康な一生を終えることであるをと言われている。 - 日本看護研究学会

糖 尿 病 の 教 育 入 院 を 考 え る
About
the lnstructive Hospital
Stay
lellitus。
of Patients with Diabetes■
山 口 桂
子
KeikO Yamaguchi
ト
倉 持
Tomo
田 代
Junko
ll■ 子
池
と
Toshiko
Koike
小
Tashiro
し子
モ
Kuramochi
に至 らない例 に しば しば遭遇する。
I
緒
言
私達 は この よ うな症例 の看護過程 を分析 するこ
『糖尿病の治療 目標 は多彩 な合併症 を予防 し,
糖尿病 でない人 と変 ることな く社会生活 を送 り健
であるをと
康な一生を
終えること
言われている。
この 目標 を達 成 す べ く長期間 にわ た って コ ン トロ
ール を良好 に保 つ ためには ,患 者 自身 とその家族
が患者 の病状 を正 し く認識 ,理 解 して意欲 的 に治
療 に と りくむ こ とが第 一 に 不 可欠 な条件 で あ り,
とに よ り, ¬ 股イ
ヒしつつある教育 入院制度 の中 で
既製 のプ ログラムに あてはま らない患者 に対 し効
果的 に指導 を行 う方法 につ いて検討 したい と考え,
本研究 に と り組 んだ。
正
研
究
方
法
ま た,私 達 医療 スタ ッフは彼等 が正 し く自己管理
1 対 象 および 方法
一症例の看護過程 を retrOspectiveに
分析 し理
で きるよ うに最 大限 の援助 を しな くては な らない 。
解力 の低い忠者 に対 す る学習 の動機 づ け を知 り効
この よ うな中 で 『糖尿病 治療 は外来 で行 うこ と
果的 な指導 ,看 護 のあ り方 を検討す る。
が原 則ち としな が ら も『糖 尿病 の正 しい知 識 を理
解 し,生 涯続 けな くてはな らな い治療 を実際 に 体
2を
度
験 ,学 習 す る こ とを 目的 とした教育 入院 の市」
Ⅲ
症
例 紹
介
l 患 者紹介
は 国内 で も1960∼閻年頃 よ り試 み られ たが ,現 在
では ,治 療 を始 め る第 一段階 として 多 くの施 設 で
入院期 間
昭和 53年 9月 26日 ∼ 10月29日
と り入れ られ ,そ の方 法 ,プ ロ グラム ,成 果 につ
診 断 名
成 人型 糖 尿病
い て も報 告 され てい る1'3)
職
業
左官 業 (発 病 後 は休 業 ),農 業
学
歴
小学 校終 了 よ り中学校 (新 制 )入 学 に
(
筑 波大学 附 属病 院 におい て も,糖 尿病 治療 の学
43才 男 性
習 を 目的 とす る入院 患者 に対 して ,い か に短 期間
か け て家事 の都 合 で通学 で きず ,中 退
で効果 的 に指 導 す るか に つ いて試行 錯誤 を く り返
して きたが ,現 在 は ,そ の結 果 を指導 手順 と して
とな る。
家族構成
ヒしそれに そ って指導 を行 ってい る。(表1)
文 章イ
しか し,理 解 力 の乏 し さの ために既 製 の プ ログ
ラムゃ 手順 で は効果 を得 られず ,闘 病 意 欲 を持 つ
妻 (40才 ),長 男 (19才 ),長 女 (16
才 ),次 女 (6才
家 族 歴
),い ずれ も健康 。
母親 と姉 に 高血圧 の 既往 があ るが ,糖
尿病歴 は不 明 で あ る。
千葉大学教育学部看護課程
筑波大学附属病院看護部
四大学看 護学研究会雑誌 Vo1 3.%2 1980
糖尿病 の教 育入 院 を考 える
