第2章 費用・便益分析の考え方の基礎 前半 政策評価(06,10,06)三井 1 第2章と第3章の関係 第2章の前半: 仮説的補償原理=潜在的パレート改善 =効率性と公平性の分離 第3章: 消費者余剰の変化分ΔCSなど =個人の効用変化の金銭評価 「ΣiΔCSi>0 ⇒ 潜在的パレート改善」の条件? 第2章の後半:意思決定ルールの実際 政策評価(06,10,06)三井 2 1.効率性を測る枠組みとしてのCBA 資源配分aが資源配分bを「パレート改善」する ⇔ 1. aよりbのほうが望ましい個人は存在しない。 2. bよりaのほうが望ましい個人が少なくとも1 人は存在する。 政策評価(06,10,06)三井 3 潜在的パレート効率性 状態aが「潜在的にパレート効率的」 ⇔ 状態aを「潜在的にパレート改善」する 状態が存在しない。 政策評価(06,10,06)三井 4 個人1の消費平面と初期保有点 <個人1の消費平面> y1 個人1の初期保有点(endowment) y1e e1 O1 x1e 政策評価(06,10,06)三井 x1 5 個人2の消費平面と初期保有点 <個人2の消費平面> y2 個人2の初期保有点 y 2e O2 政策評価(06,10,06)三井 e2 x2e x2 6 個人2の消費平面の回転(1) x2 e2 e y 政策評価(06,10,06)三井 2 x2e y2 O2 7 個人2の消費平面の回転(2) x2 x2e e2 政策評価(06,10,06)三井 O2 y 2e y2 8 エッジワース箱と初期保有点 y1 y1e e1 O1 x1e 政策評価(06,10,06)三井 x1 9 エッジワースの箱と初期保有点 初期保有点 x2 y1 e 1 y O1 政策評価(06,10,06)三井 x2e e1 e2 x1e E (e1 , e2 ) ⇒ エッジワースの箱 O2 y 2e y2 x1 10 個人1の消費点 y1 c1 ( x1c , y1c ) =個人1の消費点 c1 y1c O1 政策評価(06,10,06)三井 x1c x1 11 個人2の消費点 y2 y 2c O1 政策評価(06,10,06)三井 c2 ( x2c , y2c ) =個人2の消費点 c2 x2c x2 12 達成可能な資源配分(消費の組合せ) <達成可能な資源配分(resource allocation)の条件> x1c x2c x1e x2e :財xの消費量の和と初期保有量の和が一致 y1c y2c y1e y2e :財yの消費量の和と初期保有量の和が一致 <状態(state)> (e1 , e2 ), (c1 , c2 ) :状態 =初期保有点と資源配分の組合わせ ei ( xie , yie ) ci ( xic , yic ) 政策評価(06,10,06)三井 :個人iの初期保有点 :個人iの消費点 13 エッジワースの箱と達成可能な資源配分 資源配分(消費点) x2 y1 y1c O1 政策評価(06,10,06)三井 C (c1 , c2 ) x2c O2 c1 c2 x1c y 2c y2 x1 14 エッジワースの箱と状態 s E, C (e1 , e2 ), (c1 , c2 ) 状態 x2 y1 e 1 y c 1 y O1 政策評価(06,10,06)三井 x2e x2c e1 e2 y 2e c1 c2 x1e x1c O2 y 2c y2 x1 15 資源配分と効用の組 資源配分 x2 C (c1 , c2 ) y1 ⇒ 効用の組 x2c O2 e1 c 1 y y 2e e2 c1 y 2c c2 u 2C O1 政策評価(06,10,06)三井 C C u C (u1 , u 2 ) x1c u1C y2 x1 16 達成可能な効用の組 u2 所与の初期保有点Eのもとでの達成可能な効用の組 u1 政策評価(06,10,06)三井 u1 17 達成可能な効用の組 所与の初期保有点Eのもとでの達成可能な効用の組 x2 y1 O2 u1 O1 政策評価(06,10,06)三井 u 2 y2 x1 18 達成可能な効用の組 u2 達成可能な効用の組 u 2 ・ u1 政策評価(06,10,06)三井 u u1 19 ボックス・ダイアグラムと効用可能性曲線 所与の初期保有点Eのもとでの達成可能な効用の組 x2 y1 O2 u1 u1 O1 政策評価(06,10,06)三井 u 2 u 2 y2 x1 20 効用可能性曲線 u2 u 2 u Utility Possibility Curves (UPC) uC u 2 u1 政策評価(06,10,06)三井 効用可能性曲線 =達成可能な効用の組の軌跡 u u1 u1 21 政策による状態の変化 変化前=状態0 変化後=状態1 初期保有ESが与えられると、それに対応する効用 可能性曲線UPCSが1つ定まる(s=0,1)。 ⇒ 「状態」 =初期保有とそのもとで達成可能な資源配分 =効用可能性曲線とそのもとでの資源配分 政策評価(06,10,06)三井 22 補償(=所得再分配) 状態sのもとでの補償(所得再分配) =状態sのもとでの初期保有点Esにが与えられ たもとで資源配分をCsから変化させること =状態sの資源配分Csから初期保有点Esに対 応する効用可能性曲線UPCs上の他の効用 の組合せに移動すること 政策評価(06,10,06)三井 23 1.1 潜在的パレート改善(補償原理) 「潜在的にパレート改善」 ⇔ 「仮説的な補償(所得再分配)」を組み合 わせることで「パレート改善」できること 政策評価(06,10,06)三井 24 カルドア補償原理 状態0から状態1への変化は 「カルドア補償原理」の下で 「潜在的にパレート改善」である。 ⇔ 状態0から状態1への変化に加えて 利益を受ける人々(受益者)から 損失を被る人々(被害者)への 補償をしたとすればパレート改善できる。 政策評価(06,10,06)三井 25 ヒックス補償原理 状態0から状態1への変化は 「ヒックス補償原理」の下で 「潜在的にパレート改善」である。 ⇔ 状態1から状態0への変化が 「カルドア補償原理」の下で 「潜在的なパレート改善」ではない。 政策評価(06,10,06)三井 26 シトフスキーの補償原理(二重基準) 状態0から状態1への変化は 「シトフスキーの補償原理」の下で 「潜在的にパレート改善」である。 ⇔ 状態0から状態1への変化は 「カルドアの補償原理」の下でも 「ヒックスの補償原理」の下でも 「潜在的にパレート改善」 である。 政策評価(06,10,06)三井 27 <ケースa> u2 変化前の状態0に対応した 効用可能性曲線UPC0 u20 ・u 0 変化前の状態0に 対応した効用の組 u10 政策評価(06,10,06)三井 u1 28 <ケースa> u2 カルドア ⇒ ○ ヒックス ⇒ ○ ・u 1 変化後の効用可能性曲線UPC1 変化後の効用の組 変化前の効用可能性曲線UPC0 ・u 0 変化前の効用の組 u1 政策評価(06,10,06)三井 29 <ケースb> u2 カルドア ⇒ × ヒックス ⇒ ○ ・u 1 UPC1 ・u 0 UPC0 u1 政策評価(06,10,06)三井 30 <ケースc> u2 カルドア ⇒ ○ ヒックス ⇒ × UPC1 ・u 0 ・u 1 UPC0 u1 政策評価(06,10,06)三井 31 <ケースd> u2 カルドア ⇒ × ヒックス ⇒ × UPC1 ・u 1 ・u 0 UPC0 u1 政策評価(06,10,06)三井 32 補償原理の問題点の例 ある政策で生じる変化の結果として 個人1の所得が5から1に変化し、 個人2の所得が5から20に変化するとき、 仮想的な5の所得移転を行えば、 個人1の所得は6、個人2の所得は15となり、 補償原理の下で潜在的パレート改善である。 ⇒ この政策は是認できるだろうか? 政策評価(06,10,06)三井 33 個別政策と所得再分配政策の組合せ 1. 情報に関する負担(informational burdens) 2. 政策に対応した所得移転(transfers)を実施する 管理コスト(administrative costs) 3. 補償(所得再分配)のシステムの存在による資源 配分の歪み 4. 補償の存在は個人に便益の過小申告、費用の過 大申告の誘因を与える。 政策評価(06,10,06)三井 34 効率化政策と所得再分配政策の分離 (マスグレイブ主義、ヒックスの楽観主義など) 1. 補償原理で政策を選択していると社会の富が最大化さ れ、富の大きい社会は低所得者を助ける能力が大きい。 2. 政策ごとに利益を受ける人と損失を被る人は変わる。 3. 代議員制による政治システムは組織化されたグループ (stakeholders)の利害を重視する傾向があるが、純 便益基準はそうではない。 4. 所得再分配政策は個別の政策ごとに実施しなくても、 単一のもので実施できる。 政策評価(06,10,06)三井 35 マスグレイブ主義の適用に注意すべき対象は? • • • • • • • 所得税の累進性の選択? 消費税率の変更? 東京湾アクアライン? 生活道路の整備? 都市公園の整備? 郵貯民営化? 中小企業に対する補助金政策 政策評価(06,10,06)三井 36
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