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STUDIES ON THE EFFECTS OF TRANQUILIZING
DRUGS ON VIABILITY AND METABOLISM OF GOAT
SPERMATOZOA( Abstract_要旨 )
Fukuhara, Riichi
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212037
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
1
日
1
罪
1
4
1
3 一帖 士 号 2 条
1
月
6
5
7
1
1 罪
利
り博
罪
当
読
項
年 刺
1
4 規
和 位
学位授与の要件
原 鵬学 博
学位授与の 日付
農 昭 学
学 位 記 番 号
射農
学 位 の 種 類
福
氏
研 究 科 ・専 攻
農 学 研 究 科 農 学 専 攻
学位 論文 題 目
STUI
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E EFFECTSOF TRANQUI
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RUGSON VI
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TY AND M:
ETABOLI
SM OF GOAT
SPERMATOZOA
(山羊精子 の生存性 な らびに代 謝におよぼす トランキ ライザーの
影響 に関す る研究)
論文 調査 委員
教(㌔ 篭
論
川 義 正
文
教 授 上 坂 章 次
内
容
の
要
教 授 小野 寺 幸之 進
旨
この論文 は山羊精子 を用 い, ヒ トの精神安定剤 と して広 く用 い られてい る トランキ ライザーが, 体外精
子 の運動性 , 生存性 および代 謝にいかな る影響があるかにつ き検討 を加 えた もので, 内容は大別す るとつ
ぎの 3つか らな っている。
著者はまず現在市販 されてい る19 種 の トランキ ライザーを用 い, 卵黄緩衝液で希釈 された山羊精液 に各
C に保存 し, 精子 の生存性 にどのよ うに作用す る か を調べている。 その
種濃度の薬剤 を加 えて これ を 4o
not
hi
a
z
i
ne系の c
hl
o
r
pr
o
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z
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dehydr
o
c
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or
i
de (
CPSH) および c
hl
or
pr
o
ma
z
i
ne
結果 phe
0
0
hydr
o
c
hl
o
r
i
de (
CPH) が精子 の生存性 な らびに活力の維持 に有効で あ り, その至適濃度はそれぞれ 1
-4
0
0mg/
dlおよび 1
0
-40mg/
dlで あ った。 なお これ らの薬物 の比較的高濃度 の添加 は, 卵黄含有希釈
液 による山羊希釈精液の凝固現象 に対 して も著 明な抑制効果 を示 した。
つ ぎに著者 は山羊精子 の代謝につ いて調べている。 これ は山羊精子 の代謝に及 ぼす トランキ ライザーの
影響 を検討す るのにさきだ って, まだほ とんど明 らかにされていない山羊精子 の一般代謝につ いて ワ- ル
7o
C の条件下で検索 した もので ある。 山羊精子 の内因性 呼吸は, TCA サイ クル
ブルグ検圧装 置を用 い,3
メ ンバ- の添加 によ って促進 され , と くに ピル ビン酸 , 酢酸 , 乳酸 によ って著 しく促進 され , 精子 の運動
もよ く維持 された。 各種 の糖 の うちグル コ- ス, フラク トース, マ ンノ- ス も呼吸を顕著 に刺激 し, 精子
の運動をよ く維持 した。 また, 内因性 呼吸は シア ン化 カ リウム, 亜 ヒ酸などの呼吸阻害剤 によ って阻害 を
うげ, 同時 に運動 も阻害 された。 山羊精子 は嫌気条件下で, グル コース, フラク トース, マ ンノースを分
解 して多量の乳酸 を生成 し, その運動 を維持 した。 好気条件下 において も, これ らの糖 は分解 され, かな
