平成 27 年度 解析力学 講義ノート [9](担当:井元信之) 2015 年 6 月 11 日 前回の演習問題の答 [問 3.3]天井走行クレーンに関して、(3.55) を導け。 解答:L = m 2 ˙2 ! θ 2 + m!θ˙y˙ 0 cos θ + m 2 y˙ 2 0 + mg! cos θ より ∂L = m!2 θ˙ + m!y˙ 0 cos θ ∂ θ˙ ⇒ d ∂L = m!2 θ¨ + m!¨ y0 cos θ − m!y˙ 0 θ˙ sin θ dt ∂ θ˙ ∂L 平成 27 年度 解析力学 講義ノート [9](担当:井元信之) = −m!θ˙y˙ sin θ − mg! sin θ 0 ∂θ ラグランジュの運動方程式より (6) と (7) 最右辺同士を等しいとおくと 前回の演習問題の答 ⇒ (2) 2015 年 6 月 11 日 m!2 θ¨ + m!¨ y0 cos θ = −mg! sin θ [問 3.3]天井走行クレーンに関して、(3.55) を導け。 左辺第二項と右辺を移項して交換し両辺を m!2 で割るとただちに (3.55) を得る。 解答:L = m !2 θ˙2 + m!θ˙y˙ 0 cos θ + m y˙ 2 + mg! cos θ より 2 2 0 ∂L = m!2 θ˙ + m!y˙ 0 cos θ ∂ θ˙ (1) d ∂L = m!2 θ¨ + m!¨ y0 cos θ − m!y˙ 0 θ˙ sin θ dt ∂ θ˙ ∂L = −m!θ˙y˙ 0 sin θ − mg! sin θ ∂θ ラグランジュの運動方程式より (1) と (2) 最右辺同士を等しいとおくと m!2 θ¨ + m!¨ y0 cos θ = −mg! sin θ (3) (1) (2) (3) 左辺第二項と右辺を移項して交換し両辺を m!2 で割るとただちに (3.55) を得る。 3.2. 時間を含む扱い 51 電磁場中の荷電粒子のラグランジアン 荷電粒子のラグランジアン (3.100) をベクトルポテンシャル A で表現しておく。静止系(慣性系)のデカル ト座標でそれは L= m 2 |˙r| + e (A · r˙ ) − eφ 2 (3.107) で与えられる。このラグランジアンからローレンツ力が導かれることを見る。まず ∂L = mx˙ + eAx , ∂ x˙ より d ∂L dt ∂ z˙ ∂L = mz˙ + eAz ∂ z˙ " ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ax + x˙ + y˙ + z˙ ∂t ∂x ∂y ∂z ! " ∂Ay ∂Ay ∂Ay ∂Ay = m¨ y+e + x˙ + y˙ + z˙ ∂t ∂x ∂y ∂z ! " ∂Az ∂Az ∂Az ∂Az = m¨ z+e + x˙ + y˙ + z˙ ∂t ∂x ∂y ∂z d ∂L = m¨ x+e dt ∂ x˙ d ∂L dt ∂ y˙ となる。一方 ∂L = my˙ + eAy , ∂ y˙ ∂L =e ∂x ∂L =e ∂y ∂L =e ∂z ! ! ! ! ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ x˙ + y˙ + z˙ − ∂x ∂x ∂x ∂x ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ x˙ + y˙ + z˙ − ∂y ∂y ∂y ∂y ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ x˙ + y˙ + z˙ − ∂z ∂z ∂z ∂z " " " と計算されるので、まず x に関するラグランジュの運動方程式は 1 ! " ! " ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ m¨ x+e + x˙ + y˙ + z˙ = e x˙ + y˙ + z˙ − ∂t ∂x ∂y ∂z ∂x ∂x ∂x ∂x (3.108) (3.109) (3.110) (3.111) (3.112) (3.113) (3.114) (3.115) ∂L =e ∂y ∂L =e ∂z ! ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ x˙ + y˙ + z˙ − ∂y ∂y ∂y ∂y ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ x˙ + y˙ + z˙ − ∂z ∂z ∂z ∂z (3.113) " (3.114) と計算されるので、まず x に関するラグランジュの運動方程式は ! " ! " ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ax ∂Ay ∂Az ∂φ m¨ x+e + x˙ + y˙ + z˙ = e x˙ + y˙ + z˙ − ∂t ∂x ∂y ∂z ∂x ∂x ∂x ∂x 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — 52 すなわち " ! " ! " ∂φ ∂Ax ∂Ay ∂Ax ∂Ax ∂Az + +e − y˙ − e − z˙ (3.116) ∂x ∂t ∂x ∂y ∂z ∂x # $ # $ ˙ (2) ˙ = −e ∇φ + A + e— y˙ (∇ × A)z − ez˙ (∇ × A)y = −e ∇φ + A + e [˙r × (∇ × A)]x(3.117) 速度に依存する力 粘性力 散逸関数 m¨ x = −e 3.3 3.3.1 (3.115) ! x x 同様に 粘性のある流体中を物体が移動するとき、粘性抵抗が働いて物体を静止させようとする。この粘性抵抗によ # $ ˙ m¨ y = −e ∇φ +v A + e [˙r × (∇ × A)]y (3.118) る力 F は、物体の移動速度 の大きさに比例し、向きは逆向きとなる。流体中に限らず、このような特性を持 y # $ 10 つ制動力は粘性抵抗または摩擦抵抗 ˙ m¨ z = −e ∇φ + A + e と呼ばれる。このような制動力は物体の速度ベクトルと垂直でなく平行 [˙r × (∇ × A)]z (3.119) z な成分を持つため、仕事をする11 。この点がローレンツ力やコリオリの力と異なる。 となるので、 (3.117)(3.118)(3.119) をまとめると いま質点系の座標 x の速度 x˙ に比例した制動力を F ! とする。比例定数を k (正の値)とすると、 i i i i (˙r2,×· B) Fi! = −km¨ ˙ri = , eE(i+=e1, · · , n = 3N ) ix (3.120) (3.121) となってローレンツ力が導かれる。ここで E = −∇φ − (∂A/∂t) および B = ∇×A を使った。 となる。力にプライムを付けているのは保存力でないことを示すためである。また一つの質点について x 方向、 y 方向、z 方向の比例係数が異なるのは自然な系ではないが、質点ごとに異なることは普通にあるので、一つ の k でなく i ごとに ki としている。微小変位 dxi に伴い粘性抵抗力が質点系にする仕事は δ!W = ! i Fi! dxi = − ! ki x˙ i dxi (3.122) i となる。微小仕事の δ にプライムを付けたのは全微分でないことを示すためである。ここで、通常のポテンシャ ル U の場合力 Fi を −∂U/∂xi によって導くのを模して、「速度に依存する散逸的ポテンシャル」を 52 D≡ 1! ki x˙ 2i第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 (3.123) — 2 i 3.3 散逸関数 で定義し、これを散逸関数( dissipation function)と呼ぶ。そうすれば粘性抵抗力は 3.3.1 速度に依存する力 (2) — 粘性力 Fi! = − ∂D (3.124) ∂ x˙ i 粘性のある流体中を物体が移動するとき、粘性抵抗が働いて物体を静止させようとする。この粘性抵抗によ と表される。これが一般座標 qj に移って一般力 Q!j になっても Q!i = −(∂D/∂ q˙i ) となってくれれば、機械的計 る力 F は、物体の移動速度 v の大きさに比例し、向きは逆向きとなる。流体中に限らず、このような特性を持 算をするだけでよいのでありがたいわけであるが、それは次のように示される。 つ制動力は粘性抵抗または摩擦抵抗10 と呼ばれる。このような制動力は物体の速度ベクトルと垂直でなく平行 な成分を持つため、仕事をする11 。