Page 1 Page 2 研究会報告 Yー248 の Cu(2)NQR 一 。xygen ーS。t

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
Y1248のCu(2)NQR : Oxygen Isotope Effect(基研研究会「強
結合超伝導-Pseudogapを中心として-」,研究会報告)
大野, 隆
物性研究 (1999), 72(4): 456-465
1999-07-20
http://hdl.handle.net/2433/96660
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
Y1248の Cu(
2)
NQR
-0Ⅹygenl
sot
opeEfec
t一
徳島大学工学部物理学
大野
隆
ス ピンギャ ップが高温超伝導で どの よ うな役割 を果 た してい るかは最近の重要 な
研究課題 である 超伝導の実現 を助 ける ものか、あるいは阻害す るものかが問題 で
。
ある
。
ス ピンギャ ップは高温超伝導の前駆現象 で ある との見方 が強まってい る と思
われ るが、依然朋 確 には され ていない。 高温超伝 導では非常 に小 さいなが ら、アイ
ソ トープ効果 が観 測 され てい るこ とは知 られてい る 酸素 を同位体置換 した とき超
。
伝導転移温度 は低下す るが、ス ピンギャ ップ温度 T*は変化 しない と両者 の発現機構
は別 である。一方 ス ピンギャ ップ温度 も変化 を受 けるな ら、両者 の発 現機構 は密 接
に関係 している と言 える。 この ことを明 らかにす る 目的で、YBa2Cu。
08(
Y1
248
)
を厳
重 な管理 の も とで 180 と 160 に置換 した試 料 につ いて行 った 、非 常 に精度 あ る
Cu(
2
)
NQR核磁気緩和率の実験結果 について報告す る
。
§1 試料の準備
非常に小 さい緩和率の差異 を検出 しなければな らないので、測定は非常に難 しい。
Y1
248 は酸素のス トイキオ メ トリは良 く、800K の高温になって も酸素が抜 けるこ
とはな く、安定な物質 であることが知 られてい る しか しこの実験 では更 に同位 体
置換 のための熱処理 が必要で あ り、その熱処理 に よる悪影響 があってはな らない。
十分管理 された熱処理がキー ・ポイ ン トである まず十分 良質の Y1
248 の試料 を 3
。
。
等分す る。その一つはその後何 らの熱処理 もしない(
unt
r
ea
t
e
d
)
。他の一つ は 180 置
換 し、残 りの一つは 160置換す る。その際両者 の熱処理の条件 を完全 に同一にす る。
c
(
1
8
)
=80.
53
Ⅹ 及び
得 られ た 試 料 の 交 流 帯 磁 率 を 測 定 し (後 に 図 で 示 す )、 T
Tc
(
1
6
)
=81
.
OK を得た。 これか ら Tcに及 ぼすアイ ソ トープ指数 αは 0.
056(
1
2
)
である
mamse
ta
l.
2)が報告 してい る値 0
.
076(
1
0
)
に近い と言 える 両者 の試料
1
)
。 これは Wi
における Cu(
2
)
NQRスペ ク トルの半値幅 は 1
20-1
30kHzであ り、両者 でスペ ク トル
の形の差がな く良質の試料で あることを示 してい るが、これは YBa
2C
u307 伴1
237
)
。
に比べて約 3分 の 1であ り、精確 に緩和率 を得 るのに有利 で ある
。
二つの試料 は 2
個 の同調回路 を設置 した同一のプ ローブの中にセ ッ トし、十分管理 され た温度 コン
トロ・
-ルの もとで測定 した。
さて同様 の ことを考 えてい る人は他 にもい るものです。Wi
mamse
ta
l.
2
)は
89Y
の
ナイ トシフ トの測定によ り、 T*に酸素同位体効果があるかない かを測定 した。図 1
は彼 らの結果 を示す。○印は
0 置換 した試料のナイ トシフ トを、+は 160 置換 した
1
8
試料のナイ トシ フ トをそれぞれ示す。 内挿 した図は両者 のナイ トシフ トの差異 を拡
大 して示 してい る 点線 は α=0.
