グラフェン伝導層を用いた絶縁物のオージェ電子分光

応用分野:材料分析及び評価
技術分野:分析技術
グラフェン伝導層を用いた絶縁物のオージェ電子分光分析
シーズ保有機関 : 京都府中小企業技術センター
発
明
者 : 鴨井 督
技術の概要
絶縁物の材料微小部の組成分析及び数nmの最表面の測定手法
グラフェンを絶縁物に転写
・グラフェンを数mmサイズで任意の絶縁基板上に転写することで導電性を付与することが可能。
オージェ電子分光分析によって絶縁物の極表面の観測が可能に
・従来、困難であった酸化物材料等の絶縁物における微小部・極表面組成分析が可能。
技術の特徴
グラフェンを絶縁物に転写することでオージェ電子分光分析が可能
オージェ電子分光分析は絶縁物の測定ができない
・オージェ電子分光分析は物質の数nm程度の極表面組成を判定できる反面、分析試料に電子線を照射するため、
絶縁物試料ではチャージアップの影響で、分析を行うことができない。
導電性を与えるために
・絶縁物観測のためには金属膜コート等により導電性の付与が必要になるが、 膜厚数nm以下の導電膜を均一につけ
る技術が必要であった。そこで、本シーズにおいては、導電性付加のために、1原子シート状物質であるグラフェンを用
いた。
グラフェンの特長
・グラフェンは炭素原子のみで構成された厚さ0.3nm の1原子層材料であり、材料極表面の解析を補助する。
・1原子シート構造であることから、絶縁物の表面に極薄の均一膜を形成することが可能。
・柔軟性を有するため、曲面形状等へも展開できる。
グラフェン層を透かして絶縁物最表面の情報を取得
・絶縁性の高いセラミック基板に対して、明瞭な電子顕微鏡(SEM)像並びに
オージェピークを観測。
・セラミックの1粒子をターゲットにして観測が可能であることなど、 微小部
分析が可能。
グラフェン膜
Si基板上へ転写されたグラフェン膜
技術の活用例
Mg系セラミックの
オージェ電子分光分析結果
先端材料・電子顕微鏡技術への利用
・他の電子顕微鏡技術への応用
電子線マイクロアナライザ(EPMA)、エネルギー分散型X線分析(EDX)
・電子顕微鏡
・最先端材料の分析(薄膜材料、微細パターン解析)
EDX
EPMA
・電子線マイクロアナライザ
技術開発の経緯
絶縁物の簡易的測定法の確立を目指す
従来のオージェ電子分光分析は、対象が導電性物質に限られていたため、
絶縁物の最表面を簡易に観測できる方法の確立が望まれていた。そこで、
京都府中小企業技術センターでは絶縁物に導電膜を付与する研究を行い、
本シーズ技術を開発した。本シーズはオージェ電子分光分析のみならず、
EDXやEPMA等の電子顕微鏡技術にも応用が可能であることから、今後、
様々な分野への応用が期待される。
オージェ電子分光分析装置
産官金による連携支援
産
官
金
・産業支援機関による共同研究、共同開発における体制構築、推進支援
・研究開発資金獲得支援、販路探索等の事業化支援
・官民連携による新たな製品の検査手法の試験研究支援及び共同開発
・企業が抱える課題解決及び研究開発の援助
・研究開発、事業化のための資金調達、融資支援
・事業化、企業経営コンサルティング
企業の方へ一言
オージェ電子分光分析装置は材料の研究開発から品質管理に至るまで幅広い場面で利用されています。本シーズは今まで
金属・半導体材料等の導電性材料に限定されていた測定対象を大きく広げるものです。今後、この技術をさらに発展させて
いくことで、皆様が抱える課題の解決に貢献していきたいと考えております。これまでに来所いただいたお客様はもとより、新しい
企業の方々も積極的にご利用ください。
特許の情報、その他
■ 特許の情報又は知財権利化の構想
・特許情報 :現状は出願実績なし
・今後の知財権利化の構想
今後は本シーズ技術を進展させるための研究を継続し、
これらの研究過程において顕著な成果が得られた場合に
は当該技術に関連する知的財産の権利化又はノウハウ
による保護を検討する予定である。
2.グラフェン:グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に
結合したシート状物質である。グラファイトはグラフェンが
複数積層し、カーボンナノチューブは単層あるいは多層の
グラフェンを円筒状にしたものである。電子移動度が非常
に高く、導電性材料として研究開発が進んでいる。単層
グラフェンの作製技術が最近脚光を浴び、新しい半導体
材料への応用などが期待されている。
■ その他の情報
グラフェンの構造
用語解説
1.オージェ電子分光分析:オージェ分析は、試料に
電子線を照射し、発生するオージェ電子を分光することに
より、試料極表面(数nm)における微小部の組成分
析が可能な分析手法である。
オージェ電子分光分析 ⇒
この資料についての問合わせ先:近畿経済産業局 産学官連携推進室
公益財団法人 新産業創造研究機構
TEL
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06-6966-6164
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