この点がローレンツ力やコリオリの力と異なる。 3.3.2 一般座標における散逸関数と散逸の一般力 いま質点系の座標 x の速度 x˙ に比例した制動力を F ! とする。比例定数を k (正の値)とすると、 i の一般力 i i i を (3.22) で定義する。この式で定義しておけば、自動的に (3.23) 式すなわち Fi! = −ki x˙ i , (i = 1, 2, · · · , n = 3N ) (3.121) ! δ!W = Q!j dqj (3.125) となる。力にプライムを付けているのは保存力でないことを示すためである。また一つの質点について x 方向、 j Fi! Q!j y 方向、z 方向の比例係数が異なるのは自然な系ではないが、質点ごとに異なることは普通にあるので、一つ を満たすのであった。これを導いたときの (3.20)∼(3.23) 式の議論は力が保存力か否かとは無関係に成立する の k でなく i ごとに ki としている。微小変位 dxi に伴い粘性抵抗力が質点系にする仕事は ものであったので、いま考えている粘性抵抗力でも成立する。ではその定義式 (3.22) と (3.124) を使うと、 ! !# ! !i " δ! W =! ∂xi Fi! dx = −∂D ki∂x x˙ i idxi ∂D (3.122) ! Qj = Fi i = − i =− (3.126) ∂qj ∂ x˙ i ∂qj ∂ q˙j i i となる。微小仕事の δ にプライムを付けたのは全微分でないことを示すためである。ここで、通常のポテンシャ となる。最後の等式では 5 月 30 日の演習問題の一般論 (∂xi /∂qj ) = (∂ x˙ i /∂ q˙j ) を使った。 ル U の場合力 Fi を −∂U/∂xi によって導くのを模して、「速度に依存する散逸的ポテンシャル」を D≡ 1! k x˙ 2 2 i (3.123) i i 10 動摩擦は速度に依らず垂直抗力に比例した大きさで制動される現象であるが、用語として摩擦抵抗という場合、粘性抵抗を指すこと が多い。 11 物体の速度低下により余ったエネルギーは、通常は熱として散逸する。うまく充電に回す機構も考えられるが。 で定義し、これを散逸関数(dissipation function)と呼ぶ。そうすれば粘性抵抗力は Fi! = − ∂D ∂ x˙ i (3.124) i i となる。微小仕事の δ にプライムを付けたのは全微分でないことを示すためである。ここで、通常のポテンシャ ル U の場合力 Fi を −∂U/∂xi によって導くのを模して、「速度に依存する散逸的ポテンシャル」を D≡ 1! ki x˙ 2i 2 i (3.123) で定義し、これを散逸関数(dissipation function)と呼ぶ。そうすれば粘性抵抗力は Fi! = − ∂D ∂ x˙ i (3.124) と表される。これが一般座標 qj に移って一般力 Q!j になっても Q!i = −(∂D/∂ q˙i ) となってくれれば、機械的計 算をするだけでよいのでありがたいわけであるが、それは次のように示される。 3.3.2 一般座標における散逸関数と散逸の一般力 Fi! の一般力 Q!j を (3.22) で定義する。この式で定義しておけば、自動的に (3.23) 式すなわち δ!W = ! Q!j dqj (3.125) j を満たすのであった。これを導いたときの (3.20)∼(3.23) 式の議論は力が保存力か否かとは無関係に成立する ものであったので、いま考えている粘性抵抗力でも成立する。ではその定義式 (3.22) と (3.124) を使うと、 ! ∂xi ! " ∂D # ∂xi ∂D ! ! Qj = Fi = − =− (3.126) ∂qj ∂ x˙ i ∂qj ∂ q˙j i i となる。最後の等式では 5 月 30 日の演習問題の一般論 (∂xi /∂qj ) = (∂ x˙ i /∂ q˙j ) を使った。 10 動摩擦は速度に依らず垂直抗力に比例した大きさで制動される現象であるが、用語として摩擦抵抗という場合、粘性抵抗を指すこと が多い。 11 物体の速度低下により余ったエネルギーは、通常は熱として散逸する。うまく充電に回す機構も考えられるが。 3.4. 