東アジア国際協力概論 ~経済協力・ODA・日本・中国・世界~ 2006年6月26・27日 京都大学大学院経済学研究科 附属プロジェクトセンター助教授 宮﨑 卓 1 本講義の目的 ODAを含む経済協力の全体像を理解する ODAを含む経済協力の歴史:それぞれの時代 が直面する問題にどう取り組んできたかを理解 する ODA、特にプロジェクト援助の具体的実務の概 要を理解、法律面・財務面・政策面といった要素 への理解を深める 東アジアの中で日々その存在感を大きくしてきて いる中国に対する経済協力をケースとして、その 歴史・現況を理解、今後の展望につき自ら考える 2 本講義の構成 経済協力の全体像 経済協力の歴史・理念 開発援助の実務 ケーススタディ~中国向け円借款 3 はじめに:経済協力は何故必要か 経済発展は何故必要か 「先進国」が「途上国」に対し援助・協力す ることが何故必要か 4 経済発展は何故必要か 貧困問題 平均寿命 幼児死亡率 生きていく上での「選択の幅」 労働の受ける「評価」 ⇒経済発展は貧困緩和のための「十分条 件ではないが、必要条件ではある 5 「先進国」が「途上国」に対し援助・協力する ことが何故必要か 途上国だけでは解決できない問題: ①技能の制約 ②貯蓄の制約(I-Sギャップ) ③外貨の制約 途上国が経済発展することは先進国側に とってもメリットあり(eg.市場の開拓) 世界にとって望ましい発展の経路(環境・ エネルギー問題など)の必要性 6 経済協力の全体像 7 経済協力とは何か 「経済協力」=「開発途上国の経済発展を 支援すること」であるが、政府が行うODA、 民間の営利団体(企業など)が行う協力、 非営利団体(NPO)が行うもの、等等、一 言で経済協力といっても多岐にわたる 関連する用語としては、「開発援助」、 「開 発協力」、 「国際協力」などが挙げられる が、それらとの差異を明らかにするために も、まず経済協力の内容・分類に注目する 8 経済協力の分類 以下、協力の「主体」、「目的」、「条 件」を基準として分類を試みる ※なおこれらの分類は、OECD開発援助 委員会(Development Co-operation Directorate (DAC), Organisation for Economic Co-operation and Development ) の分類に拠るもので、国際的に広く通用し ているもの) 9 経済協力の4分類 1/4 ODA(Official Development Assistance:政府開発援助) 2/4 OOF(Other Official Flows: その他の 政府資金) 3/4 PF(Private Flows: 民間資金) 4/4 民間非営利団体による贈与(Grants by Private Voluntary Agencies) 10 経済協力の4分類 1/4 ODA(Official Development Assistance:政府開発援助) 2/4 OOF(Other Official Flows: その他の 政府資金) 3/4 PF(Private Flows: 民間資金) 4/4 民間非営利団体による贈与(Grants by Private Voluntary Agencies) 11 4分類- 1/4 ODAとは 次の3つの要件を満たすものと定義されている 1/3 政府ないし政府の実施機関によって供与さ れること(主体⇒”Official”) 2/3 開発途上国の経済開発や福祉の向上に 寄与することを主たる目的としていること (目的 ⇒”Development”) 3/3 資金協力については、その供与条件が開 発途上国にとって重い負担にならないようになっ ており、グラント・エレメント(Grant Element:G.E.) が 25%以上であること(条件⇒”Assistance” ) 12 【コラム】グラントエレメント(G.E.)とは 借款条件の緩和度、即ち通常の民間銀行からの融資と 比較して、借手である途上国にとってどれくらい優遇され たものであるかを示す指標。資金約束の額面価値から、 必要な元本償還や利子支払いの合計額の割引現在価 値(標準割引率は10%/年を使用)を差し引いて得られ、 高いほど借入人(開発途上国)にとって有利。 後述の無償資金協力、技術協力はいずれも返済が必要 ない「贈与」のため、 G.E.は100%、ODAに分類される。 一方返済が必要な「借款」であっても、低金利且つ長期 間であればG.E.は高くなることから、円借款のようにOD Aに分類されるケースがありうる。 