Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
投票権あり参加者は現実路線
2016年5月19日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・4月英失業率(ILO基準、3ヶ月)は5.1%と3月から変わらず、市場予想に一致。目下の失業率は6ヶ
月連続で同水準に留まり低下傾向は一服している。ただし、就業者数の伸びは続き、労働市場の厚みは増
しており、賃金も緩慢ながら加速傾向にある。4月は就業者数が4.4万人増加し、注目の平均賃金は前年比
+2.0%と直近のレンジ下限から反発。除く賞与ベースでも+2.1%とモメンタム鈍化に歯止め。ただし、
目下の賃金上昇モメンタムは、BOEの利上げを正当化するにはほど遠い。利上げは当面の間、話題にす
らならないだろう。
9 (%)
英 雇用統計
(千人)
200
8
7
失業率
失業保険基準
4
150
6
100
4
50
2
0
0
-50
3
2
8
英
週平均賃金
ILO基準
6
5
(%)
失業保険受給件数(前月差、右)
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
-100
16
-2
-4
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:除く賞与
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は横ばい。当初堅調に推移していた米株はFOMC議事録の内容が予想外にタカ派となったこと
に売りで反応。利上げ観測浮上は金融株に追い風となった一方、その他セクターにはネガティブに働いた。
他方、欧州株は総じて上昇。WTI原油は48.19㌦(▲0.12㌦)で引けた。週間原油在庫統計で予想外に原
油在庫が増加、FEDの利上げ観測上昇も逆風となった。
・前日のG10 通貨はGBPが最強となった一方、その他通貨はUSDに対して下落。GBPの強さは英世論調査でE
U残留派の増加が確認されたことが背景。USDはFOMC後の米金利上昇に歩調を合わせ全面高。USD/JPYは4
月下旬以来の110回復、EUR/USDは1.12前半へと水準を切り下げ、新興国通貨の弱さも目立った。
・前日の米10年金利は1.854%(+8.2bp)で引け。FOMC議事録公表を受けて金利上昇。欧州債は総じて軟調。
ドイツ10年金利が0.168%(+3.6bp)で引けたほか、イタリア(1.494%、+4.1bp)、スペイン(1.600%、
+3.4bp)、ポルトガル(3.091%、+2.0bp)が金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニン
グ。
【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇を好感して小幅高で寄り付いた後、もみ合い。
・4月FOMC議事録は予想外にタカ派トーンが強かった。大半の参加者が「今後発表される指標が第2・四半
期経済の成長加速を示し、雇用市場が引き締まり続け、物価上昇率が目標の2%に向けて前進するならば、
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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6月会合でFF金利の目標レンジを引き上げることが適切になるだろう」として6月FOMCの追加利上げを
示唆。4月FOMC声明文発表時には、6月FOMCの利上げが(ほぼ完全に)排除されたと解釈していた市場関
係者(含む筆者)が多かったのでやや驚きだが、冷静に考えてみるとハト派および中道派のロックハー
ト・アトランタ連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が6月の追加利上げの可能性に言及
していたほか、4月下旬には金融市場も安定化していたので、そうした議論が議事要旨に記載されても不
思議ではなかった。もっとも、投票権を有するメンバーのうちイエレン議長、ダドリー・NY連銀総裁、
ブレイナード理事など中枢メンバーは依然としてハト派姿勢を崩していないとみられる点は重視すべきだ
ろう。ここ3年程度の引き締め局面(Tapering議論開始以降)の特徴として、投票権を持たないFED高
官が(極端な)タカ派意見を多く発するのに対して、投票権を有する高官は(現実的な)ハト派姿勢を貫
くという構図がある。おそらく今回もそのパターンではないか。6月の追加利上げの可能性が低いとの見
方を維持する。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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