Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
USD/JPYは利上げと大統領選の綱引き
2016年9月28日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・9月CB消費者信頼感指数は104.1と市場予想(99.0)を大幅に上回り、8月の101.8から大きく改善。ポ
ジティブ・サプライズであった。現況(125.3→128.5)が著しい改善を記録して2007年8月以来の高水準
に到達したほか、期待(86.1→87.8)も上向いた。雇用判断(雇用機会が「十分」から「不十分」を差し
引いたもの)は+6.3と3ヶ月連続でプラス圏を維持。こちらも2007年8月以来の高水準であり、9月雇用
統計を前に非常にポジティブなデータとなった。消費者は安定的な雇用環境の下で楽観的になりつつあり、
FEDの追加利上げに支援的なデータである。
CB消費者信頼感指数
140
CB消費者信頼感指数(雇用判断)
20
10
現況
120
総合
0
100
雇用機会が「十分」との
回答から「不十分」との
回答を差し引いたもの
-10
80
-20
期待
60
-30
40
-40
20
-50
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
07
(備考)Thomson Reutersにより作成
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
・9月米総合PMI (Markit)は52.0と8月から0.5pt改善した。サービス業PMIが51.9と8月から0.9pt改
善したことが効いており、製造業PMIの軟化(53.8→52.3)を補った。もっとも、総合PMIはGDP
成長率の1%に整合する数値であり、強い数値とは言えない。
65
米 PMI
(PMI)
65
米
総合PMI・GDP
(前期比年率、%)
7.5
総合PMI
60
60
5
55
2.5
50
0
サービス業
55
50
製造業
実質GDP(右)
45
・
10
11
12
(備考)Markitにより作成
45
13
14
15
16
-2.5
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Markit,Thomson Reuters GDPは移動平均でスムージング
・7月S&PコアロジックCS米住宅価格指数は前月比▲0.01%と4ヶ月連続のマイナス。3ヶ月前比年率では+
0.24%までモメンタムが鈍化しており、前年比の伸びは5%近傍に低下している。上昇を続ける住宅価格
に消費者が追いつけなくなりつつあることを映し出している可能性がある。
・9月リッチモンド連銀製造業景況指数は▲8と8月から3pt改善も依然としてマイナス圏での推移となっ
た。ISM換算では50.1と8月からほぼ変わらず。5地区連銀サーベイから推計される9月ISMは49.6
と8月から横ばいに留まった(データは2005年以降)。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反発。米大統領を巡るテレビ討論でクリントン氏が優勢との見方が強まると、アジア時間
に時間外先物がラリーし、現物株も高値で推移した。他方、欧州株はやや軟調。ドイツ大手銀行の資本増
強懸念がリスクオフを誘発。もっとも、米司法省が同銀に課す制裁金を減額するとの報道があり、取引時
間後半にかけて値を戻した。WTI原油は44.67㌦(▲1.26㌦)で引け。
・前日のG10通貨はリスクオンの地合のなか、欧州通貨とJPYが売られ、反対にAUD、NZD、GBPが買われた。
大統領選テレビ討論中にUSD/JPYは上昇、EUR/USDは下落。新興国通貨は概ね堅調だった。
・前日の米10年金利は1.556%(▲2.7bp)で引け。当初、テレビ討論を受けて軟調に推移していた米国債は
ブンズ債ラリーに追随して金利低下。欧州債市場(10年)はコア堅調、周縁国はスペインを例外に軟調。
ドイツ(▲0.139%、▲2.3bp)は金利低下。イタリア(1.208%、+2.4bp)、ポルトガル(3.409%、+
2.8bp)が金利上昇となり、スペイン(0.898%、▲2.0bp)は金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッド
はワイドニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、配当落ちの影響もあり安寄り。なお、日経新聞社の試算によると配当落ちは114円とされており、
これを考慮した日経平均は小幅なマイナス(10:00)。
・昨日実施された米大統領選のテレビ討論では、クリントン候補の演説が高評価を得たとの見方が優勢。実
際、CNNが実施した討論会後の調査ではクリントン氏が勝利したとした有権者の割合が62%に及んだ。
テレビ討論を受けて為替市場では大統領選の影響を強く受けるMXN(メキシコペソ)を筆頭に新興国通貨が
広範に上昇したほか、JPY、EURなどマイナス金利調達通貨が売られ、米国株もアジア時間から強くラリー。
27日はドイツ大手銀行の株価下落が重荷になったこともあり、グローバル・リスクオンとはならなかった
が、それでもクリントン氏の優勢が伝わると株高・新興国通貨高・マイナス金利調達通貨安となり易いこ
とが改めて確認された。もっとも、大統領選まで両候補の支持率(当選確率)が拮抗することは十分に想
定され、クリントン・ポジションに巻き戻し圧力が生じることも考えられる。仮にトランプ氏の優勢が伝
えられると、政策不透明感からリスクオフが誘発されそうで、株安・新興国通貨安・マイナス金利調達通
貨高が想定される。
・ただしやや長い目でれば、為替については両候補のどちらが大統領になっても、米国の保護主義的な姿勢
が強まるとの見方が根強い。米製造業が苦境に喘ぐ下、ドル安が歓迎され易い環境にあり、どちらの候補
もドル安政策に傾斜する可能性が高い。USDの実効レートは今年に入り幾らか調整したとはいえ、直近10年
の最高値圏にあり製造業を中心に米国経済を蝕んでいる。無論、政治が為替を決めるとは限らないが、政
治的要素はUSD安を促しているとの見方は正しいだろう。これらを踏まえると、当面のUSD/JPYはFEDの
利上げ(USD高要因)、大統領選(対円USD安要因)が交錯し、方向感に欠ける展開が続きそうだ。
130
USD名目実効レート
110
エマージング通貨
105
120
100
95
110
90
100
85
80
90
75
70
80
65
70
JPモルガンエマージング通貨インデックス
60
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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