- 12 - 2 健全な心 (1) 授業での取り組み ① 心に響く道徳授業の展開 ア

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健全な心
(1) 授業での取り組み
① 心に響く道徳授業の展開
ア 「 心に 響く 授 業」「本 音で 語る 授業 」を 目指 し, また ,心 のア ンケ ート の 実施に
より,明らかになった本校児童の道徳的価値の低い項目を高める授業実践を重点に
置いて取り組むことにした。様々な生活経験,体験活動の中で児童が書いた作文や
感想,教師の観察等をもとにした児童の実態にあった,自作資料(既資料の改作を
含む)を使用すれば,児童の共通体験から,共通の話し合いの土俵にのせることが
できると考えた。
イ 共通の話し合いの土俵にのった児童から活発な話し合いを導くための発問を工夫
したり,役割演技,ペープサート,資料提示(紙芝居)等授業展開を工夫したりす
ることにより,本音を出し合わせ,話し合い活動を深めた道徳の授業を目指すこと
にした。
ウ 児童の思いが素直に書けるような道徳プリントを作成し授業で使用したり,心の
ノートを道徳の授業をはじめ,利用場面を検討し活用することにより,子どもたち
の道徳的価値を実感させることをねらいにした。
② 授業実践
ア 自作資料を活用した授業実践
o3年4組 道徳 主題名「 他人を思いやって」
o主題のねらい 相手の立場や気持ちを考えて,他人を思いやる気持ちを育てる。
o指導略案
学 習 活 動 の 流 れ と 主 な 発 問 な ど
1 友達に「ごめんね。」と言われた経験を話し合う。
2 資料「ごめんね」の紙芝居を視聴して話し合う。
o作品ができたとき,「ぼく」はどんな気持ちになったとを思いますか。
o作品が落ちているのを見たとき,「ぼく」はどんな気持ちになったと思い
ますか。
oそのとき,「ひろし君」はどんな気持ちになったと思いますか。
o「ひろし君」が「ごめんね。」と言ったとき,初め「ぼく」はどうしたで
しょう。
o「なお君」と「ひろし君」が作品を直してくれているとき,「ぼく」はど
んな気持ちになったでしょう。
・児童を指名し,「ひろし君」と「ぼく」の会話をさせる。
3 生活の中から,「ごめんね。」と言われたときの気持ちについて話し合う。
o家や学校で「ごめんね。」と言われたことを思い出してみましょう。
4 教師の説話を聞き,まとめとする。
o授業の実際
・資料について
本資料「ごめんね」は,明るい心『こわされたタワー』を改作し,児童の日
常活動の中のありがちな失敗を想定した自作資料である。図工の作品を壊され
た 悔 し さ や 失 敗 し た 友 達 に 対 す る 怒 り か ら ,「 ご め ん ね 。」 と 言 わ れ た と き に
なかなか相手を許すことができなかった「ぼ
く」が,やがて相手の気持ちを考えるように
なり,今度は自分の態度を反省するという出
来事である。
・授業の展開について
資料に集中させるため,資料を紙芝居の形
式で提示し,場面ごとに発問を用意した。こ
の時期の児童は,友達となかよくしなければ
という考えはかなり芽生えているが,相手の気
<道徳授業風景>
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持ち を 察す る こと が 難し い。 そ こで 「 ぼく 」の気 持ち の 変化 に 気付 か せる ため
に,道徳プリントの吹き出しに書き込みをさせてから発表させた。中心発問を
行い,同様に自分の考えをまとめさせた後,児童を指名し,「ひろし君」と「ぼく」
の会話をさせた。
・まとめ
資料が自分たちにも起こりうる身近な内容だったので,子どもたちは真剣に
考 え ,「 ぼ く 」 だ け で な く ,「 ひ ろ し 君 」 の 立 場 に も 立 っ て 意 見 を ま と め る こ
とができた。会話形式で考えを何人かに発表させることで,発表しなかった児
童に とっ て も考 え を深 め る機 会と な った よ うだ 。ま た ,道 徳 プリ ン トの 活用
は,一 人一人が自信をもって発表するために有効であった。