13 【コラム】現在価値(present value)について 現在価値:仮に市場金利が10%で安定している とすると 現在のX円は、n年後には X(1+0.1)n に等しくなると考えられる 逆に言えばn年におけるY円の現時点での実質 価値は Y/(1+0.1)nに等しく、これが「純現在価 値(net present value)である。 (後述する、プロジェクトの経済的・財務的効果を 評価する際の指標である「内部収益率」もこの指 標を用いて定義される) 14 経済協力の4分類 1/4 ODA(Official Development Assistance:政府開発援助) 2/4 OOF(Other Official Flows: その他 の政府資金) 3/4 PF(Private Flows: 民間資金) 4/4 民間非営利団体による贈与(Grants by Private Voluntary Agencies) 15 4分類- 2/4 OOFとは ODAの場合と異なり明確な定義はなされていな いが、以下のとおり定義可能 1/3 政府ないし政府の実施機関によって供与さ れること(主体) 2/3 開発途上国の経済開発や福祉の向上に 寄与することを主たる目的としていること (目的) 3/3 グラント・エレメント(G.E.) が25%未満であるこ と(条件)=ODAに比べ厳しい条件である 16 経済協力の4分類 1/4 ODA(Official Development Assistance:政府開発援助) 2/4 OOF(Other Official Flows: その他の 政府資金) 3/4 PF(Private Flows: 民間資金) 4/4 民間非営利団体による贈与(Grants by Private Voluntary Agencies) 17 4分類- 3/4 PFとは 特に制度として規定されていないが、企業 の存在意義たる利潤極大化の観点からも、 以下のとおり 短期的な利潤極大化と長期的な市場解発 の観点からの途上国発展への貢献 社会的責任(CSR:(Corporate Social Responsibility)の観点 18 経済協力の4分類 1/4 ODA(Official Development Assistance:政府開発援助) 2/4 OOF(Other Official Flows: その他の 政府資金) 3/4 PF(Private Flows: 民間資金) 4/4 民間非営利団体による贈与(Grants by Private Voluntary Agencies) 19 4分類-4 民間非営利団体による贈与 同じく制度としての規定はないものの、広く 見られる。 なお民間非営利団体は、特に上述のODA と結びつくケースも見られる。 20 世界全体の途上国への資金の流れを見る と、90年にはODAが全資金流入量の約 44%を占めていたのに対し、2000年には 約26% 一方、その間にその他の政府資金(OOF) や民間資金の金額はほぼ倍増、ODA以 外の資金は全体の約4分の3を占める 21 【コラム】経済協力をめぐる諸用語 カバーする範囲が狭い順に: 「開発援助」:上記4分類中の1(ODA)及 び4(民間非営利団体による贈与) 「開発協力」≒「経済協力」(但し後者は先 進国間でも使われうる) 「国際協力」:経済発展に関わらないものも 含まれうる(eg.文化面での協力など) 但し、これらの用語は必ずしも厳密に使い 分けられているとは限らない 22 図表1-1 日本の経済協力体制 23 図表1-2 日本の経済協力体制(2) 24 図表1-2 日本の経済協力体制(3) 25 その他の分類基準 二国間/多国間 有償/無償 26 世界の主要二国間/多国間援助機関 世界銀行(IDA、IBRD) アジア開発銀行 米州開発銀行 アフリカ開発銀行 UNDP KfW、GTZ(ドイツ) DFID(英国) USAID(米国) AFD(フランス) CIDA(カナダ) AUSAID(オーストラリア) etc.. 27 以下、金額面、および条件面から、経済協 力としての影響力の最も大きなODA、しか も日本と途上国に絞って議論を進めること とする 28 無償資金協力 (ODA・二国間・贈与1) 特に開発の遅れの目立つ地域・国を優先。 対象分野:保健・医療、生活用水の確保、農村・ 農業開発等、人間の基礎的な生活に欠かせない、 いわゆる基礎的生活分野(Basic Human Needs :BHN)及び人造り分野を主とする一方、 道路、橋、通信施設等、経済・社会基盤を形成す るインフラストラクチャー分野についても、財政事 情等を考慮して、ケース・バイ・ケースで対応。 実施体制:外務省が国際協力機構(JICA)の協 力を得て実施。 