076と同 じ同位体効果が T*にもある場合 に予想 さ
。
-
4
56 -
「
強結合超伝導 - ps
e
udoga
pを中心 として-」
0
0.01の同位体効果がある場合予
4
0
′
0
れ るデー タを示 し、実線 は T*に
験点の差異 (
○印)は点線 か ら遠 く、
ゼ ロの上下に分布 しナイ トシフ ト
には差異がない と結論 し、従 って
0 4
0
2
l l
MN ^8
・
6
t
t
St[
0
0
2
(t
H d d)望
想 され るデー タを示 してい る。実
ス ピンギャ ップ と超伝 導は別の機
構であると結論 してい る。 しか し、
Ishi
daeta
l
.
3
)
が最近 Bi系のナイ
ト
シフ トの測定で指摘 してい るよ う
1
5
02
0
02
5
03
0
03
5
0
に、ナイ トシフ トの温度変化が激
しくなる温度が T*
である との考え
Temperat
ure(
K)
図 1 ¶l
e YBa
2
Cu4
08 8
9
Y NMR s
hi
f
tpl
ot
t
ed a
ga
ins
t
8e
xc
ha
n
ge
d(
○)a
n
dl
6
0e
xc
ha
n
ge
d(
+)
t
e
mp
er
a
n
l
r
e for]
s
m pl
a
e
s
・Th
eda
t
aa
re n
t
t
e
dus
i
n
gt
hemode
li
nt
het
e
xtw
it
ha
0
か らすれば、再評価 が必要である
。
私 もグラフを読み試みたい と考え
i
.
e
x
T冨e
e
n
r
a
t
l
u
S
.
e
t
.
d
,
e
e
p
_
?
n
n
d
d
u
e
c
n
!
d
RI
c
I
L
n
a
g
n
芸i
n
oft
Ae
e
宅
9
S
e
Y
ud
N
O
fi
a
A.
S
i
T
f
S
t
e
t
i
1
.
T
t
:
d
e
傍 のデータ点が少 な く、諦 めざる
a
g
a
l
n
S
t
t
e
m
e
p
r
a
t
u
r
e
T
h
e
s
o
l
i
d
c
u
v
r
e
i
s
f
o
r
α
E
.
Y
0
・
0
1
a
n
d
m
e
da
s
he
dc
u
vei
r
sf
or Y
たが、残念 な ことに肝心の 1
50K 近
r
・
αE. - αTl・
を得ない。
Wi
ll
iamset a
l.
2
)
のナイ トシフ トの測定は x(
q=0)を測定 している 高温超伝導で
。
=
大切 な反強磁性 ス ピン揺 らぎ x(
q 切 の擬 ス ピンギャ ップを見 るには核磁気緩和率
の測定が必要である。 それが私たちの 目的である。
§2 実験結果
Cu(
2)
NQR核磁気緩和率の実験
)
。○印は 180 置
結果 を図 2に示す 1
TI
T(
S
'
l
K'
1
)
換 した試料の緩和率 1
/
であ り、●は 1
6
0置換 した緩和率
1
/
TI
T(
S
1
K'
1
)
であ り、横軸 は温度 T
(
耳)
である 挿入図はス ピンギャ ッ
プ温度 T*
近 くを拡大 した ものであ
。
る。 180 置換 した試料 の緩和率は明
6
0 置換 した試料の緩和率
らかに 1
2
1
1
9
0
1
l2
1
0
0
t
i
l
2
0
0
300
T(
K)
よ り大きい。実曲線 は Tranquada
eta
l.
4
)
が中性子散乱の実験結果
を解析す るために用いた関数
図2 6
3
cu s
pi
nl
a
t
t
i
c
er
e
l
a
xa
t
i
on r
a
t
e pe
rt
e
mp
er
a
t
ur
e
i
t
,
M(
TI
T)-1
,of )
6
0 (・) an
dl
8
0 (
。) e
xc
ha
ng
e
d Y1
2
4
un
s
a
mpl
e
s
・Th
eda
t
aa
r
e触 e
dus
i
n
gamodi
丘e
d
asd
e
s
c
ibe
r
di
nt
het
e
xt
.I
ns
e
t
: Zo
om of;
h
e
e
r(
T
等 声q
.
d禁
a
r
o
undr書
.
S
l
O
-
4
57
-
1/T
I
T
=CT -all-tanh2(A /2T)
] (
1
)
研究会報告
をベス ト・フイッ トした ものである
△はギャ ップ ・エネルギーの 目安 を
。
与える。すべてのデー タに対 して C
と βは同 じに し、ふたっの試料 によ
り△のみが異なるよ うに してフイッ
トしている。図 3には二つの試料 に
おける緩和率の差異を●印で示 してい
る。実曲線 は図 2と同 じ関数 による
フイッ トを示 している。これ より△r
=0.
