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無線中継方式におけるアンテナ系の研究( Abstract_要旨 )
進士, 昌明
Kyoto University (京都大学)
1984-01-23
http://dx.doi.org/10.14989/doctor.r5180
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
進
士
じ
まき
あき
学 位 の 種 額
工
学
博
士
学 位 記 番 号
65
5号
論 工 博 第1
学位授与の 日付
昭 和 5
9年 1 月 23 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5粂 第 2項 該 当
学位論文 題 目
無 線 中継 方 式 におけ る ア ンテ ナ系 の研 究
論文調査 委員
教 授 池 上 文 夫
氏
名
しん
昌
明
(
主 査)
論
文
内
教 授 池 上 淳 一
容
の
要
教 授 木 村磐 根
旨
本論文は各種無線中継方式用 アンテナ系の研究結果を述べた ものであるO 無線通信用 アンテナ系は, シ
ステムの 目的に よってアンテナの形状,構成,特性が様 々である。本論文は,準 ミリ波帯中継用の回折網,
デ ィジタル中継用のカセグレンアンテナ,国内衛星通盾の地球局用お よび衛星搭載用 アンテナを対象 とし,
理論解析および試作実験に より特性の解明を行 うとともに,対応す る方式構成 との関係を システム的に考
察 して最適設計法を示 した もので, 6章か ら成 っている。
第 1章は序論であ り,本研究の背景 と研究の概要お よび意義について述べている。
第 2草では,準 ミリ波帯の短距離中継方式において,送受借点間の見通 しが山岳に よって妨げ られ電波
が減衰する場合,山頂に設置 して減衰を軽減す る回折網の研究結果を述べている。透過形回折網の原理,
利得,周波数特性,傾斜角特性,指向特性などの理論解析,回折網材料の検討を行い,その設計法 と適用
領域を明 らかに した。 この方法で設計された回折網を用いて野外伝送実験を行 った結果,理論 とよく一致
す る結果を得, また実用上重要なフェ-ジング発生時の特性,着雪の影響について も検討 し,十分実用性
のあることを示 している。
第 3章では, アソテナの高性能化について述べている。最近の高度な通信では,従来のアンテナに比べ
てはるかに高度で異質な特性が要求 される。
直交する二つの偏波を独立の伝送チャンネル として用いるデ ィジタル伝送では, アンテナに よる不要な
直交偏波の発生がチャンネル問の干渉の原因 となる。 このよ うな開 口面 アンテナにおける交叉偏波特性を
理論的に分析 し,主反射鏡面の機械的ひずみに よる位相ひずみがその原因であることを明 らかに し,機械
ひずみか ら交叉偏波特性を計算す ることを可能に した。 この結果,交叉偏波特性を改善す る設計法を得て
いる。なおこの計算法はアンテナ開 口面上の着雪の影響に も利用で きることを示 している。
一般に,隣接す る多数の無線回線相互間の電波干渉を防止す るために, アンテナのサイ ドロープお よび
広角度指向性に対 して極めて厳 しい要求が課せ られる。本章では, これ らの特性の理論解析を行 うととも
に,遮蔽板や回折現象を利用 して干渉を軽減する方法を示 している。 またサイ ドローブの統計的性質を解
・
一
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7-
析 して通信回線に対す る要求 とバ ランスの とれたアンテナの最適設計法について述べている。
第 4章では,国内衛星通信方式の地球局 アンテナについて述べている。準 ミリ波の地球局用 として,軸
対称形 お よびオフセ ッ ト形 のカセグ レンアンテナのイ ソピ-ダンス特性,遅延特性,利得,近軸 および広
角度指向性,雑音温度特性,追尾特性,耐風圧特性など電気的お よび機械的特性について検討 している。
これ らの条件を満たす アンテナ系の設計試作を行い所要 の特性が得 られ ることを確認 した. とくに舟フセ
ッ トカセグ レンアンテナは集束反射鏡系に よる給電方式を採用 し, これ と鏡面修整を施 した副反射鏡 とを
組合せて,す ぐれた開 口能率 と広角度特性を実現 している。試作 オフセ ッ ト形 アンテナは,軸対称形に比
べて,近軸 お よび広角度特性,雑音温度な どすべての点です ぐれ ることが確認 された。 また この研究の中
0GHz帯での
では電波星を用いた利得測定を行 っているが, この装置を用 いて電波星か らの雑音電波 の 2
フラックス密度の測定 も行 っている。
第 5章では,通信衛星に塔戟す るアソテナ系について述べているO このアンテナはマイ クロ波および準
0
,3
0GHz
)帯を共用 し, その指向性が それぞれ 日本全域 および 本土を カバ ーす る様
ミ1
)波 (4, 6,2
に設計 されたホーンレフ レクタ形で, この指向性を反射鏡面の整形に よる ビーム成形技術に よって実現 し
た。 アンテナ系の諸元は,衛星の軌道位置, トランスポ ンダおよび地球局の特性などを考慮に入れて決定
され るが, アソテナ理論 お よび システム的考察にもとづ く
.
