KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL シングルT1-O層系超電導物質の線材化に関する基礎的研 究( Abstract_要旨 ) 土井, 俊哉 Kyoto University (京都大学) 1996-11-25 http://hdl.handle.net/2433/160815 Right Type Textversion Thesis or Dissertation author Kyoto University 【6 5 5】 ど い とし や 土 井 俊 哉 学位( 専攻分・ 野) 博 士 学 位 記 番 号 論 工 博 第 31 61号 学位授与の 日付 平 成 8年 1 1月 2 5日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 4条 第 2項 該 当 学位論 文題 目 シングル T卜0層系超電導物質の線材化 に関す る基礎 的研 究 論文調 査 委員 教 授 長 村 光 造 氏 名 ( 工 学) ( 主 査) 論 文 教 授 志 賀 正 幸 内 容 の 要 教 授 粟 倉 泰弘 旨 本論文 は,液体窒素冷却で使用可能 な高温超電導線材 の開発 を目的 とし,Tト 0 一層系超電導物質の 合成お よび基礎物性の解明か ら,実用線材作製の基本プロセスの確立 までの研究成果 をまとめた ものであ り,全 9章か ら構成 されている。 第 1章では酸化物超電導物質の歴史 と基礎物性 を概説 し,実用線材 を開発 してゆ く上での問題点の整理 と研究課題 をまとめ,本論文の 目的 を位置付 け している。 第 2章では,T卜 0 一層系超電導物質のベースとなる TI Sr 2 Ca Cu2 07及び TI Sr 2 Ca 2 Cu309の単相合成 を初 めて行 い, リー トベル ト法 に よ りそれ らの結晶構造 を決定 した。 また超電導臨界温度 (T。) 等の特 性 を明 らかに した。 第 3章では,ペ ース となる TI Sr 2 Ca Cu2 07及 びTI Sr 2 Ca 2 Cu309につ いて Pb,Y の元素置換 を行い, 結 晶構造の変化,T。等 の超電導特性 の変化 を調べて,T卜 0 一層系超電導物質が組成的 に非常 に広い範 囲で安定であることを示 した。 7 K,ゼ ロ磁場 で 2 kA/ mm2, 1 T の磁場下において も 6 0 0 A/ mmZと結晶粒 内で は非常 に高い臨界 試料が 7 J。 ) を有す ることを兄 いだ した。 この ことよ りTト 0 -層 系超電導物質 を用 いて超電導線材 電流密度 ( を作製 し,液体窒素冷却で数テスラの磁場 を発生 させ ることを考えた場合,特 に外部か ら意図的にピンニ ングセ ンタを導入す る必要のないことを明 らかに した。 第 5章では,高温超電導体 における ピンニ ングの支配因子について検討 している。高温超電導物質の不 可逆磁場 は物質によってほぼその大 きさが決 まっていること,及び結晶中の酸素量の調節,或いは価数の 異 なる元素 による置換 によって超電導物質のキ ャリア量 を増加 させ ることによって不可逆磁場が高温,高 磁場側 にシフ トす ることを実験的に示 した。高温超電導体 の ピンニ ングカ は,超電導 CuO 面間距離 と非 超電導 ブロ ッキ ング層部分のキ ャリア濃度が重要なパ ラメータであることを明 らかに した。 第 6章で は Po wde r-i nt ube法 に よる超電導線材 の作製 を試みた.原料粉末,線材 の熱処理条件等 を -1 91 0- 詳細 に検討 した結果,77K,無磁場 中の輸送 J c 値 として 1 80A/mm2と高 い値 を得ている.しか しなが ら, 。が低 い レベルに止 ま り, Powde r-i n-t ube法で は粒界弱接合 の問題 を解決で きないため磁場 中の輸送 J T卜 0-屑糸超電導物質 を用いた実用線材の作製 には新 しいプロセスが必要であることを明 らかに した。 第 7章では,連続的,高速成膜が可能である常圧下の成膜法であるスプ レーパイロ リシス法の開発 を行 T った。Sr Ti O3単結晶基板上 に作 製 した超電導膜 において,77K,無磁場で 2. 