Title Author(s) Citation Issue Date URL 近代日本農業思想史研究( Abstract_要旨 ) 傳田, 功 Kyoto University (京都大学) 1966-11-24 http://hdl.handle.net/2433/212039 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【3 3 4】 氏) 田 樽 功) いさお だ でん 学 位 の 種 類 農 学 位 記 番 号 論 学位授与 の 日付 昭 和 4 1年 1 1月 2 4日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 5 条 第 2項 該 当 学位論文題 目 近 代 日本 農業 思 想史 研究 論文 調査 委員 教 授 柏 学 農 博 士 第1 47号 博 (主 査) 論 祐 貿 文 内 教 授 三 橋 時 雄 容 の 要 教 授 乗 原 正 信 旨 幕末か ら明治前期 にかけての農村社会では, 二宮尊徳 によ って代表せ られ るよ うな人格 と思想 とを もつ 人 々が出て きて, 大 きな影響力を もつ よ うにな っていた。 「老農 」 と称せ られ る一群 の人 々がそれで ある。 そ うい う人 々は, 全国各地 に出現 しノ , その思想が農村社会 に広 くかつ深 く拡が った。 「老農」 は, 伝統的価 値観 を背景 に, 体得 した独 自の農業技術 の普及 につ とめた。 新官僚層 も, 農政 の末端機構 として広 く老農 0 年代 か ら, 農業教育機 関や農事試験研究機関が普及 し, 新 しい農業技術が一般化す 層 を活用 した。 明治3 るよ うにな って くるが, それまでの 「老農 」 層の役割 は, 極めて大 きな もので あ った。 本論文 は, このよ うな 「老農」 の思想 と行動 の展開を中心、に, 近代 日本農業思想の発展過程 を明 らかに した もので ある。 本論文 は, まず は じめに, 幕末期 の伝統的な農村社会 において, 勤勉 , 節約 , 忍従 , 献身 とい うよ うな 生活規範 を もってす る農業観が成立 して きた過程 を明 らかに してい る。 そ して このよ うな思想が, 家業や 家庭の維持存続 をはか る家族主義的伝統 とともに, やがて新 しい社会 において, 資本 の分散を抑制 し, さ らに資本 の蓄積を可能 な らしめ るよ うにはた ら くことにな った としてい る。 ついで本論文 は, このよ うな農業思想が明治維新以降 において, どのよ うに継承 され変容 されてい った かを, 報徳社 の指導者で ある岡 田良一郎などの思想 と行動 を通 して考察 した。 そ してその深 い経験 に基づ く農民指導 は, 強い説得力を もつ もので あ った こと, また特産農業の発展 に大 き く貢献 した ことなどを明 らかに した。 もっとも報徳社運動の展開 とな らんで , 西欧先進諸国 との接触によ って開かれた新たな農業思想が, 学 農社などを中心 に見 られ るよ うにな った ことに も注 目 してい るが , しか し, それが一般 的な力 とな り, 農 業技術 および農業構造 の転換 に大 き くひび くよ うにな ったのは, 明治後期以降で あることを明 らかに して いる 。 さらにまた本論文 は, 日本 の産業構造 の大 き く変わ る明治後期 において, それまで の農業思 想に大 きな 転換が起 こって きた ことを述べ , 新たな社会観 に基づ く分配論 中心の農業観 も出て きた ことを明 らかに し -8 8 3- てい る。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 日本 の経済思想 あるいは農業思想に関す る歴史的研究 は, いままで も各方面か らな されて きた。 しか し それ らの研究 の多 くは, 政策 の立案者や学者などの論議 の考察 に限 られていた り, あるいは個 々の思想家 の考えの分析で終始 した りしてい る場合が多か った。 この論文 の提 出者 は, これ に不満 を感 じ, 現実の農 業の歴史的発展 の中で , 思想のはた した役割や位 置づ げを行なわな くてほな らない と し, 新 しい観点か ら 思想を取 り扱お うと したので あ って, 従来 の研究 には見 られなか った新 しい成果 をあげてい る。 論者 は, 地方経済 の動 きおよび農民生活 の内面 に入 って分析 し, それを動か してい くよ うな主動力を も っていた指導者層 に着 冒した。 そ して 「老農 」の思想 と行動 に, 農業発展の主動力が あ った ことを知 り, それ を一方では岡田家などの古文書 によ って, 他方では当時の諸雑誌上に資料 をさが し求 めて克明に分析 し, 実証 したので ある。 そ して, 伝統 的価値観 を強 くもった 「老農 」 的農業思想が, すで に幕末 において成立 していた こと, そ うい う思想を もつ指導者層が, 明治維新以降の農村 , 農業の発展 の担 い手 とな った こと, さらに明治後期 にな って, そ うい う指導者層の人格的指導力 も漸次 に後退 してい った ことを明 らかに した。 このよ うに, 本研究は, 近代 日本農業発展史上 に お い て , 「老農」 的農業思想のはた した役割 を明確 に し, 多 くの新知見 を加えた もので あ って, 農業思想史学および農業経済学 の発展 に貢献 した ところが大 き い。 よ って本論文 は, 農学博士 の学位論文 と して価値 ある もの と認 め る。 -8 8 4-
© Copyright 2025 ExpyDoc