イ 授業展開を工夫した授業実践
o4年4組 道徳 主題名 「友達の気持ちを考えて」
o主題のねらい 友達のあたたかい励ましや言葉かけの体験を通して,思いやりの
心情を高め実践化につなげていく。
o指導略案
学 習 活 動 の 流 れ と 主 な 発 問 な ど
1 落 ち 込ん で いる とき に ,友 達 から 声を か けて も らっ た 経験 につ い て発 表 す
る。
2 資料「元気の出る言葉かけ」を読んで話し合う。
o試合に負けてしまったとき,たろう君はどんな気持ちだったでしょう。
o今日の試合でチームの友達から声をかけられたときのたろう君の気持ちは
どうだったでしょう。
o元気のないたろう君に,たかし君はどんな言葉かけをしましたか。
3 言葉かけ体験を行う。
oたろう君役,たかし君役,観察者役になって,グループごとに言葉かけを
してみましょう。言葉をかけられたたろう君の気持ちを考えてみましょう。
4 今までの生活を振り返る。
o授業の実際
・資料について
人間関係を豊かにするには,互いが認め合い,相手の気持ちを思いやる心を
育てることが大切であり,体験的に学ぶ場を積極的に設ける必要がある。本資
料「元気の出る言葉かけ」を読んでがんばったたろう君の気持ちを思いやり,
努力やがんばりを認める言葉かけを考えることは,学ぶ場の一つとなるものと
考えた。
・授業の展開について
この時期の児童は,相手の気持ちを思いやって行動することの大切さはわか
ってはいるが,まだまだ自己中心的で,時には人を傷つけてまで自己主張する
場面も見られる。ミスをして落ち込むたろうの気持ちは,多くの児童が共感で
きたようなので,たかしの立場におかれたとき,どんな言葉かけをするのか,
活発に話し合うことができた。もしそういう場
面に 遭遇したら,ミスをした児 童に対してきつ
い言葉を言いそうな児童も相手の立場 になった
らどうだろうか,と思いやりあふれる言葉かけ
を考えることができた。その後実際に言葉かけ
体験を行うことで,演技とわかっていても,あ
たたかい言葉をかけられたときのうれしさを実
感できたようである。
<言葉かけの場面>
・まとめ
活発で運動好きな児童が多い学級なので,本資料は子どもの心に訴える部分
が多かったようである。授業で実際に言葉をかける疑似体験を行うことにより,
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自分や相手の気持ちに気付いたり,共感したり,自己を振り返ることができ,
これからの行動目標を明らかにするよい機会となった。
ウ 心のノートを活用した授業実践
o6年1組 道徳 主題名 「いのちを考える」
o主題のねらい いのちはかけがえのないものであることを 知り,自他のいのちを
尊重しようとする意欲を高める。
o指導略案
学 習 活 動 の 流 れ と 主 な 発 問 な ど
1 今までのけがの経験を発表する。
2 資料「いのちは,だれのもの?」を読んで話し合う。
o女の子にぶつかったとき,ひろしはどんな気持ちでいたでしょう。
oお母さんは,なぜ泣いているのだろうか。
o電話が鳴ったとき,ひろしやお母さんはどんなことを思ったのだろうか。
3 いのちについて考える。
oも し自 分 が死 ぬ かも し れな い事 故 にあ っ たら ,自 分 や家 族は ど んな思 い を
するだろうか。
4 母親の手記を読んで授業を振り返る。
<心のノートの生かし方>
5・6年用P.72「かけがえのないいのち」(むすめへ)
o教師が読むのではなく,一人一人が自由に読んだときの受け止め方を大切にする。
o心のノートP.66に授業の感想を記入させる。
o「心のノート」活用の実際
まとめの段階で,P.72を開いて子ども一人一人が読む時間をつくり,自分の考
えや気持ちを確かめられるようにした。授業を通して,子どもたちは,いのちは
自分だけのものではなく,家族や人々の思いも受けているかけがえのないもので
あることを知り,自分のいのちだけでなく他者のいのちの大切さを感じとること
ができたようだった。授業のまとめの段階で,交通事故で娘を亡くしたある母親