4)。 こ の 好 気 的解糖 は フ ッ化ナ トリウム, モ ノヨ- ド酢酸などの
りの乳酸 を生成 した (嫌気条件下 の約 ;
解糖阻害剤 によ って強 く阻害 された。 また上記 の呼吸阻害剤 の うち, シア ン化 カ リウム, 亜 ヒ酸 の添加 の
場合 には呼吸が阻害 され るのに反 し, 解糖 はむ しろ代償 的に促進 され る場合がみ られ, その促進度が嫌気
的解糖の レベルに達す る時 には運動が維持 された。 酸化的 リン酸化阻害剤で あ る D N P によ り, 精子 の呼
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-
吸な らびに解糖 は促進 され る傾 向を示 したが, その運動 はむ しろ阻害 された。 以上の成績 か ら, 山羊精子
は他の家畜精子 と同様 , 呼吸系および解糖系 と してそれぞれ
TCA サイクルおよび Emb
d
e
n
Me
y
e
r
h
o
f
径路 を有す ることが考 え られ , また山羊精子 に も呼吸系 に共役す る高 エネルギー リン酸結合生成系の存在
が推察 され た。
著者 はつ ぎに山羊精子 の代謝に及ぼす トランキ ライザーの影響 を調べてい る。C
PS
Hは卵黄緩衝液希釈
C および 37o
C のいずれにおいて も抑制す るが, 精子 の運動 に対 してはむ し
山羊精子 の好気的解糖 を 4o
ろ刺激的で あ った。 この ことか ら著者 は
す るもの と考 えている。 また
対 し,
CPS
H は,
CPH は低濃度では促進 を,
CPS
H の精子 の運動 に対す る作用は,
精子 の興奮伝達系 に関連
精子 の基質酸化 を阻害 し, 同時 にその運動 も阻害 した。 これ に
高濃度では阻害の 2
様 の効果 を示 した。 これ ら
CPS
H および CPH
の基質酸化 に対す る阻害度 は, 基質の種類 に関係な く, ほぼ同程度の値 を示 した。 この ことは薬物の作用
点が, 基質酸化 に共通な電子伝達系 (チ トクローム C オキシダーゼ系) にあることを示唆す るもの と考え
られ る。
CPS
H は山羊精子 の解糖 に対 しては,
供試濃度の
1
0
0mg
/
dlの レベルでは影響がみ られなか っ
たが ,C
PH は これ に対 し 5mg
/
dlで も強い阻害作用を示 した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
一般臓器細胞の代謝に対す る トランキ ライザ ーの作用 およびその作用機序 に関す る研究報告はきわめて
多い。
しか るに精子 のごと く運動が きわめて活発で代謝機能 の旺盛 な細胞 に対す る影響 を調べた研究報 告
はわずかに 1 , 2を算 えるだ けで, 不明の点が多い。 著者 は中枢神経緩和剤 あるいは 自律神経遮 断剤 と し
て知 られている トランキ ライザーが細胞の代謝抑制作用 を有す ることに着眼 し, 家畜 の精子 に対 しどのよ
うな作用 を有す るかを精子 の生存性 , 運動性 および代謝の面 か ら検討 した もので, い くつかの興味ある新
しい知見 をえてい る。 すなわ ち適濃度の トランキ ライザーの添加 によ って, 精子 の生存性が延長 され るこ
と, 精子 の代謝が抑制 され ること, およびその作用機序は運動 エネルギーの供給系で ある呼吸系な らびに
解糖系 に作用す ることなどを明 らかに している。 また山羊精子 の代謝 につ いては, これまで研究業績がほ
とんどな く不明の点が多か ったが, 著者 は山羊精子 の呼吸能 と解糖能 を明 らかにす るとと もに , 山 羊精子
の呼吸な らびに解糖 は他の家畜 の場合 と同 じく, それぞれ
TCA サイクルおよび Emb
d
e
nMe
y
e
r
h
o
f径
路 によ って行なわれ ることを明 らかに している
。
以上 のごと く本論文 は トランキ ライザーが家畜精子の生存性 , 運動性 および代謝 にいかに影響す るかを
調べ , さらに山羊精子 の一般代謝 について も明■
らかに した もので , 家畜の生殖生理学 に寄与す るところが
きわめて大で ある。
よ って本論文 は農学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認 め る。
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