29 技術協力 (ODA・二国間・贈与・2) 開発途上国の国造りを推進するための「人造り」 (人材育成と技術向上)を目的とした援助。具体 的には専門家派遣、研修員受入れ、技術移転に 必要な機材の供与、これら3つを組み合わせた 技術協力プロジェクト、青年海外協力隊員の派 遣、及び開発調査といった形態。 途上国全般を対象とし、分野としても基礎生活分 野から高度な先端分野に至る広範囲。 技術協力の実施は、JICAが大半を担当。 30 【コラム】技術協力と無償資金協力 この分類についてはいままでのように明確な線 引きに基づくものではない。∵ともにODA、二国 間、無償資金協力という面で共通している。 以下の2点が相互に異なる点である 技術協力は人の行き来を主眼としているのに対 し、無償資金協力は資金の流れを主としている 実施主体が前者は国際協力機構(JICA)、後者 は日本政府(外務省)である 31 有償資金協力/円借款 (ODA・二国間・有償) 開発途上国政府等に対して、低利で長期の緩や かな条件で開発資金を貸付けるもの 対象分野:それぞれの国の発展の土台としての 経済・社会基盤の整備に必要な資金の援助 借款であるという性質から、これらの国々が経済 的に自立するための自助努力を支援するもの。 円借款の実施は、国際協力銀行(JBIC)がその 殆ど全てを担当。 32 (4)国際機関への出資・拠出金 国際機関の活動の場でもわが国の積極的なリー ダーシップを実現すべく力を入れているもの 国際機関は、①開発に必要な資金を融資する 「国際開発金融機関」と、②主に経済、社会、人 道問題に関連する活動を行う「国連諸機関」に大 別される。①への出資・拠出は主に財務省が、 ②への分担金・拠出は主に外務省が担当。 33 図表2 2004年度の日本のODA実績 34 図表3 日本のODA供与先推移 35 図表4 主要国ODA供与状況(総額) 36 図表5 主要国ODA供与状況(対GNI比) 37 図表6 主要国ODA供与状況(国民1人あたり金額) 38 経済協力の全体像 経済協力の歴史・理念 経済協力の実務 ケーススタディ~中国向け円借款 39 経済協力の歴史・理念 40 経済協力の歴史 南北問題の「誕生」 60年代 数量的ゴールの設定 70年代 80年代 90年代~ 41 南北問題の「誕生」以前 南北問題(North-South Problem):先進地 域と発展途上地域との問題=世界の経済 力の偏りの深刻な意味⇒第二次大戦後し ばらく経って始めて認識されるに至った 植民体制の下では「国内問題」 第2次大戦による先進地域の疲弊にともな う相対的均等化 東西対立=冷戦問題の先鋭化 42 経済援助の原点としてのマーシャル・プラン 第二次大戦後疲弊した西欧諸国に対する 米国の援助 マーシャル国務長官(当時) 規模の大きさ(102.6億ドル/3年間) 効果のめざましさ (対象は高度に発達した近代的経済) 43 南北問題の登場 東西間の緊張⇒同様に重要な「南北問題」 (サー・オリバー・フランクス、1960年) 植民地独立後の経済問題の先鋭化 44 1960年代 1961年9月国連総会 米国大統領ジョン・F・ケネ ディ演説~「第一次国連開発の10年」 途上国開発のための総合的長期戦略の国際的 共有 数量目標を始めて設定(=途上国内での貯蓄と 所要資金量との差) 米国が世界の援助の3分の2を占める USAID(米)、IDA、DAC前身、Kfw(西独) 45 1970年代 途上国経済のパフォーマンスに難あり 「第二次国連開発の10年」~具体的な政 策手段をも勘案 「新国際経済秩序」:石油危機~資源ナ ショナリズム、不公平の是正 ベーシック・ヒューマン・ニーズ(Basic Human Needs: BHN)の重視へ:トリックル・ ダウン(trickle down)仮説への疑念 46 1980年代 「第三次国連開発の10年」 二度にわたる石油危機(’70年代)を経て 国際経済体制大きく変化 国連の役割縮小⇒世界銀行、DACへ 途上国における放漫財政等に起因する累 積債務問題⇒「構造調整アプローチ」の登 場(後述) 47 1990年代 「持続可能な開発」 「参加型開発」 48 経済協力の歴史~日本の経済協力 戦後「被援助国」からのスタート 1946~51 米国からのガリオア・エロア援 助(約20億ドル) 1953~60年代 世界銀行からの第二の大 口借入国(東名・名神高速、東海道新幹線、 黒部第四水力発電など) 49 援助する側へ 1954年~コロンボプラン加盟 技術協力を開始 賠償や輸出信用が主、ODAの要素に乏し かった 50 実施体制の整備 海外経済協力基金(OECF)の設立(1961年)- 円借款の実施主体として、政府から日本輸出入 銀行に出資されていた「東南アジア開発協力基 金」を引き継いで設立された(1999年輸出入銀行 との統合により国際協力銀行となる) 国際協力事業団(JICA)の発足(1974年)ー海外 技術協力事業団(1962設立)と海外移住事業団 (1963年設立)が統合された。