第5章 セカンダリー・マーケットのCBA

第5章 セカンダリー・マーケットのCBA
政策評価(06,11,10)三井
1
1.効率的セカンダリー・マーケットにおけるCBA
セカンダリー・マーケットの考慮の仕方は
プライマリーとセカンダリー・マーケットの財が
補完財であるか代替財であるかで異なる。
(例)
プライマリー・マーケット
=釣りの市場
セカンダリー・マーケット
=釣り道具の市場&ゴルフの市場
釣りvs.釣具=補完財
釣りvs.ゴルフ=代替財
政策評価(06,11,10)三井
2
価格変化を伴わない効率的なセカンダリー・マーケット
<釣りの市場=プライマリー・マーケット>
qF=釣りに行く回数(日数)
PF=釣りに1回行く実効価格
PF
MCF0=放流プロジェクト前の限界費用
MCF1=放流プロジェクト後の限界費用
PFO= MCF0
PF1= MCF1
DF
qF0
政策評価(06,11,10)三井
qF1
qF
3
価格変化を伴わない効率的なセカンダリー・マーケット
<釣りの市場=プライマリー・マーケット>
ΔCS= Ⅰ+Ⅱ
B= ΔCS= Ⅰ+Ⅱ
PF
PF0
Ⅰ
Ⅱ
PF1
DF
qF0
政策評価(06,11,10)三井
qF1
qF
4
<釣具の市場=セカンダリー・マーケット>
qE =釣具の量
PE
PE =釣具の価格
DE0 =放流前の釣具の需要曲線
DE1 =放流後の釣具の需要曲線
PE = PE0 ; 水平な供給曲線
PE0
DE0
qE0
政策評価(06,11,10)三井
DE1
qE1
qE
5
<釣具の市場=セカンダリー・マーケット>
B= ΔCS= (Ⅰ+Ⅱ)+(Ⅲ+Ⅳ)
PE
と計算してよいであろうか。
⇒ No
⇒ 重複計算である。
Ⅲ
Ⅳ
PE0
DE0
qE0
政策評価(06,11,10)三井
DE1
qE1
qE
6
重複計算の例
u=min(qF, qE) ; 効用関数
PFqF+PEqE=M ; 予算制約式
PE0=1 ; セカンダリー財の価格は1
PF0=放流前の釣りの価格
PF1=放流後の釣りの価格
政策評価(06,11,10)三井
7
等価変分EVと補償変分CV
qE
qE=qF
M/PE0
M/(PF0+PE0)
PF0qF+PE0qE=M
PF0 / PE0
qF
政策評価(06,11,10)三井
8
等価変分EVと補償変分CV
PE=PE0=1 のケース
qE
qE=qF
EV=M(PF0-PF1)/(PF1+1)
CV=M(PF0-PF1)/(PF0+1)
EV
M
CV
M/(PF1+1)
M/(PF0+1)
PF0
政策評価(06,11,10)三井
PF0qF+qE=M
PF1
qF
9
プライマリー・マーケットにおけるCV, ΔCS, EV
qF=M/(PF0+1)
PF
qF=M/(PF1+1)
Ⅰ= M(PF0-PF1)/(PF0+1)=CV
Ⅰ+Ⅱ= ΔCS
Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ= M(PF0-PF1)/(PF1+1)=EV
・
PF0
Ⅰ
PF1
Ⅱ
Ⅲ
・
qF =M/(PF+1)
M/(PF0+1) M/(PF1+1)
政策評価(06,11,10)三井
qF
10
セカンダリー・マーケットにおけるCV, ΔCS, EV
Ⅳ= M(PF0-PF1)/(PF0+1)=Ⅰ= CV
PE
Ⅳ+Ⅴ= Ⅰ+Ⅱ= ΔCS
←(注1)
Ⅳ+Ⅴ+Ⅵ= M(PF0-PF1)/(PF1+1)=EV
Ⅳ
Ⅴ
PE0 =1
qE =M/(PF1+PE)
Ⅵ
qE =M/(PF0+PE)
qE0
政策評価(06,11,10)三井
qE1
qE
11
(注1)
 M


Ⅴ   
 PF 1   PE 0 dqE
qE 0

 q E

qE1
M
PF 1 1
M
PF 0 1
 M
 
 PF 1   1dqE

 
 q E
M
PF 1 1
M
PF 0 1
 M
 
 PF 1   1dqF

 
 q F


Ⅱ
政策評価(06,11,10)三井
12
セカンダリー市場がプライマリー市場の便益を反映しない例
u=qFqE :効用関数
PFqF+PEqE=M :予算制約し
⇒
qF=M/(2PF) :(マーシャル)の需要関数
qE=M/(2PE) :(マーシャル)の需要関数
← (注2)
政策評価(06,11,10)三井
13
(注2-1)
qE
u *  u  qF  qE
u  (q
*
F
 qF )  (qE*  qE )  u *

qE*  qE
q E
q
u
u *  qF  qE
*
E
q F* qF*  qF
*
 qF*  qE*
qF
q F
政策評価(06,11,10)三井
14