設計法を明 らかに した。 また衛星塔載用 アンテ
ナは,電気的特性のみな らず,衛星打上げお よび宇宙環境に対す る機械的お よび熱的条件を考慮 した検討
に よって設計 されている。試作 アンテナについて これ らの諸特性を測定 し,通信衛星塔載用 として要求 さ
れ るすべての特性が満足 されることを確認 している。
第 6章は以上の結果を まとめた結論である。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
最近の無線通信は橿めて高度化 し, これに伴 って多棟能,高性能なアンテナ系が要求 されるが, システ
ムに対応 した設計思想の下に,それぞれの 目的に対 して様 々な形状,構成,特性を もつアンテナ系の最適
設計が必要 となる。本論文は,地上通信 な らびに衛星通信用のアンテナについて,理論解析 と試作実験に
よ り各種 アンテナの最適設計法を解 明 した研究結果を まとめた もので,主な成果は以下の通 りである。
1
, 都市間を結ぶ準 ミ1
)波中継方式で,途 中の山岳の回折による電波の回折損失を軽減す る方法 として,
電波の回折現象を巧みに利用 した人工 回折体によ り無給電中継す る透過形回折網を考察 し,その諸特性の
解析 と使用材料の検討に よ り,最適設計法 と適用儀域を明 らかに した。試作回折網の野外伝送実験に より,
中継所を要せず経済的な回線が実現で きることを確認 した。
2
. デ ィジタル無線通信では,真交す る二つの偏波を独立の伝送チャネル として利用 し周波数利用効率
ⅩPD)が高いアンテナが要求 され
を 2倍 にで きるが,不要直交偏波の少ない,すなわち交叉偏波識別度 (
る。 これ までその系統的研究がなか ったが,交叉偏波の発生原因がアンテナ主反射鐘面の機械的ひずみに
よる位相ひずみであることを示 し,定式化 してその特性を解明 した。
3
. 無線通信の発展 とともに,隣接す る無線回線相互間の電波干渉が通信を妨害 し, アンテナの不要放
射 の抑圧が極めて重要 となる。本研究では不要放射の要 因を分析 し,その特性を統計的に表示 して実回線
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における干渉の定量的評価を可能 とした。 また不要放射の軽滅法を考案 し,特性を解析す る とともに実験
に よってその有効性を確認 した。
4
. 衛星通信は国内通信に も利用 され るに至 り,建物最上に設置で きる小形,高性能の準 ミリ波帯地球
局 アンテナが必要 とされ る。筆者は特徴的な構成に よるオフセ ッ トカセグ レン形を提案 して,従来の軸対
称形に比 してす ぐれた特性の得 られ ることを理論的,実験的に明 らかに した。 この結果を用いて,衛星追
尾機能な ど地球局特有の機械的条件 と調和 させたアンテナ系を開発 した。
5
. わが国の通信衛星搭載用 アンテナには,マイ クロ波 お よび準 ミリ波帯を共用 し国内のみを照射す る
変形指向性が要求 され る。筆者は反射鏡面に独特の修整を施 したホーンレフ レクタ形を提案 し,小形,軽
量で高性能なア ンテナ系を設計 した。 さらに衛星打上げお よび宇宙環境に耐える熱 ・椀械特性に適 した材
料 と構造を検討 し,す ぐれた特性を もつ アンテナ系を開発 した。
以上要す るに,本論文は最近の無線通信に対応す る各種 の新形式 アンテナの基本特性の解析 とシステム
的考察に もとづ き,それぞれの最適設計法を明 らかにす る とともに,その成果を用いて実用 アンテナの開
発に至 るまでの技術的要素を も解明 した もので,学術上,
、実際上寄与す る ところが少な くない。 よって本
論文は工学博士の学位論文 として価値 あるもの と認める。
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年1
2月1
0日,論文内容 とそれに関連 した事項についての試問を行 った結果合格 と認めた。
また,昭和 5
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