表 1 糖 尿病患 者指 導 プ ロ グラ ム
指
導
項
目
指
1)糖 尿病 とは
スライ ド 2)食
1
医学 的 知 識
(美
追加項 目 )
際
3
的
食事療法のまとめ,
2)検 査法 (尿 糖 ,血 糖 )
際
Э 合併症
経 口糖尿病薬 について
的
。 経 口糖尿病薬 とは何か
。 重 要性 ・… 治療 の基礎
。 内 服 の必要性
。 標 準体重計算法
治
。 日反薬時の注意点
療
。 イ ンス リン療法 の意味
3
。 栄 養素 と食事のバ ランス
。 必 要総 カ ロ リー計算法
。 カ ロ リー,単 位 につい て
。 食 品交換表 の使用法
インス リン療法
。 低 血糖の症状 ,対 処法
。 イ ンス リンの種類 と作用時間
。 毎 日の献立 を表 に記入
。 イ ンス リンの注射 法
・注射部位 , イ ンス リン量
。注射器の扱い 方 と注射法
。 単 位 の計算
治
療
目
実
1)病 態生理 ,症 状
食事療法
実
項
は
の
院
方
後
'退
[:∫ )
ξ
堡
(II霙
事療法
3)日 常生活 について
理解度判定
導
。 ア ル コ ール のカ ロ リー につい て
。 病 院食 と入院前食の比較
(入院前 の平均的 一 日量 の食事量 の計算
。 食 品交換法
・実際施行時 の注意点
運動療法 について
O 退 院后 の献立表 作成
(M写
ク
電
チ
ェ
)
量
ッ
:ぢ
際
F実
まとめ
1)退 院後の 日常生活について
4
(定期検診 の重要性 )
2)退 院時理解度判定
既 往 歴 : 昭和4 8 年 3 月 , 胃 績瘍 の診断 で三分 の
二 胃切除 の手術 を受 けたが , 術 後経過
は順調で約 2 週 間で退 院 した。
3 入 院後 の 治療経過 (表 3)
入院 時 は 身長 1460翻 ,体 重 335K′
とるい そ
うが著 明で あ り,右 顔 面 よ り頭部 に か け て ,帯 状
庖 疹 が み られ た。 自覚 症状 は ,倦 怠感 ,日 渇 ,多
2 現 病歴 ( 表 2 )
・
昭和 4 8 年9 月 , 日 渇 , 下 肢倦 怠感 な どの症状 に
飲 ,多 尿 ,手 足 の しび れ,眼 の ち らつ き,知 覚鈍
麻 ,半 年 前 よ り続 く下痢 (4∼ 5回 /日 )な ど多 く
気 づ き近医を受診 , 糖 尿病 と診断 され た。以後 ,
の訴 えが あ り,動 作 も緩 慢 で強度 の疲 労 感 が感 じ
5 年 間 にわた り経 口糖尿病剤 に よる治療 を受 けた
が血糖 の コン トロ ールが思 わ し くな く症状 もあま
られ た。 入院 時 ,早 朝 空腹 時 血糖備 250%/後
尿糖値 175′ /日 ,血 圧 80-′
り軽 減 しなか った。 さ らに , 昭 和5 3 年 6 月 か ら 8
位 ),脈 拍 60回/分 (整 ),そ の他 の検査 所見 は
月にか けては , 顔 面 に帯状庖疹 が出現 したため同
異 常 な し。
/40_H′
,
(臥
医院 に 入院 し, イ ンス リンによる治療 を受 けたが
以上 よ り, 1)糖 尿病 の 精査 治療 と合併 症 の 発
効果 な く, 昭 和 5 3 年9 月 当院外来受診 , 糖 尿病 の
見 。 2)下 痢 の精査 。 を中心 に治療 が開 始 され た 。
精査 , 治 療 , 学 習 の 目的 で入院 とな る。
入院 中 の治療経過 は 表 3に 示 す とお りで あ るが ,
四大学看護学研究会雑誌 Vo1 3乙
2 1980
llg尿の
病 教 育入院を考 える
表 2
糖 尿 病 の経 過
( 当 院受診 まで )
四大学看護学研究会雑誌 Vo1 3.π 2 1980
