Title Author(s) Citation Issue Date URL 社会主羲経済の理論( Abstract_要旨 ) 木原, 正雄 Kyoto University (京都大学) 1967-05-23 http://hdl.handle.net/2433/212236 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【1 6】 氏 木 原 正 き はら まき 学 ー)~一 Ⅶ 一 一 ~ー -1 お 学 位 の 種 類 経 学 位 記 番 号 論 経 学位授与 の 日付 昭 和 42 年 5 月 23 日 学位授与 の要件 学 位 規 則 第 5 粂 第 2 項 該 当 学位論文題 目 社 会主義経済 の理論 論 文 調 査 委員 教 授 松 井 (主 済 雄) 博 士 博 第 1 8号 査) 論 清 文 内 教 授 大 橋 隆 憲 容 の 要 教 授 出 口 勇 蔵 旨 , 「社会主義経済 の理論」 「資本主義経済の理論」 が, 資本主義の生誕以来幾多の変遷 を経 て きたよ うに 0 年 を経 た今 日にいたるまで, 種 々の論争を生んでい る(。 しか も 「資 もまた, 社会主義の生誕以来すでに5 本主義経済の理論」 す ら, まだかな りの未解決な問題 を残 してい るよ うに, いやその歴史が浅 い だ け に 「社会主義経済 の理論」は, 一層多 くの未解決の問題を残 しているのである。 本論文 は, これ ら未解決の問題 を解決す るための手がか りとして, 社会主義経済建設が, 世界 では じめ 9 20年代 か ら30年代 にかけての論争を批判 し検討す ることを主題 と て現実の課題 とな ったソ連 における,1 す るものである。 問題を取扱 うに当 っての本論文 の立場 は, い うな らば, 広義経済学の立場, すなわち社会主義生産関係 もまた経済学 の研究対象 とな りうるとい う見地 にた ってい る。 したが って本論文 は, まず第一 に, 「社会 主義経済学」 を体系化 し, 確立す る うえで, もっとも大 きな障害 とな ったブハー リンの見解, すなわち経 済学の研究対象 を資本主義生産 関係だけに限定 し, 社会主義の もとでは, 科学 としての経済学 は存在 しな いとい う, いわゆ る 「経済学消滅論」 を展開 したブ- - 7) ンの見解 , 「労働支 出の法則」, この法則か ら出 て くる 「均衡論」 の批判, 検討か ら出発 し, あわせて このよ うな見解が, 理論の分野において だ け で な く, 社会主義建設 において, どのよ うな偏向を もた らしたかを明 らかに して いる。 次にブ- ー リンの 「経済学消滅論」 やその他 の見解 の批判 を通 じてでてきた 「 ソ ビエ ト経済理論」, す なわち過渡期 (資本主義か ら社会主義への過渡期) の合法則性 を, その特徴 と具体的多様性 において研究 , , 「社会主義経 済学」 す ることを内容 とした理論 につ いて言及 し 「 ソ ビエ ト経済理論」 が を体系化す る う えで一歩前進 であるとともに, 社会主義経済 の性格規定 の誤 りか らくるこの理論の限界性 を明 らかに して い る。 また 「 ソ ビエ ト経済理論」 の体系化の こころみのなかで, その中心問題 の一つである計画化の役割 と機 能 についてふれ, 国家が主体 としてお こな う計画が, 社会主義経済 の基本的法則であるとい う, いわゆ る - 37- 法則の客観性 を否定す る見解 にみちび くことにな った原因につ いて考察 している。 すなわちブハー リンの 見解を中心 とした1 9 2 0 年代 の経済学をめ ぐる論争が, 抽象的 ・ 一般的 にす ぎ, 客観的事実か らはなれ, ひ いて は客観的事実の認識 をゆがめる結果 とな った ことが反省 され るとともに, 具体的問題 の分析が強調 さ , 「 ソ ビエ ト経済理論」 れ の体系化の試みがお こなわれ るのであるが, 具体的問題 の強調が, 客観的事実 の分析 に基づ く客観 的な社会主義経済法則の解明にまで進 まず, 単 に党や国家の経済政策, と くに経済計 画の記述 にとどま り, 客観的法則を否定 した 「計画化- 法則論」 とい う主観的見解が出て きたこと, そ し て この計画化- 法則 とい う見解が, 社会主義の もとでの価値法則の否定 に導 びき, それが 「社会主義経済 学」 を確立す るうえで大 きな障害の一つ にな った ことを明 らかに してい る。 