道徳指導案

第 2,3学 年
道 徳 の 時 間
指導者
学 習 指 導 案
T1 布目
京子
T 2 高橋
純
1.主題名
自然を大切に
3−(1) 自然愛・動植物愛護
2.資料名
役内川のやっくん
(自作)
3.主題設定の理由
主題について
児童について
児童が生活している秋ノ宮は,山間部の自然豊か
(2年 男子5名,女子1名 計6名)
な地域である。本校では,学校林活動が古くから行
(3年 男子1名,女子3名 計4名)
われ,児童は杉の植林・育林活動を通して,山や森
2,3年生ともに自然の中で遊んだり,自然の
林のすばらしさにふれる機会が多い。地域の財産と
ものに触れたりすることが大好きである。2年生
して大切に守られてきた山林は,建築材料として杉
は生活科で,おたまじゃくしを育ててカエルにな
の木を生産するのみではなく,天然のダムとしての
るまで世話をし,自然に帰す活動を行った。昆虫
保水や地滑りなどの災害を防ぐ役割も担っている。
などの生き物が大好きで,家でも飼育をしている
また,地域の役内川には,汚染の少ない水にしか生
子供達である。しかし,最後まで世話を続けられ
息しない魚や昆虫などがたくさん見られ,豊かな自
ないので,生き物の命を大切に考えてほしいとの
然が身近に感じられる場所となっている。
願いをもっている家庭もある。
しかし,昔は豊富に見られた生き物も現在は限ら
3年生は,理科の学習でチョウの卵を見付け,
れた場所でしか見られず,依然として生活排水など
アオムシの世話をしたりした。また,校内でのヤ
が川に流れ込んでいるのも事実である。自分達の生
マメの卵の観察や世話にも積極的に取り組んだ。
活を見直し,自然との望ましい共存を図っていくこ
水温や孵化数などを記録しながら,毎日の変化を
とが,今人間に科せられた大きな課題であると言え
観察してきたので,特にヤマメに対する愛着が強
る。今の児童期では学校林や福祉などの体験活動と
く,自然に中でたくましま生きていってほしいと
の関連を図り,自然環境や動植物に対して,愛情を
の願いを強くもっている。
もって守っていこうとする態度を育てていくことが
6月の放流活動には2学年とも参加し,稚魚を
大切である。身近な役内川に生きていくヤマメに共
一匹一匹大切に川へ放した。大きな川の中で小さ
感し,その命を大切に感じることから,自然や動植
なヤマメたちが生きていくことへの不安を訴えた
物を愛し,大切にしようとする心が育っていくもの
りしていた。その活動を想起し,小さな生命を守
と考え,本資料を準備した。
っていこうとする態度につなげていきたい。
支援について
この資料は,児童が毎年秋から春にかけて実際に観察・放流しているヤマメ(卵∼稚魚∼放流)を主人
公にした自作資料である。小さな卵から孵化し,狭い水槽の中で身を寄せあいながら大きくなっていく稚
魚の一匹「やっくん」が自然を夢見て成長し,その後,役内川に放流される。しかし,心地よさを味わっ
たのもつかの間,人間の捨てたゴミによって瀕死の状態になってしまうが,遊びに来た子供たちの手によ
って命を救われるという話である。
1学期の道徳の時間に,「おいたてられた2ひきのカエル」という資料で,きれいな水を求めてさまよ
う2ひきのカエルを通して,生き物が元気に暮らせる環境について考えることができた。また,特別活動
のクリーンアップの経験を通して,自然を汚すことはよくないということも感じている子供たちである。
しかし,自分達の生活と生き物や自然との結び付きについては意識することが少ないようである。ここで
は,自分達の放流したヤマメの稚魚を,自然の生命の代表としてとらえ,かけがえのない小さな命を育ん
でいくためには人間としてしなければならないことがあることを感じさせたい。そのために,自分達の身
近な役内川を舞台にしたヤマメの役割演技を取り入れたいと考えている。一人一人がヤマメの「やっくん」
になって,その心情を言葉にすることで共感できるのではないかと思う。苦しんでいたところを助けられ
たときの気持ちをペープサートを使って,T 2 が引き出し役になりながら話させたい。2年生にはやっく
んの心情に寄り添いながら川をきれいにすることの必要性を感じさせ,3年生には自然に目を向けて人間
のするべきことを考えさせるような補助発問や役割演技など場の工夫もしたい。
4.本時との関連
【道徳の時間】