糖尿病 の教育入院 を考 える
食事摂取量 が指示 どお りに守 られ るにつれて血糖
コン トロール も良好 にな り,入 院時 にみ られ た諸
症状 は徐 々に改善 してい った。合併症の精査 にお
ぃては自内障 に よる視力低 下 と痛覚反射 ,振 動反
ll■
射低 下な どの神経障害 が発見 されたが共に 尿病
性 の ものであ り,軽 度 であ るとして経過観察 す る
こととな った。ま た,下 痢 については ,整 腸剤 の
ヒ管 に異
内服 で軽快 してお り,精 査 によって も消イ
常な く,こ れ も経 過観察 とな ってい る。
Ⅳ 看 護 の経 過 と分 析
指導 を行 ってい るスタ ッフ間にあせ りや とま どい
がみ られ ,従 来 どお りの方法 では効果 が上 らない
とい う半」
断 より第 一回のケ ースカンフ ァレンスが
ひ らかれた。 ここでは ,
O諸 症状が強 く学習 する体調が不十分 である。
。学習意欲 はややみ られ るよ うにな つて きたが積
極的 ではない。必要性 の理解 も不 十分 である。
。指導内容 を理解 す る力,及 びそれ に要 す る学力
が低い。
な どの問題点があげ られたが,話 し合 いの結果 ,
理 解 してい な くて も治療 に必要な行為 が確実 に実
1 第 1期 (理 解力 を判定 したに とどま った時期 )
施 で きる ことを当初 の 目標 とす ることと した。具
この症例 の 入院に際 し,「 43才の 男性 の糖尿病
ヒ
体的な指導 の方法 としては,内 容 を単純 ,模 式 イ
教育 入院 」とい う事前 の情報 か ら短期間 の 入院で
あることが予測 され たため ,入 院第 一 日目よ り指
導開始 の計画 が たて られた。
しか し,疾 患の概略説明な どの アプ ローチに対
しそれ を反復 して実施 す ること,指 導 の項 目は ,
以 下の よ うに しば って行 うことを確認 した。
本人に対 しては,
0イ ンス リン注射技術 を習得 させる。
して きわめ て反応が鈍 く,「 湿疹 を治 して もらう
。決 め られ た食事摂取量 を厳守 させ る。
ために 入院 した 」と明 らかに とま どつてい る様子
家族 (主 に妻 )に 対 しては,
。食事療法 を習得 させる。
0糖 尿病を理解 させる。
が うかがえた。 さ らに糖尿病か ら来 る諸症状 や下
痢 に よる疲労 感の ためベ ッ ドに臥床 してい る こと
が多 く,学 習 す るこ とと治療 との関連性 を理解で
きないよ うで 「こま ったなあ 」「や りた くないな
2 第 I期 (実践的指導 を行 つた時期 )
あ 」な どの言葉 を連発するだけで指導 を受 け入れ
1)イ ンス リン療法の指導
る様子や,学 習 する意欲の み られない ままのスタ
ー トとな った。そ こで ,学 習 の必要性 を理解 させ
インス リン療法 は 「使用 インス リンは リタ ー ド
レオで 1日 1回 8単 位 (02″ )を朝食30分前 (7
る ことが先決 である との従来の方針 に よ り/8 日
,
時 30分頃 )に 皮 下注射 する。注射部位 は 2ケ 月 で
疾 患 についての説明を くり返 した ところ入院後 5
∼ 6日 頃 には ,ス タ ッフの指導 に反応 を示すよ う
元の場所 へ戻 るよ うに ,本 人の注射 可能 な場所 を
選 びllF番
を表 に して毎 日,チ ェ ックする。 」方法
にな った。例 えば 「たい へんな病気 にがか った も
でヌ〈
院 第 二 日目よ り実施 してい た。当初 は治療 の
の だ 」とい う彼 の言葉 にみ られ るよ うに漠然 とで