の手記を読ませ,その母親の悲しみがどれほど深いかを考えさせた。静寂の中,
各自真剣に手記を読んでいた。
道徳 の まと め の段 階 では ,教 師 が「 こう する こ とが 大切 です。」 と考 え方 を強
く示すと高学年の子どもの中には,押しつけられた印象をもつ子どももいる。そ
こで,「このページに今日,話し合ったことを考えるいいお話があるよ。」と「心
のノート」を開けて,
「一人一人で読んで,今日の話し合いを振り返ってみよう。」
と話した。そうすることで子どもたちは自分なりの価値観をつくることができた
ようであった。
(2) リラックスタイムの実践
昨年度,不注意や不適切な行動による校内でのけがや,友達とのトラブルが目立った。
そのため,心を落ち着けて,1日をスタートし,その
日を落ち着いて生活できるようにするよう本年度よ
り ,新 知 っ 子 タ イ ム(8:25-8:40)の 前 に リラ ッ ク スタ
イムを設けることにした。BGMは,自律神経を安定
させる曲を使用することにした。
効果の 検証は,まだこれからであり,保健室来室者
数(けがによる者)を昨年度と比較する予定である。
けがによる来室者の割合が減少した場合は,落ち着い
て生活できるように改善したと考える。
<リラックスタイムの様子>
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・今からリラックスタイムを始めます。
・楽な姿勢で椅子に腰掛けましょう。
・目を閉じて静かに,大きく息を吸ったりはいたりしましょう。
・体の中が空っぽになるように,ゆっくりフウーッと吐きましょう。
・きれいな空気が体中に入るように,ゆっくり吸いましょう。
・頭の中には,あなたの好きな景色や楽しかったことを思い浮かべましょう。
・静かに目を開けて,手をグーパーグーパーと3回くりかえしましょう。
・最後に頭の上で手を組んで大きく伸びをしましょう。
・これでいきいきタイムを終わります。きょうも1日さわやかに過ごしましょう。
〈ナレーション込みで約2分〉
効果の検証は,まだこれからであり,保健室来室者数(けがによる者)を昨年度と比
較する予定である。けがによる来室者の割合が減少した場合は,落ち着いて生活できる
ように改善したと考える。
(3) あいさつ運動の実践
毎 年行 われて いる 小・中 ・地域 が連 携し て実施 してい るあ
いさつ 運動 に加え て, 新しい 取り 組みが 児童か ら提案さ れ,
実施し てい る。そ の中 の一つ が「 あいさ つビン ゴ」であ る。
ビンゴ 用紙 に書か れて いるの は「 低学年 の人に あいさつ をす
る 」「 地 域 の 方 に あ い さ つ を す る 」 な ど 2 5 項 目 。 全 校 児 童
が参加 をし て,書 かれ ている こと が実施 できれ ば○。ど の児
童もビ ンゴ を目指 して ,さわ やか な,元 気のい いあいさ つが
校内や地域に響き渡るという活動である。
3 年生 の児童 は「 ○をそ ろえた くて ,友 達と一 緒にが んば
って集 めま した。 どん どんビ ンゴ をする うちに ,恥ずか しか
ったあいさつが,平気になりました。」と感想を残している。
<ビンゴカード>
(4) 異学年交流
本校の大きな児童会行事の一つである「新知フレンドパーク」は,全校遊び大会のこ
とで,平成19年度,20年度ともに,全校共通テーマとして「健康」を掲げて実施してい
る。平成19年度では,前年度試行した「ミニフレンドパーク」(2年生と6年生による)
を基盤とし,異学年共同作業による「3年生・5年生合同フレンドパーク」を初めて実
施した。体育館を使用して,2学年が,知恵を出し合い企画をし,当日は大成功を収め
た。5年生児童は「3年生をまとめるのは,大変だ
ったけど,一緒にやっていくにつれて,楽しいアイ
ディアを出してくれるなど,必要な存在になった。」
と感想を残している。また,3年生は「すごく頼り
になった。字も上手だし,絵もうまい。とてもやさ
し か っ た 。」 と 言 っ て 休 み 時 間 も 遊 び に く る な ど 交