(2003年独立行政 法人国際協力機構となる) 51 図表7:主要国ODA供与長期趨勢 12,000 10,000 (百万㌦) 8,000 米国 フランス ドイツ 英国 日本 6,000 4,000 2,000 0 70~71 75~76 80~81 90~91 52 日本のODAにおける理念について 「確固たる援助理念の欠如」「理念欠く膨 張」といった批判 根底に一貫した「途上国の自助努力支援」 の考え方⇒借款の比率が高いことは上記 考え方と関連しているもの 「経済発展を主導するのはその国と政府に よる現状改善へ向けての必死の努力しか ない」 53 経済協力の全体像 経済協力の歴史・理念 経済協力の実務 ケーススタディ~中国向け円借款 54 経済協力の実務 55 援助の形態:円借款のケース 経済協力⊃ODA⊃二国間⊃円借款 56 プロジェクト援助とノンプロジェクト/プログラム援助 通常使われる述語であるが、一般に認め られた定義なし プロジェクト援助:使用される資金が明確 な対象を持つことから、責任の所在が明確、 資金管理が容易である形態 ノンプロジェクト・プログラム援助:資金が 使われる対象が必ずしも明確でない形態 57 プログラム援助 ノンプロジェクト借款=「商品借款」:経常収支 (Balance of Payment:BP)サポート 構造調整型援助:政策上のコンディショナリティと の組み合わせ 自助努力を重視する日本の経済協力では実施さ れていない(国際機関との協調融資はあり) 市場の役割(資源配分の適正化⇒効率化) 規制緩和 自由化 分権化 民営化・民活 58 (参考)プログラム援助の実例~アジア開発 銀行~パキスタン農業プログラムローンより 以下の諸改革の実施が確認されれば借款を供 与するもの ・種子産業等への民間部門参入促進 ・肥料・農作物への補助金削減、国境価格適用 ・塩害対策、農業投資計画の行政組織改革 ・灌漑費用の受益者負担化 一方で貸し付けられた資金は、農業セクターに かかる支出に充当されるべき、といった緩い制限 はあるが、プロジェクトの場合ほど使途にかかる 厳しい拘束はない 59 プロジェクト型援助 円借款の主力(割合?) 資金の使途が特定されている(=特定の プロジェクトの実施のために使われる) プロジェクトとは何か?プロジェクトサイク ルを通じて理解する 60 プロジェクトサイクルについて 61 要請主義VS共同形成主義 開発途上国政府の政府の要請があって初 めてODAを供与する、というもの。 途上国の自助努力という概念から基礎づ けられていたが、「金は出すが口は出さな い」と評価される主因は本制度にあり 97年のODA白書から「共同形成主義」へ の移行が進められている 62 検討・審査(1) (ファクトファインディング~アプレイザル) プロジェクトが実施可能か~フィージビリ ティ プロジェクトを実施する意味があるか~内 部収益率(IRR) 実施体制について(借入人・実施機関・具 体的実施部門)技術面・予算面での能力 確認 63 検討・審査(2) (ファクトファインディング~アプレイザル) コスト積算⇒借款供与上限額確定 事業の進捗度を勘案の上、年度毎の資金 需要を積算、物価上昇率、 64 IRR(内部収益率) EIRR(economic internal rate of return:経 済的内部収益率)経済的便益の現在価値 が、経済的費用の現在価値と等しくなるよ うな割引率 FIRR(financial internal rate of return:財務 的内部収益率)財務的便益の現在価値が、 財務的費用の現在価値と等しくなるような 割引率 65 プロジェクトデザインの妥当性 インプット~アウトプット~アウトカム~インパクトの関係 インプット:供与される資金 アウトプット:プロジェクトを実施することによって直接生 み出される生産物やサービス=事業実施量 アウトカム:プロジェクトの成果が生み出されることによっ て、受益者に対し発現が期待される成果=事業成果 インパクト:プロジェクトを実施することによって、技術、経 済、社会文化、制度、環境などの面で社会的に影響を及 ぼす直接的・間接的効果 66 アウトプット~アウトカム~インパクトの関係 (1) 歴史的にはNPM(New Public Management)が起源 プロジェクトを実施する側の視点=アウトプットに加え、そ こから便益を受ける側の視点=アウトカムを導入 