Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
粘るサービス物価
2016年11月25日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・11月ドイツIfo企業景況感指数は110.4と10月から横ばいとなり、市場予想に概ね一致。内訳は現況
(115.1→115.6)が僅かに改善した一方、期待(105.9→105.5)が小幅に軟化。現況指数を業種別にみる
と、小売業(121.9→122.8)、卸売り業(110.0→112.8)、建設業(129.0→129.6)が改善した反面、製
造業(105.7→104.8)は約2年半ぶりの高水準から軟化。今回の結果は既発表のPMIと整合的でドイツ
経済の復調を示唆している。
・11月フランス企業景況感は102と上方修正された10月から横ばい。2011年7月以来の高水準を維持した。内
訳は製造業(103)が10月から不変となった一方、サービス業(101→102)、建設業(96→99)、小売業
(100→104)が改善。実質GDPは2Qに9四半期ぶりにマイナス成長となった後、2四半期連続でプラ
ス成長となっている模様。
125
独Ifo企業景況感指数
120
115
仏
企業景況感指数(INSEE)
110
現況 総合
115
105
110
100
105
95
製造業
90
100
サービス業
期待
85
95
80
90
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
企業景況感
小売業
14
15
16
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株市場はサンクスギビングにつき休場。NY原油市場も休場。
・前日のG10 通貨はJPYの弱さが続いた反面、その他通貨に大きな動きは見られなかった。対G10通貨でUSD
の強さは一服した。もっとも、新興国通貨の弱さは続きJPMエマージング通貨インデックスは2月下旬と同
水準まで下落。
・前日の米債市場は休場。そうした中で欧州債市場(10年)はまちまち。ドイツ(0.259%、▲0.3bp)、ス
ペイン(1.589%、▲0.7bp)、ポルトガル(3.667%、▲1.1bp)が金利低下となった反面、イタリア
(2.131%、+1.4bp)が金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇が好感され、高寄り後、上昇幅拡大(10:30)。日経平均は年初来多高値を更新。
・昨日発表の11月日経製造業PMI(Markit)は51.1と10月から0.3pt軟化。内訳は、生産(53.3→52.2)、新
規受注(50.8→50.4)、新規輸出受注(52.3→51.5)、雇用(52.6→50.5)が揃って軟化したが、何れも
50を上回っており、内容はさほど悪くない。製造業生産の増産トレンドは維持されるだろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
日本 製造業PMI
日本 PMI生産・製造業生産
(%)
70
60
60
65
55
PMI生産
60
50
20
55
45
50
0
45
40
-20
製造業生産
(3ヶ月前比年率、右)
40
35
-40
35
30
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
15
30
16
40
-60
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
15
16
・10月コアCPI(除く生鮮食品)は前年比▲0.4%と9月から0.1%pt下落幅縮小。前年比でみたエネルギ
ー価格下落と円高の影響が一巡しつつあることが主背景。先行きも、目下の円安傾向を踏まえると一段と
下落幅が縮小する公算大。コアコアCPI(除く食料・エネルギー)は前年比+0.2%へと0.2%pt上昇幅
拡大。季節調整済み前月比では+0.1%と6ヶ月ぶりに反発し、3ヶ月前比年率では+0.4%、3ヶ月前比
年率・3ヶ月平均では▲0.1%とモメンタムが上向きに転じている。これは筆者が重視するサービス物価
(除く帰属家賃)が前年比+0.5%と43ヶ月連続で上昇していることが大きい。賃金と密接な関係を有する
サービス物価は、両者が互いに刺激し合うことで上昇が続いており、物価上昇の持続性という観点からデ
フレ脱却を象徴する動きがみられている。なお、総合物価は前年比+0.1%と9月から一気に0.6%pt上昇
したが、主因は野菜・果物の高騰であり、望ましい事象ではない。生鮮食品は前年比+11.4%もの高い伸
びを記録した。因みに、購入頻度の高い生鮮食品の高騰は、一時的に家計の予想インフレ率を上昇させる
ものの、消費者マインド下押しを通じて消費抑制要因となるため、最終的に日銀にとって好ましくない状
況を招く。
・10月企業向けサービス価格指数は前年比+0.6%と上昇幅拡大。1990年代前半と同等の伸びを確保し、37ヶ
月連続でプラス圏の推移となった。これは1990年代半ば以降の最長記録で、2000年代半ばにみられた(偽
りの)デフレ脱却とは大きく異なる。2000年代半ばは、新興国の台頭に伴う資源価格上昇によって外生的
な物価上昇が目立っていた一方で、賃金とサービス物価が同時に上昇する内生的なインフレのメカニズム
はさほど生じていなかった。交易条件悪化が企業の人件費拡大を抑制したとみられる。それに対して今次
局面では労働集約的なサービス産業を中心に賃金上昇が価格転嫁されており、内生的なインフレのメカニ
ズムが発生している。このようにサービス物価が消費者段階、企業段階の双方で上昇していることから判
断すると、デフレ脱却の確度は高いと判断される。
(前年比、%)
3
CPI
2
コアコア
1
1
0
0
-1
-1
-2
コア
-2
前年比
3ヶ月前比年率
3ヶ月前比年率
(太線:3ヶ月平均)
-3
-4
-3
00
02
04
06
08
(備考Thomson Reutersにより作成
コアコアCPI
(%)
2
10
12
14
00
16
02
04
06
08
10
12
14
16
(備考Thomson Reutersにより作成 季節調整値 消費税調整済み
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
(前年比、%)
賃金・物価
企業向けサービス価格指数(除く国際運輸)
1.5
4
時間あたり賃金
1
3
0.5
2
0
1
-0.5
0
サービス物価
(除く帰属家賃)
-1
-1
-2
-1.5
-3
-2
-4
-2.5
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
(前年比、%)
12
13
14
15
90
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersより作成 消費増税調整済
16
15
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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