予算・財政のマネジメントの改革

歳出歳入一体改革の課題
~財政責任法とCFO法の導入~
2006年4月
行財政構造改革フォーラム
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1 . 9 0 年 代 の 財 政 政 策
財政政策の立案・実施・結果
OECD主要国
財政ルール・目標の導入と
予算マネジメントの改革が
進展し、財政健全化
VS.
日本
景気対策と財政再建の間
を揺れ動いた
G7諸国中、最良の財政
から最悪の財政へ
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2.2000年代前半における明暗
一般政府/財政収支 (% of GDP)
イギリス
フランス
ドイツ
オランダ
スウェーデン
オーストラリア
ニュージーランド
アメリカ
日本
OECD全体
1998
0.1
-2.7
-2.2
-0.8
2.3
0.7
0.3
0.3
-5.5
-1.4
1999
1.1
-1.8
-1.5
0.7
1.3
1.9
0.6
0.7
-7.2
-1.0
OECD(2003)”Economic Outlook”No.74
2000
3.9
-1.4
1.3
2.2
3.4
0.6
1.5
1.4
-7.4
0.0
2001
0.7
-1.5
-2.8
0.0
4.6
0.0
2.0
-0.5
-6.1
-1.3
2002
-1.5
-3.1
-3.5
-1.6
1.1
1.1
2.7
-3.4
-7.1
-2.9
2003
-2.9
-4.0
-4.1
-2.4
0.2
0.8
2.6
-4.9
-7.4
-3.8
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3 . 財 政 赤 字 の 政 治 経 済 学
90年代に入り、予算編成プロセスと財政赤字の関係を明らかにする
実証的な研究が進展 ~ von Hagen(1992), Alesina and Perotti(1996) etc
○財務大臣と支出大臣の関係が
「階層的」ではなく「並列的」
○予算編成の制約条件がない
○予算編成の透明性が低い
○議会で予算修正が可能
○単独政権よりは連立政権
・
・
・
財政赤字
4
4 . 予 算 の ア ウ ト カ ム
<予算を巡る環境の変化>
×増分(減分)主義
×インプット・コントロール
1.総額(特に歳出)のコントロール
→ 共有資源問題、財政錯覚 → ?
2.戦略的な資源配分
→ 情報の非対称性、高い取引コスト→ ?
3.政府サービスの効率的な供給
→ 情報の非対称性、インセンティブの不一致→?
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5 . 予 算 プ ロ セ ス の 改 革
総額のコントロール
①中期財政フレーム
(複数年度予算)
②財政ルール・目標
③意思決定の集権化
戦略的な資源配分
①戦略計画
②中期財政フレーム
(複数年度予算)
③政策評価・業績予算
政府サービスの効率的な供給
※予算のアウトカムはAllen Schick(1997)より引用
①購入者と供給者の分離
②予算統制の弾力化
③民間類似の財務・会計
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(参考1)スウェーデンのフレーム予算
シーリング
第1段階(春)
①財務省が3ヶ年のフレーム予算案作成
ト
ッ
プ
ダ
ウ
ン
歳出
総額
(3ヶ年分)
27の
主要歳出分野
(3ヶ年分)
外交、医療、雇用 等
496の議決予算
(単年分)
省庁・エージェンシーの運営費
移転支出、資本支出 等
②閣議で歳出総額、27主要歳出分野の
上限額決定(3ヶ年分)
ターゲット
③議会で財政政策を審議し歳出総額議決
第2段階(秋)
④省庁は②を踏まえ議決予算案作成
⑤閣議で翌年度の主要歳出分野上限額、
議決予算を盛り込んだ最終予算案決定
⑥予算委員会で上限額を審議し議決
⑦各委員会で議決予算を審議し議決
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(参考2)NZの財政責任法(1994)
責任ある財政運営の5原則
1.政府債務を賢明な水準に引き下げること
2.1が達成された後は、一定期間を通じて
平均的に歳出が歳入を超えないようにし、
政府債務を賢明な水準に維持すること
3.将来の不測の事態に対するバッファーと
なるように政府の純資産を維持すること
4.政府の財務に関するリスクを慎重に管理
すること
5.税率の水準と安定性について十分に予測
可能であるように政策を立案・遂行すること
透明性、説明責任の向上
1.予算政策書
・予算案提出の3ヶ月前に発表
