あるとすればETF単独 - 第一生命保険株式会社

Market Flash
あるとすればETF単独
2016年6月30日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・5月米中古住宅販売成約指数は前月比▲3.7%と市場予想(▲1.1%)を大幅に下回った。この指標は過去
数ヶ月ボラタイルな動きをしているが、均してみれば横ばい圏内にあり、住宅市場の変調を知らせるもの
ではないと考えられる。
・5月名目個人消費支出は前月比+0.4%となり市場予想を上回った。実質ベースでは+0.3%となり、3ヶ
月前比年率では+3.0%へと伸びを高めた。他方、個人所得は前月比+0.2%、前年比+4.0%と減速、前年
比伸び率は2014年4Qでピークアウトしている。この結果、貯蓄率は5.3%へと低下。消費者は、これまで
の原油安によってセーブされたおカネを切り崩しているのだろう。
・6月ユーロ圏景況感指数は104.4と市場予想(104.7)を下回り、5月から0.2pt軟化。製造業(▲3.7→▲
2.8)が改善した反面、建設(▲17.7→▲18.2)、小売(+3.3→+0.8)、サービス(+11.3→+10.8)が
軟化し、消費者信頼感(▲7.0→▲7.3)も速報値に一致して5月からの軟化を確認。もっとも、この調査
はBREXIT前に実施されたものであり、参考記録でしかない。
千
(前年比、%) 名目個人消費・所得
10
中古住宅販売件数・販売成約指数
(百万)
6
販売成約指数(右)
5.5
5
8
110
4
100
4.5
中古住宅販売件数
2
0
90
-4
80
3
-6
-8
70
10
11
12
13
14
15
消費
-2
4
3.5
所得
6
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。NYダウはこの2日間で554㌦上昇、BREXIT後の下落(870㌦)の半分以上を取り戻
した。また、ストレステストの結果を受けて時間外取引で銀行株が大幅に上昇。欧州株も全面高で英国株
(FTSE100)はBREXIT前の水準を回復し、4月21日以来の高値。GBP下落が奏功か。その他欧州株も全面高。
WTI原油は49.88㌦(+2.03㌦)で引け。リスクオフが一服し商品市況にも資金回帰。米原油在庫が予想
以上に減少したことも支えとなった。
・前日のG10 通貨はJPYとUSDが全面安で反対にNOK、NZD、AUDといった資源国通貨の強さが目立ち、GBPを筆
頭に欧州通貨も買われた。USD/JPYは102後半へと上伸、EUR/USDは1.11前半へと水準を切り上げた。
・前日の米10年金利は1.516%(+4.9bp)で引け。逃避需要後退と絶対水準の低さが意識された可能性。他
方、欧州債市場は総じて堅調。逃避需要が後退するなか、BOEの緩和期待と相俟って英10年金利(0.949%、
▲1.2bp)が連日の金利低下となったほか、ドイツ10年金利(▲0.126%、▲1.4bp)もそれに追随。投資家
センチメントが改善する下、イタリア(1.371%、▲2.8bp)、スペイン(1.257%、▲5.7bp)、ポルトガ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ル(3.085%、▲6.0bp)も金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、欧米株高に追随して高寄り後、やや下落幅縮小(10:20)。
・5月鉱工業生産は前月比▲2.3%と市場予想(▲0.2%)を大幅に下回った。出荷も▲2.2%と弱く、在庫は
+0.3%、在庫率は+1.3%と上昇、バランスの悪さが示された。在庫水準は消費増税後の最高点に比肩。
生産予測指数は6月が+1.7%、7月が+1.3%と増産が見込まれた。もっとも、この指標のクセ(強めに
でる)やPMI生産指数の低下に鑑みると、先行きは横ばいがせいぜいだろう。
120
日本 PMI生産・製造業生産
鉱工業生産指数
70
115
65
110
60
在庫率指数
105
50
95
45
90
40
生産指数
PMI生産
14
15
0
-20
製造業生産
(3ヶ月前比年率、右)
-40
30
16
40
20
35
80
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
60
55
100
85
(%)
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
-60
15
16
・筆者は日銀の7月会合(28-29日)では現状維持を予想するが、仮に追加緩和があるとすれば、ETFの買
い増しのみだろう(ネット3兆円→5兆~10兆円)。マイナス金利拡大、長国買い増しについては、一連
のリスクオフの流れのなかで既に名目金利が十分に低下しているため、このタイミングでは費用対効果に
疑問符が付く。市場全体の変動が激しいなかで、債券市場のボラティリティを上昇させるような政策は望
ましい反応に繋がらない。
・また、一部で日本版T-LTROの導入も囁かれているが、銀行への配慮を考えた場合、日銀が採用するとは思
えない。T-LTROの導入は、貸出金利の低下と一層の利ざや縮小を招く可能性があるため、結果的に銀行収
益にネガティブな影響を与えるリスクがある。ECBは、信用コストが十分に低下していない周縁国に配
慮した事情があった一方で、日本は既に企業の資金繰り環境が十分に改善しているため、日銀が民間銀行
に貸出インセンティブを与えても刺激効果は極めて限定的とみられる。また、ECBのT-LTROは周縁国の
銀行を中心に、キャリートレードの資金源として活用できるという特殊な側面を持ち合わせている。例え
ば、ポルトガルの銀行であれば、T-LTROを活用し▲0.4%(最低のケース、中銀預金金利に相当)で借り入
れたおカネをポルトガル国債(4年物利回りは+1.6%程度)に投資することが可能になるので、いわば補
助金の一面を持つ。それに対して、日本(ドイツ等も同様)では▲0.1%で借入ができたとしても、10年金利
ですらマイナス圏にあるのでキャリートレードは論外。この点も日銀がT-LTROを採用しない理由として挙
げられる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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