96E を得た。 これか ら T*に対
1
0
0
200T(
K)3
00
400
.
=0.
061
す るアイ ソ トープ指数 は αT
と評価 され る。多項式 によるフイッ
トか らも同 じ値 を得た。 この値 は T
c
に及ぼすアイ ソ トープ指数 α=0.
056
図 3 Thedi
f
f
e
r
e
nc
eof血eva
lue
sf
ort
her
e
l
a
xa
t
i
o
nr
a
t
e.
pe
r
t
e
mpe
r
a
t
u
r
eun
i
t(
t
a
ke
n丘omFi
g.1
)
,A(
T)
T) 1,
pl
ot
t
e
da
ga
l
nS
t
・)
. Th
eda
t
aa
r
e丘t
t
edb
yt
h
emodi
丘e
dE
q
.(
4)
.
t
e
mpe
r
a
t
ur
e(
と非常に近い値 であ り、ス ピンギャ
慧 e
a
o
t
e
S
y
:Sts
ei
:
e
d
s
e
e
n
x
t
c
h
h
t
lg
c
a"
s
e
Sp
o
pT
e
d
s
i
.
n
g
hE
g
f
f
e
Ee
i
a
ng
cn
e
e
t
f
1
0
z
r
ul
e:
f
T
o
rt
heunt
r
e
at
e
d(
。
)
,t
he)
60 (
+)
,ップ と超伝導ギャ ップは密接 に関係
Y1
2
4s
a
mpl
e
s
.
霊o
d
t
t
Ed
e等.
uA
(
S
.
t
)t
e
e
x
m
c
E7
a
r
n
a
g
m
iS
e
し、両者の機構 は同 じであると結論
され る。ス ピンギャ ップは超伝導の
前駆現象であるとの立場 を支持す る
結果 と言える。
また◇印は 160置換のための熱処理
を した試料の緩和率 と、熱処理 を し
ていない(
unt
r
e
a
t
e
dの)
試料の緩和率
との差異を示 している。 4つの測定
温度であるが、両者 には差異がない
ことが示 されている。つま り、熱処
理 による悪影響 はない ことが証明 さ
れている。 挿入図は二つの試料で測
定 された交流帯磁率を示す。 180置換
した試料の交流帯磁率を*印で、160
置換 した試料のを+印で、熱処理 を し
ていない(
untr
e
a
t
e
dの)
試料のを○印
で示 している。 160置換 した試料 と熱
1
0
0 1
40 1
80 220 260 30
0 340
図4
1
80 置換
した Y1
248試料 (
○) 及び 160 置
換 した Y1
248試料 (
□)の 1
/
Tlの温度変化
-45
8-
処理 を していない(
unt
r
e
a
t
e
dの)
試料
とで差異がない ことが分かる この
。
ことも熱処理 による悪影響 はない こ
とを更に裏付 けている。
「
強結合超伝導 - ps
e
udo
ga
pを中心 として-」
§3 更に進んだ考察
この実験結果 をも う一度注意深 く考
察 してみる。図 4に同 じデー タである
が、横軸 を温度 T(
K)
に、縦軸をス ピ
ン-格子緩和率 1
/
Tl(
S
1
)に してプ ロッ
トして示す 。 ○印は 180置換 した試料
の緩和率であ り、□印は 160置換 した
試料の緩和率である。それぞれ実線 、
及び点線でデー タ点 を結んでい る。 図
2と図 3で も述べた よ うに、180置換
した試料の緩和率は明 らかに 160 置換
した試料の緩和率 よ り大 きい。 この グ
/
Tlが増大 し、
ラフは 180置換 によ り 1
Tcが低下 してい ることを示 してい る。
この ことをよ り明 らかにす るために、
図 5に横軸 を超伝導転移温度 Tcで規格
化 した温度
t
=T/
T
cとし、縦軸をス ピ
ン-格子緩和率 1
/
Tl(
S
'
1
)
に してプ ロ ッ
トして示す。 このグラフは、1
/
Tlは t
1
1
.
5
2
2
.
5
3
図5 1
8
0置換 した Y1248試料
3.
5
4
4
.
