静岡県のバイオマス利活用の現状と課題 1)これまでの経緯 平成 14 年 12 月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」を受け 背景 て、各地でバイオマス利活用推進に向けた種々の活動が広がっている。静岡 県でも平成 16 年に「静岡県バイオマス利活用推進協議会」が設置され、各分 野の代表者が集まり、討論が重ねられた。そして平成 17 年 3 月に、県内の各 鈴木 恭治 種バイオマスの総合的な利活用を目指し「静岡県バイオマス総合利活用マス タープラン」が策定された。 農学研究科 教授 2)バイオマス総合利活用マスタープラン ■ キーワード 本マスタープランの骨子は、平成 22 年度(2010 年度)までに、廃棄物系バ イオマスの利活用率を炭素量換算で 89%以上に、未利用バイオマスの利活 ・ バイオマス 用率を 35%以上に向上させることを目標としている。なおマスタープラン策定 ・ セルロース 時点での本県の利活用率は、廃棄物系バイオマスで約 78%、未利用バイオ ・ バルカナイズドファイバー マスで約 32%であった。 一方、「バイオマス・ニッポン総合戦略」では 2010 年を目途に、廃棄物系バ イオマスで 80%以上、未利用バイオマスで 25%以上を達成することを掲げて いる。したがって本県は全国レベルよりかなり高い目標値を決めているといえ る。 3)バイオマスタウン バイオマスの発生から利用までが効率的なプロセスで結ばれた利活用シス テムが構築され、安定的且つ適正なバイオマス利活用が行われているか、あ 概要 ■ 技術相談に応じられる関連分野 るいは今後行われることが見込まれる地域。国はこれを「バイオマスタウン」と 1. 紙、セルロースの化学改質 2. バイオマス利活用 度の「バイオマスタウン」構築を目指す。主たる基準としては、廃棄物系バイ 3. パルプ化および製紙技術 オマスの 90%以上、または未利用バイオマスの 40%以上の活用に向けて、 称し、全国で 500 程度の構築を目標としている。なお、静岡県では 10 箇所程 総合的なバイオマス利活用を進めるものであることが謳われている。特にモ デル性の高い取り組みには表彰制度もある。 4)静岡県バイオマス利活用ネットワーク設立 前述の「静岡県バイオマス利活用推進協議会」は、マスタープラン策定や策 定後の進捗管理を行うとともに、諸団体との情報交換の場として機能してき た。しかし利活用の一層の加速化を図るため、「協議会」を改組し「バイオマス ネットワーク」を設立しようということになった。これは「バイオマス」をキーワー ドに、より広い範囲から会員を募り、利活用の取り組みを有機的に結びつける ことを目指したものである。平成 18 年 11 月に設立総会が行われ、平成 19 年 3 月「NPO 法人静岡県バイオマス利活用ネットワーク」として認可された。 5)課題 利活用率の目標を達成するには、特に廃棄物系の利活用率向上が重要となる。各種廃棄物系バイオマスの利 用量と未利用量を炭素換算で比べたものを下図に示す。図より、建設廃木材、古紙、製材所木くずに於いて利活 用率改善が必要であることがわかる。また「バイオマスタウン」についてはまだ出足が鈍い状況にある。 概要 ■ その他の研究紹介 6)私の取組 ○バルカナイズドファイバーに関する研究 綿リンター等のセルロース系繊維をシート化し塩化亜鉛溶液で処理すると、繊維表面が膠化し、それを圧縮、成型、 乾燥すると高強度、高絶縁性のバルカナイズドファイバー(V ファイバー)ができる。近年、綿原料が不足気味であるこ とから、V ファイバー用新原料の探索を行うとともに、効率的かつ経済的なバルカン化法を検討している。 ○菜の花の多段的利用(共同研究) 循環型社会構築の一つとして、菜の花資源循環システムが多くの県で検討されているが、本研究では独自の試みと して、菜の花蜂蜜酒の開発、菜種粕とコーヒー粕の特殊肥料化、菜の花茎残渣のパルプ化と紙化を行っている。 ○コゴメヤナギの利用 県内一級河川の中州や岸辺に繁茂するコゴメヤナギは大雨の時に流木が堰きとめられたり、それ自身が流木になっ て海岸まで流出し、魚網を傷めたりする厄介物である。筆者らはコゴメヤナギの有効利用を検討している。
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