・予算案審議に先立って議会は財政政策の基本方針
を審議
・向こう3年間の財政運営のねらいと長期的な財政目標
・予算案の戦略的な優先事項
2.財政戦略レポート
・予算案と同時に発表
・向こう10年間の歳入歳出、収支、債務等
3.経済・財政見通し
・予算案提出時、年央、選挙前に発表
・向こう3年間の主要経済指標、財務諸表
※時の政府は、5原則を踏まえ、財政運営の具体的な目標を設定しなければならない(「予算政策書」で)
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※政府が原則から乖離した政策を一時的にとる場合、財務大臣は、そうした政策をとる理由、原則に戻るた
めの方法とそれに要する時間を明らかにしなければならない
(参考3)オーストラリアの予算編成プロセス
11月 翌年度予算の大枠と重点の決定(上級大臣会合)
1~2月 省庁の予算要求
①12月の経済財政見通しの年央改定(最新の情報)
②新規要求の将来見通し(4年)への影響分析
(新規要求は原則スクラップ・アンド・ビルド)
③予算省によるスクリーニング
3月
閣内の歳出検討委員会で省庁の要求査定
4月~ 政府予算案を閣議決定し、議会での審議へ
7月
新年度開始
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(参考4)大臣とCEの関係(NPMモデル)
事前目標
大
臣
事後検証
①達成すべき目標の
明確化
(中期・年次計画書)
アカウンタビリティ
②予算、人事等のインプ
ットに関する裁量
(運営費一括予算、
繰越・前借可能等)
③インセンティブ
(報酬等)
④業績・成果の報告
(政策評価・財務諸表等)
省庁・エージェンシーのCE
○公募採用
○任期制(5年程度)
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(参考5)外部委託に関するガイドライン
1.幹部の積極的リーダーシップと組織のリエンジニアリングが必要である
2.職員との相談や意思疎通が必要である
3.アウトカム又はアウトプットによって必要なサービスを定義する
(受託者にとっての運用の弾力性を確保、インセンティブを付与)
4.パフォーマンスをモニターし、協調関係を維持する
5.正当な比較を行う(コスト、アウトカム、アウトプット、質、リスク等)
6.政府による直接供給も選択肢の1つとして正しく評価する
(コストは第3者機関に評価させる必要)
7.競争的な市場の育成を図る(契約の範囲と期間が重要な要素)
8.政府職員の技能を高める
出典:OECD PUMA(1997) “Best Practice Guidelines for Contracting Out Government Services”
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6.我が国の予算マネジメントの問題
1.権限が分散化した意志決定システム
2.予算の一般会計、当初、単年度主義
①補正予算の多用
②不明瞭な財政政策のマクロ経済上のスタンス
③後年度への負担転嫁や会計上の操作
④シーリング方式の限界
⑤施策の事後評価の不足
⑥財務・会計の軽視
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7 . 改 革 の 処 方 箋
1.マクロ財政の問題(アウトカム①②)
財政責任法
2.ミクロ財政の問題(アウトカム②③)
CFO法
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8 . 財 政 責 任 法 の ポ イ ン ト
1.政府のコミットメント(財政目標の設定)
2.議会・国民へのアカウンタビリティ
3.一般政府or政府部門のカバレッジ
4.中長期の財政見通し(予測BS)
5.財政ルール・目標の遵守状況の検証
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9 . C F O 法 の ポ イ ン ト
1.省庁・独法等の最高財務責任者
2.トップ及び現場への財務会計上の助言
3.広範な財務会計業務(業績管理、財務
諸表、コスト管理、調達・契約、内部監査、
内部統制、予算管理、現金管理 等)
4.年次計画書・年次報告書への署名
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1 0 . 全 体 の ま と め
少子高齢化への対応
①持続的な経済成長 、生産性向上
②財政の持続可能性
③世代間の負担の公平性
予算マネジメントの改革によって
政府のガバナンスを確立
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