5
(
○)及び 1
6
0
=T/
T
cにスケールす ることを示 してい
置換 した Y1
248試料 (
□)の 1
/
Tlの超伝導転
る。銅酸化物高温超伝導体では面位 置の
t=T/
Tc)に対す る変化
移温度 で規格化 した温度 (
Cu(
2
)
の緩和率は反強磁性 ス ピン揺 らぎ
kunagae
ta
l.
5
)
によ り支配 されてい ることは広 く合意が得 られてい ることである。 To
が YBa
2C
u307の Ni置換 系で最初 に指摘 した よ うに、このスケー リングは
0 置換
1
8
によ り反強磁性 ス ピン揺 らぎが変化 し、 T
cが減少 した ことを直接 に示 してい る。
To
kunagae
ta
l.
5)がたびたび強調 してきた よ うに、ス ピン-格子緩和率は
1
/
T.T-∑A。
2
ix ⊥"(
q,W。)
/W。
)
,
(
2)
で与え られ る。Aqは超微細結合定数 であ り、 W。は
NQR振動数である。両辺 に Tc
をかけ、 t
=T/
T
cとおいて、
1
/
(
T
l
(1
8oo
r160)i
)
-∑A。
2
i
x⊥
"
(
q,W。
,8
oor1
6
0)
/W。
〉Tc
(1
8oo
r1
6
0)
,
(3)
左辺は tが一定であれば 1
8
0 置換 した試料 と 1
6
0 置換 した試料で一定であ り、従 って
1
4 59
-
研究会報告
T
c
(1
8oo
r6
0)∝
1
/
[
∑A。2x ⊥H
(
q,W。
,1
8
oor1
6
0)
/
W。】t
・
(
4)
す なわち、 Tcは動的帯磁 率の複素成分 に反比例 して決 まることが分か る
。
高温超伝 導体 では動的帯磁 率 x(
q,W)
は q=Qです るどい ピー クを持つ こ とが知 ら
れてお り、 ロー レンツ型 のエネル ギー分布 を してい る として、 よ く使 われ る式
x(
q
,W)
-x
J(1+(
q
Q)
2E2
1'
hw/
rQ
)
,
(
5)
を用いる。 xQは強 く相 関 した反強磁性 ス ピンによ り増強 され た s
t
agge
l
・
e
d帯磁率で
ある。 Mi
laandRi
c
e
6)に よれ ば
1
/
TI
T
-∑Aq
2
ix ⊥M
(
q,叫,
)
/W。
〉
∝∑
t
4
+2
B(
c
osq
x
a
+c
osq
,
a)
)
2
ix ⊥
H
(
q
,W。
)
/
W。
)
,
(
6)
である。 ただ し A 及び B は、それぞれ o
ns
i
t
eの Cuス ピンか らの超微 細結合定数
及び隣の Cu ス ピンか らの酸素イオ ンを経ての超微細結合 定数 である。 2次元 q空
間について和 を と り
1
/
T.
T ∝(
A4
B)
2x Q/
rQ E 2
を得 る
。
xQは
E2
(
7)
に比例 し、 180 置換 によ りxQ
/E 2の比は変わ らない と して 7・8)
I
/
T.
T ∝(
Al4
B)
2
/r Q・
(
8)
従 って方程式(
4)
から
T
c∝[
rQ]
t
・
(
9)
を得 る
。
以上の考察か ら、図 5は 180 置換 に よ り r Q が減少 し、1
/
Tlが増大 して Tcが低 下
してい ることが分 か る。 Mo
iyae
r
ta
l.
9)
及び Pi
ne
se
ta
l.
8)によれ ば、超伝導 クーパー
対形成 に有効 に働 くのは高振動数 の反強磁性 ス ピン揺 らぎで あるか ら、 rQ の減少 は
高振動数の反強磁性 ス ピン揺 らぎが減少 し、クーパー対がで きに くくなって T
cが低
-4
6
0-
「
強結合超伝導 - ps
e
udoga
pを中心として-」
下 してい ることになる
。
そ こで 1
8
0置換 によ りrQが減少 し
Tcが低下 してい る様子 を、To
kunaga
e
ta
l.
5)が Y1
237+Ni系で測定 した Ni
濃度 によ りrQが減少 し、 T
cが低下 し
てい る様子 と比較す る 図 6は tを固
。
cが rQに比例す る様子 を
定 した とき T
248の酸素置換 した場
示 してい る。 Y1
E
^
d
ヽ
■
一
′
8
0
U
20に,○印は t=
合 において△印は t=4.
ト
75
3.