主題名 しぜんは友だち 3-(1)
資料名 おいたてられた2ひきのカエル
ねらい 自然の中で生きている生き物に
対する愛情をもち,守っていこ
うとする心を育てる。
事
本
【道徳の時間】
主題名 自然のすばらしさ 3-( 1)
資料名 カワセミとにじ
ねらい 自然の美しさや大切さを感じる
ことで,自然や動植物を大切に
していこうとする態度を育てる。
前
事
後
時
【特別活動】
主題名 クリーンアップ
ねらい マナーやルールを守ることの大
切さを理解し,また地域の一員
としての自覚をもって自分達の
住んでいる地域をきれいにする
活動に進んで参加する。
【道徳の時間】
主題名 大切ないのち 3-(2)
資料名 もりあおがえるのすむ山
ねらい 自然の中で一生懸命生きている
命の存在を知り,生命を大切に
しようとする心情を育てる。
5.本時の実際
ねらい
おなかいっぱいに水を吸い込んだときのやっくんの気持ちを考えることによって,自然や動物
を愛し,自然環境を大切にしていこうとする態度を育てる。
展開の大要
学習活動と主な発問
児童の思い
教師の支援
資料
準備
(板書)
活動の
写真や
児童の発言を黒 和やかな雰囲気 手 紙 な
板に書き留める。 作りをする。
ど
T1
1. 稚魚の放流の体験を思
い出す。
T2
(発問)
役 内川に稚魚を放流 ・天気がよくて暑い日だった。
した ときのことを思い ・稚魚がかわいかったよ。
出して発表しましょう。 ・川に放したら,喜んでいるみた 簡単に取り上げて,あまり深入りせ
いだった。
ずに資料に入る。
・すぐに泳がないで,石のかげに
隠れていた魚もいたなあ。
2.「 ヤ マ メ の や っ く ん 」
を 読んで話し合う。
水そうの中でやっくん
は, どんなことを考え
ていたでしょう。
資料を読む。
・たまごのからや水そうはせまい
けど,ここはみんなと一緒だか
ら安心だ。
・あたたかくなってきたから,冷
たい水の中をおよぎまわりたい
な。
・広いところに行きたいよ。
(発問)
水そうのせまさ
やつらさを感じ
させ,自然の中
で泳ぎ回りたい
気持ちに共感さ
せる。
背景やペープサ
ートの操作をす
る。
(板書)
児童の発言から
キーワードにな
りそうな言葉を
黒板に書いてい
く。
資
料
お話ボ
ックス
ペープ
サート
やっくんは,川に入っ
てど んな気持ちがした
でしょう。
き れいな流れにかえ
った やっくんは,人間
にど んなお願いをした
いでしょう。
・せまい水そうとちがい,水がつ
めたくてきもちいいな。水がき
れいでうれしいな。
・広くてたっぷりあそべるぞ。
・少しこわいなあ。一人で生きて
いけるかなあ。
・これからどんなことがおきるの
かな。心配だなあ。
初めは不安を感
じていたが,冷
たくてきれいな
水の気持ちよさ
を感じているや
っくんの気持ち
をとらえさせる。
(補助発問,役割
・ありがとう。きもちのいい水に ( 中心発問/ 板書) 演技補助)
放してもらってよかった。
2年生にはやっ 児童が演技しな
・ごみなどがないきれいな水で泳 く ん の 願 い を 感 が ら 話 し や す い
ぎ回りたいよ。
じさせ,3年生 ように,相手を
・川を汚す人間,ぼくたちを助け に は 自 然 を 汚 し したり助言した
てくれる人間,どっちが本当な て い る 人 間 の こ
する。
のかな。
とや自分達がし
板書)
なければならな
ければことにつ
いて考えられる
ようにする。
3.自分が放流した稚魚に ・助けてもらってよかったね。
自然の中で生きていくヤマメの稚魚
会ったら言ってあげたい ・がんばって生きていってね。
の気持ちに共感させ,優しい言葉を
ことを考え発表する。
・大きくなって帰ってきて下さい。 かけられるよう言葉かけをする。
・川を汚さないようにがんばるよ。
4.漁業組合長さんの話を
聞く。
自然を大切にしないと魚や虫など
の生き物が生きていけない。
共感しながら聞ける雰囲気作り
役内川や秋ノ宮の山にも生き物が をする。
いるからきれいにしたいな。
評価
(1)川(自然)を大切にすることに気付き,汚さないようにしようとしている。
(2)小さな動物も自分達と同じ心をもっていることに気付き,優しい心で接しようとしている。
(3)ねらいにかかわって,自分のよさや友達のよさを理解できている。
CD
資料分析
