第13章 観察された行動からの評価 その他の顕示選好法 政策評価(06,12,08)三井 • プライマリー・マーケットが存在しない場合 に、観察される行動から影の価格を推定す ることで政策の効果を評価する方法につい て検討する。 • とくに、消費者余剰の変化の測定に絞って 分析する。 政策評価(06,12,08)三井 1. 市場類似法(market analogy method) 2. 中間財手法(intermediate good method) 3. 資産評価法(asset valuation method) 4. ヘドニック価格法(hedonic price method) 5. トラベルコスト法(travel cost method) 6. 防御支出法(defensive expenditures method) 政策評価(06,12,08)三井 1.市場類似法 <時間節約の評価> 高速道路建設による時間節約の便益を時間節約が できた人の賃金率を用いる。 (注意事項) • 賃金に便益が含まれていない。 • 電車の中でも仕事ができる。 • 税金を考慮する必要がある。 • ドライブでは景観を楽しめる。 • 賃金率は仕事の特性について配慮する。 • 労働時間を調整できない可能性がある。 政策評価(06,12,08)三井 <人命の評価> • 逸失所得法(forgone earning method) ⇒ 将来所得の割引現在価値 • 消費者購買調査(consumer purchase studies) ⇒ エアバック価格と死亡確率の低下との関係 • 労働市場調査(labor market studies) ⇒ 死亡リスクが大きい仕事に要求される代償 政策評価(06,12,08)三井 2.中間財手法 • これは、政府のプロジェクトが生み出す財が、 他の川下の(downstream)の活動のための 投入要素(=中間財)となるケースに関する 評価方法である。 <灌漑プロジェクトの評価> 灌漑プロジェクトの毎年の便益 =灌漑による農家所得の増加分 政策評価(06,12,08)三井 <教育プロジェクトの評価> 大学教育からの社会的便益 =大学を卒業することによる所得の増分 ー 大学を卒業することに必要な機会費用 (問題点) • 大学進学者の能力の高さ(self-selection) • 大学卒業証書のシグナリング効果 • 所得以外の側面の軽視 • 大学教育の消費的側面 政策評価(06,12,08)三井 3.資産評価法(資本化仮説) • プロジェクトの効果は資産の価格に資本化さ れる(capitalization)。 <公園整備の評価> 公園整備の価値 =近所に公園がある住宅の価格 ー 近所に公園がない住宅の価格 政策評価(06,12,08)三井 これまでの手法の問題点 1.から3.までの手法には、 (1) 除外変数(omitted variable)問題 (2) 自己選択バイアス(self-selection bias) という2つの難点がある。 政策評価(06,12,08)三井 (1) 除外変数問題 <中間財投入法のケース> 灌漑プロジェクト: ①事前事後の比較(before-and-after design) ⇒ 灌漑事業の前後での農業所得の増分 ②非実験的比較 (nonexperimental comparison group design) ⇒ 灌漑施設の有無の違い以外は ほぼ同様の2つのグループの農業所得の差 大学教育: ⇒ 大学進学と能力の高さの間の相関 ⇒ 様々な要因をコントロールすることの重要性 政策評価(06,12,08)三井 (2) 自己選択バイアス <労働市場調査による人命の評価> 危険愛好家はリスクの大きい仕事に就く傾向 ⇒ 人命の価値を過小評価 <資産評価法による静けさの価値の評価> 難聴の人が騒音の大きい地域の家に住む傾向 ⇒ 静けさの価値を過小評価 政策評価(06,12,08)三井 4.ヘドニック価格法 <ヘドニック価格法に よる環境改善の便益評価> 地主が2区画の土地を所有している。 1区画の面積=1 z j=第j区画の質(景観など) ( j 1, 2) 1区画の土地を必要とする2人の個人がいる。 