さらに、外部要因を介在させることにより達成可能な効果 をもインパクトとして導入 アウトカム(内部要因のみに依る) ∴アウトカム未達成=プロジェクトの失敗 インパクト(達成には外部要因の介在が必要) ∴インパクト未達成=失敗とは言えない 67 アウトプット~アウトカム~インパクトの関係 (2) 例1 投資(インプット)⇒道路完成(アウトプット) ⇒交通状況改善(アウトカム)⇒経済発展 (インパクト) 例2 投資(インプット)⇒学校建設~卒業生増加 (アウトプット)⇒専門的職業従事者増加 (アウトカム)⇒経済発展(インパクト) 68 交換公文と借款契約~法的側面 *先行する広義でカバー済の場合省略 交換公文の位置づけ:外交文書(行政取 極)≒簡略化された条約 上記交換公文を踏まえた借款契約 準拠法(日本法:主として民法) 任意法規と強制法規 紛争解決方法の規定~裁判ではなく仲裁 仲裁のメリット:迅速性、コスト、専門性 69 調達(1)~入札のプロセス 公示 事前資格審査 入札(応札~入札評価) 契約交渉~契約締結~契約同意 ツーエンベロープ方式 ツーステージ方式 70 調達(2)~入札の原則~ ひも付きであることにつき批判が強かった が実際にはアンタイド(untied=ひも無し) 比率が極めて高い ひも付き援助の見直し(特別円借款・STE P) 71 【コラム】ひも付き?ひも無し? 国際競争入札(International Competitive Bidding: ICB)に より達成される経済性 調達4原則:経済性・効率性・非差別性・透明性国際機 関:Local Preferenceを認めている 円借款では認めていない 二国間の限界? 経済学的には認めていないやり方の方がより効率が達 成できる? 調達に見る「国策としてのODA」の位置づけの微妙さ 72 貸付(Disburse:ディスバース)の方式 リインバースメント方式:借入人先行負担、後に 補填。シンプル・確実だが外貨カバー困難 コミットメント方式:外貨決済可能。広く普及して いる貿易決済システムを援用 トランスファー方式:上記両者の長所を併せ持つ 一方、実際のオペレーション難度高し スペシャルアカウント方式:小口の支出に適して いるが、やはりオペレーション難度高し 73 【コラム】貿易決済に伴うリスクとその解決 ~信用状方式~ 取引者双方が直面するリスク~leads & lags 商業銀行によるリスク負担 実物の取引に「逆行する」架空の書類取引 ~信用状 円借款他、援助資金の融資において多用 されている 74 プロジェクト実施における問題点と その解決 途上国におけるプロジェクト実施~何らか の問題発生は避けられない 中間監理=定期的に行い、問題を未然に 防ぎ、また生じた問題については解決する 進捗、問題の有無 問題の所在(政策面?技術面?財政面? 制度面?) 75 管理(management)と監理(supervision) ~ 主体は誰か?~ 「自助努力重視」の考え方に立ち、あくまで 実施は途上国側がこれを行う 従って途上国側自らが実施・「管理」する のに対し、ファイナンスする立場として「監 理」するもの 76 典型的な問題とその対処例 建設に必要な技術が途上国側にない⇒国際コン サルタントを雇用 上水設備を建設したが稼働率が上がらない⇒原 因を確認したところ、本来本事業完成後使用を 停止するはずの地下水源になお依存しているこ とが判明⇒使用停止措置の徹底申し入れ 下水設備を建設したが政府からの補助金が減額 され運営に支障を生ずる⇒予算の確実な手当て、 もしくは適正な料金水準の適用を申し入れ 77 事後評価について 完成後、借入国の実施機関側から完成報告書を 提出 アウトプット・アウトカム・インパクトの実現を確認 妥当性 効率性 有効性 インパクト 持続性 78 経済協力の全体像 経済協力の歴史・理念 経済協力の実務 ケーススタディ~中国向け円借款 79 ケーススタディ~中国向け円借款 80 中国向け円借款の歴史 1979年度に開始 5年を1ラウンドとするという特徴あり(中国 向け円借款固有の措置)⇒中国の5ヶ年計 画と連動させるため 81 第1ラウンド(1980~85年) 第6次5ヵ年計画と連動 中国国内のエネルギー需給問題解決(内 陸部の石炭⇒沿海部⇒船で広東省などの 消費地へ) 石炭産地~沿岸部への鉄道 沿岸部における港湾 82 第2ラウンド(1985~90年) 第7次5ヵ年計画と連動 第1ラウンドのコンセプトから、様々な種類 の経済・社会インフラに対象分野を拡大 83 第3ラウンド(1990~95年) 第8次5ヵ年計画と連動 第1ラウンドのコンセプトはほとんど消失、 各地の都市部を中心としたインフラ事業を幅 