圧縮変形 繊維の物性とその利

応⽤分野︓⽺⽑繊維のリサイクル
技術分野︓繊維
圧縮変形⽺⽑繊維の物性とその利⽤
シーズ保有機関
発
明
者
技術の概要
︓ 地⽅独⽴⾏政法⼈ ⼤阪市⽴⼯業研究所
︓ 吉村 由利⾹、⼤江 猛
廃棄⽺⽑繊維を硬質のタンパク質ボード・フィルムとして再利⽤
・リサイクル技術が確⽴されていない廃棄処分の⽺⽑繊維の再利⽤。
・⽺⽑ケラチンタンパクのシスチン架橋を利⽤して、廃棄⽺⽑から硬質のタンパク質ボード・フィルムを作る。
・プラスチックにはない特徴を有する硬質のタンパク質ボード・フィルムである。
技術の特徴
酸化還元条件や圧縮条件によりボード・フィルムの物性を適正調節
・廃棄⽺⽑を⾼圧縮で成形しながら、⽺⽑ケラチンタンパクに多く含まれるシスチン残基を酸化還元処理する。⽺⽑ケラ
チン分⼦間に可逆的な架橋結合を形成することにより,形態安定性に優れた硬質のタンパク質ボード・フィルムを作製
する。
・圧縮の強度により、⽺⽑繊維の厚さや表⾯状態が変化し、繊維の変形によって⽺⽑繊維間の摩擦や結節状態
が変化し、剛軟度が変化する。これにより、タンパク質よりなるボード・フィルムの物性を調節できる。
・⽺⽑ケラチンボード・フィルムは、タンパク質が主成分であるため、⽣分解性、⾼い吸⽔性・吸湿性、不凍性、染
⾊ができるなどプラスチックにはない特徴もみられる。
<圧縮変形のプロセス>
弱圧縮
圧力
厚さが減少⇒断面の変形
(扁平化)
強圧縮
圧力
ケラチンタンパクの還元・酸化による形態変化
技術の活⽤例
光沢の増大⇒表面凹凸の減少
(鏡面反射) (平滑化)
⽺⽑リサイクルによる資材
・素材の特徴を活かした硬質タンパク質ボード・フィルムの包装資材、産業資材、園芸・農業資材などへの利⽤。
硬質タンパク質ボード・フィルム
包装材料
調湿材(床下)
園芸資材(プランター)
技術開発の経緯
⽺⽑由来タンパク質資源の再利⽤と⾼付加価値化
⽺⽑繊維は、リサイクル技術が未だ確⽴されておらず、使⽤済み⽺⽑のほとんどが廃棄されています。しかし、⽺⽑は
様々なアミノ酸をバランス良く含有するタンパク質で、反応性の⾼いシスチン残基を豊富に含むケラチンタンパクであること
から、その特性を活かした再利⽤が望まれていました。⼤阪市⽴⼯業研究所では、このリサイクルのニーズに応えるために、
酵素を使って廃⽺⽑からシスチンを含むタンパク質分解物を安定に抽出する技術を開発し、⽺⽑から取り出されたタンパ
ク質・アミノ酸などの⽤途を開発する中で、ケラチン含有シスチンの化学的特性と圧縮という物理的操作により、廃⽺⽑を
硬質なタンパク質ボード・フィルムに加⼯する技術を構築しました。
産官⾦による連携⽀援
産
官
⾦
・産業⽀援機関による共同研究、共同開発における体制構築、推進⽀援
・研究開発資⾦獲得⽀援、販路探索等の事業化⽀援
・イノベーションの円滑な「橋渡し」に向けた⽀援機能の推進
・⽅策的な情報発信と普及指導
・研究開発、事業化のための資⾦調達、融資⽀援
・事業化、企業経営コンサルティング
企業の⽅へ⼀⾔
⽺⽑繊維は、⽔をはじく疎⽔性表⾯と吸湿性・吸⽔性に優れた親⽔性内部の相反する⼆層構造を持つ天然タンパ
ク質です。この特性を利⽤した廃⽺⽑のリサイクルとして、現在、オイルフェンスや廃油関係のウエス、緩衝材などへの利
⽤が試みられています。本件の簡便な圧縮操作による廃⽺⽑のタンパク質のボード・フィルム加⼯は、⽺⽑繊維のリサイ
クル利⽤をさらに広げます。廃⽺⽑繊維の資源再⽣化技術として、⽺⽑の特性を活かした硬質タンパク質ボード・フィル
ムの製品開発、⽤途開拓にご興味がございましたら、ご相談ください。
特許の情報、その他
■ 特許の情報及び知財権利化の構想
特許情報︓本件に関しては未出願
参考情報︓
(技術論⽂)
繊維学会誌(報⽂)Vol.59,No.1(2003)
“⽺⽑の酵素処理における界⾯活性剤前処理の酵素反
応促進効果”
(特許出願)
発明の名称︓防縮性及び対⻩変性を備えた獣⽑繊維
構造物及びその製造⽅法
公開番号︓特開2001-003274
発明の名称︓改質獣⽑繊維構造物及びその製造⽅法
公開番号︓特開2001-073281
■ その他の情報
⽤語解説
ケラチン︓⽺⽑や⽑髪のように硫⻩原⼦を多量に含む上
⽪由来の巨⼤タンパク質。ケラチン分⼦内のシスチン残基
のS-S結合は、還元処理で容易に開裂してSH基となり,
酸化で元に戻るため、可逆的に分⼦間の架橋結合をか
け替えることができる。
羊毛ケラチン 分子量4~6万
HS
HS
HS
HS
HS
HS
HS
HS
N-末端部
Cys残基数/総数
8/55 (15%)
HS
中間部
Cys残基数/総数
7/29 (2%)
HS
HS
HS
C-末端部
Cys残基数/総数
9/46 (20%)
※ 山内 清,科学と工業,
78,385(2004)
この資料についての問合わせ先︓近畿経済産業局 産学官連携推進室
公益財団法⼈ 新産業創造研究機構
TEL 06-6966-6164
TEL 078-306-6805