KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Y1248のCu(2)NQR : Oxygen Isotope Effect(基研研究会「強 結合超伝導-Pseudogapを中心として-」,研究会報告) 大野, 隆 物性研究 (1999), 72(4): 456-465 1999-07-20 http://hdl.handle.net/2433/96660 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 研究会報告 Y1248の Cu( 2) NQR -0Ⅹygenl sot opeEfec t一 徳島大学工学部物理学 大野 隆 ス ピンギャ ップが高温超伝導で どの よ うな役割 を果 た してい るかは最近の重要 な 研究課題 である 超伝導の実現 を助 ける ものか、あるいは阻害す るものかが問題 で 。 ある 。 ス ピンギャ ップは高温超伝導の前駆現象 で ある との見方 が強まってい る と思 われ るが、依然朋 確 には され ていない。 高温超伝 導では非常 に小 さいなが ら、アイ ソ トープ効果 が観 測 され てい るこ とは知 られてい る 酸素 を同位体置換 した とき超 。 伝導転移温度 は低下す るが、ス ピンギャ ップ温度 T*は変化 しない と両者 の発現機構 は別 である。一方 ス ピンギャ ップ温度 も変化 を受 けるな ら、両者 の発 現機構 は密 接 に関係 している と言 える。 この ことを明 らかにす る 目的で、YBa2Cu。 08( Y1 248 ) を厳 重 な管理 の も とで 180 と 160 に置換 した試 料 につ いて行 った 、非 常 に精度 あ る Cu( 2 ) NQR核磁気緩和率の実験結果 について報告す る 。 §1 試料の準備 非常に小 さい緩和率の差異 を検出 しなければな らないので、測定は非常に難 しい。 Y1 248 は酸素のス トイキオ メ トリは良 く、800K の高温になって も酸素が抜 けるこ とはな く、安定な物質 であることが知 られてい る しか しこの実験 では更 に同位 体 置換 のための熱処理 が必要で あ り、その熱処理 に よる悪影響 があってはな らない。 十分管理 された熱処理がキー ・ポイ ン トである まず十分 良質の Y1 248 の試料 を 3 。 。 等分す る。その一つはその後何 らの熱処理 もしない( unt r ea t e d ) 。他の一つ は 180 置 換 し、残 りの一つは 160置換す る。その際両者 の熱処理の条件 を完全 に同一にす る。 c ( 1 8 ) =80. 53 Ⅹ 及び 得 られ た 試 料 の 交 流 帯 磁 率 を 測 定 し (後 に 図 で 示 す )、 T Tc ( 1 6 ) =81 . OK を得た。 これか ら Tcに及 ぼすアイ ソ トープ指数 αは 0. 056( 1 2 ) である mamse ta l. 2)が報告 してい る値 0 . 076( 1 0 ) に近い と言 える 両者 の試料 1 ) 。 これは Wi における Cu( 2 ) NQRスペ ク トルの半値幅 は 1 20-1 30kHzであ り、両者 でスペ ク トル の形の差がな く良質の試料で あることを示 してい るが、これは YBa 2C u307 伴1 237 ) 。 に比べて約 3分 の 1であ り、精確 に緩和率 を得 るのに有利 で ある 。 二つの試料 は 2 個 の同調回路 を設置 した同一のプ ローブの中にセ ッ トし、十分管理 され た温度 コン トロ・ -ルの もとで測定 した。 さて同様 の ことを考 えてい る人は他 にもい るものです。Wi mamse ta l. 2 )は 89Y の ナイ トシフ トの測定によ り、 T*に酸素同位体効果があるかない かを測定 した。図 1 は彼 らの結果 を示す。○印は 0 置換 した試料のナイ トシフ トを、+は 160 置換 した 1 8 試料のナイ トシ フ トをそれぞれ示す。 内挿 した図は両者 のナイ トシフ トの差異 を拡 大 して示 してい る 点線 は α=0. 076と同 じ同位体効果が T*にもある場合 に予想 さ 。 - 4 56 - 「 強結合超伝導 - ps e udoga pを中心 として-」 0 0.01の同位体効果がある場合予 4 0 ′ 0 れ るデー タを示 し、実線 は T*に 験点の差異 ( ○印)は点線 か ら遠 く、 ゼ ロの上下に分布 しナイ トシフ ト には差異がない と結論 し、従 って 0 4 0 2 l l MN ^8 ・ 6 t t St[ 0 0 2 (t H d d)望 想 され るデー タを示 してい る。実 ス ピンギャ ップ と超伝 導は別の機 構であると結論 してい る。 しか し、 Ishi daeta l . 3 ) が最近 Bi系のナイ ト シフ トの測定で指摘 してい るよ う 1 5 02 0 02 5 03 0 03 5 0 に、ナイ トシフ トの温度変化が激 しくなる温度が T* である との考え Temperat ure( K) 図 1 ¶l e YBa 2 Cu4 08 8 9 Y NMR s hi f tpl ot t ed a ga ins t 8e xc ha n ge d( ○)a n dl 6 0e xc ha n ge d( +) t e mp er a n l r e for] s m pl a e s ・Th eda t aa re n t t e dus i n gt hemode li nt het e xtw it ha 0 か らすれば、再評価 が必要である 。 私 もグラフを読み試みたい と考え i . e x T冨e e n r a t l u S . e t . d , e e p _ ? n n d d u e c n ! d RI c I L n a g n 芸i n oft Ae e 宅 9 S e Y ud N O fi a A. S i T f S t e t i 1 . T t : d e 傍 のデータ点が少 な く、諦 めざる a g a l n S t t e m e p r a t u r e T h e s o l i d c u v r e i s f o r α E . Y 0 ・ 0 1 a n d m e da s he dc u vei r sf or Y たが、残念 な ことに肝心の 1 50K 近 r ・ αE. - αTl・ を得ない。 Wi ll iamset a l. 2 ) のナイ トシフ トの測定は x( q=0)を測定 している 高温超伝導で 。 = 大切 な反強磁性 ス ピン揺 らぎ x( q 切 の擬 ス ピンギャ ップを見 るには核磁気緩和率 の測定が必要である。 それが私たちの 目的である。 §2 実験結果 Cu( 2) NQR核磁気緩和率の実験 ) 。○印は 180 置 結果 を図 2に示す 1 TI T( S ' l K' 1 ) 換 した試料の緩和率 1 / であ り、●は 1 6 0置換 した緩和率 1 / TI T( S 1 K' 1 ) であ り、横軸 は温度 T ( 耳) である 挿入図はス ピンギャ ッ プ温度 T* 近 くを拡大 した ものであ 。 る。 180 置換 した試料 の緩和率は明 6 0 置換 した試料の緩和率 らかに 1 2 1 1 9 0 1 l2 1 0 0 t i l 2 0 0 300 T( K) よ り大きい。実曲線 は Tranquada eta l. 4 ) が中性子散乱の実験結果 を解析す るために用いた関数 図2 6 3 cu s pi nl a t t i c er e l a xa t i on r a t e pe rt e mp er a t ur e i t , M( TI T)-1 ,of ) 6 0 (・) an dl 8 0 ( 。) e xc ha ng e d Y1 2 4 un s a mpl e s ・Th eda t aa r e触 e dus i n gamodi 丘e d asd e s c ibe r di nt het e xt .I ns e t : Zo om of; h e e r( T 等 声q . d禁 a r o undr書 . S l O - 4 57 - 1/T I T =CT -all-tanh2(A /2T) ] ( 1 ) 研究会報告 をベス ト・フイッ トした ものである △はギャ ップ ・エネルギーの 目安 を 。 与える。すべてのデー タに対 して C と βは同 じに し、ふたっの試料 によ り△のみが異なるよ うに してフイッ トしている。図 3には二つの試料 に おける緩和率の差異を●印で示 してい る。実曲線 は図 2と同 じ関数 による フイッ トを示 している。これ より△r =0. 96E を得た。 これか ら T*に対 1 0 0 200T( K)3 00 400 . =0. 061 す るアイ ソ トープ指数 は αT と評価 され る。