70に、▽印は t
=3.
21に固定 した場合
に rQが減少 し、 T
cが低下 してい る様子
237の Ni置換系
を示 してい る また Y1
。
については、○印は t=3.
80に、ロ印は t
=3.
26に、◇印は t=2.
72に固定 した場合
600 700 800 9001
00011
001
2001
300
に r Qが減少 し、 T
cが低下 してい る様子
を示 してい る ス ピンギャ ップによる
TI
T(
A4B)
2(
a・u・
)
。
1
/
Tl
の急激 な減少の影響 を避 けるため、
十分高温でのデータを とって比較 してい
る 上の式で検討 した よ うに tを固定す
。
ると確かに Tcは rQに比例 してい る。 こ
248で酸素置換 した場合 に
の図か ら、Y1
図 6 Y1
2
4
8において 1
8
0置換によるrQの減
少と T
cの減少の関係と、Y1
23
7において Ni
置換 した場合の rQの減少と T
cの減少の関係。
tを固定したとき、いずれにおいても T
cは
rQに比例して変化 している
。
T
cが低下す る現象は、Y1
237の Ni置換
系で T
cが低下す るの と同 じであることが分かる。Y1
248で 1
8
0 置換 した場合、1/Tl
の増加か ら評価 した rQの変化の割合 △ rQ /rQは∼0・
0058 であ り、 これ は Tcの変
化の割合 △ T
c/
T
c
∼0.
0058に一致 してい る。この ことは 1
8
0 置換 によ りrQが減少 し、
Tcが低下 してい ることを明確 に示 してお り、同時 に 1
8
0置換 による rQの減少が小 さ
cの低下が小 さい ことを示 してい る。す なわち高温超伝導体で一般 に観測 さ
いか ら T
れているアイ ソ トープ指数が非常に小 さい理 由が理解 され る。
一般 に、同位体 は中性 子の数 が異 な り質量数 が異なるが電子状態 は変化 しない と
理解 されて きた。上記の実験結果 、す なわち 1
8
0 置換 した場合 1
/
Tlが増加 してい る
ことは明 らかに電子状態の変化 を示 しているが、なぜ電子状態が変化 しているのだ
α
∂
c
1
6
0Y1
248
3.
8
41
1
(
1
) 3.
871
7(
1
) 27.
23
1
8
0Y1
248
3.
8
408
(
1
) 3.
871
8(
1
)
2
7 2 (8
7.
23 6
6 (8
)
表1 1
8
0置換による格子定数の変化
- 461-
)
研究会報告
ろ うか ?他 に も電子状態 が変化 してい る証拠 が欲 しい。実 は、格 子定数 B と
C
がわ
ず か ではあ るが減少 してい る。表 1に これ を示す。 この 同様 の格 子 定数 の減少 は 、
Co
n°e
re
ta
l.
10)の論文 において も
YBa2Cu306十Ⅹ系でい ろんな酸素濃度 に対
して
1
80
0.
1
6
置換 した場合 に明 らかに見 られ
0.
1
4
る。
電子状態 が変化 してい るこ とを示す 更
に明 らかな証拠 が ある
。
0.
1
2
私 た ちの Y1
248
1
で 180 置換 した場合 、核 四重極共鳴振動
0 .
数 が vQ
(
1
8)
=29・
7350MHzで あ り、 160 の
dO.
08
Y1
248の vQ
(
1
6)
=29.
7455MHzよ り、
1
0・
5kHz低 い
1'
。
vQの 変化 に対す る
T
c
0.
06
の低下の割合 は △Tc
/
△ vQ
=(
-0・
47
)
/
(
-1
0・
5
)
=0.
045Ⅹ/
kHzで ある。Y1248は圧 力 に よ り
0.
04
し、 T
cが上昇す るこ とが Zhe
ng
l.
l
l
)
及び Z
i
mme
r
ma
nne
ta
l.
1
2)に よ り
e
ta
0.
02
vQが増加
示 され てい る。 Z
he
nge
ta
l.
l
l
)によれ ば、そ
0
0
の場合の変化 の割合 は △Tc
/
A vQ
=(A Tc
/
A vQ
/
△p)
=6.
2
/
90
=0.
06
9
K/
kHzで あ
△p)
/(
0.
2 0.
4 0.
6 0.
