鶏卵バイオリアクター:「金の卵」を産むニワトリ(PDF

応用分野:蛋白質生産プロセス、家禽の品種改良
技術分野:バイオ科学技術
鶏卵バイオリアクター :「金の卵」を産むニワトリ
シーズ保有機関 : 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
発
明
者 : 大石 勲
技術の概要
バイオ医薬品・組換え蛋白質の超低コスト生産技術
・ニワトリ始原生殖細胞とゲノム編集を用いた応用性の高い遺伝子改変技術。
・遺伝子組換えにより鶏卵中に有用蛋白質を安価かつ大量生産する技術。
・産業用鶏卵バイオリアクターや品種改良技術等の開発。
技術の特徴
ゲノム編集によるニワトリ遺伝子の改変と組換え個体の樹立
・ニワトリ始原生殖細胞を用いてゲノム編集技術により遺
伝子改変を行い、高効率に導入した安定発現株を樹
立する。これを鶏卵に移植、孵化させることで、同一個
体内に異なる遺伝子情報を持つ細胞が混じるキメラの
ヒヨコ(ニワトリ)を得て、その交配により遺伝子を改変
した組換え個体を樹立し遺伝子組換えヒヨコ(ニワト
リ)を得る。
・有用な組換え蛋白質を卵白に含む卵(いわゆる金の
卵)を遺伝子組換えニワトリに産ませることで、有用蛋
白質を低コストで大量生産することができる。
・有用物質を生産するツールとしての産業用鶏卵バイオリ
アクターや所望の優れた品種の遺伝子組換え個体をつ
くりだす品種改良技術として応用することができる。
技術の活用例
バイオプロセス(生産)・家禽の品種改良
・抗体医薬や診断薬、経口ワクチンなどバイオ医薬品の生産
・化粧品素材、機能性食品などの蛋白質素材の生産
・卵白ムコイド除去や即育性増加、抗病性獲得など家禽の品種改良
オボムコイド遺伝子を欠
失したゲノム編集ニワトリ
(アレルゲン遺伝子を含
まないニワトリ)の作成
(金の卵)
技術開発の経緯
組換え蛋白質の抱える課題解決へのゲノム編集によるニワトリ遺伝子改変
近年、バイオ医薬品等組換え蛋白質のニーズは広がりつつありますが、培養細胞を用いて生産されるなど、その設備投資
や高コストのために普及し難い側面も持っていて、培養細胞を用いない代替技術が注目されています。このような背景か
ら、ニワトリの卵管細胞で蛋白質を高効率かつ特異的に発現する系をデザインしてトランスジェニックニワトリを作製し、抗
体を生産するプロセスなどを検討してきましたが、最近、ニワトリの始原生殖細胞に着目したゲノム編集により、遺伝子組
換えニワトリの樹立に成功し、バイオ蛋白質の大量生産への道筋を示すとともに、遺伝子ノックアウト(削除)や外来遺
伝子のノックイン(挿入)などの遺伝子改変技術も構築しています。
産官金による連携支援
産
官
金
・産業支援機関による共同研究、共同開発における体制構築、推進支援
・研究開発資金獲得支援、販路探索等の事業化支援
・イノベーションの円滑な「橋渡し」に向けた支援機能の推進
・方策的な情報発信と普及指導
・研究開発、事業化のための資金調達、融資支援
・事業化、企業経営コンサルティング
企業の方へ一言
バイオ医薬品やバイオ機能性素材が増えつつあるなかで、生産設備や高コスト化など有用蛋白質の生産の改善すべき課題
があげられていますが、これまで構築してきたニワトリ遺伝子改変技術の有効性や実用性が検証されていくなかで、例えば企
業ニーズのある分泌性蛋白質の大量生産に関する共同研究や技術移転など、工業や農業への応用に向けて本技術を利
用いただければと思います。先ずは、ゲノム編集による鳥類遺伝子の改変などによるバイオプロセスのいろいろなものづくりへの
応用や家禽の品種改良などについてご相談ください。
特許の情報、その他
■ 特許の情報
名称:鳥類卵管細胞を用いた抗体製造方法
登録番号:特許第5447803号(H26.1.10登録)
出願日:平成21年7月2日
特許権者:国立研究開発法人産業技術総合研究所
■ その他の情報
用語解説
ゲノム編集技術:ゲノム上の特定の配列を標的として遺
伝子の変異、解除や挿入などを可能にする技術。広い
汎用性、高い効率性から次世代の遺伝子改変技術とし
て医学分野や農水産物の品種改良分野で利用。
始原生殖細胞:発生過程の初期に認められる精子や
卵子の元となる細胞。血管内から生殖巣へ移動した後、
精子または卵子への分化を開始する。ニワトリの場合孵
卵後2~3日の血液から採取できる。
オボムコイド:卵白の主要な蛋白質の一つ。オボアルブミ
ンやリゾチームなどとともに卵アレルギーの主要な原因物
質となる。
この資料についての問合わせ先:近畿経済産業局 産学官連携推進室
公益財団法人 新産業創造研究機構
TEL
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06-6966-6164
078-306-6805