多項式 によるフイッ トか らも同 じ値 を得た。 この値 は T c に及ぼすアイ ソ トープ指数 α=0. 056 図 3 Thedi f f e r e nc eof血eva lue sf ort her e l a xa t i o nr a t e. pe r t e mpe r a t u r eun i t( t a ke n丘omFi g.1 ) ,A( T) T) 1, pl ot t e da ga l nS t ・) . Th eda t aa r e丘t t edb yt h emodi 丘e dE q .( 4) . t e mpe r a t ur e( と非常に近い値 であ り、ス ピンギャ 慧 e a o t e S y :Sts ei : e d s e e n x t c h h t lg c a" s e Sp o pT e d s i . n g hE g f f e Ee i a ng cn e e t f 1 0 z r ul e: f T o rt heunt r e at e d( 。 ) ,t he) 60 ( +) ,ップ と超伝導ギャ ップは密接 に関係 Y1 2 4s a mpl e s . 霊o d t t Ed e等. uA ( S . t )t e e x m c E7 a r n a g m iS e し、両者の機構 は同 じであると結論 され る。ス ピンギャ ップは超伝導の 前駆現象であるとの立場 を支持す る 結果 と言える。 また◇印は 160置換のための熱処理 を した試料の緩和率 と、熱処理 を し ていない( unt r e a t e dの) 試料の緩和率 との差異を示 している。 4つの測定 温度であるが、両者 には差異がない ことが示 されている。つま り、熱処 理 による悪影響 はない ことが証明 さ れている。 挿入図は二つの試料で測 定 された交流帯磁率を示す。 180置換 した試料の交流帯磁率を*印で、160 置換 した試料のを+印で、熱処理 を し ていない( untr e a t e dの) 試料のを○印 で示 している。 160置換 した試料 と熱 1 0 0 1 40 1 80 220 260 30 0 340 図4 1 80 置換 した Y1 248試料 ( ○) 及び 160 置 換 した Y1 248試料 ( □)の 1 / Tlの温度変化 -45 8- 処理 を していない( unt r e a t e dの) 試料 とで差異がない ことが分かる この 。 ことも熱処理 による悪影響 はない こ とを更に裏付 けている。 「 強結合超伝導 - ps e udo ga pを中心 として-」 §3 更に進んだ考察 この実験結果 をも う一度注意深 く考 察 してみる。図 4に同 じデー タである が、横軸 を温度 T( K) に、縦軸をス ピ ン-格子緩和率 1 / Tl( S 1 )に してプ ロッ トして示す 。 ○印は 180置換 した試料 の緩和率であ り、□印は 160置換 した 試料の緩和率である。それぞれ実線 、 及び点線でデー タ点 を結んでい る。 図 2と図 3で も述べた よ うに、180置換 した試料の緩和率は明 らかに 160 置換 した試料の緩和率 よ り大 きい。 この グ / Tlが増大 し、 ラフは 180置換 によ り 1 Tcが低下 してい ることを示 してい る。 この ことをよ り明 らかにす るために、 図 5に横軸 を超伝導転移温度 Tcで規格 化 した温度 t =T/ T cとし、縦軸をス ピ ン-格子緩和率 1 / Tl( S ' 1 ) に してプ ロ ッ トして示す。 このグラフは、1 / Tlは t 1 1 . 5 2 2 . 5 3 図5 1 8 0置換 した Y1248試料 3. 5 4 4 . 5 ( ○)及び 1 6 0 =T/ T cにスケールす ることを示 してい 置換 した Y1 248試料 ( □)の 1 / Tlの超伝導転 る。銅酸化物高温超伝導体では面位 置の t=T/ Tc)に対す る変化 移温度 で規格化 した温度 ( Cu( 2 ) の緩和率は反強磁性 ス ピン揺 らぎ kunagae ta l. 5 ) によ り支配 されてい ることは広 く合意が得 られてい ることである。 To が YBa 2C u307の Ni置換 系で最初 に指摘 した よ うに、このスケー リングは 0 置換 1 8 によ り反強磁性 ス ピン揺 らぎが変化 し、 T cが減少 した ことを直接 に示 してい る。 