流を続けている児童も多い。低学年にとっては模範
としての高学年の姿を実感する場,高学年にとって
は思いやりをはぐくみ,教え導く場としての目標を
もち,活動を行うことができた。
<ミニフレンドパーク>
(5) 善行賞
本校では,児童の善行を認め,自発的に善い行いができるように,善行賞を設け,毎
月一回,朝会で表彰している。本年度からは,係活動や委員会などの仕事のがんばりは
当たり前のこととして捉え,善行の基準を本当に自発的に行われたもののみとした。こ
れによって,本年度は,さらにレベルの高い児童の自発的な善行が期待される。
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(6) 委員会活動
低 学年 と高 学年 と のつ なが りを 深め るた めに ,な かよ しフ レン ド委 員会 では ,「友達
と仲よく,友達にやさしく」をスローガンに,常時活動と年2回なかよし集会(大放課)
を企画実施した。
緑の帽子をかぶったお兄さんやお姉さんが,やさしくブランコの乗り方を教えたり,
シーソーの乗り降りを手助けしたりする姿が見られた。やさしく語りかける様子は1年
生にとって高学年が頼もしく感じられ,自覚へとつながっていき,また1年生が高学年
と関わることによって縦のつながりもでき,友達の輪が広がっていった。そして,全校
へ呼びかけ「なかよし集会」へと発展していき,思いやりの心をはぐくむことができた。
〈1年生と遊ぼう〉
「遊び道具の貸し出し」
〈なかよし集会〉
「ボール送り」
(7) 地域とのつながり
① 親子除草作業
毎年,8月下旬 の土 曜日に親子除草作業を実施してい
る。除 草作業を通して,勤労の心をはぐくむと同時に,
2学期 の学校環境を整えるために,保護者の協力のもと
行って いる。子どもは,通学団ごとに,保護者と一緒に
登校し ている。除草作業を一緒に行うことにより,地域
の子ど もを各地域で見てもらったり,家の近くの子ども
を知ってもらったりする目的がある。指定された除草区域では保護者同士が打ち解け,
仲良く談笑しながら作業する姿や近所の子どもたちに語りかける姿が見られる。約1
時間の作業で,校庭の草がみるみるなくなり,保護者もやり遂げた充実感と満足感で
いっぱいである。親子で取り組むこのような行事はとても大切である。
② 読み聞かせボランティア
PTA図書部員が,毎年読み聞かせボランティアを募集している。ボランティア会
員と校区にある「ひよっこ広場」会員が毎月,第3木曜日の新知っ子タイム(8:25∼
8:40)に1∼4年生までに本の読み聞かせを行っている。ボランティア会員は20名前
後で,意欲的に活動し,月1回の読み聞かせを子どもたちも楽しみにしている。
春の読書週間や秋のイベントとして,手作りの大型紙芝居を上演している。子ども
たちは紙芝居に夢中になり,人気を博している。PTAの人たちは行事に積極的で,
学校にもとても協力的である。
③ 金管部活動
日ごろいろいろお世話になっている地域の人たちに,
自分たちの演奏を聴いてもらおうと,地域で行われた
二つのイベントに参加した。休日にもかかわらず部員
の参加率は9割ほどで積極的に参加できた。
9月1日に中部中校区の公民館祭りの一環としてふ
れあいプラザでコンサートを行った。演奏曲目は「オ
リーブの首飾り」と「ルパン3世のテーマ」であ
<敬老会での演奏>
った。会場は満席状態で,部員たちは初めての参加ということもあり,少し緊張して
いたが保護者や友達の声援を受けて一生懸命演奏ができた。
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9月17日に本校の体育館で行われた「敬老会」である。会場はお年寄りでいっぱい
であった。部員はさわやかな汗をかきながら一生懸命演奏をした。本校出身のお年寄
りもみえて,校歌を演奏したときには和やかな雰囲気になった。この演奏会を通して,
地域の人たちとのつながりを深めることができた。
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