8 1
1
/
TI
T(
A4B)
2(
a・
u・
)(
250K)
る。 v Qの変化 の方 向 と T
cの変化 の方 向は
一致 してお り、両者 の割合 は非常 に近 い。
図 7 いろんな高温超伝導体で観測されて
以上か ら明 らか に Y1
248で
いるアイソトープ指数 α と25
0
Kで測定さ
1
80
置換 した場
合、電子状態 が変化 し、反 強磁性 ス ピン揺
2
)
スピン-格子緩和率 1/TIT(
Aれた Cu(
らぎが変化 してい るこ とが理解 で きる。
4β)2との関係。明らかに両者に相関が見
られ、アイソトープ効果において反強磁性
§4 高温超伝 導体 にお け るアイ ソ トー プ
スピン揺らぎが重要な役割を果た している
ことが分かる。
指数
それ では、一般 に高温超伝 導体 において
観測 されてい る非常 に小 さいアイ ソ トープ指数 αは、『超伝 導 クーパー対 の機構 が反
-AT
c/
T
c
T
c
a
La
.
8
5
Sr
o
.
1
5
CuO.
37.
5∼38.
3
0.
08∼0.
1
5
0.
0098
-0.
01
8
YBa
2
Cu.
08
79.
5-81
0.
05
6∼0・
076
0・
0065
-0・
0089
YBa
Z
Cu307
8
9.
6∼92
0.
025∼0.
05
0・
0030
-0・
005
4
0・
0
26-0・
03
4
0・
0031
-0・
0040
Bi
2
Sr
2
Ca
Cu2
08
・6
751
5
表 2 いろんな高温超伝導体で観測 されているアイ ソ トープ指数 α
-
462-
「
強結合超伝導 - ps
e
udo
ga
pを中心 として-」
強磁性 ス ピン揺 らぎで ある』 とい う立場 か らどの よ うに理解 され るのであろ うか。
表 2は Fr
a
nc
k13)の レビューか ら今まで報告 されているアイ ソ ト⊥プ指数 αの値 を纏
めたものである。構成元素の他の元素置換系におけるアイ ソ トープ指数 な ど多 くの
デー タが報告 されてい るが、 ここでは純粋 な系に限った。 良 く知 られてい るよ うに
αの値は BC
S理論の 0
.
5に比べていずれ も非常に小 さい。 αは小 さいなが らも、面
白い ことに低 ドープ系では大 きく、過剰 ドープ系では小 さい ことが分かる。縦軸 を
これ らの αに とり、横軸 を 2
5
0
Kで測定 された 1/TIT(
A-4B )
2にとってグラフにす
ると図 7になる。ただ し同 じ試料 についてのデー タは Y1
248 だけであ り、その他の
FI
T(
Al4B)2は A
s ayamae
ta
l.
7
)
及び I
s
hi
dae
ta
l.
3)
か ら引用 している。非常に面 白
/
TI
T(
A4B)
2と相関 してい る すなわち αは rQの小 さい La
い ことに αは明 らかに 1
。
系で大きく、 rQの大 きい Bi系で小 さい。 αは低振動数の反強磁性 ス ピン揺 らぎが
多い La系で大 きく、高振動数の反強磁性ス ピン揺 らぎが多い Bi系で小 さい。 この
相関 も、高温超伝導体 においてはアイ ソ トープ効果 は反強磁性 スピン揺 らぎに密接
に関係 していることを裏付 けている
。
では小 さいなが らも存在す るこの αの大小関係 は、『超伝導 クーパー対の機構が反
強磁性ス ピン揺 らぎである』 とい う立
場か らどの よ うに理解 され るのであろ
うか。図 8にこれ らの高温超伝導体の
T
c畔)
を縦軸 に し、横軸 を rqに比例す
ると考え られ る TI
T(
A-4B)2(
a.
u.
)と
してプロッ トす る。上の考察 に従い、 £
=3.
0に固定 してい る。 Y1
248と Y1
237
+Niは同 じ試料 についての値であるが、
LSCOと Bi
221
2は αは Fr
anc
k13)の レビ ト
40
ユーか ら、 FI
T(
A-4B)2は A
s aya
mae
t
l .
a
7)
及び Ⅰ
s
hi
dae
ta
l.