剛体の運動 53 さてこの Q!j はもともとポテンシャルに収まり切れなかった力すなわち (3.33) 式の Q!j に相当するものであ るから、上式を使って (3.33) 式をもう一度書くと、 ! " d ∂L ∂L ∂D − =− dt ∂ q˙j ∂qj ∂ q˙j (3.127) となる。 [問 3.4]xy 平面上に二点 P(座標は X1 , Y1 )と Q(座標は X2 , Y2 )がある。原点 (0, 0) を O とするとき、三角形 OPQ の面積を求めよ。ただし x 軸から測って OP のなす角より OQ のなす角の方が大きい場合(すなわち P から Q に 向かって原点を左に見る場合)に正となるようにせよ。 xy 平面を動く点の軌跡を、時間 t を媒介変数として x(t), y(t) で表す。時刻が t から t + ∆t の間の軌跡は、 ∆t が小さければほぼ直線と見なせる。このとき三点 (0,0) と (x(t), y(t)) と (x(t + ∆t), y(t + ∆t)) が作る細長い 三角形の面積を求め、∆t で割ってやり、∆t → 0 の極限をとると 1 2 (xy˙ − y x) ˙ となる。これを面積速度と呼ぶ。 [問 3.5]面積速度を極座標で表せ。 [問 3.6]二次元の xy 平面内の中心力場で kx = ky ≡ k の粘性抵抗力を受けながら動く質点の運動方程式を立て、面積 速度の時間変化を求めよ。一般座標は極座標とせよ。 3.4 剛体の運動 剛体の自由度は 6 である。剛体を代表する剛体内の 1 点(O とする)の空間座標と、剛体の向きを指定する オイラー角 3 つで自由度 6 である。もし O の位置が時間的に変化しないときは、オイラー角に対する運動方程 式で剛体の運動が決まる。その代表はコマである。 [問 3.6]二次元の xy 平面内の中心力場で kx = ky ≡ k の粘性抵抗力を受けながら動く質点の運動方程式を立て、面積 速度の時間変化を求めよ。一般座標は極座標とせよ。 3.4 剛体の運動 剛体の自由度は 6 である。剛体を代表する剛体内の 1 点(O とする)の空間座標と、剛体の向きを指定する オイラー角 3 つで自由度 6 である。もし O の位置が時間的に変化しないときは、オイラー角に対する運動方程 式で剛体の運動が決まる。その代表はコマである。 3.4.1 オイラー角 剛体の向きを決めるためには、剛体に付随する直交座標軸 ξ, η, ζ の原点 O(これはその剛体を代表する 1 点) の位置を決める必要があるが、それを空間座標 x, y, z で指定することにより、まず自由度を 3 つ使う。次は O を含む回転軸の向き θ, φ を決める必要がある。回転軸は通常 ζ 軸とするが、θ, φ の指定によりその向きが決ま る。これで自由度 2 つを使う。最後に、その軸の回りに回す角度 ψ を決める必要がある。これで自由度は合計 6 である。この θ, φ, ψ をオイラーの角という。 O の位置は決めたとして、θ, φ, ψ を決める手続きは次の通りである。まず剛体の ξ, η, ζ 軸の向きを空間座標 x, y, z に合わせる。次に z 軸の回りに xy 平面を φ だけ回す。新しい座標軸を x! y ! z ! とすると、z ! 軸は z 軸と同 じだが、xz 平面は回転して青で示した x! z ! 平面になる。次に y ! 軸の回りに x! z ! 平面を θ だけ回転する。新し い軸を x!! y !! z !! 軸とすると、この回転により y !! 軸は y ! 軸と同じだが、z ! 軸は z !! 軸まで倒れるとともに、x! 軸 も x!! 軸まで下に下がる。x! y ! 平面は赤で示した x!! y !! 平面まで回転する。この z !! 軸に剛体の ζ 軸を合わせる。 最後に z !! 軸(ζ 軸)の回りに x!! y !! 軸を赤い面内で ψ だけ回す。最終的にできた軸を剛体の ξηζ 軸とする。 マの運動方程式 x y z 第3章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 η ψ y ! y !! !"# z! z !! ξ φ θ η ζ ψ ξ φ θ φ θ ζ ψ x y !"#z φ θ ψ φ θ ψ φ θ ψ x !"#y z ξ η x!! 図 3.3: オイラー角 ζ x!
© Copyright 2024 ExpyDoc