To kunagae ta l. 5)がたびたび強調 してきた よ うに、ス ピン-格子緩和率は 1 / T.T-∑A。 2 ix ⊥"( q,W。) /W。 ) , ( 2) で与え られ る。Aqは超微細結合定数 であ り、 W。は NQR振動数である。両辺 に Tc をかけ、 t =T/ T cとおいて、 1 / ( T l (1 8oo r160)i ) -∑A。 2 i x⊥ " ( q,W。 ,8 oor1 6 0) /W。 〉Tc (1 8oo r1 6 0) , (3) 左辺は tが一定であれば 1 8 0 置換 した試料 と 1 6 0 置換 した試料で一定であ り、従 って 1 4 59 - 研究会報告 T c (1 8oo r6 0)∝ 1 / [ ∑A。2x ⊥H ( q,W。 ,1 8 oor1 6 0) / W。】t ・ ( 4) す なわち、 Tcは動的帯磁 率の複素成分 に反比例 して決 まることが分か る 。 高温超伝 導体 では動的帯磁 率 x( q,W) は q=Qです るどい ピー クを持つ こ とが知 ら れてお り、 ロー レンツ型 のエネル ギー分布 を してい る として、 よ く使 われ る式 x( q ,W) -x J(1+( q Q) 2E2 1' hw/ rQ ) , ( 5) を用いる。 xQは強 く相 関 した反強磁性 ス ピンによ り増強 され た s t agge l ・ e d帯磁率で ある。 Mi laandRi c e 6)に よれ ば 1 / TI T -∑Aq 2 ix ⊥M ( q,叫, ) /W。 〉 ∝∑ t 4 +2 B( c osq x a +c osq , a) ) 2 ix ⊥ H ( q ,W。 ) / W。 ) , ( 6) である。 ただ し A 及び B は、それぞれ o ns i t eの Cuス ピンか らの超微 細結合定数 及び隣の Cu ス ピンか らの酸素イオ ンを経ての超微細結合 定数 である。 2次元 q空 間について和 を と り 1 / T. T ∝( A4 B) 2x Q/ rQ E 2 を得 る 。 xQは E2 ( 7) に比例 し、 180 置換 によ りxQ /E 2の比は変わ らない と して 7・8) I / T. T ∝( Al4 B) 2 /r Q・ ( 8) 従 って方程式( 4) から T c∝[ rQ] t ・ ( 9) を得 る 。 以上の考察か ら、図 5は 180 置換 に よ り r Q が減少 し、1 / Tlが増大 して Tcが低 下 してい ることが分 か る。 Mo iyae r ta l. 9) 及び Pi ne se ta l. 8)によれ ば、超伝導 クーパー 対形成 に有効 に働 くのは高振動数 の反強磁性 ス ピン揺 らぎで あるか ら、 rQ の減少 は 高振動数の反強磁性 ス ピン揺 らぎが減少 し、クーパー対がで きに くくなって T cが低 -4 6 0- 「 強結合超伝導 - ps e udoga pを中心として-」 下 してい ることになる 。 そ こで 1 8 0置換 によ りrQが減少 し Tcが低下 してい る様子 を、To kunaga e ta l. 5)が Y1 237+Ni系で測定 した Ni 濃度 によ りrQが減少 し、 T cが低下 し てい る様子 と比較す る 図 6は tを固 。 cが rQに比例す る様子 を 定 した とき T 248の酸素置換 した場 示 してい る。 Y1 E ^ d ヽ ■ 一 ′ 8 0 U 20に,○印は t= 合 において△印は t=4. ト 75 3. 70に、▽印は t =3. 21に固定 した場合 に rQが減少 し、 T cが低下 してい る様子 237の Ni置換系 を示 してい る また Y1 。 については、○印は t=3. 80に、ロ印は t =3. 26に、◇印は t=2. 72に固定 した場合 600 700 800 9001 00011 001 2001 300 に r Qが減少 し、 T cが低下 してい る様子 を示 してい る ス ピンギャ ップによる TI T( A4B) 2( a・u・ ) 。 1 / Tl の急激 な減少の影響 を避 けるため、 十分高温でのデータを とって比較 してい る 上の式で検討 した よ うに tを固定す 。 ると確かに Tcは rQに比例 してい る。 こ 248で酸素置換 した場合 に の図か ら、Y1 図 6 Y1 2 4 8において 1 8 0置換によるrQの減 少と T cの減少の関係と、Y1 23 7において Ni 置換 した場合の rQの減少と T cの減少の関係。 