意 味や方法 ,低 血糖症状 の説明 を しなが ら看護婦
が 実施 してい たが ,こ れ に対 して 、約 一週 間位 の
はあ るが糖尿病 に対す る認識 をあ らたに見直 しは
じめたあ らわれ と思 われ た。 ここで新 たに問題 と
うちに,「 インス リン注射 をしない と時間 どお り
な ったのは ,毎 日の指導 の中 で話 され たことや,
に朝 ごはんが食 べ られない 」とい う彼 な りの認識
熱心 にみてい た と思 われ るスライ ドの内容 につい
て ,約 一時間後 には全 くと言 える程 ,記 憶 も理解
がで き始め ,処 置室 に注射 を打 ちに来 る時間 が正
確 にな り積極的 にな った。 そ こで 「除算 が で きな
もされ ていなか った り,イ ンス リン注射 の場 面に
い ため量 と単位 の計算がで きない 」ことには 「量
おい ては二 桁 の除算が で きない等 にみ られ る理解
のみ機械的 に覚 えさせ る J,「 視力低 下があ り目
力 自体 の低 さ とい う点であ った。 この よ うな中で
盛 りが読めない 」ことに対 しては 「注射筒 に赤線
四大学看護学研究会雑誌 Vo1 3%2 1980
糖尿病 の教育入院 を考 える
を引 く 」な どその度 ,工 夫 して ,よ り細 か く説明
もほ とん ど消失 した ところで , 本 人の経 済的 事 情
を行 った ところ ,注 射筒 に 液 を吸 う,注 射部位 の
順 番 を間違 えず に消毒 す るな ど正確 な 準備 が 入院
もあ り, 退 院 が決定 され た。 そ こで第 2 回 目の ケ
ース カ ン フ ァレンス が開 かれ た。 ここでは ,
よ り 2週 間後 に は で き るよ うに な った。 さ らに注
。 食事療法 の指 導 を強イ
ヒ( 特 に妻 に対 して。)
射 行為 も初 めは看 護婦 が 手 を貸 しな が ら行 ってい
。 日常生 活 の 注意点 の指導 。
たが入院 3週 間後 に は患者 自身 で 可能 に な った。
これ は ,患者 自身 の 「他 の患者 さん と一緒 に朝 ご
。患者 本 人 の行 な うイ ンス リン療法 の 再確認 。
は ん を食 べ たい 」とい う気持 が注 射 を打 つ こ とを
を く り返 す こ ととした。
積極 的 に させ ,10∼ 15分 とい う短 い 時間 では あ っ
たが毎朝 くり返 され た看 護婦 との会 話 や注射 法 の
練 習 が習慣 づけ に役立 った と思 われ る。
以 上 3 点 につ いて退 院 に間 に合わせ る よ う指 導
しか し , 退 院 を迎 え て ,
。食事療 法 の指 導が不十分 であ り, 本 人へ の 間 食
の禁 止 も守 られ るか ど うか 不安 で ある 。
0 イ ンス リン療法 の技術 的 面 においては 一 応 で き
2)食 事療法 の指導
表 3の よ うに 9月 26日の 入院 よ り10月 9日 まで
てい るが , 意 味 を理 解 してい ない 点や今後 , 量
の空 腹 時血糖値 はか な り高 い値 を示 してい るが ,
が変 更 され た時 に対応 で きるか ど うか に つ い て
入院 時 よ り制限 食 では足 りず に 様 々な形 で間 食 を
は心配 であ る。
続 け てい たためであ るこ とが 後 にわ か った。 これ
は 食事 に 関 して これ までに 一度 も指 導 を受 け た こ
とが な か つたことが ,要 因 と考 え られ た 。 これに
対 し間 食 を禁止 す る一 方 ,病 院 食 の 量 の測定 な ど