「ヤマメのやっくん」
3−(1)自然・動植物愛護
◎ねらい
自然に親しみ,自然や動植物を大切にしようとする心を育てる。
【主要場面】
【登場人物の心の動き】
【児童の心の動き】
【発問案とその意図】
やっくんがたまごか
ら産まれて,早く川
で泳ぎたいとねがっ
ている。
たまごのからや水そうはせまいな
あ。でもみんなと一緒で安心だよ。
あたたかくなってきたから,冷た
い水の中をおよぎまわりたいな。
広いところに行きたいよ。
たまごからかえってよかった
ね。ちぎょはかわいいいね。
エサをたべてどんどん大きく
なってね。
水そうの中はせまくてくるし
そうだね。
水そうのせまさやつらさを感
じさせ,自然の中で泳ぎ回り
たい気持ちに共感させる。
やっくん達は役内川
に連れて行かれて,
気持ちよく泳ぎ回っ
ている。
せまい水そうとちがい,水がつめ
たくてきもちいいな。
広くてたっぷりあそべるぞ。
少しこわいなあ。一人でだいじょ
うぶかな。
これからどんなことがおきるのか
な。
冷たい水は気持ちがよさそう
だね。
狭い水そうから,広くて気持
ちのいい役内川に放流されて
よかったね。
きれいな水でうれしいな。
やっくんは,川に入ってどん
な気持ちがしたでしょう。
初めは不安を感じていたが,
冷たくてきれいな水の気持ち
よさを感じているやっくんの
気持ちをとらえさせる。
やっくんがごみだら
けの川で,くるしが
っていたところを助
けてもらう。
きたない水じゃ生きていけない
よ。助けて。
ありがとう。きもちのいい水に放
してもらってよかった。
ごみなどがないきれいな水で泳ぎ
回りたいよ。
ごみだらけの川じゃやっくん
がかわいそうだよ。
助けてあげた子供たちはいい
ことをしたね。
水をよごさないようにしたい
な。
助けてもらったやっくんは,
人間にどんなことを言いたい
でしょう。
自然の中で生きている小さな
生命にも目を向けて,大切に
する心をもてるようにする。
【関連
価値】
やっくんは水そうの中でどん
なことを考えていたでしょう。
生
命
尊
重
公
徳
心
自作資料
「役内川のヤマメ」
「役内川のやっくん」
ぼくは,役内川にすんでいるヤマメのやっくん。 秋の終わり,ぼくたち兄弟は,お母さんのお
なかから次々に生まれてきた。まだ小さいたまごのぼくたちは,水そうのなかでかたをよせあって,
からをやぶる日を楽しみにしていた。でも,外はまだまだ寒い冬。大きな川を泳ぎ回る日を夢見て,
小さな水そうの中でじっと待っていた。
そして,春。あたりの雪はどんどん少なくなり,あたたかい日差しが水そうにもあたりはじめた。
いよいよたまごのからをやぶって,ぼくたちは外の世界にでていった。水そうは,思ったより広く
て,ぼくたちは小さな体をよせあって,いっしょにすごした。えさも食べられるようになったよ。
日差しはどんどん強くなり,水がぬるくなってくると,ぼくたちはもっと広くて,気持ちのいい
大きな川に行っておよぎたくなってきた。
「ここはせまいね。
」
「うん。もっと広くてのびのび泳ぎ回れるところに行きたいね。」
夏の初めの役内川は,強い日差しにてらされてきらきら光ってまぶしかった。水がとてもきれい
だ。ぼくたちは,バケツに分けられて,川岸に連れて行かれた。いよいよ,川にはなされる。
「こわいよ∼。
」
「だいじょうぶ,いい気持ちだよ。」
生まれてはじめて入る役内川の水は,冷たくてとても気持ちがよかった。ちぢこまっていた体がぐ
んぐんのびていくぞ。
「みんな,元気でね。
」
「がんばって大きくなってね。」
子どもたちも手を振ってくれる。
「今までありがとう。
」
ぼくは,くるっとしっぽをひるがえして,役内川の流れの中にもぐった。水そうの中とはちがい,
速い流れに流されながらも,なんとか石のかげに身をかくして休むことができた。
落ち着いてあたりを見回すと,川岸には,いろいろなゴミが流れ着いている。空き缶,ビニール
袋,たばこのすいがら・・・。水がにごって息が苦しい。ぼくは,石のかげで息ができなくて,お
なかを上にしてういてしまった。
そこへ,小さな男の子が二人やってきた。
「このヤマメ,くるしそうにしているよ。」
「どうしたのかな。
」
と言って,ぼくをそっとすくって,冷たくてきれいな水の流れの中にはなしてくれたんだ。
ぼくは,心の中で
「ありがとう。
」
と言って,気持ちのいい流れの中で,おなかいっぱいに水をすいこんだ。