(注2-2)
u *  u  (qF*  qF )  (qE*  qE )
 qF*  qE*  qF  qE*  qE  qF*  qF  qE
≒ qF*  qE*  qF  qE*  qE  qF*
(*)
u *  qF*  q E*
(**)
(*)&(**)⇒
u  qF  q  qE  q
*
E
無差別曲線 ⇒ Δu=0 ⇒
qF  qE*  qE  qF*  0
q E q E*

 *
q F q F
政策評価(06,11,10)三井
*
F
点(q *F , q *E )を 通 る
無差別曲線上に
点(q *F  q F , q *E  q E )も
存在するとすれば
(♪)
15
(注2-3)
(♪)
qE
*
q

q
E
 *E
点(q *F , q *E )を 通る接線の傾き≒ 
q F
qF
 q E
u
u *  qF  qE
*
E
q
qE*  qE
q F*
qF*  qF
*
 qF*  qE*

qF
q F
政策評価(06,11,10)三井
16
(注2-4)
PF q *E
 *
PE q F
qE
PF qF*  PE qE*  M
PF q F  PE q E  M
q
M
 *
q

 F 2P

F

q *  M
 E 2 PE
u *  qF  qE
*
E
qF
q F*
PF
PE
政策評価(06,11,10)三井
17
PE0=1
の下で、政策の結果として、
PF0 ⇒ PF1
という変化が生じたとする。
そのとき、次の関係が成立する(練習問題)。
 P

EV  M 
 1
P




P
CV  M 1 

P


M P

CS  ln 
2  P 
F0
F1
F1
F0
F0
F1
CV  CS  EV
政策評価(06,11,10)三井
18
このとき、
qE=M/(2PE) :(マーシャル)の需要関数
であったから、
PF0 ⇒ PF1
という変化が生じてもセカンダリー・マーケットの需
要曲線は全くシフトしない。
したがって、
セカンダリー・マーケットの需要曲線のシフトからプラ
イマリー・マーケットで生じた便益を捉えることはでき
ない。
政策評価(06,11,10)三井
19
放流プロジェクトのプライマリー・マーケットでの社会
的余剰の変化が測定できない場合は、セカンダ
リー・マーケットにおける社会的余剰の変化で測定
することができる。
しかし、
その他のセカンダリー・マーケットが存在する場合
(あるいは「釣具」が「釣り」の完全な補完財ではない
場合)は、釣り道具の市場における社会的余剰の変
化分がすべてを反映しているわけではない。
政策評価(06,11,10)三井
20
2.歪みのあるセカンダリー・マーケットにおけるCBA
• 外部性の存在するケース
– 歪みのあるセカンダリー・マーケットに生じる影響
は、プライマリー・マーケットでは補足できない部
分が残る。
• 歪みのある課税がなされているケース
– 税収総額を一定にするという前提の下で、ある市
場への税金の導入は、他の市場での税率を低下
させることができるので社会的余剰がその分増
加することになる。(例)環境税の二重の配当
政策評価(06,11,10)三井
21
3.地域社会の観点からのセカンダリー・マーケットの影響
地域レクリエーション施設(スポーツスタジアムな
ど)の推進派は、セカンダリー・マーケットに大き
な便益が生じる、とともにこれらのプロジェクトが
乗数効果(multiplier effects)を生むと主張する
ことが多い。
しかし、
地域社会の中のセカンダリー・マーケットに歪み
がない限り、地域プロジェクトによるセカンダ
リー・マーケットへの影響、および乗数効果が生
み出す収入をプロジェクトの便益として計算する
ことには慎重でなければならない。
政策評価(06,11,10)三井
22
理由1
プロジェクトの収入が考慮されるべきである
のは、CBAにおいて考慮する主体がごく狭い
地域の住民、あるいは限定されたグループで
ある場合である。
たとえば、魚の放流プロジェクトにおいて、そ
の狭い地域のホテルの料理屋の収入が増え
るかもしれないが、それは他の地域での料理
屋の収入の減少をもたらしているのである。
政策評価(06,11,10)三井
23
理由2
CBAにおいて考慮する主体がごく狭い地域
の住民に限定する場合は、その地域外の住
民に生ずる社会的余剰の増分は考慮の対象
にならない。
たとえば、スポーツスタジアムを建設したとき
に、スポーツチームのファンが享受する社会
的余剰の増分は便益として計算することはで
きない。
政策評価(06,11,10)三井
24
理由3
地域プロジェクトで地域の生産物に対する需
要が増加する場合でも、価格が上昇しない限
り生産者余剰は増加しない。
ただし、地域経済の拡大は、地域企業に規模
の経済を享受できるとすれば、生産コストの
低下を通じて生産者余剰が増加する。
政策評価(06,11,10)三井
25
理由4
• 地域のプロジェクトが大きなプラスの便益をセ
カンダリー・マーケットに生み出すのは、地域
の失業率が高いかあるいは地域の遊休資源
が存在していて、それらの移動には大きな障
壁が存在する場合である。
政策評価(06,11,10)三井
26