実 際 の 方法 の 指導 を毎 日の担 当看護婦 が 行 ったが ,
とい うス タ ッフの評 価 か ら, 外 来通 院時 に , 病 棟
看 護 婦が継 続指 導 を行 な う こ とを約 束 して退 院 と
な つた 。
V
考
察
は か りの 目盛 が読 めない ,食 器 の 重 さを 差 し引 け
で
以上の看護の経過 か ら次 の よ うな ことがrly認
ない な ど実 際場 面 での指導 は はか どらず ,家 族 の
協力 を求 め る こ ととな つた。看 護婦 の ア プ ロ ーチ
きた。
第 一点 は =こ の症例 の よ うに基礎的な学力や理
に 対 して家族 は協力的 で 入院期 間中 ,指 導 を受 け
解 力の乏 しい場 合 で も,指 導内容 を単純模式化 し
るために数 回来 院 し,熱 心 に学 習 してい たが ,食
反復 して習慣 づ けることに よって ,あ る程度 の指
事 を実 際 に作 る妻 もあま り理解 力が良 い とは言 え
導効果 が 得 られ るこ とであ る。 インス リン療法 が
ず ,妻 に対 して も,栄 養 士 ,看 護婦 が ,食 品 の模
体得 された ことは ,そ の効果 とみてよいであろ う
型 を使 った り,献 立 の骨組 み をあ らか じめ たてて
し,ま た,表 4の よ うな献 立表 の工夫 も食事療法
Lし て指導 す
余 白を うめ るだけに す るな ど ,単 純イ
を始め た当初はわか りやす く役立 った と考 え られ
る こ とを心 がけて行 った 。本 人 も妻 へ の指 導 の際
るの しか し,技 術的 な面 に比 し疾患に つい ての医
に 常 に 同席 させてい た ところ ,空 腹 を訴 えなが ら
学 的知識 を理解 させる とい う点 につい ては ,ス ラ
も間 食 は しな くな り,形 式 的 と も思 え たが ,一 応 ,
イ ドな どを利用 して指導 を くり返 してみたがあま
「食事療法 が 大 切 」 と言 うよ うにな り徐 々にで
り効果 が得 られず ,さ らに視聴覚 に訴 えた形 での
はあ るが , 食 事療法 に とりくもうとす る姿勢 が み
教材 の工夫が必 要 である と思われ た。
られ て きた。
糖尿病 の指導 の具体的方法 については,こ れ ま
でに もコイン方式隼 カルタ方式詠 ど,臨 床 で実際
に指導 に たず さわ ってい る人 々か らの工夫 や提案
3 第 Ⅲ期 ( ま とめ の時期 )
以 上の ような経過 よ り, 食 事摂取量 が守 られ る
よ うにな つて血糖 コン トロ ールは良好 に な り症状
が多 く報告 され てい るが,そ れ らをその場限 りの
もの としないで,そ れ らひ とつ ひとつを追試 し,
四大学看護学研究会雑誌 Vo1 3 Z2 1980
糖尿病 の教育入 院 を考 える
録汁
1
付緩
6菜
5類
な るべ く
多 めに
合
計
み そ汁
鯛 味料 は
少 なの
i
昼 食
夕 食
「
米 飯
表油
200″ ′
1
( 1 パ ック)
茶わん
15杯
米 飯
,す
牛
飯
口す
表 2
表 3
卵)
(くだもの) ( 肉魚 ・
ι¨
朝 食
米
表牛
表 1
(aν 疎頁)
表野
‐
‐
(「│の
中に1単位分の食品をあてはめる)
表 4 単 純 化 した献立表
1
〕
I
I
茶 わん
1.5杯
︲
︲
4
︲ ︲一
︱ ︲︱ ︱︱ ︱ 1
F I I I I
合計
(単ω
﹁
一
一
茶わん
15杯
4
1
│
l
L_____」
1
1
(例 :本 症例 の 18単 位 の場 合 )
よ り確実 な ものに改善 し,定 着 させてゆ く努力 を
