分との区別(2) 権利・利益の侵害 * 実力の行使 強制処分 *重要な権利・利益の 侵害に限るかについて は意見が分かれる。 法的義務付け 最高裁昭和51年判例(百選1)の要点 強制処分 ・有形力の行使=強制処分ではない。 ・強制処分 個人の意思の制圧 ⇒現実に表明された意思の制圧まで必要か ⇒電話検証(百選34),X線検査(百選33) 身体,住居,財産等の制約 ⇒重要な権利・利益の侵害? 強制的に捜査目的を実現する行為etc. 特別の根拠規定がなければ許容することが不相当な手段 任意処分 ・何らかの法益の侵害又はそのおそれある場合 必要性,緊急性etc.⇒相当性 被侵害法益(権利・利益)の質と侵害の程度 任意処分 強制処分 適法・違法の判定 違法 相当性なし 相当性あり 適法 任意処分 違法 違法 根拠規定なし 根拠規定あり 適法 強制処分 不 可 侵 相当性判断のイメージ 相当性あり 必要性・緊急性 相当性あり 侵害・制約の程度 判例1の事案における相当性判断の要素 ○酒酔い運転の被疑事実 ⇒時間の経過により証拠消失=緊急性 ⇒他の被疑事実であったなら判断異なったか? ○嫌疑濃厚,呼気検査拒否 ⇒必要性 or 法益侵害の正当化要素(=相当性)? ○任意に同行,説得中,被疑者が両親を呼ぶことを要求 ⇒強制的性格の薄さ(=相当性)? ○被疑者が突然退室しようとしたこと ⇒緊急性? ○制止行為の程度 ⇒法益侵害の軽微性(=相当性) 参考文献 ①井上正仁『強制捜査と任意捜査』(2006年)2頁以下 ②大澤裕「強制処分と任意処分の限界」 『刑事訴訟法判例百選(第9版)』1 ③川出敏裕「任意捜査の限界」 『小林充先生・佐藤文哉先生古稀祝賀刑事裁判論集』 下巻(2006年)23頁以下
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