広く行う 84 第4ラウンド(1995~2000年) 第9次5ヵ年計画と連動 環境問題の重視(資料参照) 地域格差が顕著となってきたことを受け、 内陸部中心 85 2001年「対中国経済協力計画」策定 中国の急速な経済発展を踏まえ、且つ日 本の国益を重視 ラウンド制⇒単年度化 対象セクターの絞込み 企業を協力対象外とする 86 近年の動向 対象分野:環境保護・人材育成に限定され る 対象地域:内陸部に限定される 「互恵性」:越境公害に対する措置、進出 する企業に就職する人材の育成 「人的交流」:地方自治体・大学等の参画 87 中国円借款の現況 2005年3月17日、自民党外交3部会におい て、町村外務大臣(当時)より、「北京オリ ンピック開催前までに新規供与を停止する ことにつき基本的合意に至った」旨発言あ り 88 中国向け円借款停止の可否をめぐる議論 ~中国経済の現状から~ 急速な経済発展/高い外貨準備高の一方 で 余剰労働力問題 地域格差問題 卒業基準の問題 環境・エネルギー問題 国内資金配分の問題 89 余剰労働力問題 農村部における余剰労働者が約1億6000万人と 見積もられる(農業部・国務院発展研究中心) 今後さらに労働力は増加することが見込まれる 2001~10年に7.2%/年、同じく2010~20年に 6.8%/年の成長率が確保されたと仮定しても、余 剰労働力の一部を雇用吸収できるに止まり、 2020年でもなお2億人の余剰労働力が予想され る 経済成長を減速するというオプションの現実性? 90 地域格差問題(1) 91 地域格差問題(2) 92 地域格差問題(3) 93 地域格差問題(4) 94 都市/農民間格差問題 三農問題の深刻化 2005年1年間の農民暴動8.7万件(全国人 民代表大会における報告) 土地収用における補償費⇒失地農民問題 95 卒業基準の問題 一人当たりGDPに関しては、中国よりも高 いレベルにある国家にも円借款供与の実 績はあり 経済水準ではなく政治的な判断による「卒 業」? 96 環境・エネルギー問題 同等の経済的価値(国内総生産:Gross National Product GDP)を生み出すのに必 要なエネルギーの消費量の比率 中国:日本=9:1 ⇒極めてエネルギー浪費的な技術 主燃料として石炭に依存せざるを得ない 2020年までにGDPを2000年の4倍にする 計画あり 97 国内資金配分の問題 94年分税制により中央の裁量が増加した はず 省レベルでは貧困省への財政移転が見ら れる しかしながら省以下のレベルでは財政が 疲弊しているとの報告もなされている 財政の再配分機能を通じたTrickle down は期待できない? 98 参考文献 スティーブン・ブラウン(安田靖訳)『国際援助ー歴史 理論 仕組みと実際』 東洋経済新報社、1993年 下村恭民他『開発援助の経済学』有斐閣、1993年 白鳥正喜『開発と援助の政治経済学』東洋経済新報社、1998年 後藤一美他編『日本の国際開発協力』シリーズ国際開発第4巻、日本評論 社 安場保吉『経済成長論』筑摩書房、1980年 原洋之助『開発経済論』岩波テキストブックス、岩波書店、1996年 黒崎卓他『開発経済学―貧困削減へのアプローチ』日本評論社、2003年 ハリー・T・オーシマ(渡辺利夫他監訳)『モンスーンアジアの経済発展』勁草 書房、1989年 海外経済協力基金開発援助研究会編『経済協力用語集』東洋経済新報社、 1993年 嘉数啓他編『アジア型開発の課題と展望ーアジア開発銀行30年の経験と教 訓』名古屋大学出版会、1997年 小浜裕久『ODAの経済学』日本評論社、1992年 橋本強司『これからの開発コンサルティングー国際協力の最前線から』勁草 書房、1992年 99 参考文献等 白遠他『国際経済合作理論与実務』清華大学出版社、北京交通大 学出版社、2005年 下村恭民編『ODAの現場で考える』財団法人外国為替貿易研究会、 1991年 渡辺利夫編『ジレンマのなかの中国経済』東洋経済新報社、2003年 首相官邸『海外経済協力に関する検討会』HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/oda_2/ 外務省ODA関連HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/ JBIC HP http://www.jbic.go.jp/japanese/index.php JICA HP http://www.jica.go.jp/Index-j.html 100
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