3)か ら引用 してい る
。
スピン揺 らぎの理論 によれば T
c∝ E2rQ
(∝ xQrQ)
及び
窄T(
A-4B)2
∝ ∈2rQ/xQ
rQ
)
であるか ら 8・9)、図 8のグラフの傾
きは xQに比例 してい る。L
SCOと Bi
221
(
∝
0
2については、デー タ点は一つ しかないが
TI
T(
A4
B)
2(
a・u・
)
上記の考察に従い、酸素同位体置換 した
とき原点を通 る直線 上を変化す ると考え
られ る
。
400 800 1
200 1
600
図8
このグラフか ら、もし 180 置換
t=3.
0に固定 した ときの、超伝導転移
温度 T
cと TI
T(
A-4B)2の関係 .
O直線の傾 き
による rQの変化がいろんな物質で同 じで
はそれ ぞれの物質 の xQに比例 している,
J
あるな ら、傾 き xQの大 きい物質ほ ど T
c
の減少が大きくなることが理解できる 実際、 これ らの傾 きの比は Y1
248 に対 して
。
-
4
63-
研究会報告
LSCO は∼ 1
.
8倍 、Y1
237は∼0.
9倍 、Bi
221
2は∼0.
5倍 になってお り、測定 されて
いる αの比に近いoす なわち xQの大 きい物質 ほ どdは大 きい と考え られ る これ は、
もともと反強磁性 ス ピン相 関が大 きい物質では、180 置換 によって もた らされ る反強
。
磁性 ス ピン揺 らぎの変化が大 きい ことを意味 し、従 って Tcの低下が大 きい ことを意
味す る。 この ことは r
e
as
o
na
bl
eなことである と理解 できる
。
§5 結論
高温超伝導体の発現機構 については、発 見 当初か ら多 くの研究がな されて きたが、
クーパー対の対称性 は d波 であることが明 らかに され、今 ではクーパー対の結合機
構 は反強磁性相互作用 による と言 う意見が大勢 を 占めてい る と思われ る。 その よ う
な中にあって所謂 アイ ソ トープ効果 が非 常 に小.
さいなが らも観 測 され てお り、電 子
一格子相互作用 の重要性 が一部 には指摘 され ていた。 このアイ ソ トープ効果 を どの
よ うに矛盾 な く解釈す るべ きかが一つの重要 な課題 であった。
YBa2Cu408
伴1
248)
を厳重 な管理の もとで 180 と 160 に置換 した試料 について行 っ
2
)
NQR核磁気緩和率の実験結果か ら、180 置換 によ り Cu(
2
)
た、非常に精度 ある Cu(
の核磁気緩和率が増大 し、超伝導転移温度
T
cが低下 していることを示 している
C
つ
cが低下 してい ることが分か
ま り 180 置換 によ り反強磁性 ス ピンゆ らぎが変化 し、 T
った。 いろんな物質で観測 されてい るアイ ソ トープ効果 について議論 し、『高温超伝
導体 においては、アイ ソ トープ効果 は必ず しも電子 一格子相 互作用 の重要性 を示す
のではな く、180 置換 によ り反強磁性 ス ピン揺 らぎが変化 して Tcが低下 してい る』
とい う非常に重要なことが結論 され る。
inkmann教授 に Uni
ve
r
s
i
t
yo
fZur
ic
hに招待 され 、 19
この研究は著者 が D.Br
97年 8月か ら 4 ケ月間滞在 した ときの実験測定に基づいている。前半については、
共同研究者 の Pr
o
f
.D.Br
inkma
n n,Dr
s
.M.Ma
ll
,J.Ro
o
s
,K.Co
nde
r(
ETH)
,F.
f
.M.Er
e
mi
nに感謝 申 し上げます。 このよ うな難 しい核磁気 一格子緩
Ra
faa
n dPr
o
和率の差異 の測定は、おそ らく Y1
248 にお いてのみ可能 である と考 え られ る。 D.
Br
i
nkma
nn教授 の偉大 さを感 じる ところである
。
後半 (§3以後)の考察 につい ては帰 国後発展 させた ものであるが、大阪大学名
誉教授 の朝山邦輔先生 に議論 していただ きま した ことを、心か ら感謝 申 し上げます。
-4
6
4-
「
強結合超伝導 - ps
e
udoga
pを中心 として 」
参考文献
1
)F.
Ra
fa
,
T.Ohno,M.
Ma
l
i
,J
.
Roos
,
D.
Br
i
n
kma
nn,
K.
Conde
ra
ndM.
Er
e
mi
n:
Phys
・
Re
vI
t
t
.
81(
1
998
)5
91
2.
Le
.