tを固定したとき、いずれにおいても T cは rQに比例して変化 している 。 T cが低下す る現象は、Y1 237の Ni置換 系で T cが低下す るの と同 じであることが分かる。Y1 248で 1 8 0 置換 した場合、1/Tl の増加か ら評価 した rQの変化の割合 △ rQ /rQは∼0・ 0058 であ り、 これ は Tcの変 化の割合 △ T c/ T c ∼0. 0058に一致 してい る。この ことは 1 8 0 置換 によ りrQが減少 し、 Tcが低下 してい ることを明確 に示 してお り、同時 に 1 8 0置換 による rQの減少が小 さ cの低下が小 さい ことを示 してい る。す なわち高温超伝導体で一般 に観測 さ いか ら T れているアイ ソ トープ指数が非常に小 さい理 由が理解 され る。 一般 に、同位体 は中性 子の数 が異 な り質量数 が異なるが電子状態 は変化 しない と 理解 されて きた。上記の実験結果 、す なわち 1 8 0 置換 した場合 1 / Tlが増加 してい る ことは明 らかに電子状態の変化 を示 しているが、なぜ電子状態が変化 しているのだ α ∂ c 1 6 0Y1 248 3. 8 41 1 ( 1 ) 3. 871 7( 1 ) 27. 23 1 8 0Y1 248 3. 8 408 ( 1 ) 3. 871 8( 1 ) 2 7 2 (8 7. 23 6 6 (8 ) 表1 1 8 0置換による格子定数の変化 - 461- ) 研究会報告 ろ うか ?他 に も電子状態 が変化 してい る証拠 が欲 しい。実 は、格 子定数 B と C がわ ず か ではあ るが減少 してい る。表 1に これ を示す。 この 同様 の格 子 定数 の減少 は 、 Co n°e re ta l. 10)の論文 において も YBa2Cu306十Ⅹ系でい ろんな酸素濃度 に対 して 1 80 0. 1 6 置換 した場合 に明 らかに見 られ 0. 1 4 る。 電子状態 が変化 してい るこ とを示す 更 に明 らかな証拠 が ある 。 0. 1 2 私 た ちの Y1 248 1 で 180 置換 した場合 、核 四重極共鳴振動 0 . 数 が vQ ( 1 8) =29・ 7350MHzで あ り、 160 の dO. 08 Y1 248の vQ ( 1 6) =29. 7455MHzよ り、 1 0・ 5kHz低 い 1' 。 vQの 変化 に対す る T c 0. 06 の低下の割合 は △Tc / △ vQ =( -0・ 47 ) / ( -1 0・ 5 ) =0. 045Ⅹ/ kHzで ある。Y1248は圧 力 に よ り 0. 04 し、 T cが上昇す るこ とが Zhe ng l. l l ) 及び Z i mme r ma nne ta l. 1 2)に よ り e ta 0. 02 vQが増加 示 され てい る。 Z he nge ta l. l l )によれ ば、そ 0 0 の場合の変化 の割合 は △Tc / A vQ =(A Tc / A vQ / △p) =6. 2 / 90 =0. 06 9 K/ kHzで あ △p) /( 0. 2 0. 4 0. 6 0. 8 1 1 / TI T( A4B) 2( a・ u・ )( 250K) る。 v Qの変化 の方 向 と T cの変化 の方 向は 一致 してお り、両者 の割合 は非常 に近 い。 図 7 いろんな高温超伝導体で観測されて 以上か ら明 らか に Y1 248で いるアイソトープ指数 α と25 0 Kで測定さ 1 80 置換 した場 合、電子状態 が変化 し、反 強磁性 ス ピン揺 2 ) スピン-格子緩和率 1/TIT( Aれた Cu( らぎが変化 してい るこ とが理解 で きる。 4β)2との関係。明らかに両者に相関が見 られ、アイソトープ効果において反強磁性 §4 高温超伝 導体 にお け るアイ ソ トー プ スピン揺らぎが重要な役割を果た している ことが分かる。 指数 それ では、一般 に高温超伝 導体 において 観測 されてい る非常 に小 さいアイ ソ トープ指数 αは、『超伝 導 クーパー対 の機構 が反 -AT c/ T c T c a La . 8 5 Sr o . 1 5 CuO. 37. 5∼38. 3 0. 08∼0. 1 5 0. 0098 -0. 