為替介入は御法度 日銀の追加緩和もない

Market Flash
為替介入は御法度
日銀の追加緩和もない
2016年4月6日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~ISM非製造業:雇用が50回復~
・3月ISM非製造業景況指数は54.5と市場予想(54.2)を上回り、2月から1.1pt改善。内訳は雇用(49.7
→50.3)が50を回復したほか、事業活動(57.8→59.8)、新規受注(55.5→56.7)がともに改善。15年4
Q平均(56.9)を下回るものの、非製造業セクターの業況は改善に向かっていると判断される。
・2月米貿易収支は▲471億㌦と市場予想(▲462億㌦)以上に赤字幅が拡大。名目輸出金額が前月比+1.0%
と5か月ぶりに増加すると同時に輸入金額も+1.3%と2か月ぶりに増加。輸入の増加幅が輸出のそれを凌
駕した。実質ベースでは輸出が+2.2%、輸入が+2.3%。1-3月期GDPに対して下方リスクとみられる。
(10億㌦)
ISM非製造業
60
-10
米
貿易赤字
-20
55
-30
50
-40
-50
45
-60
40
-70
-80
35
07
08
09
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02
04
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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・2月独製造業受注は前月比▲1.2%と市場予想(+0.3%)を大幅に下回った。ただし、1月分は大幅に上
方改定(▲0.1%→+0.5%)されており、これを踏まえるとヘッドラインのネガティブな印象は和らぐ。
内訳は輸出向け受注が▲2.7%と弱く、国内向け(+0.9%)の増加を打ち消した。世界景気の先行指標と
して有効な輸出向け資本財が前月比▲3.9%と大きく落ち込んだことはネガティブ。
・3月ユーロ圏総合PMI(確定値)は53.1と速報値(53.7)から大幅に下方改定され、2月に付けた12ヶ
月ぶり低水準からほとんど改善がみられなかった。製造業PMIが51.6と2月から0.4pt改善した一方、サ
ービス業PMIが53.1と2月から0.2pt軟化した。3月速報値の段階では、2月の軟化が金融市場の混乱を
受けた一過性のものであったと安堵していたが、そうした見方は修正を迫られることになった。
140
独製造業受注(海外・資本財)
60
ユーロ圏PMI
サービス
130
55
120
50
110
100
45
90
40
製造業
80
35
70
30
60
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は下落。3月のリバウンドを経て史上最高値が視野に入っていたこともあり利益確定売りが
優勢。NYダウ、S&P500はともに1%程度下落。欧州株も全面安。WTI原油は35.89㌦(+0.19㌦)で引
けた。
・前日のG10 通貨はJPYが独歩高となった一方、資源国通貨(AUD、NZD、CAD)が軟調。リスク回避姿勢が強
まるなかで調達通貨のショートポジションが巻き戻される流れとなり、USD/JPYは一時110を割り込む展開
となった。伊勢志摩サミットを控えて議長国である日本当局の為替介入が難しいという背景がJPY買いを助
長しているとみられる。
・前日の米10年金利は1.720%(▲4.2bp)で引け。欧米株安を横目に米債ラリーとなり、ドイツ10年が節目
の0.1%を割り込む場面ではプラスの金利を求めて米債に買いが集中。欧州債市場はコア堅調、周縁国軟調。
ドイツ10年金利が0.098%(▲3.3bp)で引けた一方、イタリア(1.271%、+3.3bp)、スペイン(1.493%、
+3.1bp)が金利上昇、ポルトガル(3.149%、+21.3bp)は大幅に金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプ
レッドは大幅にワイドニングした。
【国内株式市場・経済指標】
・日本株は欧米株安の流れを断ち切り前日終値付近で寄り付いた後、もみ合い。新年度入りの資金が値ごろ
感のある日本株に向かっている模様。
・昨日RBA理事会は大方の予想どおり政策金利を2.0%で据え置くことを決定。声明文には「現在の環境下
では、通貨高が、進行中の経済の調整を複雑にする可能性がある」としてハト派な文言が盛り込まれたが、
最近のAUD上昇にもかかわらず、国内経済が堅調を維持していることを評価。追加利下げの必要性はないと
判断した模様。
【注目点】
・昨日、USD/JPYが一時109に突入する場面があった。日本政府による為替介入が困難であると見透かされて
おり、こうした環境下で投機筋がJPYロングを膨らませているのだろう。仮にUSD/JPYが現行水準に留まる
或いは105に向けて下落するようだと日銀の追加緩和期待が高まりそうだ。しかしながら、日銀は4月2728日の会合で金融政策の現状維持を決定すると見込まれる。日銀短観では、業況判断DIが市場予想以上
に悪化、円高が実体経済を蝕んでいることが浮き彫りになったばかりだが、マイナス金利政策の波及効果
が一部で確認されたため、様子見が正当化され易い。日銀短観をやや子細にみると、金融機関の業況判断
DIが予想どおり急低下した一方で、銀行貸出態度が軟化(≒銀行が融資基準を緩める)、借入金利水準
判断DIも異例の低水準(マイナス幅が拡大するほど低金利での借り入れが可能)に低下していた。国債
金利のみならず、民間の貸出金利も低下しているので、実体経済への刺激効果をアピールし易い。物価も
新型コアCPI(日銀試算)が1%超の水準を維持しているほか、総務省発表のコアコアCPIが+0.8%
とまずまずの伸び率を確保している。サプライズが歓迎されないという昨今の状況変化もあり、日銀は4
月の会合で現状維持を選択するだろう。仮に日銀の追加緩和期待を背景にUSD/JPYが上昇した場合はJPYの
失望買いに注意。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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