て彼 な りの 動機 を持 った こ とが , 習 慣 づけ とな り ,
お こな う必要性 を痛感 した。
その 方法 を習得 で き た要 因 とな った。 その他 では
己管理 可能 とな る目標 に到達 で きなか った原因 と
自発的 な ものは ほ とん どな く, 糖 尿病 を コ ン トロ
ール した こ とで実際 には , 症 状 が改善 したの であ
して 「理解力の低 さに よ り従来 の方法 では効果が
るが そ うい う認識 を確 実 に 持 たせ られなか つた こ
上 らない 」こ とに気 づ くのが遅 く,個 別指導 の開
とは残念 であ った 。
第 二点は ,上 記経過 の中 で最終的 に入院 中 に 自
始が遅れ たことが あげ られ る。以上の反省 よ り,
糖 尿病 の定期 的受診行 動 と動機 との関連 につ い
糖尿病 に関す る知識 だけではな く理解力 や学習 に
ては 2 ∼ 3 の 報 告 が な され てい るが , そ の中 で受
必要な基礎的学力 ,闘 病意欲 を評価 で きるよ うな
診良 好群 と中断 群 との 間 に 相 反 す る形 で 「糖 尿病
記述式 を主体 とした半」
定表 を入院よ り早い時点 で
に対 す る不 安 や心配 の 有 無 」 「自覚 症状 の 有無
t
行 な うことを プ ログラムに組 み入れ ることとした。 が受診 を大 き く作用 す る因 子 としてあげ られ てい
今後 は ,こ の半」
定表 の妥当性 を検討す る ことと共
なっ
た
たこと
が
併発し
る
併症を
動機と
?また,合
に ,よ り有効 に利用 し,個 々に合 わせ た指導 目標 ,
例` 多い ことを考えると,入 院中に合併症 を持 つ
方法 の決定 について例数 を重ねて検討 してゆ くつ
人 とのかかわ りを持 たせ た り,将 来 の病状 に対す
もりである。
る不安 を持 たせ た りす る ことがnJ」
機 づけに役立 つ
さらに ,第 三点は ,治 療 を継続 するための動機
とも言えるであろ う。
づけが重要視 されてい るが ,『 教育入院す る患者
ま た,理 解力 の有無 と関連 して,医 学的知識 の
に と っては入院前 よ りその 自覚 を持 って準備 して
理解 の悪 い者が中断 する とは言えない ことが指摘
くる場合には ,入 院 その ものや学習が動機 づけ と
の症例の場
が多い
なること
言われている。こ
電と
合 , イ ンス リ ン注射 に対 して朝 食 との 関連 におい
ゞ
の動機
に,それなり
されている電
,本症例のよう
が必要 であ る ことも示唆 され る。
なお , 指 導者 と患者 の信頼関係 も大 きい因 子で
四大学 看護学研究会雑誌 Vo1 3.名 2 1980
糖尿病の教育入院を考 える
あ るとの指摘 が あるが ,病 棟 あ るいは外 来 にお け
Ⅶ
る担 当者 を決定 す る際 に大 いに留意 しな くてはな
らない点 で もあろ う。
以 上のよ うに理解力 の高低 にかかわ らず,患 者
が 自分 な りの動機 で 自立 して治療 を続 け られ るよ
うに援助 す ることが必要 である。
文
献
1)平 田幸 正編 :最新看護 セ ミナ ー疾患編 ,糖 尿
病 ハ ン ドブ ック (第 1版 ) 197,メ ジカル フ
レン ド社 ,東 京 , 1980
2)田 中剛二 :糖尿病患者教育 における教育学的
手 法 の 導 入 ,1,2),71■尿病患者教育 の 目的評
インス リンの発見以来 ,糖 尿病患者 の予後 は大
き く変 った力!,今 後 さ らに ,早 期発見 ,早 期治療 ,
価 をめ ぐって ,糖 尿病 , 1171∼1173,Vol.
