第1章 費用便益分析への入門 政策評価(06,09,29)三井 1 <授業の目的> 公共プロジェクトの評価手法である費用・便益分析 の基礎的な理論と実践に関して概観することを目 的としている。 <成績評価の方法・基準> 学年末試験(80%)+宿題orレポート(20%) <参考文献> 1. Boardman, Anthony E. et al., Cost-Benefit Analysis, 2nd Edition, Prentice Hall, 2000 2. 田中廣滋『費用便益の経済学的分析』中央大学出版部、 2003年 政策評価(06,09,29)三井 2 講義内容 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 費用便益分析への入門 費用便益分析に関する考え方の基礎 費用便益分析のためのミクロ経済学の基礎 プライマリー・マーケットにおける便益と費用の評価 セカンダリー・マーケットにおける便益と費用の評価 将来の便益と費用の割引 不確実性の処理(期待値、感度分析、情報の価値) オプション価格とオプション価値 プロジェクト効果の評価方法1(需要曲線の直接推計) プロジェクト効果の評価方法2(顕示選好法) プロジェクト効果の評価方法3(表明選好法) 費用便益分析の実際(国土交通省の技術指針) 空港整備事業の費用対効果分析(静岡空港のケース) 政策評価(06,09,29)三井 3 1.個人の費用・便益と社会の費用・便益 費用・便益分析CBA(Cost-Benefit Analysis) =社会的費用・便益分析 C=社会的費用(Social Costs) B=社会的便益(Social Benefits) NSB=純社会的便益(Net Social Benefits) NSB=B-C 政策評価(06,09,29)三井 (1.1) 4 CBAの適用対象 1. 事業(projects) 2. プログラム(programs) =事業の集まり 3. 政策(policy) =事業orプログラムの集まり 4. 規制(regulations) 政策評価(06,09,29)三井 5 CBAに関する2つの論点 1. 個人間の効用の比較可能性 (政治経済専門家などからの批判) 2. 金銭換算などに関する実務的な問題 (アナリスト、官僚などからの意見) 政策評価(06,09,29)三井 6 2.CBAの目的と活用 目的=社会的意思決定の支援 =効率的な資源配分をより容易にすること 種類 • 事前(ex ante)=事業が実施される前 • 中間(in medias res)=事業の継続中 • 事後(ex post)=事業が終了してから 政策評価(06,09,29)三井 7 表1.1 種類の異なるCBAの有用性 種類 事前 中間 事後 事業の選択の可否 ○ × × 継続 or 見直し or 中止 △ ○ × △ ○ ◎ 有用性 類似事業の 選択の可否 政策評価(06,09,29)三井 8 3.CBAに対する需要 <アメリカ> • • • • 1981年=レーガン大統領がCBAの一般的使用を発令 規制影響分析RIA(Regulatory Impact Analysis) 1994年=クリントン大統領がCBAへの参画を確認 1995年=UMRA(Unfunded Mandates Reform Act) 年度の費用が1億ドルを超える可能性 ⇒ CBAを実施 2000年=TGGAA (Treasury and General Government Appropriation Act) 1. 行政管理予算局にCBAに関する情報を提供する報告書の発行 2. CBAの測定方法を標準化する指導方針の提示 <カナダ> • 「連邦・州フレーザー河川洪水管理協定」=事前CBA 政策評価(06,09,29)三井 9 5.本書の読者 1. CBAの実施方法を知りたい人 2. CBAの解釈方法を知りたい人 政策評価(06,09,29)三井 10 6.CBAの基本的な手順 :コキアラ・ハイウェーの例 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 一連の選択肢を明示する。 便益・費用を計算する当事者の決定 影響力を分類し測定の尺度を選定 事業の影響を数量的に予測 影響を貨幣価値に換算 割引現在価値(純社会的便益)の計算 各代替案の割引現在価値を計算 感度分析を実施 推奨案の作成 政策評価(06,09,29)三井 11 7.官僚的・政治的「認識の目」 • 予算監視者(guardians) ⇒ 高い社会的割引率を使用する傾向 • 歳出者(spenders) ⇒ 低い社会的割引率を使用する傾向 政策評価(06,09,29)三井 12
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