Page 1 Page 2 【646】 氏 名 香 苗 學 売 学位(専攻分野) 博 士 (工 学

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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下水処理プロセスシミュレータを用いた生物学的栄養塩
除去システムの高度化に関する研究( Abstract_要旨 )
倉田, 学児
Kyoto University (京都大学)
1998-09-24
http://hdl.handle.net/2433/182338
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
岩
島
士
箪
鼻
(
工
学)
学位 (
専攻分野)
博
学 位 記 番 号
論 工 博 第 3369 号
学 位 授 与 の 日付
平 成 1
0 年 9 月 24 日
学 位 授 与 の要 件
学 位 規 則 第 4条 第 2項 該 当
学 位 論 文題 目
下水 処 理 プ ロセ ス シ ミュ レー タを用 い た生 物 学 的栄養 塩 除去 システ ムの
高度化 に関す る研 究
(
主査)
論 文 調査 委 員
教 授 内 藤 正 明
論
文
教 授 森 揮 寅 輔
内
容
の
要
教 授 津 野
洋
旨
本論文は,閉鎖性水域の富栄養化問題-の対応 のために,廃水処理施設 における生物学的窒素 ・リン除去性能の向上を 目
的 とした管理の高度化が強 く求め られている状況に鑑み,最適 な運転 ・管理方式の決定を支援す る観点か ら,流入有機物負
荷の変動な どに起因す る栄養塩除去の不安定化現象 を対象 として,そのメカニズムの解析 と安定性の向上のための運転 ・制
御方法について論 じたものであ り, 7章か らなっている。
第 1章は緒言であ り,下水処理場の運転管理における情報系の重要性,シ ミュ レータ構築の方針や求め られ る機能につい
て論 じている。また,本研究の 目的 と主要な研究課題 を明 らかに している。
第 2章においては,シ ミュ レータの開発 に利用 したオブジェク ト指 向モデルの概要を説明 し,下水プロセスのシ ミュレー
タの構成要素 となる各単位 クラスの構築法について論 じた。オブジェク ト指向モデルは,動的な変化 を伴 う異なるシステム
やスケールの間を結ぶ手法 としても有効なものであることを明示 した0
第 3章においては,生物学的窒素 ・リン除去法で利用 されてい る各種方法の概要 を整理 し,AO法やA2/0法な ど空間的
に好気 ・無酸素 ・嫌気の環境 を分割す る方法 と,単一槽で時間的に環境 を分割す る間欠曝気法 との比較によって,制御性の
違いを論 じると共に,本研究で主 として扱 った 「
直列 2槽式間欠曝気法」について,栄養塩除去に有効な構造 と運転制御方
法を提示 し,その特性 について論 じた。
第 4章においては,硝化 ・脱窒の動力学モデル として 「
Te
ns
t
r
o
m ・Chr
i
s
t
e
ns
e
nモデル」 と 「
I
AWQ活性汚泥モデルNo.
Randa
l
l
モデル」及び 「
I
AWQ活性汚泥モデルNo.2」 を対
1」 を,硝化 ・脱窒お よび生物学的 リン除去のモデル として 「
象 として,扱われている水質項 目お よび微生物活動プロセスの整理 と比較 を行い,各モデルの特徴 を論 じた。
AWQ活性汚泥モデルN0.2については,直列 2槽式間欠曝気法の施設での実験データをもとに,従来のモデル と
また,I
の比較及び温度影響のシ ミュ レーシ ョンを行い,その再現性及び適用性 を確認 した。
第 5章においては,主 として直列 2槽式間欠曝気法 を採用 し生物学的窒素 ・リン同時除去 を 目的 とした実験施設お よび実
用施設 を対象 として,実験結果 とシ ミュ レーシ ョン結果か ら,モデルの再現性及び信頼性の評価 を行 うと共に,有機物負荷
の低下時の活性汚泥の内部状態の変化や有機物の消費経路の解析 を行い,その結果か ら安定的な制御方法の検討 を行 った。
リン蓄積性微生物の働 きを最大限に引き出すためには,生物反応槽 に至 るまでの下水管や前処理段階での有機物の消失 を防
ぎ,プロセス内での他の従属栄養性微生物による有機物の利用 を抑 える制御法が有効である事 を示 し,また実施設の運転方
法の改修 による効果 を事前 に予知 しうることを示 した。また,有機物負荷変動 に起因す る生物学的 リン除去の不安定現象に
関 しても,余剰汚泥量操作及び有機物添加 による制御方法 を提案 し,その有効性 を示 している。
第 6章 においては,公共下水の終末処理場 を対象 として,初沈生汚泥投入 による リン除去率向上実験での有機物の消費経
路 とリン除去向上のメカニズムの解析 を行い,既存設備 を利用 した栄養塩除去の改善方法の一つ として有効である事 を示 し
た。 また,統計的制御法の一つであるARモデル を用いた制御法 を構築す る際の同定実験の過程 に,シ ミュ レー タを用いて
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プロセスの動的な特性 を予測できる事 を示 し,実際の同定実験 における動的特性 を定性的に再現できる事 を明 らかに した。
第 7章は結論であ り,本論文で得 られた成果 と今後の展望について要約 してい る。
論
文
審
査
の
結
果
の
要
旨
本論文は,今 日の水系保全上の重要課題である閉鎖性水域の富栄養防止 さらには栄養塩回収 をも視野に入れつつ,生物学
的栄養塩除去システムの運転 ・管理手法の高度化 を 目指 したものであ り,その新たな手法 として,施設の固有性や制約条件
を反映できる下水処理プロセスシ ミュ レータを開発 し, さらにそれ を用いて実プラン トを対象 に実用可能 な支援手法の構築
を行 った一連の理論的 ・実験的研究の成果 についてま とめ られた ものであ り,得 られた主な成果は次の通 りである。
1.栄養塩除去機構 に関す る活性汚泥動力学モデル を組み込んだ,オブジェク ト指向モデル によ り施設 固有の制約条件等 を
反映できるシ ミュレータを開発 し,複数の処理施設での実験データ との比較 によ りその有効性 を確 かめた。
2.流入原水の有機物負荷が低下す ると,生物学的 リン除去が不安定になる現象 に着 目して,活性汚泥内の微生物相の変化
や各微生物-の有機物の消費経路な どを解析 し,安定的な制御 のために重要な操作因子 を提示 した。
3.実施設での下水管お よび前処理段階での水質分析結果に基づ くシ ミュ レーシ ョンか ら,前処理段階での有機物の減少が
生物学的 リン除去 を悪化 させ る要因の一つであることを明 らかに し,その改善によって リン除去性能が向上す る事をシ ミュ
レーシ ョンと実験の両方か ら確 かめた。 同様 に,最初沈殿池の生汚泥 を有機物資源 として利用す る事の有効性 を確認 した。
4.下水処理場での 自己回帰制御法の同定実験及び制御系構築の過程 をシ ミュ レータ上で再現 し,実施設 に近い動特性が得
られ る事 を示 した。 これ によって,モデルの妥当性の検証 と統計的制御系構築の支援 に有効である事 を明 らかに した。
5. これ らの結果 をもとに,現場の下水処理場の高度な管理 を支援す る新たなシステムを提示 した。
以上,要す るに,本論文は,下水処理プロセスシ ミュレータの支援 による生物学的栄養塩除去法の高度 な管理手法 につい
て検討 した ものであ り,学術上,実際上寄与す るところが少な くない。 よって本論文は博士 (
工学)の学位論文 として価値
あるもの と認 める。また,平成 10年 5月 20日,論文内容 とそれ に関連 した事項 について試 問を行 った結果,合格 と認 めた。
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