01 8 YBa 2 Cu. 08 79. 5-81 0. 05 6∼0・ 076 0・ 0065 -0・ 0089 YBa Z Cu307 8 9. 6∼92 0. 025∼0. 05 0・ 0030 -0・ 005 4 0・ 0 26-0・ 03 4 0・ 0031 -0・ 0040 Bi 2 Sr 2 Ca Cu2 08 ・6 751 5 表 2 いろんな高温超伝導体で観測 されているアイ ソ トープ指数 α - 462- 「 強結合超伝導 - ps e udo ga pを中心 として-」 強磁性 ス ピン揺 らぎで ある』 とい う立場 か らどの よ うに理解 され るのであろ うか。 表 2は Fr a nc k13)の レビューか ら今まで報告 されているアイ ソ ト⊥プ指数 αの値 を纏 めたものである。構成元素の他の元素置換系におけるアイ ソ トープ指数 な ど多 くの デー タが報告 されてい るが、 ここでは純粋 な系に限った。 良 く知 られてい るよ うに αの値は BC S理論の 0 . 5に比べていずれ も非常に小 さい。 αは小 さいなが らも、面 白い ことに低 ドープ系では大 きく、過剰 ドープ系では小 さい ことが分かる。縦軸 を これ らの αに とり、横軸 を 2 5 0 Kで測定 された 1/TIT( A-4B ) 2にとってグラフにす ると図 7になる。ただ し同 じ試料 についてのデー タは Y1 248 だけであ り、その他の FI T( Al4B)2は A s ayamae ta l. 7 ) 及び I s hi dae ta l. 3) か ら引用 している。非常に面 白 / TI T( A4B) 2と相関 してい る すなわち αは rQの小 さい La い ことに αは明 らかに 1 。 系で大きく、 rQの大 きい Bi系で小 さい。 αは低振動数の反強磁性 ス ピン揺 らぎが 多い La系で大 きく、高振動数の反強磁性ス ピン揺 らぎが多い Bi系で小 さい。 この 相関 も、高温超伝導体 においてはアイ ソ トープ効果 は反強磁性 スピン揺 らぎに密接 に関係 していることを裏付 けている 。 では小 さいなが らも存在す るこの αの大小関係 は、『超伝導 クーパー対の機構が反 強磁性ス ピン揺 らぎである』 とい う立 場か らどの よ うに理解 され るのであろ うか。図 8にこれ らの高温超伝導体の T c畔) を縦軸 に し、横軸 を rqに比例す ると考え られ る TI T( A-4B)2( a. u. )と してプロッ トす る。上の考察 に従い、 £ =3. 0に固定 してい る。 Y1 248と Y1 237 +Niは同 じ試料 についての値であるが、 LSCOと Bi 221 2は αは Fr anc k13)の レビ ト 40 ユーか ら、 FI T( A-4B)2は A s aya mae t l . a 7) 及び Ⅰ s hi dae ta l. 3)か ら引用 してい る 。 スピン揺 らぎの理論 によれば T c∝ E2rQ (∝ xQrQ) 及び 窄T( A-4B)2 ∝ ∈2rQ/xQ rQ ) であるか ら 8・9)、図 8のグラフの傾 きは xQに比例 してい る。L SCOと Bi 221 ( ∝ 0 2については、デー タ点は一つ しかないが TI T( A4 B) 2( a・u・ ) 上記の考察に従い、酸素同位体置換 した とき原点を通 る直線 上を変化す ると考え られ る 。 400 800 1 200 1 600 図8 このグラフか ら、もし 180 置換 t=3. 0に固定 した ときの、超伝導転移 温度 T cと TI T( A-4B)2の関係 . O直線の傾 き による rQの変化がいろんな物質で同 じで はそれ ぞれの物質 の xQに比例 している, J あるな ら、傾 き xQの大 きい物質ほ ど T c の減少が大きくなることが理解できる 実際、 これ らの傾 きの比は Y1 248 に対 して 。 - 4 63- 研究会報告 LSCO は∼ 1 . 8倍 、Y1 237は∼0. 9倍 、Bi 221 2は∼0. 5倍 になってお り、測定 されて いる αの比に近いoす なわち xQの大 きい物質 ほ どdは大 きい と考え られ る これ は、 もともと反強磁性 ス ピン相 関が大 きい物質では、180 置換 によって もた らされ る反強 。 磁性 ス ピン揺 らぎの変化が大 きい ことを意味 し、従 って Tcの低下が大 きい ことを意 味す る。 