L.Ta
l
l
on
,J
.
W.
Qui
l
t
y
,H.
J
.
Tr
oda
h
la
ndN.
E.
Fl
owe
r
:
Phys
・
Re
v
・
2
)G V.
M.
Wi
l
l
i
a
ms
,J
Le
t
t
.8
0(
1
998
)377.
3)K・
I
s
hi
da
,K・
Yos
hi
da
,T.
Mi
t
o,Y.
t
okuna
ga
,Y.
Ki
t
a
okaa
ndK・
As
a
ya
ma:
Phys
・
Re
v・
B58
(
1
998
)R5
960.
4)J
・
M・
Tr
a
nq
ua
dae
ta
l
∴Ph
ys
.
Re
v.
B46(
1
9
92)55
61
.
5
)Y T
bk
una
ga
,K.
I
s
hi
da
,Y Ki
t
a
okaa
ndK.
As
a
ya
ma:Sol
i
dS
t
a
t
eCommun・1
0
3(
1
997)43・
6
)F.
Mi
l
aa
ndT.
M.
Ri
c
e:
Phys
.
Re
v.
B40(
1
989)1
1
38
2.
7
)K,
As
a
ya
ma
,
Y Ki
t
a
oka
,G q.
Zhe
n
g,K.
I
s
hi
da
,
K.
Ma
gi
s
hi
,
T.Mi
t
oa
ndY Tbk
un
a
ga:
1
996)S6,31
87.
Cz
e
c
h.
∫
.
Phys
i
c
s
:
46(
K・
Ma
gi
s
hi
,
Y Ki
t
a
oka
,G q・
Zhe
n
g,K・
As
a
ya
ma
,
T・
Ro
ndo,
Y Shi
ma
ka
wa
,
T・ma
na
ko
a
ndY Kubo:
Ph
ys
.
Re
v
.
B54(
1
996
)1
01
31
.
Mon
t
houxa
ndD.
Pi
ne
s
:
Ph
ys
.
Re
v.
B46(
1
992)1
480
3,
i
bi
d49(
1
99
4)4261
・
8
)P・
1
994)35
28.
D.
The
l
e
na
ndD.
Pi
ne
s
:
Ph
ys
.
Re
v.
B49(
9)T・
Mo
r
i
ya
,
Y Ta
ka
ha
s
hia
ndK.
Ue
da:
∫
.
Ph
ys
.Soc
.
J
p
n・
59(
1
990)2095・
T.Mor
i
yaa
ndK.
Ue
da:
∫
.
Phys
.Soc
.
J
pn.
6
3(
1
99
4)1
871
.
k'
・
Phas
e
1
0)K.
Con
de
r
,
D.
Ze
c
h,Ch.
Kr
uge
r
,
E.
Ka
l
di
s
,
H.
Ke
l
l
e
r
,
A.
W.
He
wa
ta
n
dE・
J
i
l
e
r
c
o
nduc
t
o
r
s
,e
d・
E・Si
gmunda
ndK・
A・
Mul
l
e
r
,Spr
i
n
ge
r
Se
par
at
i
o
ni
nCu
pr
at
eSupe
Ve
r
l
a
g,1
993,p.
50.
l
l
)G Zhe
n
g,
E.Ya
na
s
e
,K.
I
s
hi
da
,
Y Ki
t
a
oka
,
K.
As
a
ya
ma
,
Y Koda
ma
,良.
Ta
na
ka
,
1
991
)51
.
S.
Na
ka
mi
c
hia
n
dS.
Endoh:Sol
i
dS
t
a
t
eCommun.79(
1
2)H.
Zi
mme
r
ma
nn:
The
s
i
s
,Uni
v.
Zur
i
c
h
,1
9
91
.
,
H.
Zi
mme
r
ma
nn,M.
Ma
l
i
,M・
Ba
nke
ya
n
d
1
991
)11
45.
D.
Br
i
n
kma
nn:
Ph
ys
i
c
aC1
851
89(
1
3
)J
.
P.
Fr
a
nc
k:i
nPh
ys
i
c
alPr
o
pe
r
t
i
e
so
fHi
ghT
e
mpe
r
at
ur
eSu
pe
r
c
o
ndu
c
t
o
r
s
,e
d・
D.
M.
Gi
ns
be
r
g,
Wor
l
dSc
i
e
n
t
i
f
i
cPub.
,1
990,p.1
8
9.
14
65-