PDF - 福岡大学病院

平成26年3月20日
第8回学んで予防!福大病院健康セミナー
骨粗鬆症について(内科的疾患分野)
福岡大学病院 内分泌・糖尿病内科
田邉 真紀人
平成22年 日本人の平均寿命
100
80
男性79.64歳
9.22
女性86.39歳
12.77
60
40
70.42
73.62
日常生活に
制限あり
日常生活に
制限なし
=
健康寿命
20
0
男性
女性
平成23~24年度厚生労働科学研究(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
『健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究』
福岡 69.67(40位) 72.72(44位)
平成23~24年度厚生労働科学研究(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
『健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究』
「要介護」となった原因
糖尿病
糖尿病
脊髄損傷 その他不明 不詳
視覚・聴覚障害
0.5
6.6 0.4
がん
1.7
1.9
呼吸器疾患 2.2
糖尿病
24.1
2.5
2.8
パーキンソン病 3.6
心疾患 3.2
糖尿病
糖尿病
脳血管疾患(脳卒中)
糖尿病
糖尿病
骨折・転倒 9.3
糖尿病
20.5 認知症
関節疾患 7.4
13.1
高齢による衰弱
平成22年度 厚生労働省 『国民生活基礎調査』
骨
粗
鬆
症
電子顕微鏡で見た骨
正常
骨粗鬆症
1mm
骨粗鬆症とは
• 骨密度および骨質の低下により
骨強度が低下した状態。
• 骨強度が低下すると、脆弱性骨
折(転倒などの軽い衝撃で起こ
る骨折)を起こしやすい。
脆弱性骨折の例
大腿骨近位部(足のつけね)骨折
脆弱性骨折の例
脊椎(背骨)圧迫骨折
7割
3割
骨の強さ = 骨密度 + 骨質
骨密度とは:カルシウムなどのミネラル分
骨質とは:コラーゲンなどの骨の材質の良し悪し
コラーゲン(骨質)は
鉄筋に相当
ミネラル分(骨密度)は
コンクリートに相当
鉄筋コンクリート
骨密度の測定方法
骨質の測定法
血中ペントシジンの測定??
*研究段階の検査であり、一般には測定
できません。したがって骨質を簡便に測
ることができる検査法は現在のところ無
いと言って良いでしょう。
糖尿病の種類
1型糖尿病
膵臓のβ 細胞というインスリンを作る細胞が破壊され、からだの中のインスリンの
量が絶対的に足りなくなって起こる。
2型糖尿病
インスリンの出る量が少なくなったり、肝臓や筋肉などの細胞がインスリン作用をあ
まり感じなく(インスリンの働きが悪い)なったりして起こる。食事や運動などの生活習
慣が関係している場合が多い。わが国の糖尿病の95%以上はこのタイプ。
遺伝子の異常やほかの病気が原因となるもの
遺伝子の異常や肝臓や膵臓の病気、感染症、免疫の異常などのほかの病気が原
因となって、糖尿病が引き起こされるもの。薬剤が原因となる場合もある。
妊娠糖尿病
妊娠中にはじめて発見された、糖尿病にはいたらない糖代謝異常。新生児に合併
症が出ることもある。
2型糖尿病の方の骨はどうなっている?
骨密度
Z値
多い
相対危険度
3
0.5
0.4
2
0.3
0.2
1
0.1
0
0
-0.1
-1
-0.2
-2
-0.3
-0.4
少ない
骨折の危険
-3
-0.5
腰椎
大腿骨頸部
大腿骨頸部
Vestergaard p. et.al. Osteoporosis Int 18 : 427-444, 2007
2型糖尿病の方の骨はどうなっている?
7割
3割
骨の強さ = 骨密度 + 骨質
検査(骨密度)には現れない、隠れた骨折リスク!
• 血糖値を下げれば、骨質は良くなるのか?
• どれくらい下げれば良いのか?
• 骨質を良くするにはどうすればいい?薬は?
⇒残念ながら、まだまだ研究段階です
骨折の臨床的危険因子
•
•
•
•
•
•
•
•
高齢
• 続発性骨粗鬆症
やせ
未治療の性腺機能低下症
脆弱性骨折の既往
炎症性大腸疾患
両親の大腿骨近位部骨折
長期間の不動
ステロイド薬治療
臓器移植
現在の喫煙
糖尿病
アルコールの過剰摂取
甲状腺疾患
関節リウマチ
慢性閉塞性肺疾患
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』一部改変
骨粗鬆症の頻度
Yoshimura N et al: J Bone Miner Metab 2009:27;620
食生活について
推奨される食品
過剰摂取を避けたほうがよい食品
カルシウムを多く含む食品
(牛乳・乳製品、小魚、緑黄色
野菜、大豆・大豆製品)
リンを多く含む食品
(加工食品、一部の清涼飲料水)
ビタミンDを多く含む食品
(魚類、きのこ類)
ビタミンKを多く含む食品
(納豆、緑色野菜)
食塩
カフェインを多く含む食品
(コーヒー、紅茶)
アルコール
果物と野菜
蛋白質(肉、魚、卵、豆、穀類など)
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』
運動について
• 運動により、骨密度は上昇し骨折の抑
制がもたらされる。
• 散歩などの有酸素運動に加え、筋肉を
鍛える運動も有効である。
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』
今日のおさらい(1)
• 日本人の平均寿命と健康寿命にはおよそ10
年の差があります。
• 健康寿命を縮める原因には、糖尿病と関係
する病気が少なくありません。また10人に1人
は骨折・転倒が原因となっています。
• 骨粗鬆症は骨強度が弱くなる病気で、足のつ
けねや背骨の脆弱性骨折の原因となります。
今日のおさらい(2)
• 糖尿病患者さんは骨質が悪くなり骨折しやす
いのですが、骨密度が保たれていることも多
いので、一般の検査ではその危険が見つか
らない場合があります。
• どのような人が骨折しやすいか(危険因子)を
知り、食生活・運動といった骨をいたわる生活
習慣を取り入れましょう。