アーミング酵母を用いた廃棄果実からのバイオ

応用分野:バイオリファイナリー、エネルギー
技術分野:バイオ科学技術
アーミング酵母を用いた廃棄果実からのバイオエタノール製造方法
シーズ保有機関 : 奈良県産業振興総合センター
発
明
者 : 都築 正男
技術の概要
アーミング酵母を用いるバイオリファイナリー ~植物から化学製品をつくる~
・酵母細胞表層に外来タンパク質を提示させる細胞表層工学技術により、つくり変えられた新機能をもつアーミング酵母
を用いて、バイオマス(再生可能資源)から燃料・化成品を生産するバイオリファイナリー。
・清酒用酵母の表層に黒麹菌のペクチンの加水分解酵素(ペクチナーゼ)を提示させたアーミング酵母により、廃棄果
実の果汁生成とアルコール発酵が同時に行えるようになった省力的なバイオエタノールの製造。
技術の特徴
廃棄果実からの省力的なバイオエタノールの製造
・黒麹菌(Aspergillus niger)のエンド型ペクチナーゼ遺伝子(pgaB)に、細胞外への分泌シグナルと、細胞膜
外側に酵素をつなぎ止める糖鎖への付着タンパク質を融合したものを導入したプラスミドを作成し、酵母を形質転換す
ることで、細胞表層に酵素提示したペクチナーゼ活性をもつアーミング酵母が作成できる。
・果実を原料としたアルコール発酵は、先ず果実から果汁を得る必要があり、物理的な力によらない場合には果実に多く
含まれているペクチンを加水分解しなければならず、果汁化とアルコール発酵の複数段階の工程が必要となる。本技術
ではペクチナーゼを酵母の細胞表層に提示して発現するアーミング酵母を用いることで、果実の果汁化とアルコール発
酵素遺伝子
表層提示用
ベクター
ペクチン分解酵素
エタノール
ペクチン
アーミング
酵母
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
pgaB/YPH499 pgaB/K7UT1T YPH499(対照)
果汁のブドウ糖
ペクチナーゼを表層提示したアーミング
酵母によるアルコールの生産
技術の活用例
活性(U/OD10)
酵を同時に一段階で省力的に行うことができ、特に廃棄果実の有効利用に活用できる。
(アーミング
実験室酵母)
(アーミング
清酒酵母)
(実験室酵母)
ペクチン分解酵素活性(pgaB)
バイオエタノールの地産地消
・成熟果実が肉厚で汁気の多い果肉をもつ液果や子房以外の花托などが肥大化した偽果に糖分が多く含まれる果実
などで、出荷に適さない廃棄される果物などの果菜類からバイオエタノールを製造し燃料として使う。
暖炉
廃棄果菜
バイオエタノール(貯蔵容器)
バイオガソリン
アルコールランプ
技術開発の経緯
バイオ科学技術によるバイオマスの有効利用
奈良県産業振興総合センターでは、バイオリファイナリー技術の活用を目指し、植物のセルロース系など細胞壁多糖の
バイオマスから有用な化合物を生産するために、神戸大学などともネットワークを構築して細胞表層工学技術を活用し
たアーミング酵母を作成し活用する技術開発に取り組んできた。このなかで、物理的に絞るだけでは果汁が得られない
廃棄果実(例えば奈良県特産の柿)に着目し、ペクチンを分解するペクチナーゼを細胞表層に導入・提示したアーミ
ング酵母を作成し、これを用いることで果実の液化(果汁)を引き起こすと同時にアルコール発酵させて、搾汁工程を
省いた省力的な工程でバイオエタノールを製造できる技術を開発した。
産官金による連携支援
産
官
金
・産業支援機関による共同研究、共同開発における体制構築、推進支援
・研究開発資金獲得支援、販路探索等の事業化支援
・イノベーションの円滑な「橋渡し」に向けた支援機能の推進
・方策的 な情報発信と普及指導
・研究開発、事業化のための資金調達、融資支援
・事業化、企業経営コンサルティング
企業の方へ一言
バイオマス(セルロース、デンプン、糖、油脂、リグニンなど)由来の化学品素材(エタノール、有機酸、糖アルコール、脂肪酸
エステル、炭化水素など)が増えつつあるなかで、バイオリファイナリーの実用化に向けた課題が明らかになってきていますが、近
い将来克服されて多様な製品(輸送燃料、プラスチック、繊維、添加物など)に利用されるものと期待されています。先ずは
地産地消ということで、本技術例を利用いただければと思います。また、細胞表層掲示技術を使った多様なアーミング酵母な
どによるいろいろなものづくりの応用技術の構築のご相談にも応じます。
特許の情報、その他
■ 特許の情報
名称:アルコール製造方法
登録番号中:特願2015-238497
出願登録:未公開
出願日:平成27年12月7日
特許出願人:奈良県
■ その他の情報
用語解説
・バイオリファイナリー:石油の代わりに再生可能資源で
あるバイオマスを出発材料にして、燃料・化成品などを生
産する技術。
・細胞表層工学:酵母や細菌を用いて遺伝子操作に
より細胞表層に外来タンパク質を提示させる技術。細胞
壁を新たな反応場とする細胞に改変変換することができ
る。
・アーミング酵母:酵母細胞が本来持ち得ない機能を細
胞表層に賦与して新しい機能性細胞につくり変えた酵母
で、細胞表面に腕(アーム)/千手観音のように沢山
の外来酵素が遺伝子的に提示されている。
この資料についての問合わせ先:近畿経済産業局 産学官連携推進室
公益財団法人 新産業創造研究機構
TEL
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06-6966-6164
078-306-6805