この ことは r e as o na bl eなことである と理解 できる 。 §5 結論 高温超伝導体の発現機構 については、発 見 当初か ら多 くの研究がな されて きたが、 クーパー対の対称性 は d波 であることが明 らかに され、今 ではクーパー対の結合機 構 は反強磁性相互作用 による と言 う意見が大勢 を 占めてい る と思われ る。 その よ う な中にあって所謂 アイ ソ トープ効果 が非 常 に小. さいなが らも観 測 され てお り、電 子 一格子相互作用 の重要性 が一部 には指摘 され ていた。 このアイ ソ トープ効果 を どの よ うに矛盾 な く解釈す るべ きかが一つの重要 な課題 であった。 YBa2Cu408 伴1 248) を厳重 な管理の もとで 180 と 160 に置換 した試料 について行 っ 2 ) NQR核磁気緩和率の実験結果か ら、180 置換 によ り Cu( 2 ) た、非常に精度 ある Cu( の核磁気緩和率が増大 し、超伝導転移温度 T cが低下 していることを示 している C つ cが低下 してい ることが分か ま り 180 置換 によ り反強磁性 ス ピンゆ らぎが変化 し、 T った。 いろんな物質で観測 されてい るアイ ソ トープ効果 について議論 し、『高温超伝 導体 においては、アイ ソ トープ効果 は必ず しも電子 一格子相 互作用 の重要性 を示す のではな く、180 置換 によ り反強磁性 ス ピン揺 らぎが変化 して Tcが低下 してい る』 とい う非常に重要なことが結論 され る。 inkmann教授 に Uni ve r s i t yo fZur ic hに招待 され 、 19 この研究は著者 が D.Br 97年 8月か ら 4 ケ月間滞在 した ときの実験測定に基づいている。前半については、 共同研究者 の Pr o f .D.Br inkma n n,Dr s .M.Ma ll ,J.Ro o s ,K.Co nde r( ETH) ,F. f .M.Er e mi nに感謝 申 し上げます。 このよ うな難 しい核磁気 一格子緩 Ra faa n dPr o 和率の差異 の測定は、おそ らく Y1 248 にお いてのみ可能 である と考 え られ る。 D. Br i nkma nn教授 の偉大 さを感 じる ところである 。 後半 (§3以後)の考察 につい ては帰 国後発展 させた ものであるが、大阪大学名 誉教授 の朝山邦輔先生 に議論 していただ きま した ことを、心か ら感謝 申 し上げます。 -4 6 4- 「 強結合超伝導 - ps e udoga pを中心 として 」 参考文献 1 )F. Ra fa , T.Ohno,M. Ma l i ,J . Roos , D. Br i n kma nn, K. Conde ra ndM. Er e mi n: Phys ・ Re vI t t . 81( 1 998 )5 91 2. Le . L.Ta l l on ,J . W. Qui l t y ,H. J . Tr oda h la ndN. E. Fl owe r : Phys ・ Re v ・ 2 )G V. M. Wi l l i a ms ,J Le t t .8 0( 1 998 )377. 3)K・ I s hi da ,K・ Yos hi da ,T. Mi t o,Y. t okuna ga ,Y. Ki t a okaa ndK・ As a ya ma: Phys ・ Re v・ B58 ( 1 998 )R5 960. 4)J ・ M・ Tr a nq ua dae ta l ∴Ph ys . Re v. B46( 1 9 92)55 61 . 5 )Y T bk una ga ,K. I s hi da ,Y Ki t a okaa ndK. As a ya ma:Sol i dS t a t eCommun・1 0 3( 1 997)43・ 6 )F. Mi l aa ndT. M. Ri c e: Phys . Re v. B40( 1 989)1 1 38 2. 7 )K, As a ya ma , Y Ki t a oka ,G q. Zhe n g,K. I s hi da , K. Ma gi s hi , T.Mi t oa ndY Tbk un a ga: 1 996)S6,31 87. Cz e c h. ∫ . 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