5kA/血血 2,印加磁場 l c 倍 を得 ることがで き,本研 究で開発 した手法 は非常 に有効 ( B//C軸)で 500A/mmZと非常 に高 い輸送 J 。は結 晶の配向度 に強 な線材作製 プロセスであることを示 した。 また,T1-0 -屑糸超電導物質の輸送 J 。は く依存 してお り," 無配向"⇒ "C軸配向"ラ "3軸配向" と結晶配向性が高 まるに したが って輸送 J 急激に向上す る事 を兄いだ し,結晶粒界部分の弱接合 を克服 して実用線材 に要求 される レベルの高い輸送 J 。を得 るためには, C軸配向 を達成す るだけでは不十分で, 3軸配向が必要であることを明 らかに した。 第 8章では,液体窒素冷却で使用す る実用線材作製の基本 プロセスを確立 した。 まず, 3軸配向線材の ( 0 0 1 )立方体集合組織 を有す る Agテ ープを開発 した.そ して この Ag 基材 として必須要素である i l OOi テープの上にスプ レーパ イロ リシス法で TI Ba2 Ca2 Cu3 09超電導膜 を作製 して 3軸配向 している事 を確認 OT の磁場 を印加 した場合で も 1 5 0A/mm2 と磁場 中での実用 し,無磁場で 1. OkA/mm2,C軸 に平行 に 1. 。を実証 した。 レベルの輸送 J 第 9章は,本研究で得 られた結果 を総括 し,要約 している。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 本論文は,液体窒素の ような比較的高温で使用で きる超電導材料 を開発す るために,理論的に優 れた特 Tl)系酸化物超電導物質の合成,基礎物性 の解 明,実用線材 開発 を行 った結果 をと 性 をもつ タリウム ( りまとめた もので,主な成果 は次の通 りである 。 1) T1-0 一層 を含 む TI Sr 2 CaCu2 07及 び TI Sr 2 Ca2 Cu3 09の単相合成 に初 めて成功 し,それ らの結 晶構造 と超電導特性 を明 らかに した。 さらに Pb,Y 等 の元素置換 に伴 う物性 の変化 や安定性 について調 べ た。 これ らの合成 した物質群 の特性, とくに不可逆磁場及 び 77K における臨界電流特性 について詳細 な検討 を行 った。不可逆磁場 は結晶中の酸素量,置換元素の価数等 に依存 し, とくに C 軸方向に沿 う超電 導 CuO 面の間隔 と非超電導ブロ ッキ ング相部のキ ャリヤー濃度が重要 なパ ラメータであることを明 らか に した。 2) 本研究で得 られた TI Sr 2 Ca2 Cu3 09相 を超電導線材化す るための開発研究 を行 った。 まず powde r -i n-t ube法 に よ り線材の作製 を行 ったが,超電導層が配向 しない多結晶であるため粒 界弱結合が顕在化 し, 目的 とす る高い輸送臨界電流 を達成す ることがで きなか った。 3) そこで工業化の可能性のある下地基板上 に Tlを含 まない前駆体酸化物薄膜 を形成 し,その後 Tl 蒸気 中で超電導化す るスプ レーパイロ リシス法の開発 を試みた。Sr Ti O3単結晶基板上 に作製 した超電導 ( 0 0 1 )立方体集合組織 を有す る Agテープ を 膜 は非常 に良好 な超電導特性 を示 したoそ こで さらに i l OOi 下地基板 に用いて TI Sr 2 Ca2 Cu3 09薄膜 を作製す る と酸化物薄膜 C軸が膜面 に垂直 に, a軸がテープ長手 方向に配向す るいわゆる "3軸配向"が達成 されることを兄い出 し,作製条件の最適化 によ り1テスラの -1 9 1 1- 磁場 中において も非常 に高い輸送臨界電流が得 られることを明 らかに した。 以上要す るに T1-0 一層系超電導相 の物性 を明 らかにす るとともに,液体窒素温度で使用可能 な実用 線材作製の基本 プロセスを確立 した もので学術上,実際上寄与す るところが少 な くない。 よって本論文は 0月 2日に論文内容 とそれに関連 し 博士 ( 工学)の学位論文 として価値あるもの と認める。 また平成 8年1 た事項 について試問 を行 った結果,合格 と認めた。 -1 91 2-
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