m=所得(所得の個人間格差はない) x=消費財の量(財xの価格=1) u U i ( x, z):個人 iの効用関数 ui=個人iが他の地域で得られる効用水準 政策評価(06,12,08)三井 xi ( z)=個人iが質zの区画に居住するときに 効用水準uiを達成するために必要な消費量 U xi ( z), z ui x U i ( x, z)=ui xi ( z1 ) xi ( z 2 ) z1 政策評価(06,12,08)三井 z2 z bi ( z)=個人iが質zの区画に居住しつつ 効用水準uiを達成するときの支払意思額(地代) ( willing to payfuncition or bid function) bi ( z)=m xi ( z) p p(z j ):ヘドニック価格関数 ( hedonicpricefunction) p( z j ) maxbi ( z j ) i 地主は各個人の入札価格(bid price) のなかで最大のものを選択する。 この最大化問題の解をi * ( j)とすると、 p(z j ) bi* ( j ) ( z j ) と表すことができる。 政策評価(06,12,08)三井 ある政策の結果 z1 z2 という変化が生じると しよう。 そのとき、ヘドニック 価格関数を用いて p(z2 ) p(z1 ) でその便益を捉えてよいであろうか。 あるいは、付け値関数を用いて bi* (1) (z2 ) bi* (1) (z1 ) で便益を捉えるべきであろうか。 なお、 p(z2 ) p(z1 ) bi* (1) (z2 ) bi* (1) (z1 ) という関係が成立する。 政策評価(06,12,08)三井 (例) Ui (x, z) x z i u1 6 u2 8 z1 1 z2 2 m 12 とする。このとき、 xi (z), bi (z), i * ( j), を求めなさい。また、 bi* (1) (z2 ) bi* (1) (z1 ) p(z2 ) p(z1 ) の大小を比較しなさい 。 政策評価(06,12,08)三井 x1 ( z) 6 z b1 ( z) 12 6 z x2 ( z) 8 z2 b2 ( z) 12 8 z2 p, b p p(z) p( z2 ) 10 ・ ・ b1 ( z2 ) 9 b1 ( z1 ) p(z1 ) 6 4 ・ ・ 1 政策評価(06,12,08)三井 2 z <ヘドニック価格法に よる人命の価値の評価> 賃金率=f(致命的リスク , 教育, 年齢) この関係から個人のリ スクを低下させること に対する 支払意思額を求めることができる。 ただし、 リスクの高い職種を選 択している人は リスク回避度が小さい 人であるかもしれない (自己選択の問題)。 政策評価(06,12,08)三井 5.トラベルコスト法 トラベルコスト法が用いて、整備済みの自然公園が 生み出した便益について事後的CBAを実施するこ とを考えよう。 TCi=個人iの自然公園までの訪問コスト (TC1<TC2<TC3 <・・・) AF=自然公園の入場料 pi=TCi+AF:個人iの自然公園利用の総コスト 政策評価(06,12,08)三井 qi=個人iの自然公園(年間)利 用回数 qi f ( pi ):個人 iの自然公園需要関数 個人3の消費者余剰= Ⅰ 個人2の消費者余剰=Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ p 個人1の消費者余剰=Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ+Ⅴ+Ⅵ p4 p3 Ⅰ Ⅱ Ⅲ p2 p1 Ⅳ Ⅴ q f ( p) Ⅵ AF 0 q3 政策評価(06,12,08)三井 q2 q1 q <トラベルコスト法の限界> • トラベルコストの異なるゾーンから自然公園まで訪 問している人がいなければならない。 • 旅行時間の機会費用の測定は困難である。 – 旅行自体が楽しみかもしれない。 – 複数の目的地がある場合 • 居住地の選択に際して自然公園までの距離を考慮 しているかもしれない。 政策評価(06,12,08)三井 6.防御支出法 • スモッグのレベルを低下させる条例のもたら す便益について、窓の清掃(ビジネス)の市 場に与える効果から測定することについて検 討する。 Q=窓清掃回数 P=窓清掃価格 政策評価(06,12,08)三井 P S0 D S1 P0 P1 Q0 Q1 政策評価(06,12,08)三井 Q 防御的支出の減少分= Ⅰ-Ⅳ Ⅰ+Ⅱ 消費者余剰の増分= P S0 D P0 P1 Ⅰ Ⅲ Ⅱ Ⅳ Q0 Q1 政策評価(06,12,08)三井 S1 Q <防御的支出法の問題点> • 新しい均衡への調整スピード • 窓拭きでスモッグ問題の全ては解消できない。 • 防御的支出で非常に窓が綺麗になるかもし れない。 • 防御的支出を機会費用で考える必要がある。 政策評価(06,12,08)三井
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