Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
円買いというコンセンサストレード
2016年8月19日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・7月英小売売上高(除くガソリンスタンド)は前月比+1.5%と市場予想(+0.3%)を大幅に上回るポジ
ティブサプライズ。。内訳は、食料品店(+0.7%)、百貨店・スーパー(+3.8%)、衣料品店(+
3.6%)、家庭用品店(同+0.3%)などが揃って増加。BREXIT後のマインド悪化に鑑みると、英国居住者
の消費は勢いを欠いた可能性が指摘できるものの、その一方で国民投票後のポンド安を受けたインバウン
ド需要が勢いを増したと思われる。今後は、日本における商業動態統計と家計調査の乖離に類似した現象
が英国でも観察されそうだ(日本の商業動態統計、英国の小売売上高はインバウンドを含む一方で、日本
の家計調査など居住者の消費を推計するSNA基礎統計にはインバウンド需要が含まれない。インバウン
ド需要はサービス輸出に分類される)。
英
(前年比、%)
8
小売売上高
20
6
10
小売売上高
4
0
2
-10
消費者信頼感(右)
0
-2
-20
-30
-4
-40
10
11
12
13
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(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。USD安、原油価格の上昇が追い風となり、エネルギー関連銘柄を中心に買いが入った。
WTI原油は48.22㌦(+1.43㌦)へと続伸。欧州株も全面高。
・前日のG10 通貨はUSDが全面安。ダドリー・NY連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁は
この日も景気に強気な発言を展開したが、アジア時間から続くUSD売りの流れは反転せず。新規失業保険申
請件数も低水準を維持したが、材料視されなかった。
・前日の米10年金利は1.538%(▲1.4bp)で引け。アジア時間のリスクオフを受けて堅調に推移した米債市
場はダドリー総裁の強気発言を受けて一時売られる場面があったものの、結局は高値圏で引け。欧州債市
場(10年)はコア、周縁国ともに堅調。ドイツ(▲0.082%、▲3.2bp)、イタリア(1.075%、▲4.1bp)、
スペイン(0.916%、▲5.7bp)が金利低下の流れに乗った一方、リスクオフに脆弱なポルトガル(2.907%、
+3.4bp)はその水準感も意識され金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。英国
(0.550%、▲1.2bp)も金利低下となった。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、前日の反動が意識される下、欧米株高に追随して高寄り後、もみ合い(10:00)。
・昨日発表の7月豪雇用統計によると雇用者数は+2.62万人と市場予想(1.00万人)を上回った。もっとも、
増加の内訳は正社員(▲4.54万人)の減少を非常勤雇用者(+7.16万人)の著しい増加が補ったものであ
り、ヘッドラインの強さは割り引く必要がある。失業率低下(5.77%→5.72%)と労働参加率上昇
(64.86%→64.88%)が併存していることはポジティブだが、17日に発表された賃金統計の弱さに鑑みる
と、労働市場の質的改善は道半ばと判断される。今後もRBAの利下げ観測が燻る展開が続きそうだ。
5
(前年比、%)
豪 雇用統計
(%)
3.5
4
4
雇用者数
3
失業率(右)
4.5
5
2
5.5
1
6
0
6.5
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
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・USD/JPYは再び100割れをトライ。政府高官は度重なる口先介入で市場に牽制球を投じているものの、そう
したパターンは半年以上にわたって繰り返されているため、政府による為替介入の可能性が低いことが見
透かされている。口先介入は、もはや単なる恒例行事との認識が広がっており、投機筋が安心してショー
トポジションを膨らませている模様。また仮に為替介入があったとしても、JPY買いのトレンドを反転させ
るインパクトはないとの見方も支配的になりつつある。実際、IMMデータでJPYのショートポジションを
確認すると、7月29日の日銀会合に向けて漸減した後、直近2週間はショートポジションが再び拡大して
いる。9月会合における日銀の「総括検証」を踏まえて追加緩和策が打ち出されるとの観測があるとはい
え、それがトレンドを反転させると予想している向きはごく少数だろう。15年までのようにFEDの複数
回かつ断続的な利上げシナリオが復活しない限りUSD/JPY上昇は描きにくい(15年後半時点では16年の3~
4回の利上げがコンセンサスだった)。投機筋はJPY買いがコンセンサストレードであることに変わりはな
いだろう。
(10億㌦)
-200
IMM JPYネットポジション
-150
-100
-50
0
50
100
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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