Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
ストレス解消は続く?
2016年4月14日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~小売:基調は強くない~
・3月米小売売上高は前月比▲0.3%と市場予想(+0.1%)に反して減少。2月分は±0.0%へと0.1%pt上
方修正されたものの、弱い姿に変わりはない。ガソリンが+0.9%と反発した反面、自動車が▲2.1%と弱
く全体を下押し。それらを除去した最重要項目のコア小売売上高(除く自動車・ガソリン・建設資材)は
前月比+0.1%と市場予想(+0.4%)を下回り、3ヶ月前比年率では+1.9%と低空飛行が続いた。金融市
場の混乱は一服したものの、引き続き消費者はセーブできたガソリン支出を貯蓄に回している模様。
・2月ユーロ圏鉱工業生産は前月比▲0.8%と予想どおり減産。もっとも、1月に+1.9%を記録した後の減
産で、1-2月平均は昨年4Q平均を年率+4.4%上回っており悲観的な内容ではない。3月PMIが示唆
するとおりの結果となれば1Qは増産が見込まれる。
(3ヶ月前比年率、%)
ユーロ圏鉱工業生産指数
(3か月前比年率、%)
コア小売売上高
12
15
10
10
8
鉱工業生産
6
5
4
0
2
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-5
-2
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製造業生産
-10
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(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
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(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。金融大手の決算が好感され、金融株主導で上昇。NYダウは史上最高値まで2%程
度に距離をつめている。WTI原油は41.76㌦(▲0.41㌦)で引け。週間の在庫統計で原油在庫が増加、需
給の緩みが意識された。
・前日のG10 通貨はUSDが全面高。米小売統計は予想比下振れとなったものの、リスク志向が改善するなか
でマイナス金利通貨売りが膨らみCHF、EUR、DKKが大幅に下落。EUR/USDも1.13を割れた。JPYも弱く、米国
時間にUSD/JPYは109を回復。
・前日の米10年金利は1.764%(▲1.2bp)で引け。米債市場はアジア株高を横目に軟調に推移した後、米小
売統計の予想比下振れをきっかけに買い優勢に転じた。もっとも、質への逃避需要が減退するなか、上値
追いには慎重。欧州債市場は総じて堅調。ドイツ10年金利が0.128%(▲3.7bp)で引けたほか、イタリア
(1.298%、▲8.1bp)、スペイン(1.463%、▲8.0bp)、ポルトガル(3.230%、▲21.2bp)が金利低下。
3ヶ国加重平均の対独スプレッドは大幅にタイトニング。
【国内株式市場・経済指標】
・日本株はUSD/JPY上昇を好感し、欧米株ラリーに追随。日経平均は3営業日で1000円超の上昇を演じている
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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(10:00)。
・昨日発表の3月の中国貿易等統計によると輸出金額(USDベース)は前年比+11.5%、輸入金額は▲
7.6%とともに市場予想を僅かに上回り、2月(輸出:▲25.4%、輸入:▲13.8%)から急激に改善。貿易
総額は昨年2月を除くと14ヶ月ぶりに前年比プラスに転じ、貿易収支は298.6億㌦に縮小した。輸出入金額
の加速は、一義的には春節に絡んだカレンダー要因だが、輸入の下落幅縮小については基調的なものとな
りつつあり、このことは中国の内需回復を一部反映している可能性がある。生産活動の先行指標として有
効な資源輸入は鉄鉱石が▲1.3%、原油は同+3.6%、未加工銅は同+4.9%とまずまずの伸びを示した(数
量ベース・3ヶ月平均・季節調整は筆者)。なお、香港からの輸入急増(1月+71.9%、2月+88.7%。
3月+116.5%)は例外。これは偽装輸入を通じた人民元売りが背景だろう。
(前年比、%)
50
中国 貿易総額
中国
(千トン))
鉄鉱石輸入(数量ベース)
9000
40
8000
30
7000
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6000
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5000
0
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 当社にて季節調整
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16
・13日は金融市場のストレスを計測するうえで有効なポルトガル国債が堅調(詳細は2月18日付け当レポー
ト「ポルトガル国債をリスクオフの探知機に」を参照ください)。10年金利は3.230%と低下し、対独スプ
レッドも大幅にタイトニングした。対独スプレッドは依然として昨年来の水準を大きく上回ったままで2
月の最高水準から僅かにタイトニングしたに過ぎないが、一先ず良い兆候だ。
足元の金融市場のリスクオンが継続する条件として、ポルトガル国債の対独スプレッドが持続的に縮小す
るか注視したい。昨年8-9月に欧州株が大幅下落した際には対独スプレッドに変化が見られなかったのに
対し、今年2月のリスクオフ局面ではそのワイドニングを伴ったという点で傷が深かった。今年2月は銀
行収益の圧迫が金融システム不安を惹起、その結果として周縁国国債の金利上昇が観察されるなど、欧州
債務問題に揺れた2010-2013年当時の反応がみられた。債務問題が蒸し返されたといえば大袈裟だが、ポル
トガル金利の上昇は、信用収縮に対する投資家の恐怖心を浮き彫りにしたと言えるだろう。2月の傷が癒
えたかを判定するうえでポルトガル国債の対独スプレッドがそれ以前の水準に回帰できるかに注目。
(%)
ポルトガル10年金利・欧州株
4.5
2500
欧州株(右、逆)
4
3.5
3000
3
2.5
3500
2
ポルトガル10年金利
(対独スプレッド)
1.5
1
15/01
4000
15/05
15/09
16/01
(備考)Bloombergより作成 金利:対独スプレッド 株価:STOXX50
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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