「 ソビエ ト経済理論」は, 国民経済の社会主義的改造の過程 に照応 し, その理論的支柱 としてでて きた のであるが, 基本的には 「経済学消滅論」 の立場にた っていたため, 社会主義経済形態が支配的にな るに したがい, 過渡期理論である 「 ソビエ ト経済理論」 は不十分 な もの とな り, 社会主義経済形態が全- 的に 支配す るよ うにな った段階には, 膨大 な具体的資料の理論的分析 と理論的一般化が必要 とな って きたので ある。 本論文 は このよ うな段階に照応 しては じめて 「社会主義経済学」 の体系的記述の必要が提起 されて きた経過 に言及 している。 ソ連 において は じめて′「社会主義経済学」 として明確にその確立の必要を提唱 したのはポ リー リンであ る. 本論 は 「社会主義経済学」 の体系化の過程 において一つの重要 な転期を確す るもの として, ポ リ- リ 9 3 6 年および1 9 3 7 年 に発表 した もの) に言及 し, ポ リー リンが歴史的, 具体的なアプ ロ ンの二つの論文 (1 ーチとともに, 新 しい生産 関係を, 発展, 運動のなかで一般化 し, 体系化 し, それに一つの構造 をあたえ , ることの必要を指摘 した こと 「社会主義経済学」 は, どのよ うな内容の ものであ り, どのよ うな構成の ものでなければな らないかについて, その見解 を明 らかに した点 に言及 している。 , 本論文 は, ポ リ- リンの方法 と構成に言及 しなが ら 「社会主義経済学」 の重要 な理論的問題, た とえ ば所有の問題, 法則 についての問題 などについての見解に批判 ・ 検討を くわえている0 以上 これを要す るに本論文 は, ブ- ー リンの 「経済学消滅論」 を批判 し, 広義経済学の立場 に立 ち, 「社会主義経済学」 の体系化の必要 を強調 し, 同時にその体系化への手がか りをえよ うとした ものである。 また本論 は, 第二次世界大戦前の ソ連 における諸問題 の批判, 検討 を中心 とした もので, 現在 ソ連やその 他 の社会主義諸国における新 しい方 向にはふれていない。 その限 りで, 本論文 は 「社会主義経済学」 をめ ぐる諸問題の前史 ともい うべ き ものであるが, 現在の問題を正 し く解決す るために こそ, 戦前の問題の再 検討 の必要 を強調 している。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 さて本論文 の評価であるが, それ はきわめて困難 な課題 とい うべ きであろ う。 その理 由は, すでに広 く 知 られているよ うに, 同 じく社会主義国であ りなが ら, ソ連 と中国の問に存す る見解 の相違に関連を もっ ている。 社会主義経済 の本質 をどのよ うに把 えるかによって, 十月革命以後 出て きた諸論 に対す る評価 も 自 ら異 な って くるか らである。 しか し現在のいわゆ る中 ソ論争に対 して早急な結論を導 びき出す ことは, きわめて危険な ことであ り, それを意識的に避 けた著者の態度 は, 学問的にみて賢 明だ とい うべ きであろ - 38- う。1 9 2 0 年代 ,3 0 年代の論争に決定的評価を下す ことは, 上のよ うないみにおいて不可能 に近 い。 しか し 決定的な評価ではないに して も, イデオロギーを離れ, 現在の社会主義経済 の現実か らみて, そ こにはや 9 2 0 ,3 0 年代の論争に対 して, は り最大公約数的事実が, 厳然 と存在す る。 そのよ うな現時点か らみて,1 や は り最大公約数的評価 は在存 して良 いはずである。 本論文 はわが国では限 られた資料 に基づいて, これ まで未解決な, そのよ うな問題の評価 に取組 んだ点で, 経済学博士 を附与す るに値す る。 - 39-
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