22,411,日
本糖尿病学会 ,1979
合併症 の予防 ,に 治療 の重点 が置かれ ,そ れに伴
って一層 ,教 育 の重要性 が叫 ばれ るであろ う。そ
つ 阿 部祐 五他 :糖 尿病患者 の入院治療 ,臨 床成
の中で教育入院制度 への期待 は さらに大 きくなる
と思 われ るが ,『 今 日の糖尿病教育 システムは ,
4)土 井み どり他 :コ イン (硬 貨 )使 用 に よる糖
あ る程 度 の教 育 を受けた者 には有効 であ るが教育
学会集録成 人看護分科会 I, 171∼ 172,日 本
程度 の低 い人や実行力 の ない人に とつては ,い か
人局 105∼110,Vo1 7,あ12,東 京医学社 ,1977
尿病患者 の食事指導 を試 み て,第 5回 日本看護
看 護協会 出版会 ,1974
ん と もしが た く,理 解 で きない ばか りか ,教 育 を
1た 5)原 夕美 子他 :高齢糖尿病患者 への働 きかけ ,
いうKrallの
指摘
拒否することさえある』と
カルタ方式導入 ,第 8回 日本看 護学会集録成 人
み られ るよ うに , い わゆ る
"て
`
しま
落 ち こぼれ
う人 々に 対 して十分 な援 助 が 可能 とは な つてい な
い 。そ の こ とを医療 者 側 が 自覚 して , 患 者 ひ と り
ひ と りに接 してゆ くこ とが望 まれ る。
看 護分科 会 , 454∼ 457,日 本看護 協会出版会 ,
1977
6)伊 藤徳治 :糖 尿病患者 教育 にお ける教育学 的
手法 の導入 , 1.1),糖
尿病患者教育の 目的 ,
評価 をめ ぐって ,糖 尿病 ,1168∼ 1170,V01.22,
Ⅵ
む
す
び
Z ll, 日 本糖尿病学 会 ,1979
43才男性 の糖尿病教育入院 の一症例 の看護過程
7)小 野 ツ ルコ他 :糖 尿病患者 の定期的受診行 動
を分析 することによ り理解 力 の低 い患者 への指導
に関連 す る要因 の研究 ,金 沢大学 医療技術短 期
のあ り方 について検討 を加 えた。その結果以 下の
大学部紀要 :Vol。1,あ 1,1978
8)鈴 木祐 恵他 :糖 尿病患 者 にみ られ る治療中断
こ とが確 認 で きた。
1 理 解力 の低い患者 に対 して指導内容 を,単 純
ヒ,模 式イ
イ
ヒして反復 し習慣 づけ ることに よ りあ
る程度 の効果 が得 られ る。
行動 につ いて ,看 護研究 ,47∼ 52,V01・ 11,
あ 2,医 学書院 ,1978
9)中 村明子他 :糖 尿病患者 の教育入院 と看護 の
2 入 院 よ り早期 に ,半」
定表を使用 するな どして
あ り方,第 7回 日本看護学会集録 ,成 人看 護分
理解 力や基礎的な学力 を把握 し,特 に ,理 解力
科会 ,489∼ 491,日 本看護協会出版 会 ,1976
10)Leo.P.Kra11.編
:糖 尿病 をめ ぐって
の低 い場合 には ,で きるだけ早 く個 冒」
指導 を始
め ることが大切 である。
3 闘 病意欲 の少ない患者 に対 しては,な ん らか
の形 で動機 づけが 有効 であ り,本 研究 の症例 で
は ,「 注射 をしなければ食事 がで きない 」とい
うことが動機 づけ とな った。
(第 1版 )2∼ 4,医 学書院 ,東 京 , 1977
11)Leoo P.KIall.:Diabetes in the
13, 1977
N ews,″
12)田 中恒 男 :現 代医療におけ る患者 の役割 ,糖
尿病 ,1303∼1306,V01.22,あ
病学会 , 1979
四大学看 護学研究会雑誌 Vo1 3.%2 1980
12,日 本糖尿